というかみんなかわいい
嫌な予感当たっちゃった
「さぁてと。何してんすか星歌さん」
「店長って呼べ」
いつものセリフを言いながら机に伏せている
「台風結局来ちゃいましたね。この様子じゃチケット買った人すら来ないんじゃないんですか?みんな客の入り見て心折れなきゃいいですけど。練習頑張ったのにかわいそうですね」
PAさんが心配そうに言う
「バンド続けてくならこんな理不尽いくらでもあるんだから。どんな状況でも乗り越えられるようにならないと」
星歌さん虹夏のこと大好きだからなぁ。そりゃあへこむよな
「ハンカチありますよ」
「あっち行ってよ...」
「大丈夫ですよ」
「何が?」
星歌さんがこっちを見る
「あいつらこんなんじゃへこまないですから」
「だといいけどね」
「友達もこれないみたいです」
「う、うちもおばあちゃんがふたりを見る予定だったんですけどこれなくなって...」
「そっか〜だよね」
「半分以下になっちゃいましたねお客さん」
「しょ、しょうがないよ!切り替えていこ!」
虹夏はこんな状況でも明るいな
でも、無理してるようにも見える
リョウは、寝てる。あいつはあとでぶちのめしとこう
ガラッ!
「わぁぁぁすごい雨!ぼっちちゃん来たよ〜」
「あ、ひろ姉。よく来たなこんな雨の中」
「まあね〜」
「なんだ湊こいつと会ってたのか?」
「はい。この前久しぶりに」
「お前ぼっちちゃん目当てできたの?」
「そうだよ〜」
「えっ?お知り合いなんですか?」
「私の大学の時の後輩」
「ねぇねぇ今日のライブ打ち上げするの〜?居酒屋決めたの〜?ねぇねぇ」
「酒くさ!また一段とめんどくさい奴になったな...」
ガラッ!
「濡れた〜。あっひとりちゃん!」
「き、来てくれたんですか?」
「もちろん!だって私たちひとりちゃんのファンだし!」
「台風吹っ飛ばすくらいカッコイイ演奏期待してますね!」
ひとりからオーラがすごい出てる
自信満ち溢れすぎだろ
「ひ、ひひひ、ファン」
「ひ、人違い?」
ガラッ!
「来たよーひとりちゃんにみんなー!」
「あ、姉ちゃん」
「お前の姉ちゃん?」
「どうも!いつも弟の湊がお世話になってます。湊の姉の鳴上雪です。一応ファッションデザイナーやってます!」
「は、はぁどうも。こちらこそ湊くんがよく働いてくれるので助かってます」
「お姉ちゃんの着てる服も雪さんが、デザインしたんだよ!」
「ま、マジか」
「今日のライブ頑張ります!」
「期待してるよ喜多ちゃん!」
ライブもはじまり結束バンドの出番になった
「もう本番直前ですけどやっぱりお客さん少ないですね」
「でも、他のバンドのファンもいるしみんな聴いてくれるよ」
「なんだかんだで始まったら聴いてくれるはず」
ねぇねぇ
1番目の結束バンドって知ってる?
知らな〜い
見とくのたるいね
「あ、あはは結成したばっかでまだ知られてないからね!落ち込まないで!」
「そ、そうですよね!」
「気にしない気にしない」
「は、はい」
「よ、よーしそろそろ出番だね!みんな頑張るぞー!」
「おー!」
「おい」
「み、湊くん?」
「ドリンクカウンターは大丈夫なんですか?」
「店長に一瞬だけ代わってもらってる」
「それで湊どうしたの?」
「マネージャーとして言わせてもらう。好きなように演奏しろ」
「へ?」
虹夏がきょとんとしている
「最初から完璧にできるバンドなんていない。気にしない、のは無理だろうが、お前たちはお前たちの演奏をしろ。おれから言いたいのはそれだけだ。じゃあな」
「なんか少し楽になった。ありがとう湊」
「さすが湊くん。マネージャーっぽい」
「ですね!」
「兄さん...」
「あ、ひとり」
「何?」
「カッコイイとこ見せてくれよ」
「う、うん!」
サウンドチェックを終えライブが始まる
「初めまして結束バンドです!本日はお足元の悪い中お越しいただきまことにありがとうございます!」
「あはは!喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎ!」
しーん
完熟マンゴー被りたい!ていうか今すぐこの場から消え去りたい!
さすがに気にしないのは無理か...
