こわもて・ざ・ろっく!   作:猫又侍

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リアタイ勢ではなく配信のぼざろを視聴してるんですが諸々の事情で8話はまだ観れていないのです。神回だと聞くので楽しみにしてます。
あ、あとタイトルを「ひとりと一人」から「こわもて・ざ・ろっく!」にしてみました。(気分の問題です、何卒お許しを)


#2強面ぼっちとヤンキー店長(?)

 現在時刻は午後四時を周っているが依然として太陽は頭上に位置している。

 

 唐突ではあるが今現在、俺はとてつも無くやばい状況下に置かれて居る。

 

 どれくらいヤバいかといえば、続編を心待ちにしていた映画の続編が唐突に発表された時くらいやばい。え? どれだけヤバいか伝わらない? お金払おうとしたら財布に金が入ってなかった時っていえば伝わる。

 

 目の前には明らかな不良数名がこちらを睨みつけており、逃げ出そうにも背後には金髪ヤンキー風のおねぇさんが俺を盾にする様に立っている。

 

 いや、実際に盾にされている。

 

「えっと……この状況は?」

「見て分からないのか? 従姉が不良に絡まれてるんだ、助けるのは当然だろう?」

 

 首を傾げて「何か変なことが?」みたいな顔をしているが、俺はこんな金髪のおねぇさんと関わりを持ったことはないしそもそも知り合いにそんな人がいた記憶もない。

 

 なにか言い換えそうにも目つきが鋭く、何も言い返せない。

 

 畜生、後藤意外と日頃から喋っとくんだった。いや、そもそも誰も喋ってくれないんだっけ。

 

「おいガキ、悪いことは言わねぇ。そこのねぇちゃん引き渡しな」

「そ、そう言われましても……」

「ほら、従姉を守れ〜」

「アンタは他人事すぎるんだよ!」

 

 路地裏で面倒事が起きるなんて漫画やドラマじゃあるまいしとは思うが、今はそんな事悠長に考えている暇はない。

 

 俺は見ての通り強面ではあるが喧嘩は得意ではない。

 

 故に、この状況はとてつも無くヤバいのだ。

 

「何したんですかアンタ」

「いや、未成年喫煙はダメだろ」

「勇気は尊敬しますけどこんな事になる前にさっさと逃げて下さいよ!」

 

 ジリジリと距離を詰めてくる不良達に俺も金髪おねぇさんも少しずつ壁に追いやられていく。

 

 人通りの少ない路地裏でどうこの状況を乗り切るか、思考を巡らせていると不良達の背後。僅かに見える景色の中に、警官の姿が見えた。

 

 俺は大きく息を吸い込んで、ありったけの大声で叫ぶ。

 

「お巡りさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 今カツアゲされてまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!」

「ばっ! テメェ!」

「うるさいぞ」

「アンタはもう少し危機感持って下さいよ!」

 

 お巡りさんが俺の声に気付きこちらに向かってくる足音が聞こえる。不良達もそれに気付いたのか、直ぐそばの細い道にそそくさと消えていった。

 

 まさか下北沢でお使いを頼まれてきたらこんな事件に巻き込まれるとは、思っても見なかった。

 

「お前、怖い顔してる割に威勢がないな」

「アンタは威勢がありすぎるんですよ」

「アンタじゃない。伊地知星歌(いじちせいか)だ」

「じゃあ伊地知さん。人を外見だけで判断するのはおすすめしないですよ」

「そうか、善処しよう……強面男子」

「はぁ……幸樹です、吉田幸樹。分からないならせめて聞いてくれません?」

 

 金髪おねぇさん──伊地知さんは色々ストレートな人だ。

 ひとのコンプレックスに容赦なく豪速球投げてくる。怖いよこの人。

 

 取り敢えず駆けつけた警察に事情を話し、その場を後にする──なんかまだ後ろに居るんですが?

 

「えっと……まだ何か?」

「お礼をしようと思ってな。あと私の家こっち方面だし」

「ああ、お礼なら結構ですよ。盾にされるの慣れてるんで」

 

 主に後藤からだが。

 

「そう言われても、こっちは年上としての意地がある。大人しくついてきてもらおう」

「え? ちょっ、ぐえっ!」

 

 くっ、苦しい。この人容赦なく襟掴んで来たしなんなら引き摺る様に歩いてるから俺の首がしまって上手く呼吸ができない。このまま帰ろうとすると確実に死ぬ。

 ここは大人しく従おう。

 

「分かりました……分かりましたので……襟話して下さい」

「ようやく分かったか……何してんだ?」

「ぜぇ……伊地知さんの……ぜぇ……せいですが?」

 

 この人何が悪いのか理解してないよ絶対。だって可愛らしく首傾げちゃってるもん。

 

 あと、動作は可愛らしいのにいちいち鋭い目つきで見られるとビクビクするので辞めてもらっていいですか?

