ぼざろ世界で転生者がトラウマと向き合うまで   作:ハルカゼ

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ストーリー進行に伴い、あらすじが変わりました


後藤さんの生態に詳しい?畔博士

 ――6限の途中で意識を失って、気がついたら放課後だった件

 誰もいない空っぽの席を見て、僕は嫌な予感をひしひしと感じていた…。

 

 

 

 いや、一応気にはなっていたのだ。バンドミーティングって今日じゃなかったっけ…? なんて思ったりもした。

 でも眠いし、だるいし……放課後に後藤さんを捕まえれば大丈夫だろう……なんて思った結果が、これである。

 

 ロインを見直してみるが、何の連絡もきていない…。

 後藤さんを追いかけるのは…………なしだな。呼ばれてないのにおしかけるとか、一歩間違えればストーカー呼ばわりされそうだし…。

 

 そもそも結束バンドのミーティングが、今日じゃない可能性もある。アニメではライブ翌日とはっきりしているが、漫画の方では単に”明日”とあるだけ。

 明日、学校で後藤さんに確認しよう。まだ希望はあるはず……

 

 

 

 次の日。

 教室についた僕は、後藤さんが登校するのを待っていた。

 

 (よし、後藤さんがきたぞ。すぐに話を――)

 

 後藤さんと話をするため席を立つが……珍しく後藤さんの方からこっちに来る。動きが速い、リアルで見たことのない俊敏さを感じる…。

 出鼻をくじかれた僕に向かって、開口一番、後藤さんが言葉を発した。

 

 「ああああのっ畔くん! バイトを休むうまい口実とか知りませんか!?」

 「えっ……」

 「もしくは働かないでお金を稼ぐ方法とか、お、教えて下さい!」

 

 言い終えるとそのまま土下座してきた。うわぁ、人生初のリアル土下座をみてしまった…。

 周りから嫌な視線を感じる…。でもそんなことより、話の内容が問題だ。これは明らかに、ミーティング回が終わっているとしか思えない。やっぱりやらかしてしまったか…。

 

 どうか……どうか……などとつぶやく後藤さんのそばに、座り込む。

 ノロノロと後藤さんが顔をあげ、縋るような眼差しを向けてくるけど……ごめん、それには応えられない。

 

 「後藤さん」

 「はっはい」

 「そんな都合のいいものはないよ」

 「あっうっあっ……」

 

 後藤さんは希望を失い、死んでしまった。これ床に放置するわけにもいかないよね…。

 仕方ないので後藤さんを席に戻し(まだうわ言をつぶやいていた)僕も自分の席に座る。希望を絶たれたのは僕も同じなんだよね……これからどうしよう?

 

 

 時は流れ、授業中。

 スマホの画面を見ながらため息をついた…。ミーティングに呼ばれなかったのは、後藤さんとのセット扱いをされていないということだろうか?

 あくまでミーティングの主体は後藤さんなので、後藤さんのフォロー役として必要とされなければ、僕が呼ばれないのは当然だろう。やっぱりアピール失敗していたか……

 

 よくよく考えてみれば、伊地知さんとも仲良くなれたのか怪しいものだ。

 ロインのトーク履歴は1画面におさまる程度。その程度のやりとりしかしていない。

 なんで仲良くなれた気になってたんだろう…? 関係者枠でいいって言ってくれた時の、伊地知さんの笑顔にやられていたのかな…。

 

 

 これからどうするか悩んでいたら、スマホが震え、通知が表示された。通知の内容は……伊地知さんからのメッセージ!?

 あわててロインを見ると――

 

 《ちょっとぼっちちゃんについて色々聞きたいんだけど、良かったら会えないかな?》

 《今日の放課後とか空いてる?》

 

 まだ希望は残っていた!

 急いで伊地知さんにメッセージを送る。さっきまでの鬱々とした気分が一気に晴れたような気がする。早く放課後にならないかな……

 

 

 

 残りの授業を上の空ですごし、迎えた放課後。

 僕は、STARRYの扉の前にたどり着いた。

 

 ちなみにロインで《一人できてね》と言われたので、後藤さんは一緒ではない。

 というか、伊地知さんに呼ばれた話を後藤さんにしたら「あっ……ぺちょ」って言って動かなくなってしまったので、来られるはずもない。

 ぺちょっていったら、アイデンティティが崩壊する音だけれど…。喜多さんの出番はまだなのに、どうしてあんな音がしたのだろう? それとも似たような音のバリエーションでもあるのだろうか。

 

 後藤さんの生態について考えながら中に入ると、伊地知さんとリョウさんが待っていた。

 チケット販売前ということもあって、人の数はまばらだ…。あ、星歌さんもいるな。この前は結局会わなかったから、ちょっと得した気分になる。

 

 「あ、こっちこっち。来てくれてありがとう!」

 「こんにちは。伊地知さん、山田さん」

 「ん」

 

 伊地知さんは明るく、山田さんは気だるげに迎えてくれた。

 後藤さんについての話ということだけれど……こちらとしては、STARRYでのバイトに繋げていきたい。そういう方向性の話ならいいな。

 用意されていた飲み物を一口飲むと、伊地知さんが話し始めた。

 

 「話って言うのは、ぼっちちゃんの学校での様子とか聞きたくてね」

 「学校ですか?」

 「うん。その……ぼっちちゃん、あまり学校の様子とか話しにくそうだったから……」

 

