「あれが人里だよ」
「ふむ…」
少女が指したのは町と言えばいいのか、村と言えばいいのかあまり発展しているとは言えない集落だった。
だが過疎地域かと言われればそのようでもないようだ。500メートルは離れているであろうこの場所からでも人が多くうごめいているのがわかる。あくまで技術発展をしていないだけのようである。まるで江戸時代の東京のようだ。
この少女が日本語を操っていることから日本だとわかるが、今の日本にこのような場所があるとは思ってもみなかった。人がいる地域は軒並み近代化が進み、緑や土の多い地域は過疎地ばかりだからだ。過疎地だからこそ緑豊かなのだが。
男の潰した教会も日本の北東にある山奥に建てられていたものだ。男は余り遠い場所に飛ばされなくて安堵していた。
「かなり人がいるな。和服の着ているばかりで化学繊維を使っている服を着ているようには見えない」
「目良すぎない?・にしか見えないんだけど」
「人間の捕食者として人間である私よりは上をいかなければいけないのではないか妖よ。しかしもうすこし町の整備が豊かな場所はないのか?ここでは交通機関等のアクセスに乏しそうなのだが」
「私が悪いの?でも幻想郷で街といったらここしかないよ」
「…幻想郷、とは?」
「やっぱりあなた外の人間なんだね。だったらあの人里にいる慧音に話を聞けばいいと思うよ。あの半妖は私みたいに人を食べないし」
男は自分の頭がうまく働かなくなっているのを感じる。まるでわけのわからない数学の問題を目の前にしているかのようだ。
男は他人のルールに否応なしに従わなければならないようなこの感覚が好ましくないと思っているし、危険だとも思っている。血のスープを飲むにしろ神を殺すにせよルールに従わなければ死んでしまう。男の経験則からして現在男はとてもまずい状況にいる。
触れてはいないが男と少女は上空から人里を覗いている。緑豊かな地の上では地平線に人里が沿ってしまい中の様子が見えなかったからだ。男は巨大な木を登り少女はまるで当然のように空を飛んでいる。まるで意味がわからない。
妖怪。幻想卿。この世界に一つしかない里。男はこの世界のなにもしらない。
「…私はもっとこの世界を知らなくてはな」
「ん?」
「いや、なんでもない。ここまでの案内感謝する」
「私にも得があったことだし別にいいよ。じゃ、さよならー」
「ああ、またどこかで会おう」
「あなた私みても怖がらなかったし、気味わるいから私はもう会いたくないけどね」
ふよふよとその金髪を揺らしながらどこ吹く風のように飛び去って行く。あの少女は私と会うことを望んでいないようだがそれはきっと叶わないだろう。
あの<輝くトラペゾヘドロン>は正真正銘神話的遺物だ。凝視をすると心に異界の光景が浮かび上がってくる曰くもついている。
神話に触れたものはいずれまた神話に引かれることになる。きっと深淵に踏み込んでしまった
男は住み着いた宿にてある噂を聞いた。
(北のお城には紅い吸血鬼が住んでいるらしいわ)
(まあ。怖いわねえ)
男はその吸血鬼を殺そうと決めた。久しぶりの本業に腕がなる思いである。