あるのはこれやりたい!って気持ちだけ
狂牛病と孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病は別物として扱われることが多い。しかし本質は同じである。どちらも原因である異常プリオンが大暴れした結果脳みそに細かい穴がぽつぽつと空いてしまい、運動失調に陥りやがて死んでしまう。
孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病は人が運悪く異常プリオンを体内で作り出してしまい発症してしまう。
それに対して狂<牛>病とあることから多くの人は牛にしか感染しないと考えているかもしれないが狂牛病はネコにも感染するし人間にも感染する。
狂牛病初出国である当時のイギリスはそれはそれはすごい事になっていた。イギリス政府は狂牛病をBovine Spongiform Encephalopathyという難解な名前にして人々の眼につかないように画策したり、イギリス新聞は母国であるイギリスをもはや死の国として扱っていたり、百万人以上が死ぬことになるとイギリス医療最高責任者から直々に言い渡されたり、結局200人強くらいしか死ぬことにならなかったり色々あった。
献血ルームに赴いたことのある人ならわかるだろうが、1980年から1996年の一か月以上英国滞在歴のある人はお断りしているのはこれが原因だ。
ここまで長々と話してきたが狂牛病の原因は当時使われていた牛の肉骨粉が原因とされている。牛に牛の肉骨粉を与える事で異常プリオンが生まれてしまうのだ。つまり共食いが原因なわけだが
「君は大丈夫なのか?」
「本当に長々と話していたね」
くわあと可愛らしい欠伸をしながら少女は答える。口の周りが血で赤黒くなっているため何もかわいくない。
「それに同じ種同士の共食いはそもそもリスクが高い。別の動物から別の動物へは種の壁が働くから狂牛病のように牛は18万頭も死んだが人間は200人位に収まったのだ。もしその神父が治療困難な病を患っていたとしたら君は高確率で死ぬことになるぞ」
「よくわからないけど多分大丈夫よ」
男は不確定要素を軽んじることの危険性をお互いに嫌気がさすほど続けていたかったが少女の次の言葉で口を閉じることになる。
「だって私人間じゃないもの」
「人間ではないとは?」
「?さっき見てたでしょ。私は妖怪よ。闇を操る程度の能力を持っているわ」
そうですか。と男が答える。そうよ。と少女が返す。
「その神父は私が連れてきたものだ。そいつの肉と魂をやるからかわりに近場の街を教えてくれないだろうか」
「いやだよめんどくさい。確かに美味しいお肉だったけどもう私が唾をつけたから私のものだ。あと魂はいらない」
「ならばこれをやろう」
男は潰した教会に収められていた赤い線が走る黒光りした多面結晶体型の宝石を装飾の箱ごと取り出す。私が潰した協会、星の智慧派が崇拝しているある神格の分身を呼び出す宝石だ。
分派ではあったがこれを所持していたことから混沌に近い教会だったのやもしれん。もうその建物も教壇も信徒も全て焼き切れているのだが。
「…なあに、それ」
「暗黒の星、惑星ユゴスで創られた【輝くトラペゾヘドロン】だ」
少女は食い入るように宝石を見つめている。
やはり闇に生きる者を引き付ける力がこの暗黒の星から生まれた宝石にはあるようだ。だからといって私の手にあるこれを嗅いだり鼻に当てたり舐めようとしないでほしい。
「…しょうがないなー危険だけど人里を案内してあげるよ。今回だけだからね」
「うむ。よろしく頼む」
あまり人に渡してよいものではないが、致し方あるまい。どうせ儀式の方法を知らなければ唯の石ころだ。
もらった宝石をうっとり見ながら少女はさながら十字架に架かったイエス・キリストのように腕を左右に広げながらふよふよと空に飛び上がる。
男はそれに遅れないよう、急ぎ足で追いかけた。
イギリス政府にそうゆう意図があったかは諸説あります