こわもて・ざ・ろっく!   作:猫又侍

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猫又侍……見切り発車量産機、出ます!


#1強面ぼっちと根暗ぼっち

 俺、吉田幸樹(よしだこうき)がぼっちなのは人と話すのが苦手だとかコミュ症だからと言うわけではない……決してその可能性がないとは言い切れないが。兎に角、ごく普通の高校生活を送るごく普通の高校なのだ。

 

 今の状況だってクラスのみんながワイワイ話している教室の片隅で趣味の読書に勤しんでいる。おそらく、クラスメイトのみんなは話したいに決まっている。

 なにせ、ここ最近映画化されて話題になっている小説を読んでいるのだ。話のネタには困らないし、話しかけられてもサッと対応できる自信はある。

 

 たが、おそらく俺が読書に集中していると思い込んで誰も話しかけるタイミングがなくて話しかけてこないだけだ。だから決して、決して誰一人として俺の机の周りに集まろうとしてないないのは不思議な事ではないのだ。

 

「……はぁ。これでもダメか」

 

 大きくため息をついて文庫本を閉じる。

 これで、思いつく限りの友達を作る方法は試した。

 高校に入学して早一ヶ月、小中では作れなかった友人を作るべくありとあらゆる手段を講じた。ある時は人気バンドのCDを置いてみたり、ある時はアニメグッズを置いてみたり、ある時はアイドルのグッズを置いてみたり……結果は全て惨敗。友人を作るどころか、誰一人俺の周りに集まることはなかった。

 

 それもそのはず、俺はごく普通の高校生と自称してはいるがある一つの問題を抱えている──そう、顔が怖いのだ。

 所謂強面と言うやつで誰かに話しかけようにも、一人残らず悲鳴を上げ何処かへと立ち去ってしまう。逆に話しかけられないからと期待しながら腕を組んで机に座っていても、誰からも話しかけられる事なく逆に離れていった。

 

 わざわざ小中の俺を知らない新天地の学校へ進学したにもかかわらず、結果は小中と変わらない。もっと言えば、不良だと勘違いされることが多くなった。

 

 先生は素行の良さを知っているので問題児としてみられている事はないのだが、やはり強面のせいか積極的に話されることはない。更に、俺は他の人よりも声が低いため相手に威圧感を与えることもしばしば。

 

 自分の悪いところを知っているのなら、解決できるじゃないかと思ったそこ。そんな簡単に解決できるのなら、俺は既に友達を作っているし教室の隅っこで怯えられながら毎日を過ごしている訳ないだろ。

 

「はぁ、友達欲しい」

 

 そんな願望を呟いても、俺の願いを聞き届ける者はいない。

 

 俺は教室の中で一際ワイワイと賑やかな集団に目を向ける。その集団の真ん中では一人の赤髪の少女──喜多郁代(きたいくよ)が笑っていた。彼女が笑うと周りが笑い、悲しむと悲しむ。そんな彼女の人気が羨ましく思いながら朗らかな笑顔に俺の強面がどれだけ人に怖がられているのかを実感し打ちひしがれていた。

 

 自分の無力さに打ちひしがれるのには耐えられなくなり、席を立つとまっすぐとある場所に向かう。この学校にはたまにしか空いていないが、空き教室が存在する。しかも、そこは大抵昼休みには空いている。俺の昼休みのランチタイムの場所といえば、そこが定番だった。

 

 教室や廊下の喧騒が小さく聞こえる程度の場所にあるその教室は居心地が良く、誰に怯えられることもなく平和なランチタイムを過ごすことができる。

 

「失礼します……やっぱいたか」

「し、しししし失礼してます」

 

 空き教室に入ると、窓側にジャージにスカートと言う不思議な着こなしをしている一人の女子生徒が座っていた。その傍らには何かの楽器のケースが置かれており、この場で最も存在感を発していた。

 

「別に、俺も勝手に使ってんだしビクビクして飯食うことないだろ? 怒られる時は一緒だ」

「お……怒られるん……ですか?」

「まぁ無断で使ってるからな。でも中々先生来ないし、大丈夫だろ」

 

