やはり俺が童貞なのはまちがっている   作:うんちーまん

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デュエル、スタート!

 俺の名前は比企ヶ谷八幡。童貞だ。

 

 今は修学旅行初日の夜。クソみてーなオリエンテーションとアホみてーな同級生のせいでクタクタだぜ。

 

 あーこういう時はさっさと風呂入って寝るのが一番だな、などと一人愚痴っていたところ、それが無意識のうちに口に出ていたのか同級生に聞かれてしまい、やばい奴を見るような目を向けられてコソコソ退散した。

 

 さて、風呂でも入るか。

 

 男湯の前に立つ。その少し先には女湯。

 

 迷わず女湯に入る。

 

 なぜかって?決まってんだろ。

 

 俺が女だからだ。

 

 事は少し複雑だが、簡潔に述べるとマットサイエンティスト教師平塚の悪魔的実験の末、俺は人体改造され、見事男から女へと転生を果たしてしまったのである。

 

 まったく、迷惑な話だ。俺は小学生の時の卒業文集に「童貞を卒業して死ぬ」と記したのに女じゃどうやって童貞卒業するってんだよ。

 

 お陰で昨日まで男だった俺はトイレも着替えも女と共に済ませねばなるまい。当然女子どもの嫌悪感は強く、こっちを見るなだの近づくなだの雑巾や生理用ナプキンを投げつけられたりする。屈辱的だ。

 

 また、男の方も始めはキモがっていたが、やがて思春期特有の猿的性欲を発動させ、どうしてセクハラに抵触しないのか疑問に思うほど不快で下劣な欲望を孕んだ視線を向けてくる。女も大変だ。

 

 だがそんなことを気にしているようじゃボッチはつとまらない。ぼっち歴十八年。比企ヶ谷八幡、もとい、比企ヶ谷八幡子(ひきがやはちまんこ)の実力を見せてやるぜ。

 

 意気揚々とのれんをくぐり、戸に手をかけ、一気に横へと引く。

 

 開け切らないうちだった。ぶん投げられた盥が顔面にストライク。

 

「ぶふぉふぇ?!」

 

 背中から倒れる。

 

 そこに仁王立ちしていたのは同級生にして同じ奉仕部所属の雪ノ下雪乃だった。私服姿だった。意地でも俺に素肌を晒さないという思いが透けて見える。もっともブラジャーは透けていないが。

 

 まあいい。いずれ拝むことになるのだからな。ぐへへ。

 

 俺のキモい笑みを見て、雪ノ下は心に刺さるくらい鋭い嫌悪の表情を浮かべた。

 

「なんのつもりかしら比企ヶ谷くん」

 

「比企ヶ谷さん、だろ。普通女の子に君付けはしない」

 

 倒れた状態から頭を上げて言う。

 

 当然俺の声も女のものだ。更にわざとらしくそれを強調して、

 

「わかったかしら?」

 

 としなを作って上目遣いに、長いまつ毛を瞬かせて言ってみる。

 

 雪ノ下の喉から変な音が漏れた。よほどショックらしい。

 

「……普通じゃないあなたに言われてもね。それに、わたしはあなたを女と認めたわけじゃないわ」

 

「でも平塚先生も俺は女だと言ってだろ」

 

 正直女になった俺を見たみんなの反応は壮絶なものだった。家族は発狂して寝込み、同級生は始めは信じずに冗談だと思って笑っていた。いい子ぶりやがった葉山の野郎が、事を報告した平塚に対して「先生そういうのはセクハラですよ」と手を上げたくらいには信じられていなかったのだ。

 

 やがて徐々にそれが現実だと認識され始め、物珍しさの視線は嫌悪へと変わった。同じ学年でゲイカップルだとバレて話題になった奴が現れた時も、タイで性転換したトランスジェンダーが転校してきた時も、ここまで明確な侮蔑の視線は向けられなかった。みんないい子の顔を貼り付けて「すごい!」だの「いいね!」だの上っ面だけの言葉で称賛していた。だが見知ったボッチが女になった時は唾を吐きかけられるような存在になった(そもそもボッチは存在を認識されないものだが俺はこの三年間のイベントで悪目立ちしすぎたせいで悪評ばかりが立っている。それもこれも奉仕部で行った自己犠牲という奴である)。

 

 そいつらと俺との何が違うんだと言いたい。

 

「それは……とにかく!お風呂はみんなが出てからにしなさい」

 

「ったく、女女うるせーんだよ。それにな、俺とお前が横に並んでどっちが女に見えるか道行く奴らに聞いてみろよ。百人中百人が俺の方が女だって言うぞ」

 

 俺はTシャツの上からでもわかるご自慢のFカップ爆乳を持ち上げて見せながらニヤリと笑う。実は入学当初から俺は密かにこの大口径エレファントキラーマグナムを周囲の貧弱デリンジャー共に披露する日を楽しみにしていたのだが、女となってはその夢も叶わないか……と諦めていたところにこのツァーリボンバ級2πr(おっぱいあーる)が現れた。

 

「ぐへへ。どっちがデカいか比べようじゃないか。お前も女ならさぞかしいいのもってるんだろぉなぁ。出しな、てめーの、oppaiをよ」

 

「ごふっ」

 

 雪ノ下は血を吐いて倒れた。

 

 大勝利だ。

 

 ふっ。俺の手にかかればこんなもんだな。

 

 そこで俺は雪ノ下が息をしていないことに気づいた。

 

 女特有の甲高い悲鳴をあげる。

 

 

 

 雪ノ下は、嫉妬のあまり憤死したらしかった。

 

 

 

 【続】

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