ぼくのかんがえたあふたーすとーりー(>ω<) 作:DX鶏がらスープ
星新一『おーい でてこい』
それからどれだけの時間が過ぎただろう。とある国のお殿様の耳に不思議な穴の話が入ってきた。
なんでも彼の国の一角に、あまりにも深くて底が見えない、そんな底無しの穴が見つかったとか。
様子を見に行ったお殿様は、そのあまりの深さと底知れなさに嫌な予感を感じた。
これは人が関わって良いものではない、穴を一目見てそう感じたお殿様はすぐさま家臣達に言いつけた
「これはきっと、あの世へ続く穴に違いない。社を建てて、隠してしまえ」
かくしてそこには小さな社が建てられ、宮司が置かれることになった。
社の奥には縁起が書かれた巻物が置かれ、代々の宮司は口伝えで社の下に隠された不気味な穴のことを継承した。
決してそこに人を近付けないようにという任をお殿様から授かった彼らは、初代から変わらず真面目にその教えを忠実に守り続けた。
だからしばらくは何もなかった。
語り継がれた教えに従い、代々の宮司達は静かに社を守り続けた。
だが悲しいかな、時代は進む。
かつて夜の闇の中を跳梁跋扈していた物の怪達は、科学の名の下に白日に晒され、多くの人々に信仰された由緒正しき神でさえも、いつしか迷信と片付けられ見向きもされなくなった。
そして人もまた同じ。
ただでさえ片田舎にあったその社の周りに住んでいた人々は、時代が下ると共に都会へと出ていき、そうなると社の後継者候補もまた減っていく。どころかそんな数少ない候補ですら、自分達の守ってきたものをバカにするようになった。
曰く、科学的でない。概ねものを知らない昔の人達がそう考えただけの深い穴に過ぎない。そんな苔の生えた古くさい教えを繋いでいくよりも、もっと先進的ですばらしいことがしたいと。そう言って彼らもまた競うように都会へと出ていった。
そんなこんなで、いつしか社はすっかり寂れてしまった。
宮司の一族は途絶え、その間に社の縁起が記された巻物も、どこかへいってしまった。
今では、もうかつて村があった場所の近くにある村の住人が場所を知っている程度
なぜそこにあるのか、いつ誰が何の目的でそれを建てたのか、それすらも誰も知らない。社はそのまま、いつかは誰の記憶からも忘れ去られ、朽ちて果てていくだけのはずだった。
台風が去って、すばらしい青空になった。
都会からあまりはなれていないある村でも、被害があった。村はずれの山に近い所にある小さな社が、がけくずれで流されたのだ。
朝になってそれを知った村人たちは、
「あの社は、いつからあったのだろう」
「なにしろ、ずいぶん昔からあったらしいね」
「さっそく、建てなおさなくては、ならないな」
と言いかわしながら、何人かがやってきた。
「ひどくやられたものだ」
「このへんだったかな」
「いや、もう少しあっちだったようだ」
その時、一人が声を高めた。
「おい、この穴は、いったいなんだい」
みんなが集まってきたところには、直径一メートルぐらいの穴があった。のぞき込んでみたが、なかは暗くてなにも見えない。なにか、地球の中心までつき抜けているように深い感じがした。
「キツネの穴かな」
そんなことを言った者もあったが、それでも誰もこの穴が何なのか分からなかった。
...そう、これは遠い遠い未来のお話。
かつて40日40夜降り注いだという、地上を覆った未曾有の大雨と方舟の記録や、地に満ちていた混沌をかき回し、国を作ったという神の物語が、遠い神代の物語として認識されている、それほどまでに遠い遥か未来のお話。
だからこそ、それを語るに当たっては、我々はまず序文から始めなくてはならないだろう。
さしあたっては、そう。例えば
「おーい、でてこーい」
という書き出しはどうだろうか?
無限ループって怖いですよね?(定期)