では、どうぞ
俺は今、第35層の<迷いの森>というダンジョンに来ている。このダンジョンの特徴は一定時間ごとにマップの構造がランダムに変化することだ。つまり言うと、文字通り迷う人が数多くいるという訳だ。だが街で売っている地図を買えば容易に脱出可能だが、その地図は地味に高かった。ちなみに目的はファルコの育成だ。ビーストテイマーは自分のHPのみならず、使い魔のHPも管理しなければならないため、しっかりとしたレベリングをしないとあっさり使い魔が死んでしまうのだ。
「ファルコ、スパークショット!」
『ピピーッ!』
このように使い魔を育成していくことで新技を覚えることもあるため、これが後の戦闘で成果が十分に発揮される。まあ他のゲームで例えるならば、ポ○モンである。
「(日がくれるな、そろそろ帰った方がよさそうだな。)」
俺は空を見上げると、空はすっかり夕焼けになっていた。
「ファルコ、帰るぞ!」
『ピッ!』
俺はファルコを呼び、ファルコが肩に乗ったのを確認すると、俺は街に戻ろうと歩き出す。その瞬間マップの構造が入れ替わった。俺の視界には、3体の猿型モンスター・ドランクエイプとそれに短剣一本で突撃する少女が映った。【ドランクエイプ】はこの迷いの森の中で最強のモンスターであるが、そのモンスター最大の脅威は集団行動が多いこと。一体のHPが少なくなるともう一体がスイッチして入れ替わるのだ。その間にHPの少ない方は所持している壷の中に入っている液体を飲んでHPを回復してしまうのだ。要するに、仲間との連携が非常に多いモンスターなのだ。
俺は少女のHPをよく見ると、少女のHPが既に赤[危険域]に達していた。
「まずい!」
俺はそんな孤立無援状態の少女を助けようと一直線にダッシュする。それと同時に素早くウィンドウを操作して武器を両手剣【アポカリプス】から短剣の【ルーンブレイド】に変更した。直後にアポカリプスが背中から消え、腰に剣幅が太い短剣【ルーンブレイド】が現れた。
「うおおおおお!!」
俺はルーンブレイドを抜くと、背中を見せたドランクエイプ一体に突き刺す。
『ギャオオオ!?』
ドランクエイプAは悲鳴をあげてそのままポリゴン片になった。すると他の二体のドランクエイプが俺に気付き、すかさず襲いかかろうとする。
『ピピッ!!』
『ギャオオ!?』
『ギャッ!?』
しかしファルコの存在を全く知らなかったのか、ファルコの帯電キックを受けて麻痺状態になる。俺はその間に二体の頭にルーンブレイドを突き刺す。そして二体のドランクエイプは同時に砕け散った。
「大丈夫か?」
俺はルーンブレイドを納めると、少女に問いかける。すると少女はがくりと跪き、両手を地面について泣き始めてしまった。そして少女はこう呟いた。
「ピナ……私を…独りにしないで…。」
俺はその様子を見て、周りに敵がいないことを確認してから少女に声をかける。
「とりあえずここは危険だ。話は聞いてあげるから、一旦ここから出よう。」
俺がそう言うと、少女は泣きながら頭を縦に一回振った。そしてファルコにナビゲートしてもらい、俺と少女は迷いの森から抜け出した。
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数分後、俺は少女が落ち着いてきたのを確認して話を聞いてみた。
どうやら一年間一緒に過ごしてきた使い魔が先程のドランクエイプ3体との戦闘で死んでしまったらしい。俺も同じテイマーであるからその知識は理解しており、蘇生方法も知っているから何とかしてあげようと思うが、問題点がある。使い魔の蘇生には2つのアイテムがいる。一つは確実に手に入るが、もう一つは死んだ使い魔からドロップしないと意味がない。俺が考えてるその時、少女の手に水色の羽根があることに気がつく。
「その羽根は何?」
「ピナです…。」
俺が聞くと、少女は右手人指し指で羽根をクリックする。すると【ピナの心】というアイテム名が表示された。それを見た瞬間、少女が再び泣き出しそうな表情をするが、それと同時に俺の脳裏で気にしていた問題点が一気に解けた。俺は少女にその内容を説明する。
「待って、心アイテムがあるなら蘇生が可能だよ。」
「え?」
「47層の【思い出の丘】に使い魔を蘇生させる花があるんだ。それを心アイテムに使えば使い魔が復活するんだ。」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。」
俺の説明を聞いた少女は叫ぶと、表情が明るくなった。だがそれは一瞬だけで少女の顔はまたすぐ暗くなった。
「…47層…。」
少女は呟きながら再び肩を落とす。確かに35層と47層では明らかに敵の強さが違う。彼女にとっては現状挑むのは絶望的だろう。
「俺が行ってきてもいいけど、心アイテムを持ったテイマーじゃないと花が咲かないんだ。」
俺の話を聞いた少女は少し微笑んで言った。
「いえ…情報だけでも、とってもありがたいです。がんばってレベル上げすれば、いつかは…」
「悪いけど、蘇生期限は使い魔が死んでから3日以内なんだ。」
「そんな……!?」
少女は俺の追い討ちをかけた発言にうなだれてしまった。ちょっと厳しいことを言ってしまったな。
俺はアイテムウィンドウからトレードを選択し、複数のアイテムを入れていく。【ゾーリンシェイプ】、【シルバースプレッド・アーマー】、【フェアリーコート】など、ほとんどが70層で手に入るレアアイテムばかりである。
「あの…」
少女は戸惑いながら口を開く。俺は丁重に答える。
「この装備なら6、7レベルは底上げできるし、俺も同行するから問題はないよ。それとコルは払わなくてもいいよ。」
俺の言葉を聞くと、少女は疑問を抱きながらまた俺に質問する。
「なんで…そこまでしてくれるんですか…?」
「そこに困っている人がいるからだ。俺は困っている人を放置することができないからだよ。それに…俺も同じビーストテイマーだからな。」
俺が答えると同時に先程まで飛んでいたファルコが羽根休めのために俺の肩にとまった。少女は思わずファルコの方を見る。
「ああ、名前まだだったね。俺はクラウドだ。それとこいつは俺の使い魔のファルコだ。しばらくの間よろしくな。」
『ピッ!』
「あたし、シリカっていいます。こちらこそよろしくお願いします。」
俺とシリカはひとまず街に戻ることにした。
いかがでしたか?ちなみに本作では前線が72層になっています。
そしてプネウマの花の取得条件を少し変えました。要するに欲張りNGって意味です。
では次回もお楽しみに!