 

 抵抗も虚しく、伊地知さんの向かうがままに着いていくと地下につながる階段の様なものがある建物に着いた。階段を下り、ドアの前に着くと『STARRY』と書かれていた。

 

「えっと、ここは?」

「私がやってるライブハウス。ほら、こっち来な」

「ライブハウス……」

 

 噂に聞くパリパリ達が集う場所。

 

 俺の様な強面ぼっちが行ける様な場所では無いと諦めていたが、まさかこんな形で入る事になるとは。

 

 中に入ると、宴会場みたいに広い場所かと思っていたがそこまで広くはなかった。少し薄暗い室内、後藤が好みそうな環境だ。

 

 店内はまだ準備中と言ったところだが既にテーブルは綺麗に配置されており、あとはライブ開始を待つのみの状態の様だ。

 

「はい、お礼」

「お礼って……このコーラですか?」

「すまんな。今これ以上のお礼はできない」

「まぁそこまで高望みしてなかったんで俺はいいっすけど」

 

 プラスチックのコップに刺さったストローに口をつけコーラを喉に流し込む。

 まだ春とはいえ少しずつ暑くなり始めてきたので冷えたコーラが喉を潤し、刺激を与えてくれる。

 

 ちびちびとカウンターでコーラを飲んでいると、ふと伊地知さんが隣に座る。

 

 そういや、この人この店の店長だっけ。

 

「この後用事はあるか?」

「いえ、特には」

 

 お使いを頼まれては居るがそこまで急ぎでは無い。

 

 家も下北沢から少し距離はあるが帰るのにそこまで時間がかかる距離にある訳でも無いので、少しばかりくつろぐのも悪くは無い。

 

「そうか。なら、もう一つお礼と言ってはなんだがライブでも観ていってくれ」

「ライブですか……それって俺居て大丈夫ですかね?」

「それはどう言う──」

「ヒェッ!」

 

 伊地知さんが不思議そうな顔をしていると、背後から小さな悲鳴が聞こえる。

 

 後ろを振り向くと、高校生くらいの女子が立っていた。見るところ、うちの高校の制服では無いがこの近くの下北沢高校の生徒だろう。

 

 その顔は明らかに怯えており、その視線の先には俺が居る。

 

 俺の不安、それは俺自身。

 

 ただでさえ普通にしていても強面で人が近寄らないのに、こんな薄暗いライブハウスで俺みたいな奴がいればそれは誰でも怯えるだろう。

 

「まぁ、こういうことです」

「なるほど……」

 

 この現状を理解してくれたのか、深く考え始める伊地知さん。

 

 なんだろう、よくわからないけど嫌な予感しかしない。

 

「じゃあ客じゃなくてバイトって事にすれば不自然じゃないんじゃない?」

「お、おう……」

 

 予想の斜め上を突いてきたなこの人。

 

 しかしバイトか……そういえば、高校に入ってから親に社会経験だ〜とか言われてバイト進められてたけど結局友達作るのに必死で何もやってなかったな。

 

「まぁそれなら……ちょうどバイトしようかとも考えてたんで」

「なら好都合だな。今日からここのバイトな」

「え? 面接とかは?」

「──大丈夫だろ。あ、バイト中は店長って呼びなよ」

「えぇ……」

 

 なんだろう、不安しかない。

 

「取り敢えずそろそろライブ始まるから控え室にいる妹に声掛けてきてくれない?」

「妹? 伊地知さん……いや、店長って妹居たんですね」

 

 てっきり一人っ子の自由奔放な人かと思っていたが、お姉さん属性があるのか。年上か……いや、ないない。バイト先の店長と友人になるなんてねぇ?

 

 取り敢えず店長に指示された通り、控室に居る妹さん+バンドメンバーを呼びにいく。

 

「あ、バンド名って何なんですか?」

「結束バンドだ」

「……結束バンド? あの結束バンドですか?」

「まぁ気にするな」

 

 凄く気になるんですが……いや、今は仕事中だからシャキッとしないと──あれ? 俺ってお礼されに来たんだよね?

 

 本来の目的とは少し違くなったが今回は店長に言えばすぐに上がれるだろう。

 

 控室の前の扉に着くと、コンコンと2回ノックする。

 

「はいは〜い──ひえっ!」

「どうしたの虹夏……おぅ」

「えっと……結束バンドの皆さんですよね?」

 

 控室に入るや否や、店長似の顔にサイドールの髪型をした少女と肩の上で切り揃えられた髪に泣きぼくろがある少女が俺の顔を見るなり怯えていた。

 

 いや、泣きぼくろ少女の方は表情分からないけど。

 

「あ、貴方は……」

「俺は吉田幸樹って言います。店長さんの知り合いで今日からここでバイトすることになりました」

「あ、あ〜」

 

 全然聞いてないんだがとでも言いたいようなな顔をする店長似の少女。いや、分かるよ。だって今さっき決まったことだからね。

 

 ふと、部屋の奥のゴミ箱で何がピンクの物体が動くのが目についた。不思議に思い近づいてみると、意外な人物がゴミ箱の中でうずくまっていた。

 

「──後藤?」

「へっ?」

 

 ゴミ箱にうずくまっていたのは昼休みに昼食を共にし、華麗なギター捌きを見せたぼっち仲間──後藤ひとりその人が居た。

 

 裏切ったな後藤。




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