 ああ、まあそうですよね…。

 ガコバナは即行で終了したはずだし、本人には聞きづらいだろう。今まで話したことがあるのは……後藤さんがぼっちしてることくらいかな。

 他に話すこと……ほぼほぼ暗いネタしかないんだけど。悪口みたいになりそうで嫌だな…。

 

 「授業はまじめに聞いてます。ノートもきれいにとってるみたいです」

 「お、意外と優等生タイプなんだ!」

 「そうですね…。ただ、授業で名前を呼ばれると固まっちゃいます……」

 「そっかー。まあ想像できるかなぁ」

 「あと……お昼はいつもどこかに消えます。教室では食べづらいそうで……」

 「そ、そういう子いるよねー。うん……」

 「さすがぼっち」

 

 伊地知さんの笑顔がどんどんひきつっていく。無理に笑うより、ツッコミいれてくれた方がこっちも気が楽なんだけれど…。

 ちなみにこの前、学校では中間テストがあって、早いものはもう返ってきてるのだが……後藤さんの回答用紙は悲惨なことになっていた。成績は悪いけど授業はまじめに聞いているってのは、優等生というのだろうか…?

 

 流れを切るためか、今度は伊地知さんの方から質問してきた。

 

 「畔くんとはよく話してるんだよね。どんなことを話すの?」

 「うーん…。ネタはその時によって色々なんですけど、9割方、僕が話すのに後藤さんが相づちなりをしている感じです」

 「まあぼっちちゃん無口だからねー」

 「内心が面白いタイプだと思う」

 

 9割方というか、後藤さんから話しかけてきたのは、今朝の土下座シーンの1回だけだ。記念すべき最初のネタがあれかあ…。やっぱり後藤さんって残念すぎる。

 

 ちなみに話の途中で、いつの間にか後藤さんがフリーズしていて会話終了ってのがお決まりのパターンとなっている。そういう時は気長に待つしかないんだけれど……休み時間もそんなに長くないので、待っている間に次の授業が始まっちゃうんだよね。

 おかげで交流がなかなか進まない。放課後は友達付き合いとかあってこっちも忙しいし、後藤さんに構ってばかりもいられない。ファミレスに誘って話をしてみた時もあるけど、会話が盛り上がらないのは変わりなかった。2人きりだと間が持たない…。

 

 今度、勉強会にでも誘ってみようかな…? あのテストにはさすがに同情したし、口実としても不自然じゃないだろう。後藤さんがフリーズしている間は、自分の勉強をしていればいいんだし。

 勉強会プランを頭の中で組み立てていると、伊地知さんが待望のネタを放り込んできた。

 

 「ところで、この前ぼっちちゃんとお話して、ここでバイトすることに決まったんだけど」

 「…! そうなんですね。大丈夫そうですか?」

 「うーん…。正直不安かなあ…。この前はバイトの話しただけで気絶しちゃってたし……」

 「あれは傑作だった」

 

 後藤さん気絶したんだ…。原作より重症じゃん。

 きっと豚の貯金箱を差し出されるシーンなんかもあったんだろうな…。あれ中身どれくらい入ってるんだろう? ぜひともミーティングに同席して、調査したかった。

 ところでバイトの話が出たってことは、そういうことですよね? 希望を持ってもいいですか?

 

 「あたしたちもフォローはするけど、畔くんも様子見て、支えてくれるとありがたいなって……」

 「……はい、分かりました」

 「え、私もするの?」

 「リョウ、あたしに全部押しつけるつもり?」

 

 伊地知さんが山田さんにジト目を向ける。

 この流れ、僕をバイトに誘ってくれるわけではなさそうだなぁ…。希望ちゃんは儚かった。

 バイトを誘われない場合のプランはどうしたものか。こうして呼ばれているから、そんなに関係悪くはないはずなんだけれど…。

 

 

 「ちなみに畔くんって、バイトしたりしてるの?」

 「いえしてません! でも興味はあります!」

 「そ、そう……」

 

 やばっ。ちょっと食い気味に反応してしまった。伊地知さんちょっと引いてるわ。

 でもこの流れはそういうことだよね!? バイト誘ってくれバイト誘ってくれ誘ってくれ……

 

 「良かったら、畔くんも一緒にここでバイトしない?」

 「します! よろしくお願いします!」

 「仕事内容も聞かずに即決した!? ぼっちちゃんのフォローだけじゃなくて、色々お願いすると思うんだけど……」

 「任せてください。頑張ります!」

 

 テンション高めな僕の様子に、伊地知さんがちょっと戸惑っている……でも、やっとゴールが見えてきたところなんだし、仕方ないよね。

 結束バンドとの交流も順調だし、バイトに採用されればもう安泰だろう。後藤さんとの関係はちょっと気になるけど、交流する機会も増えるしなんとかなるはず。

 

 

 ――なんて浮かれていた僕に、浮かない表情の山田さんが水をさしてきた。

 

 

 「ねぇ虹夏」

 「うん? どうしたのリョウ?」

 「バイトの話、店長にはしたの?」

 「まだしてないけど大丈夫! ぼっちちゃんのこともすぐOKしてくれたし」

 

 「ね、お姉ちゃん」と、伊地知さんが星歌さんに呼びかける。

 ……この流れ、この会話、なんか見た覚えがあるんだけど。い、嫌な予感が――

 

 

 「あ? 雇う気ないけど」

 「えっ?」

 

 

 あぴゃあ……

 




2組の土田さん(ひぃっ…。両隣からブツブツ声と負のオーラが…。誰か助けてぇ…!)
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