こわもて・ざ・ろっく!   作:猫又侍

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速攻でポリシー曲げそうになっている今日この頃、店頭に置いてあるものしか買ってなかったのでお取り寄せができる事を完全に忘れていたぜ……今回はエナドリ片手に踊り狂う回でございます。早く伊地知姉妹の過去が読みたい……それにしても江ノ島回の三人で写真撮るときのアレはずるいと思うんですよ。


#5強面ぼっちとエナジードリンク

 喜多の勧誘を失敗した次の日、昼休みになると明らかに後藤が死にそうな顔をして机に突っ伏していた。

 

 おそらく、バイトが嫌すぎてああなっているのだろう。

 今日はそっとしておこう。

 

 しかし、なぜか喜多の勧誘を失敗して以来なぜか俺はフラれた強面ぼっちとして哀れみの視線を送られる様になっていた。なぜた。

 

 それにしても、何故喜多は結束バンドの名前を出した途端に逃げていってしまったのだろう。STARRYで仕事している間に見かけた事はないが、もしかしたら俺がバイトとして入る前は常連だったりするのだろうか。

 

 そうだ、バイトといえばつい先日ついに後藤がバイトメンバーとしてSTARRYで働いていた。あの時は、感度って涙が止まらなかったが周りの人から泣いている姿すら怖いようで俺は何をしても強面の影響で全てダメになるらしい。

 

 コミュ症を拗らせた後藤がバイトを上手くこなす事が出来たのかと聞かれれば、ノーだ。

 

 カウンターでの接客は顔を出さず瞬時にドリンクを提供し、伊地知先輩に怒られていた。いやぁ、伊地知先輩は怒っている姿も可愛かった。

 

 しかもドリンクの場所を覚えるために歌にして体に覚えさせるなど、後藤にしかできない芸当をやって退けたりもしていたが伊地知先輩達と話すに連れ後藤も変わろうと決心したのか人の目を見て接客をしていた。まぁ、引き攣った笑顔で笑われてはいたが……。

 

 因みに俺は基本接客業は任されない。理由はご存知強面だから。強面って理由だけで色々というか大半が制限されていることに解せないが、俺が接客なんてした日には人一人来ない未来が見えるのがまた悲しい。

 

 初日のバイトがなんとか上手くいって気分に乗っていた後藤だったが、次の日は熱を出して寝込んだとか。後藤曰く、バイトに行きたくない余り氷風呂に浸かり全身に冷えピタを貼り扇風機の前でギターを弾いていたとか……人と話す根性はないのにそう言うところだけ根性があるのは謎だ。

 

 それはそれとして──

 

「……後藤の奴何やってんだ?」

 

 先程から後藤が教室の入り口をわずかに開け、教室の中を除いていた。教室の中と言うより、主に喜多を見ている。まさか後藤も喜多がギターを弾ける事や歌が上手い事を聞きつけてきたのか? いやしかし、結束バンドの名を出せば断られるのは明白……ここはさりげなくROINでも送っておこう。

 

 しばらく後藤が喜多を眺めていると、痺れを切らした喜多が後藤に話しかけていた。

 

「にっ、二組の後藤さんよね? 誰かに用事?」

「………」

 

 後藤は結束バンドメンバーと俺以外、外で喋る事はない。

 つまり、いつも通り明るい笑顔を向けて話しかけてくる喜多とどう話せば良いのか完全に脳の処理が追いついていない様でフリーズしていた。

 

「おい、後藤──」

「バッ!キッ!ボッ!」

「「突然のヒューマンビートボックス?!」」

 

 やばい、つい大声を出してしまったせいで注目を集めてしまった。いや、逆に後藤に視線が行かないからいいのか?

 

 とにかく、後藤に助け舟を出すべく再び後藤と喜多の方へ視線を向けると何故か喜多もビートを刻んでいた。

 

「えっと……ブッツクパーツクツカツカパーツク……」

 

 なんだ可愛いなおい。

 

 なられないヒューマンビートボックスに若干照れながらも、後藤のためにビートを返す喜多。いや、そもそも後藤のあれはビートなのか? まぁ人それぞれ個性は違うからああいうビートボックスもあるか。

 

 喜多に気を遣われたのが追い討ちとなり、さらに恥ずかしくなったのか後藤は何処へと逃げ去ってしまった。

 

 後藤の後を追いかけようとも思ったが、喜多がしばらくして教室を飛び出していったので俺が追いかけるとややこしくなると思い一人悲しく弁当を食べた。

 

 相変わらず、視線が痛い。

 

 * * * *

 

 俺は何故が結束バンドのROINグループに入れられているのだが、大抵俺が何かを言う事はなくただ三人の会話をただ眺めているだけの事だ多い。

 

 結束バンドのメンバーと言えば、当然後藤もいるわけで──

 

『すみません、EDMかけてリョウさんと虹夏ちゃんと吉田くんでエナドリ片手に踊り狂いながらバイトしてて下さい!』

 