「じゃあ早速1曲目行きます!聴いてください!私たちのオリジナル曲でギターと孤独と蒼い惑星」
虹夏のカウントから曲がはじまるが、
「ねぇねぇ湊なんかズレてない?」
「あぁズレてるな」
姉ちゃんが聞く
「でも、これからだ」
虹夏のドラムもたついてるな
喜多ちゃんもミスってる
リョウは虹夏とリズムが合ってない
さぁどうする?お前ら。いや、ひとり
このバンドを救えるのはお前だけだぞ
1曲目が終わりMCに入る
「ギ、ギターと孤独と蒼い惑星でした」
「やっぱパッとしないわ」
「早く来るんじゃなかったねー」
「ちょ!」
「姉ちゃんやめろ」
「でも...」
「まあ見てろって」
「喜多ちゃん次の曲紹介しなきゃ!」
「あ、はい!次も私たちのオリジナル曲でつい先日、」
確かにまだまだかもしれない
でも、おれは言ったはずだ成長性はとびきりあるって
ひとりと目が合う
兄さん、私たち演奏も曲もまだまだだ、けど!
ひとりが激しくギター弾き始める
「そうだ。それでいい」
「?」
「姉ちゃん。こっからがあいつらの見せ場だ」
私、兄さんが引っ越した時すごく寂しかった
でも、そんな寂しさを埋めてくれたのがギターだった
たくさん練習してギターヒーローなった
そして虹夏ちゃん達と出会ってバンドを組んだ
兄さんが、兄さんが私を、ううん!結束バンドを変えてくれた!
だから!兄さんにはカッコイイ私を!見せたいんだ!
虹夏たちも察したように合わせ始める
スマホばかり見ていた客も結束バンドの演奏をちゃんと見る
「他になんも聞きたくない私のはーなつ踊りがい!」
そして曲が終わる
パチパチパチ
ちょっといいじゃん
「めっちゃカッコよかった!」
「ねぇ!」
「ひとりちゃんみんなー!良かったよー!」
姉ちゃんが隣で叫ぶ
ひとりは不安そうに虹夏の方をむく
虹夏は満面の笑みでガッツポーズをする
「2曲目あのバンドでした!じゃあ3曲目ラストです!」
無事ライブが終わり居酒屋で打ち上げをすることにした
カンパーイ!
「ライブよくやった。今日は私の奢りだから飲め!」
「お姉ちゃんありがとー。私たち飲めないけど」
居酒屋には結束バンドのメンバー、星歌さん、PAさん、ひろ姉、姉ちゃんとおれが参加していた
「先輩大好き〜」
「お前は自腹だよ!くっつくな!」
「え〜。湊くん先輩がひどいよ〜」
「くっつくなひろ姉」
「またまた〜うれしいくせに〜」
「ぶん投げるぞ」
「またまた照れちゃって〜でもひろ姉って呼んでくれるもんね〜」
「ていうかこの方誰ですか?」
「誰よりもベースを愛する天才ベーシスト廣井きくりで〜す。ベースは昨日飲み屋に忘れました。どこの飲み屋かもわかんな〜い」
「一瞬で矛盾しましたけど」
「私、よくライブ見に行ってました!」
リョウがひろ姉の隣に行く
「え?ほんとー?きみ見る目あるねー!」
観客に酒吹きかける、泥酔しながらライブをする
「私って、ロックのことまだ全然理解してないみたいです」
「喜多ちゃんひろ姉は見習わなくていい」
「ぼっちちゃんもよくがんば、って真っ白に燃え尽きてる!?」
「ぼっちちゃん灰にならないで!」
パシャ
「それって」
「イソスタです。私大臣なので」
「大臣?それってさ何が楽しいの?」
「え?楽しい気持ちのおすそ分けっていうか、友達が楽しそうだと楽しくなりませんか?」
キタ〜ン
「うっ!」
「いいぞ〜。喜多ちゃんパワーでお姉ちゃんのひねくれ体質を浄化しちゃえ!」
「ひねくれ?店長さん優しいじゃないですか」
キタ〜ン
「やめろ死ぬ...」
「確かに、イソスタは良い宣伝になりますからね〜」
「姉ちゃんプロだし」
「え?雪さんそんなにイソスタすごいの?」
星歌さんが聞く
「雪でいいですよ?私の方が年下ですから」
「そう?じゃあそう呼ぶよ」
「これ私のアカウントです!」
姉ちゃんがアカウントを見せる
「フォロワー100万!?」
「いや〜普段アメリカで活動してていつの間にかこんな人数に」
「スターリーも始めようかな。イソスタ」
「雪さんイソスタ教えてください!」
「いいよ〜」
喜多ちゃんが姉ちゃんに頼み込む
その後、ひとりが変な注文をしたりしていた
ピクピク
「ぎゃぁぁぁ!」
「いつもの発作が起きたか。喜多ちゃん、リョウ任せた」
「はい!」
「グッ!」
喜多ちゃんとリョウが紙やすりでひとりを戻す
「やば、やりすぎた」
「大丈夫ですよ。ここをこうすれば、ほら!」
「手馴れてんな」
「よいしょ」
「大丈夫だよひとりちゃん!湊がいるから!」
「に、兄さんが!?」
「はいはい湊とひとりちゃんくっついて〜」
「姉ちゃん酔ってんだろ!」
「に、兄さん大丈夫?」
「あ、あぁ」
クソ、この前の私服事件からひとりが前よりかわいく見えて仕方がない
まさからひとりにここまでやられるとは...
