探索者の幻想   作:ナチュラル7l72

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すごい自然な文を書いている他作品には尊敬の念を感じる


紅魔館小噺

 

大洪水により紅魔館は図書館と地下室以外跡形もなく破壊されてしまった。

男が召喚した洪水は霧の湖から抽出したため水位の下がった湖に流れ込み結果として霧の湖は元に戻ったが木の屑やレンガがあちらこちらに散らばっているのは哀愁を感じる。

 

妖精メイドは掃除する場所が減ったことを喜び、

咲夜は調理場を失い夕飯をどうしようかと憂い、

レミリアは屋根の無い天井からの日光に嘆いた。

 

日光を天敵とする吸血鬼レミリアは図書館内で過ごすことを余儀なくされてしまったが、ここでさらに問題が発生した。

 

丘の上で高笑いをしていた実行犯を捕まえ図書館に放り込んでおいたらなんと図書館の主であるパチュリーと仲良くなってしまったのである。

 

当初は血を吸い尽くして死ぬこと許さない生ける屍に変えてやろうとしていたがパチュリーの友人となってしまったあの男にそれは許されない。

 

だがまあ実行犯の男にも霧を出す準備と紅魔館再建を手伝わせられたので早々にいつもの生活に戻ることだろうとレミリアは考えていた。

 

しかし彼女は失念していた。

あの男が手伝うということは必然的にあの男と共にいる時間が増えるということを…

 

 

 

 

「レミリアさん。そのワイン一口くれませんか。元の世界では見たことないエチケットですね」

 

「レミリアさん。もう少し読書を嗜んだほうがいいのですよ。500年生きているのにパチュリーの方が博識なのはいただけませんよ」

 

「レミリアさん。吸血生物というのは大体ストロー状の口を指して血を吸うか皮膚を噛みちぎってにじみ出た血を吸うかの2種類いますがレミリアさんにはどちらもその特徴は見られませんね。見たところ血液が固まるのを防ぐ化学物質を注入する器官も無さそうですね。本当に吸血生物なんですか。かのニーオス・コルガイを見習ってもう少し吸血鬼としての自覚を持ったほうが…」

 

 

 

 

「何なのよあいつ…バンパイアハンターよりもよっぽど鬱陶しい…」

 

「随分と疲れていますね。そんなにうるさいですか?」

 

「あんたも話してみればわかるわ美鈴」

 

「いえもう顔合わせはしましたが」

 

あの男が図書館に居座ってから数日が経過した。

妖精が紅魔館跡地に氷の城を建てにきたのを追い払ったり取材を強要する文屋を蹴り飛ばしたり忙しい日々を送っている。

 

今も紅魔館を再建しようと頑張ってくれているパチェには頭が上がらない。

その横に並んでホワイトボードになんぞ文字を連ねている男を眺めながら聞こえるように愚痴を吐く。

パチュリーとの作業中はこっちに口出ししないことをしっているからだ。

 

もしこれを休憩中にしてしまったら嬉々として絡みに来るだろう。(2敗)

 

「普通に話せる人間だと思いましたが…妖怪である私やレミリア様に物怖じせず話しかけるのはすごいですよね」

 

そういえば先程私の太極拳を褒めてくれましたよ。と美鈴は嬉しそうに言うがあの男が他人を褒めるようなことを言うとは思えない。私にはうざ絡みしかしないくせに!

妖怪によって猫を被っているとしか思えない変わりようだ。

 

しかしあの男も夜には自分の住処に帰るようで、少ないながらも安寧は訪れる。この事をいったら夜になっても帰らなくなりそうだから絶対言わないが。

 

「今日中には再生成の魔法陣が完成しそうね」

 

「そうですね。今日は半月ですし月の力を借りて起動させましょうか」

 

話を聞いていると今日の夜頃に紅魔館が再建されるようだ。愛しのベットに飛び込めるまであと少しだ。

 

「なら今日は夜までここにいるとしましょう」

 

「そう。なら咲夜に夕ご飯を一人前増やしてもらわないとね」

 

 

 

「え、今日夜までいるの」

 

思わず口にしてしまった私の声はもう止められない。空気の波は容易に彼の耳に届いてしまう。

 

彼は私の言葉に三日月を上向きにしたような口をしてにやにや笑いながら楽しそうに

 

「ええ。今日は夜まで雑談できますよ」

 

と口にした。

 

「帰れ!」

 

<><><>

 

最近紅魔館にあるお客様がいらしている。

 

そのお客様は紅魔館ではよく使われるが幻想郷では珍しい敬語を使い、人間の身でありながら忌避される魔女や妖怪、吸血鬼と淀みなく話をしている変わり者だ。

 

今日も外で妖精に饅頭を与えているのを見かけた。ここまでくれば外来人なのは一目瞭然。日本の出身の外来人は何故か人外に危機感が無いのは有名だ。

 

私も話をしてみたがなかなか面白い人だった。

 

彼は人外狩りをしているらしい。

邪教徒である人間や異形の怪物、神まで様々なものを殺しているらしい。

最も、神は殺せないことが多い。と無念そうに呟いていた。

 

私は今日ここでメイド長をやっている。ここに来る前まではお嬢様の給仕兼護衛として様々な人間や妖怪を殺してきたがそれは相手が殺しにかかってきたからだ。

 

 

 

 

なぜあなたは今も戦い続けているの?