「何だこれ」

 

 やはり後藤はメールでも後藤の様でたまに奇妙なメールが送られてくる事がある。

 

 後藤の事だ、おそらく喜多にパリピなバンドだなんて言ったりしているのだろう。

 

 財布を開いて残りの残高を確認すると、下北沢へと向かう。流石に後藤の勇気ある勧誘を無碍にするわけにもいかず、途中の薬局でエナドリを6本入り一箱を買ってSTARRYに向かう事にした。

 

 下北沢に着くと、丁度伊地知先輩と山田先輩がエナドリを購入していた。伊地知先輩は抱えきれないほどの持ち、山田先輩も一箱と一本飲む用を買っていた。

 

「お二人もエナドリですか」

「いやぁぼっちちゃんが何を言いたいのかさっぱりだけど、結構真面目そうなROlNだったし……ってあ! ぼっちちゃん!」

 

 伊地知先輩がトタトタとエナドリが落ちない様に走ってゆく先には後藤ともう一人、喜多の姿があった。後藤は何故か顔を鷲掴みにされており、喜多は伊地知先輩の声を聞くなりギギギと壊れたロボットのように後ろを振り返った。

 

 そして、伊地知先輩は喜多を見るなり驚きの表情を見せた。

 

「あ〜、逃げたギター!」

逃田義多(にげたぎたー)? 伊地知先輩、あれは喜多です。喜多郁代」

「分かってるよ?! 誰なのその逃げるのが得意そうな人」

 

 流石伊地知先輩、ツッコミがキレッキレだ。

 

 そういえば山田先輩はしっかり着いてきているのだろうか。心配になり背後を振り向くと、しっかり着いてきていた。が、喜多は山田先輩を見るなり土下座をし始めた。

 

「公衆の面前で土下座をするとは……ロックだ」

「え? あれってロックなの?」

 

 ふっ、まだロックを理解できていない様だな後藤。流血沙汰もロックとか言うロック免罪符の名の下には何事もロックなのさ! 俺も何を言っているのか自分自身でも理解していないが、とにかくロック免罪符最高!

 

 * * * *

 

「なるほど、喜多はギターが出来ないのにギターが出来ると言って結束バンドに入ったは良いもののライブ前になった途端怖くなって逃たと……」

「その通りです……」

 

 喜多が土下座をした後、なんとかSTARRYに喜多を連れ込み後藤と喜多から諸々の事情を聞いていた。

 

 それにしても、よくギターが弾けないのにバンドに入ろうと思ったな。いや、行動力がえげつないだけなのかもしれない。クラスでも話題の中心にいる様な人物だし。

 

「だから頑なに合わせの練習参加しなかったんだね」

「突然音信不通になるから心配してた」

「先輩っ!」

 

 喜多感動しているようだが正直言って山田先輩は変人だ、しかもクズ属性付きの。何を考えているか正直わからないし、なぜかこの人金欠なんだよな。伊地知先輩曰く金持ちの家らしいのに……。音楽では力強い味方の筈がそれ以外は中々信用できない、どれくらい信用出来ないかと言えばカプコン製のヘリコプター位信用出来ない。

 

 おそらく今も感動している喜多が考えている事より遥か斜め上の心配の仕方をしているだろう。

 

「死んだかと思って最近は毎日お線香あげてた」

「いや、勝手に殺さないで」

「音信不通イコール死んだは判断が早すぎですよ山田先輩」

「あの……怒らないんですか?」

「気づかなかった私達も悪いし、それに……あの日はなんとかなったしね!」

 

 申し訳なさそうに謝罪する喜多にも慈悲を与える大天使ニジカエル、やっぱ伊地知先輩しか勝たないんだよ。

 

「でっ、でも! それじゃあ私の気が治りません! 何か罪滅ぼしさせて下さい!」

「そんな事言われてもなぁ……」

「じゃあ今日一日ライブハウス手伝ってくんない? 今日一日忙しくなりそうだから」

 

 カタカタとパソコンを打ちながら喜多に提案してくる店長。たしかに、今日のスケジュールは人気のバンドがチラホラあった筈。喜多は接客が上手いだろうし俺や後藤みたいな虫ケラよりも戦力になる筈だ。

 

「いや、十分助かるよ! よろしくね!」

「わ、私でよければ……」

「なんとか治ったな後藤」

「そ、そうだね……わ、私も頑張らないと……」

 

 珍しく後藤も張り切っているようだし、喜多もライブハウスを手伝ってくれることにもなったし今日は何かと忙しくなりそうだ。

 

「じゃあこっちきて着替えて」

「着替え?」

 

 * * * *

 

「──なんでメイド服?」

「あいつ意外と使えるな」

 

 絶対この人の趣味だろ。

 

「ピギャッ!」

 

 あ、後藤が逝った。

 

「って、後藤ぉぉぉぉぉぉ!」

 

 今日のバイトは忙しくなる……そう、いろんな意味で。




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