「だ、大丈夫だ。」
「え?何お前らできてんの?」
「違う!」
「あ、ええ、ち、違います!」
「できてるな」
「ひとりちゃんファイト」小声
「お、お姉さん...」
「そういえば郁代」
「ぐわっ!」
「今日のライブギターはじめて3ヶ月かそこらでよく頑張った」
「あ、あ、あ」
「え?郁代って誰だっけ?」
「あ、だ、誰ですかね、そんなシワシワネーム...」
「へえ喜多ちゃんの下の名前って郁代って言うんだ。そういえばずっと苗字で呼んでたっけ」
「うわぁぁぁん!ずっと隠してたのに!この名前嫌なんですよ〜!」
「なんで?かわいいじゃん」
「うん。呼びやすいし」
「店長さんみたいに星の歌とかお兄さんみたいにさわやかな素敵ネームの人にはわかんないですよ〜!」
「お、荒れてるね〜」
「だ、だってダジャレみたいでしょ!?喜多いくよーってアホかーいってあははは!」
「おいぶっ壊れたぞ」
チーん
「私のフルネームは喜多喜多です」
「ぷっ。なんか弱ってるの新鮮でおもしろい」
「お前性格悪いな」
「よっこいしょ。さっきの話だけど〜」
「え?」
「ほらーギターで食えないとニートとかぶつぶつ言ってたじゃん」
「あ、あ、取り乱してすみません」
「あ、いや謝ることないけど先輩バンドマンとして言わせてもらうけどさ、ま、気楽に楽しく活動しなよ」
「漠然と成功することだけ考えてると辛くなりますこ からね」
「そうそう。夢を叶えていくプロセスを楽しんでいくのが大事だからな」
「ていうか先輩はなんでバンドやめちゃったんですかー?」
「て、店長さんバンドしてたんですか?」
「あーそれおれも聞いたことある。聞いてもいつも教えてくれないっけ」
「うるさい。飽きたんだよバンド」
(そういえば虹夏ちゃんまだ戻ってきてない)
「あ、あの私トイレに」
「おれもトイレ」
ひとりは虹夏の元へ向かった
「みなさん楽しい方で良かったです」
「雪、どうかした?」
星歌が雪の一言に疑問を持つ
「いや〜湊のまわりにいつの間にかこんなに楽しい方々がいるのが嬉しくて。私が日本に帰ってくる前に湊と話したんです。その時あの子今度はあるバンドを手伝ってるって言ってて。それを聞いた時、やめた方がいいって言おうと思ったんですけど。楽しそうに話すあの子の姿が見れて嬉しくて...」
「そういえば湊くんはじめてのバンドをあんな理由でやめたもんね〜。実のお姉ちゃんとしては止めたくもなるか〜」
きくりと星歌の言葉に反応する
「両親も止めただろうね」
「実は、私と湊って血が繋がってないんです」
「あ、その悪い」
「いえ、大丈夫です。私が17の時に両親が亡くなって仲の良かった鳴上家に引き取られてそれから湊も私も下北沢に引っ越したんです」
「...」
「あの子1度だけ私を、本気で守ってくれたことがあるんです。私が公園で同級生にいじめられてた時にあの子自分より5歳も上の背の高い高校生に向かって、」
「姉ちゃんをいじめるな!姉ちゃんはおれが守る!」
「って言ってくれて。だから私も、湊のことを守れる存在になりたいんです」
「そっか。湊は、昔から誰かを守っていたんだな」
「へ〜。湊くんカッコイイね〜」
「あの子、今が本当に楽しそうだから喜多ちゃん、リョウちゃん。あの子のことお願いね」
「はい!任せてください!」
「湊は私の唯一の友達です」
「へっくしゅ!」
誰か噂してんのか?
「そうだね〜」
ん?外から虹夏の声?
