ウマ娘プリティダービー『神馬』   作:K.T.G.Y

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ウマ、イカ、ポケモン
ウマ、イカ、ポケモンって感じでぇ……
時間が幾らあっても足りない
少しだけだが書き溜めてておいて本当によかった


会食

 

『へえ、そんな事があったのね』

「はい。凄かったんですよ。会長さんにもシービーさんにもブライアンさんにも勝っちゃったんですから」

激闘の夜、スペシャルウィークは海外にいたチームメイトのサイレンススズカと電話をしていた。

 

「シンザンさんほんとーーーに凄かったです。私、尊敬しちゃいます!」

『そう。後で撮っていた動画、見させてもらうわね』

「本当に強いウマ娘って時代は関係ないんですね。同じダービーウマ娘だけど、多分私より上ですよ」

『ふうん。縁があったら、私もその人と走ってみたいわね』

「スズカさんとシンザンさんかあ。これも夢のカードですね」

『私もレース頑張らなくちゃね。例え海の向こうでも、先頭の景色は誰にも譲る気はないから』

「はい! 応援してますから!」

 

 

「はぁーーーーーー。本当にいいレースだったなあ。人を感動させるレースって、ああいうのを言うんだろうなあ」

夜だというのにスペは興奮が冷めやらなかった。

 

日本一のウマ娘を目指したあの頃、日本の総大将と呼ばれ威信をかけてモンジューと戦ったジャパンカップ。

それとも違う、独特のあの空気。真のレースは模擬レースでも関係ないという事を改めて思い知った。

 

「よーし、私も明日からけっぱるべー!」

 

「うるさいぞスペシャルウィーク! 早く寝ろ!」

寮長に怒られるのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ああーお腹空いたー」

「ご飯行こーご飯」

 

【もうそんな時間か】

 

ウマ娘たちが午前中の授業を終え、食堂に向かっていくのが見えた。

自分もちょうどお腹が空いたところだ。ウマ娘たちと共にカフェテリアに向かうのも悪くない。

 

「おや、トレーナーじゃないか」

 

背後から声をかけるウマ娘がいた。

 

【シンザンさんじゃないですか】

声の主は上機嫌のシンザンだった。

トレセン学園の制服を着用している。

 

「学園の制服を貸してもらったんだ。どうだい、似合ってるかい?」

【似合ってますよ】

「そりゃ、どうも」

 

「しかし、中央の学園は随分と大きいんだねえ。午前中いっぱい使って見物させてもらったよ」

【これでも増改築を繰り返してますから】

「練習場もさることながら、筋肉を鍛えるための機材が置いた部屋、図書室、プール、様々な設備があった」

【よく迷いませんでしたね】

「予め見取り図を見させてもらったからね」

 

「そして何よりもあの、暖かい空気や冷たい空気が流れてくる機械! エアコン……というのだっけ? あれには驚いた。

いやはやなんとも、文明の利器とは素晴らしいものだね」

【まあシンザンさんの時代には扇風機ぐらいしかありませんでしたからね】

「……あんなものがあれば菊花賞前に夏負けになることもなかっただろうねえ」

【はい?】

「あ、いやいや、こっちの話だ……」

 

【ところでシンザンさん、昼食はどうするんです?】

「あー、そういえば考えてなかったな」

【それでは学園のカフェに行きましょう。中央の食事は美味しいですよ】

「ふむ……、それじゃあご相伴に預かろうか」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

どん!

 

「……」

 

どどん!

 

「…………」

 

どどどーん!!

 

「……………………」

 

カフェでは既に多くのウマ娘達が食事をしていた。

山盛りのご飯に、名物のにんじんハンバーグ、そして食前なのに食後のデザートを頬張る者もいる。

 

【どうしました? シンザンさん】

「あ、あの……と、トレーナー……、みんなとてつもない量を食べてるけど、これは幾ら掛かるんだい?」

【ああ、それなら……】

 

「回答ッ! シンザン殿は理事長権限により特別待遇とさせていただく! VIP待遇というやつである!」

 

【と、理事長が言ってましたので、幾ら食べても無料です】

「む、無料……!? この量が無料……!? いや、確かに私のいた時代とは違って日本も豊かになったんだろうけど、いや……眩暈がしてきた」

 

「おおーいっ! トレーナーさーん! シンザンさーん! こっち来て一緒に食べよー!」

食堂の一卓にいたウイニングチケットが手をぶんぶん振って二人を呼ぶ。

【行きましょう、シンザンさん】

「あ、ああ……」

 

食卓にはチーム『シリウス』のメンバーが一同に会していた。

メジロマックイーン、ゴールドシップ、ライスシャワー、ウイニングチケット、ナリタブライアン、スペシャルウィークといった面子だ。

既にスペはにんじんハンバーグ3皿目をおかわりしている。

「もぐもぐ! がつがつがつ!」

「おいスペ、口元に食べカス付いてんぞ。たまにはゆっくり食べろよ」

「(ゆっくりは)食べません!」

「もうそのネタはマンネリだってーの」

 

「…………」

とりあえずシンザンは、ご飯と味噌汁、魚の塩焼き、沢庵とポトフを持ってきた。

「粗食ですわね」

「食べないと大きくなれないよ、シンザンさん」

「……あんたたちが大食い過ぎるんだよ」

 

「いただきます」

 

「……美味しい。やはり私のいた時代とは比較にならないね」

シンザンは感嘆した。

 