 

戦いと言えるほど立派なものではない。探索者とは未知の物事を探索し、立ち向かうもので、極論障害となる敵は避けて通るのが常識だ。私は趣味で殺してるだけだ。

 

 

 

 

私も人間を殺して加工して紅茶やケーキにするが、趣味で人間を殺す事はしない。やっぱり変な人だと思った。

 

 

 

ある日仕事である妹様の昼ごはんをお運びしているといつもは静かであるはずの地下室から楽しそうな話し声が聞こえる。妹様の声だ。人形を散り散りにして遊んでいるのだろうか。

がががががと重い鉄扉を開き中に入ると

 

「そして私とコリアシ氏は戦闘に入ったわけだが同業コリアシ氏はその時どうしたと思う?」

 

「うーん。今までの冷静な分析と知的な性格からして、後方支援とか?」

 

「それが彼は突然自前のメガネをかなぐり捨てこぶしで殴りかかったんだ。幸いにも相手はグール(雑魚)だったからよかったが自分の拳の骨が折れても殴り続ける彼を止めるのは大変だったよ」

 

「なんでそんなおかしくなっちゃったの?」

 

「きっと神話生物にトラウマを持っていたのだろう。探索者といってもひときわ精神力が弱い者もいるからな」

 

件のあの男がいた。いや、なぜここにいるのだろうか。鍵を二重三重にかけ扉もひときわ頑丈にしてあるはずなのだが。

 

「あの程度の鍵なんてちょいっと触ればすぐですよ」

 

「ねえねえ!そのあとどうなったの?」

 

「まあ、我々探索者が死ぬ原因の9割は神話生物なわけだから、そういうことですよ」

 

「へー。意外と弱いんだね」

 

「所詮ただの人間ですから」

 

この人間、あんなにパチュリー様に止められていたのになぜ普通に入っているのか。罪悪感をもう少し感じてほしい。パチュリー様のあきれた顔がありありと浮かんでくる。

 

「パチュリー様にここに入ることを禁じられていたはずでは?」

 

「禁じられていても面白そうなところに入ってしまうのが探索者だ」

 

理由が幼稚すぎる。里の子供よりひどい言い訳だ。

 

……………

………

 

「ということがありましたね」

 

「あの男…そのうちフランに殺されないかしら」

 

「あんなにダメっていったのに…」

 

「妹様も気に入っているようですし、期待するだけ無駄かと」

 

「なんであんな男を気に入っちゃたのフラン…?」

 

お嬢様の眼が変な男に騙されていないか心配する姉ようなものになっている。パチュリー様は予想通り呆れたような顔していた。

 

紅魔館は無事修復され元の姿を取り戻していた。やっと野外調理という利器に頼れない方法で料理をすることを

やめられるので咲夜はあらゆる調理器具を使い豪華な料理を作る事を楽しんでいた。

 

血のスープにベイクドチーズケーキ、ダージリン、ママリガ、プレッツェルをテーブルに並べパチュリーとレミリアは夕食をしたためていた。

 

「八雲紫も文句を言ってきてるし、さっさと霧を出して異変を起こしましょ。あの男の手伝いもいらなくなるし」

 

「それもそのうち彼にバレそうですが…」

 

「そうなったら巻き込んで博麗の巫女に処理させればいいのよ。強いらしいじゃない。幻想郷の人間にしては」

 

そういって唇についた血をぺろりと舐める。当たり前だが作った料理には全て人間の血が使われている。咲夜にはその味は理解できないが美味しそうに食べているレミリアを見ていると嬉しくなってくる。

 

最近では威厳も何もなくなっていたレミリアだが、今は吸血鬼のカリスマと恐ろしさのようなものを兼ね備えた雰囲気を漂わせている。

並の人間では脚を震わせ口をがたつかせ尻もちをつき己が何者だったかも忘れたまるで赤子のように泣きわめくだろう。

 

それ程の権力と力とカリスマがなければ八雲紫から取引をされることもなかっただろう。

 

『異変を起こす気はないかしら』

その言葉を聞いたレミリアは驚きを隠せずにいた。八雲紫は権力の集中を許さない調律者ではなかったのか。

 

話には続きがあった。弾幕ごっこという決闘方法を普及させたいのだという。

 

「人間でも神様と同等の強さを発揮できる」

 

吸血鬼異変以降契約により桎梏を余儀なくされたレミリアは端的いってとても暇だった。それこそ死にそうなくらいに。

 

そんなときに合法的に異変を起こしてもいいと言われたのだ。二つ返事で了承するのは自明の理というもの。

 

「なにはともあれ、早く異変を起こしましょう。パチェ、どこまで進んでいるの?」

 

「明日には起動できると思う」

 

「じゃあ明日、この幻想郷を我が紅霧で覆ってやるわ」

 

傲慢と慢心がレミリアの影を覆う。しかしそれをなし得る圧倒的力を持つのもまた事実だ。

パチュリーは久しぶりに親友が歓喜に満ちているのに頬を緩ませ咲夜は主人の威厳にかしこまりながらも忠誠を再確認する。

 

「そしてあの男に目に物見せてやる…!」

 

「…」「…」

そして雰囲気が弛緩してしまうのもまたしようのないことだった。




疲れた…土日きて…
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