ガラッ
「どした?2人そろって」
「兄さん」
「あ、湊くん。ううん少し涼んでただけ」
虹夏とひとりの間に立つ
「今日のライブすっげー良かった」
「最初はダメダメだったけどね」
「良いんだよ。あれで、それにひとりが変えてくれただろ?」
「あ、あれは、私自身も熱くなっちゃって気づいたらあんなことに...」
「でもひとりが、変えたんだ。それに合わせた虹夏やリョウに喜多ちゃん全員が一緒になって良いライブになった。それだけだ」
「え、えへへ、そ、それでも〜」
「よくやった」
なでなで
「うぅぅぅぷしゅ〜」
「ありゃりゃ。ぼっちちゃん真っ赤っか」
「つい癖で」
「そういえば今日の演奏見て気づいたんだけどぼっちちゃんがギターヒーローなんでしょ?」
「へっ!?い、いや、あ、あの、ち、ちが」
「あのキレのあるストローク聞いたらわかったよ〜。今更だけどギターも一緒だし」
「虹夏も気づいたか」
「へっ!?に、兄さん知ってたの?」
「まあな。背景と格好とギター見たらひとりだろ」
「うっ!な、何も言えない...そ、そうです。で、でもわざと隠してたんじゃなくて、今の私なんてまだ全然ヒーローじゃないし、この性格を治してから話したかったんです。特に、虹夏ちゃんや兄さんには...」
「私と知ってショックですか?」
「いや、むしろひとりでよかった」
「うん。私もぼっちちゃんでよかったよ」
「え?」
「あのさ、前に私ホントの夢があるって言ったよね?」
「は、はい」
虹夏の本当の夢?
「あたし小さい頃に母親が亡くなって父親はいつも家にいないし、お姉ちゃんだけが家族だったんだ。お姉ちゃんがバンドはじめてからは寂しがるあたしをライブハウスに連れてってくれるようになったの。あの頃のあたしには全部がきらきらして見えてすごく幸せな空間で、そんなあたしを見たからお姉ちゃんはバンドをやめてライブハウスをはじめて、スターリーはねお姉ちゃんがあたしのために作ってくれた場所なんだよ。お姉ちゃんは絶対そんなこと言わないけどね」
「星歌さんらしいな」
「うん。だからあたしのホントの夢はねお姉ちゃんの分まで人気のあるバンドになること。スターリーをもっと有名にすること!」
「そっか」
ひとりもまじまじと見つめる
「でも、バンドはじめてみたらあたしの夢って無謀なんじゃないかって思う時もあって。今日だって自身なくしちゃったし、でもとんでもなくヤバい状況をいつも壊してくれたのが、ぼっちちゃんだったよね?」
「あっ」
「今日のぼっちちゃん、私にはホントにヒーローに見えたよ。リョウは今度こそこのバンドで自分たちの音楽をやること。喜多ちゃんはみんなで何かすることに憧れてる。みんな大事な想いをバンドに託してるんだ。そういえばぼっちちゃんが今なんのためにバンドしてるか結局聞いてなかったよね?」
「あ、わ、私は、ギタリストとしてみんなの大切な結束バンドを最高のバンドにしたいです!」
「ひとり...」
「あ、そ、それで全員で人気バンドになって売れて学校中退...」
「いや学校は卒業しろ」
「あははなんか重いな〜。でも託された!」
「え、えへへ」
「あ〜ぼっちちゃんの演奏が動画の時みたいに発揮できたら良いんだけどな〜」
「は、あ、が、頑張ります...」
「でもあたし確信したんだ。ぼっちちゃんがいたら夢を叶えられるって。だからこれからもたくさん見せてね!ぼっちちゃんのロック。ぼっち・ざ・ろっくを!」
「は、はい!」
虹夏はそう言って中に戻った
「夢か...」
「兄さん?」
「いやなんでもない。おれはもうちょっと涼んでくから先に戻ってていいぞ」
「ううん。私もいる」
「そうか」
「ふぅ」
「また何か悩んでるの兄さん?」
「ひとりに見破られるとはな」
「い、一応兄さんのことは見てるから...」
「たまに思うんだよ」
「?」
「もし結束バンドが有名になってレーベルと契約したらおれはもういらないって」
「そ、そんなこと」
「いや、ある。ただの高校生がレーベルの現役マネージャーにかなうわけがない。そこまでお前たちがいけばおれはもうただのファンだ。その時は、頑張れよ」
「そんな...」
「もちろんそこまで結束バンドは手伝う。だからおれも夢を探さないとな」
「だ、大丈夫!」
「なにがだよ」
「も、もし私たちが有名になってメジャーデビューして、兄さんが苦労してたら、」
「?」
「わ、私が養うから!」
「...」
「はっ!わ、私何言って...に、兄さん今のは、そ、そのち、ちがくて、え、えっと」
「ぷっ!あははは!」
「わ、わらわないでぇ」
「いやひとりがおれのことそこまで考えてたことが嬉しくてな。それに仕事くらいしてるよバーカ。ひとりこそ売れてなかったらおれが養ってやるよ」
「へぇ!?と、ということは、に、兄さんと、そ、その、け、け、ぷしゅ〜」
「あっおい!ひとり!」
このあとひとりをおぶって届けたのは後の話である