吸血鬼と言ってまず思い浮かぶのは宇宙吸血鬼だ。
彼らは宇宙の彼方からやってきた吸血種族で精神を乗っ取る。そして超がつくほど強い。
精神を乗っ取った宿主を転々とすることもできるし、極論知性のあるものだったら何でも寄生できる超人生物だ。
当然そんな生物を宿屋のおばさんが知っているはずがない。こんな最強生物が吸血鬼だとバレるわけがないのである。
そうなると次に思い浮かぶのは星の吸血鬼だ。
奴らは捕食するときのみその本当の姿を表す。普段は透明で気味の悪い笑い声を発しながら漂い血を吸われると筋肉が麻痺してしまう。がとても弱い。一般人でも袋叩きにすれば倒せてしまう。
こいつでもないだろう。普段透明であるのでそうそう気づかないし、彼らの声で気づいたとしても吸血されたとしても弱いので恐れられるものでもない。
ならばほぼ間違いなく件の吸血鬼とやらは炎の吸血鬼だ。
奴らはプラズマや気体のような見た目をしクトゥグアの下僕である。彼らの攻撃を受けると熱ショックによってダメージを受けてしまう。それが軽微ならいいが奴らは基本的に集団で行動しそんなのに巻かれたら全身の皮膚はだらだらになってしまう。
おばさんの言っていた「赤い」という特性も合っているしあの赤くギラギラと燃えている体はさぞ見やすいだろう。
問題はなぜそんな奴らがここにいるのかということである。奴らの住処はフォーマルハウト星だ。たまたま来れるような距離ではない。誰かが呼んだのか、それとも主であるクトゥグアに呼ばれたのか…
どちらにせよ奴らは殺さねばならない神話生物だ。
故に奴らにはこうするのが一番だ。
かなりの大きさを誇る奴らの根城と思わしき赤い館。
里のものによると紅魔館と呼ばれているらしいその館は遠目から見てもそう呼ばれる所以がよくわかる。
しかし今はその面影もなくなっていた。
とめどなく降り注ぐ大量の雨。というか水塊。まるで人工雨のように不自然な振り方をしているその雨は館の屋根を尽く打ち砕き内部に濁流を催しているだろう。
これを見た一般人は効果があるのかと思うだろう。だが安心してほしい炎の吸血鬼の身は炎なので水をかければ簡単に倒すことができる。対処法が分かれば誰でも倒せるのだ。
しかし彼の太陽とも形容されるクトゥグアはいないようだ。
太陽にいくら水をかけても意味のないようにクトゥグアには水は通用しない。こんな量の水では大量の水蒸気が
たくさん出るだけで一欠片をダメージを与えることはできないだろう。しかしその大量の水蒸気が出ていないのならおそらく顕現していないのだろう。いや、そもそも炎の吸血鬼というのも怪しい気が…
「湖から運んでくるのは大変だったのだがな…」
「なにが大変ですって?」
後ろから声が聞こえそちらを振り向けば青筋を立てたコウモリの羽が生えている赤い洋風な服を着ている少女が佇んでいた。着衣水泳でもしていたのかびしゃびしゃに濡れている。…薄々大体結構正体はわかっているがあえて白を切る。
「これはこれはお嬢さん。この素晴らしい景色でも見ながら祝杯を交わしませんか?」
「どこがよ!!やっぱりあんたがやったのね人間!」
キレているちみっちゃい少女の怒気をうけながしながら
その容姿を観察する。黒いコウモリのような翼。尖った牙。赤い服。青みがかった銀髪。そして宿屋のおばさんが噂していた紅い吸血鬼とやら。
やはりこの少女が吸血鬼のようだ。と男は理解したがそれと同時にある感想が頭に浮かんだ。
どこが?と。
このあとどうしよ