「そういえば、シンザンさんの時代ってどんな感じだったの!?」

チケゾーが問う。

「ん、そうだね……。私のいた時代は、日本がいわゆる高度経済成長期と呼ばれた時代だった」

シンザンは味噌汁を一口啜ると、ゆっくりと語り始めた。

「都会には高層ビルが立ち並び、日本中が好景気と活気に満ち溢れていた。だが貧富の差はまだまだ大きかった。

子供を高校に上げられない家庭もあったし、仕事で親の後を継ぐのも当たり前だし、大学卒業者なんて引く手数多だった」

「シンザンさんは中央トレセン学園に通っていたのですか?」

「いや、私はずっと関西の方にいた。理由は簡単で、金がなかったからだ。

当時、中央トレセン学園に通うには一定の金額が必要だったからね。上等な着物を質に入れたり田畑を売った金で進学させる親もいたが」

 

そしてシンザンは一つ話をした。

随分瘦せ細った後輩がいて、ちゃんと食べてるかと問うたら保存がききそうなものは全部タッパーに入れて実家に送っていると言うのだ。

聞けば生まれて鶏も豚も食べたことがなく、初めて口にした肉は蛙肉だと言う。

その娘をレストランに連れていき、ビフテキを奢ったら泣きながら食べたそうだ。

 

「か、蛙って……」

「あたしでもしねーぞ。精々イモリぐらいだな」

 

「……貧しさは時として人を強くする。絶対この世界で活躍してみせる、そんなハングリー精神でギラギラしていた者は多かった。

運動に長けた人間はプロ野球選手を目指す者が多かった。俗に言う、『グラウンドには銭が埋まっている』というやつだ」

 

他にも、カレーには肉が必ず入ってるからカレーが好きな娘は多かったとか、食べ物は腐りかけが熟成されてて一番美味いと平然と口にする娘とか、

お金が無くなって学校を中退して中等部なのに嫁ぐ娘もいたとか、シンザンは色々な貧乏話をした。

 

 

「辛い境遇のウマ娘は多かったのですね……」

「メジロ家のおまえには縁のない話だけどな」

「茶化さないでくださいまし」

 

「まあそんなわけで、当時中央ウマ娘の方が関西ウマ娘より強かった。だからこそ、中央に追い付け追い越せと皆いきり立っていた。

コダマ先輩もそんな中頭角を現したウマ娘だったね」

「だが、時代は中央トレセン学園一強だ。それだけ日本が豊かになり、思う存分ウマ娘を指導できる環境が整ったという事だろう」

と、ナリタブライアン。

「たまに、考えちゃうよ、ね。ライスたちが食べてる食材って、どこから捻出されてるのか、とか」

「おいライス、その先はアンタッチャブルってやつだぞ」

 

「幸せ者だよ、今の娘たちは……」

「だが、それだけでは、あの実力は説明が付かないな。どんな練習をしたんだ?」

「それは、放課後においおいと解説しながら指導していくさ……」

 

「トレーナー、時代錯誤のカビの生えた指導で良ければ、チームのウマ娘を見たいんだが、いいかな」

【勿論、こちらからお願いします】

「ありがとうよ」

 

 

「ああ、言い忘れたけど、実は中央からスカウトの依頼が来たことがある」

「ええっ!? 本当!?」

チケゾーががたんとテーブルを揺らした。

「……ダービーを勝ってしばらくしてからかな。学費免除、寮完備の条件を付けるから転入してくれってきてね。しかも三顧の礼というやつで」

「それで、どうしたんですの?」

「心が揺らいだのは事実だ。だが武田の奴が「シンザンを連れて行くのなら俺を殺してからにしろ」って喚いてね。

栗田や中尾も私を説得しようと動いた。後輩も行かないで欲しいと泣いてね。最終的には断った」

「もしかしたら、トレセン学園のOBにシンザンさんの名が載る可能性もあったんですね」

「私は悔念してないよ。あんな素晴らしい面子に恵まれたんだ。手放す方が損さ」

 

【実は、シンザンさんがターフを去った後、URAには『シンザンを超えろ』というスローガンが標榜されたと言います】

「へえ……」

 

【ですが、それは、シンザンさんだけでなく、シンザンさんを支えたスタッフも含めてという意味だったそうです】

「成程ねえ」

 

【自分も、そのようなトレーナーでありたいと思っています】

「出来るさ。あんたほど情が厚いトレーナーはそういないよ」

 

 

「さあ! 食後の後はやっぱりスイーツですわね!」

「体重増の原因パクパクですわー!」

「だから茶化さないでくださいまし! これでも節制してるんですのよ!」

 

「なんだいこれ?」

「やる気upスイーツですわ。甘くて美味しく、食べればやる気も充電完了。魔法の甘味ですわ」

「……ヒロポンかな?」

 

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

「んん~、美味しいですわ~」

「美味しいよねー!」

 

「あ、美味しい。甘いけど、サッカリンじゃないんだね」

「サッカリン?」

「私の時代にあった人工甘味料だよ。スプーン一杯でバスタブが甘くなるって言われてるんだが、体に悪いとも言われてるし、なによりくどい」

「そっか、当時は砂糖も貴重だったんですね」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ごちそうさまー」

「ふう、世は満足じゃー」

 

【それじゃ、食事休憩を終わらせたら、みんな練習場に出てもらうよ】

 

「分かりましたわ」

「私は昼寝してていいかー?」

「頑張りまーす!」

「いよいよ私を負かした三冠ウマ娘の実践指導か。高ぶるな」

「げっぷ……。ちょっと、待……」

 

【シンザンさん、練習用にジャージも貸し出しますね】

「ああ、頼むよ」

 

 

(私が何かを人に教える、か……)

 

(教える側になって初めて分かる事もあると言うが、さてさて、どうなるものかな……)




トレセン学園のカフェってもし食券で注文する形だったらみんなあんなに食べられないでしょうね
申告制なだけですっげー体重増えてるウマ娘もいるのではないでしょうか
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