外で吸血鬼らしき少女煽っていると気がつけば簀巻きにされて図書館の床に倒れていた。
なにを言っているかわからないが言語化したことで少し分かるようになった。おそらく時間を止められ連れ去られたのだろう。
縄をぱぱっと解き辺りを見渡す。どうやら書庫の中でも禁書庫と言われる部類に放り込まれたらしい。それ故に結界か何か張ってあるのだろう。水浸しになっていないのはそのせいだろうか。
「あら、あなた魔法使い?」
後ろを振り返れば紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服を着用している少女と目が合う。
「どちらかといえば魔術師ですが…好奇心に身を駆られて深淵に片足入れた愚か者ですよ」
「随分と自分を卑下するのね」
「実際そうですから」
その少女は大理石で造られた丸テーブルにカップとソーサーをのせアンティークチェアに腰掛けている。
「そこら辺の書物は読んでても構わないから、レミィがくるのまでここで待っててもらえないかしら」
「おや尋問でもするのかと思っていましたが」
「大方レミィを神話の者だと勘違いしたのでしょう。探索先にいる侵略者を祓うのが探索者だからこれも仕方ないわ」
これというのは破壊された館の事を言っているのだろうか。随分と寛大な魔女だ。この人一人の人生かけても集められなさそうな大量の魔術書も彼女のものなのだろう。名のある人物かもしれないが如何せん私の知識と顔が一致しない。
「貴方のお名前は?」
「パチュリー・ノーレッジよ」
「そうですか。よろしくお願いしますパチュリーさん」
…………………
…………
…
「なんで縛られてないのよ人間!」
パチュリーと談笑していたところ突然先程の吸血鬼が現れる。
パチュリーが言っていた永遠に紅い幼き月という二つ名がある高潔な吸血鬼らしい。これが…か。
「なんのエンチャントもかかっていない唯の縄なんて簡単に解けますよ」
「現実時間で一時間はかけて縛ったのですが…それと紅茶です」
「ありがとう」
「この侵略者に紅茶なんてあげなくていいわよ咲夜!」
「レミィ。彼は私の友人よ。あまり邪険にしないでちょうだい」
「この侵略者、パチェの旧友か何かなの?」
「さっき友人になったわ」
「なんでこんなの気に入っちゃたのパチェ…」
しかし妖怪という興味深い存在がいるとは思わなかった。人の怯え恐れを糧に生きる生物…
しかしその怖さは「襲われて食べられるかも」という極めて生物的な恐怖だ。
冒涜的な気配には鋭い私だが、妖力とか、恐怖とかに疎い私には気付ける通りもない。
しかしあの人間に似ても似つかない見た目の吸血鬼が妖怪界では人間にとても似ているというのが常識らしい。
いやこの表現は適切でない。シロツメクサとカタバミのようにどちらがどちらに似ているということではなく双方同じ様な姿という事なのだろう。
私が思っている以上に妖怪というものは一般的なもののようだ。
「館直して、霧を出す準備しなおしたら一体何時になるのかしら…」
何やら哀れな雰囲気のある吸血鬼を疑問に見ると、
「近々太陽の光を遮る霧を幻想郷一面を覆わせる予定だったのよ。レミィが外ではしゃぎたいらしいから」
ジトッとした目つきでこっち見るパチュリー。なるほどそれは酷い事をしてしまったらしい。空間一面を覆い隠すとなるとかなり大変な術を組まなければいけないだろう。それを邪魔してしまったとは申し訳ないという思いが湧いてくる。
「それパチェに対してでしょ!私に謝りなさいよ!」
「私は魔術専門というわけでは無いので手伝える事は少ないが、手を貸させてくれ」
「ふふ、ありがとう」
「うわーん咲夜ーー!」
「はいはいなんですかお嬢様」
こうして予定より遅れた紅霧異変が幕を開ける
レミーこんな性格でいいのだろうか…