 そう言ってもなお隣でブツブツと独り言を言い始める彼女の名は後藤ひとり(ごとうひとり)。俺と同じく、クラスに馴染めず友人を作ることができないぼっち同盟の仲間である。ちなみに、ぼっち同盟は俺が勝手に作った同盟であり後藤がそれを知ることはない。

 

 後藤と知り合ったのは二週間前、いつも通りの時間に空き教室に来た時に先客として後藤が昼飯を食べていた。あった当時は挙動不審で目も合わせてくれないし、話を振っても「え……あ……その……」と会話のキャッチボールが壊滅的でここ最近ようやくまともに会話が出来るまでになった。

 

「そういや後藤、それどうしたんだ?」

「え? あっ……ぎ、ギターの事……ですか?」

「ああ、ギターなのねそれ」

 

 入ってきたときから気になっていた楽器のケースはギターケースらしく、なんだかカッコいいと思った。勿論、ギターを持っていると言うことは演奏ができると言うこと。

 

 ダメもとで後藤に演奏でも頼んでみようかな。

 

「なぁ後藤」

「は、はい!」

「……なぜ金を差し出してくる」

「ま、まだ……足りない……ですか?」

「いや、別にお金とかの話じゃなくだな。その……後藤のギターを聞いてみたいな……なんて思ったり」

 

 少し小っ恥ずかしくなり、頭を掻きながら窓の外を見ながらぼやく様に言う。

 

 いや、こんな頼み方では引き受けもらえないかも知れないのは分かっているがやはり女子と面と向かって話すのは慣れない。それが例え、人と目が合わせられないほどの陰キャでありぼっちだとしてもだ。

 

「む、無理ならいいんだ。ダメもとで頼んでるだけだし」

「わ、私のギター……なんかで……よ、よろしければ」

「いいのか?」

「は、はい……い、いつも教室……使わせてもらってますし」

 

 俯きながらも会話を続けてくれる後藤は今どんな顔をしているのかは分からない。もしかしたら、嫌そうな顔をしてるかもしれないし嬉しそうな顔をしてるかもしれない。

 後藤ひとりと言う人間について、俺はまだ知らないことが沢山ある。もし仮に、もっと後藤について知ることが出来るのなら……ぼっちの同士として知りたい。

 

「じゃあ、聞かせてもらうよ」

「は、はい……よ、よろしく……お願いします」

 

 あたふたしながらもギターケースからギターを取り出し、慣れた様にギターのチューニングをする後藤の姿勢はなんだか様になっていた。

 

 ある程度の準備を終えると、ゆっくりとギターを弾き始めた。人前で演奏することがないのか、それとも苦手なのかは分からないがこちらをチラチラ見ながら演奏している。

 

 でも、俺はそんな事気にする事なく後藤の弾くギターの音色に耳を傾けていた。

 

 曲は決して落ち着く音楽ではなく、むしろロックな曲だった。それでも、俺はギターを一生懸命に弾く後藤を見て音を聞いてどこか落ち着いていた。

 

 気がつくといつの間にか演奏が終わっていて、後藤は心配そうにこちらを見ていた。おそらく、自分の演奏が下手だったのか心配しているのだろう。

 

「後藤」

「は、はい……へ、下手……でしたよね」

「いや、すごく上手かったぞ」

「そ、そんな事ないですよ……うへっ、うへっへへへ」

「いやいや、そんな事あるって。まだ一回しか聞いてないけど俺、後藤のギター好きだぜ」

「うへぇ?!」

「だ、大丈夫か?!」

 

 ギターのことを褒めたのが気に障ったのか、勢いよく椅子から転げ落ちる後藤。ギターは無事だが、後藤が無事ではなさそうだ。

 

 なんだか溶け始めている……溶けてるだと?!

 

 目の前で起こる確かな現象に慌てていると、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

 

「あ、やべ」

「あっ、あの……わ、私……お、お先に戻ります!」

 

 そう言ってギターをパパッと片付けて出て行く後藤の背中を唖然として見送るとハッと我に帰り、俺も急いで教室に戻る。

 

 教室に戻る途中、トイレに寄るとトイレにいた全員に悲鳴を上げられた──解せぬ。




後藤さんの喋り方をマスターするにはまだまだ勉強が足りない……ちくせう。

完全にノリと勢いなので要望とモチベが有れば続く……かもしれない。
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