ぼざろ世界で転生者がトラウマと向き合うまで   作:ハルカゼ

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休みとれないし残業多いしで執筆が進まない…。


移り変わる空模様

 

 一通り挨拶をすませ、促されるのを待って、席につく。

 

 目の前には星歌さん。書類とパソコンがテーブルに置かれている。

 今日はSTARRYでの面接日。バイトの面接なんて初めてだし、緊張するんだけど…。

 

 「今日はよろしくね! 畔くん」

 

 ……なんで虹夏さんは星歌さんの隣にいるんだろう?

 

 

 

 

 

 僕の疑問の視線を理解したのか、虹夏さんは笑って答えた。

 

 「ちょっと気になっちゃって。店長に無理言って同席させてもらったんだ。邪魔するつもりはないから」

 「どうする? 気になるならあっち行かせるけど」

 「……いえ、大丈夫です」

 

 ホールの片隅で、星歌さん・虹夏さんと向き合う。

 虹夏さんが同席したがる理由はよく分からないけれど、虹夏さんがいることはプラスに働きそうだし、この方が緩い雰囲気で進みそうだからありがたい。

 星歌さんは妹に甘いし、あっさり採用が決まるパターンかもしれないな。うん、やっぱり先に『結束バンド』と交流を深めるのはいい作戦だった。

 

 妹に邪魔しないよう釘を刺すと、星歌さんがあらためて僕を見る。

 面接が始まった――

 

 

 

 

 

 ――面接が始まって数分。

 予想通りというべきか、大した内容は聞かれない。

 

 志望動機は「結束バンドを手伝いたい」「文化祭実行委員として機材やライブ準備に関心がある」といった内容を履歴書に書いておいたし、ギターについても話のネタとして活用できた。

 指の皮の硬さもアピールできた。毎日30分は弦に触れるようにしていたから、それなりのものにはなっているはずだ。腕前の方は最近全然成長しないし、そのうち喜多さんに抜かされそうな気がするけれど…。まあそれは別にいい。

 

 少し緩めの雰囲気の中、いつも通りの表情の星歌さんが口を開く。

 

 「ま、あらかた虹夏たちから聞いていた通りか」

 

 星歌さんは一言つぶやくと、目を閉じて考え事を始めた……

 もう質問は終わりだろうか。この感じなら合格できそうかな? 虹夏さんも最初は硬めの笑顔だったのが、今はだいぶリラックスしているようだし……ちょっと気を緩めても大丈夫そうだ。

 

 

 「お前、好きなバンドってあんの?」

 

 しばらくして目を開けた星歌さんから追加の質問がくるも、内容はもう雑談に近い。

 結束バンドと答えると、星歌さんは呆れたような顔で「そういうのじゃなくて、よくCD聴いてるとか、ライブ見に行くとか」と補足してきた。そういうことなら、

 

 「SIDEROSや、ケモノリアとかは好きです」

 「SIDEROSか。ちょっと意外なところではあるが……」

 

 僕の答えに目を細めた星歌さんは、続けて何個も質問を飛ばしてきた。ライブに行ったことがあるか、好きな曲は、どんなところが好きか……

 原作知識を参考に答えられるところは答えてみたけど、曲名とかはど忘れとかで誤魔化すしかなかった…。結構深堀りしてくるけど、これって面接の一貫かな? だとしたら結構ヤバい…?

 

 虹夏さんがちょっと不安そうな様子を見せる中、質問を終えた星歌さんが、また目を閉じた。

 次の言葉は何だろう? 合格、不合格、結果は後日……それともまだ質問が続くのか? ドキドキしながら待ち続け、やがて星歌さんが発した言葉は――

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 「なるほどね…。だいたい分かった」

 

 面接が終わりそうな気配に、あたしは背筋を伸ばした。後半ちょっと良くなかったし、落ちたらフォローしてあげないと。

 そして、お姉ちゃんの次の言葉は――

 

 「虹夏、次のライブはいつするつもりなの?」

 「えっ?」

 

 なぜかあたしの方に鉾先を向けてきた。

 バイトの面接は? って気になるけど、お姉ちゃんの顔は真剣で、聞き返せる雰囲気じゃない…。えっと、ノルマ代とか曲の制作時間とか考えると……

 

 「そろそろノルマ代たまるし、8月にしようかな」

 「ふーん…。一応確認だけど、ただでライブさせる気はないからな」

 「ん? チケット代なら払うって……」

 

 あたしの反応が気に入らなかったのか、お姉ちゃんの目が険しくなる。

 戸惑うあたしに対して、お姉ちゃんはこう突きつけてきた。

 

 

 お金がたまっても、実力が伴わなければライブに出すつもりはない。

 7月末にオーディションをするから、それまで練習しておけ。

 

 

 ……せっかく喜多ちゃんも再加入して、これからだーって時に水を差されちゃった。ついお姉ちゃんをにらんでしまうけど、当然のことだし何も言えない…。

 むくれるあたしの視線を全く意に返さずに、お姉ちゃんは畔くんに「7月末は予定空けときな」なんて言ってる。

 これってオーディションライブ見にきていいって意味だよね。バイトの話はどこにいったの?

 

 「ねえお姉ちゃん、結局バイトについてはどうなの?」

 「ああ、それね…」

 

 あたしの言葉に対して、お姉ちゃんは珍しく言いよどむ。

 畔くんも居ずまいを正しているけど、この態度からすると…。

 

 

 

 「ギターの練習はよくやってるみたいだけど、その先がぼんやりしてる。バンド組んでライブしたいってわけでもなさそうだし」

 「機材などへの興味にしたって、この前好きにしてていいって言った時、目で追っていたのは虹夏たちの方。目の前に私がいるのに、何も聞こうとしなかったよね」

 「好きなバンドの話も含めて、あまり真剣に向き合っているようには見えない。ライブもろくに見たことないなら、ライブハウスにこだわる必要はないだろ」

 

 ――想像以上のフルボッコだった。

 

 

 お姉ちゃんの駄目出しの嵐に、畔くんは黙って俯くしかなくて…。畔くんの気持ちを思うと、ちょっといたたまれなくなってしまう。

 つい視線をそらしてしまうと、いつの間にかホールにいたリョウと目があった。リョウは何も言わず、足早に歩きだす……あいつ雰囲気を察して逃げたな。

 

 「接客のバイトなら他にいくらでもあるし、虹夏たちを手助けしたいだけなら、ここでバイトする必要はない…。話はこれで終わり」

 「……今日はありがとうございました。失礼します」

 

 リョウが消えるのと同時に、お姉ちゃんの話は終わった。

 話が終わった瞬間、畔くんは足早に出て行ってしまう。あたしは畔くんを呼び止めようとして――――なんて言えばいいのか分からなくて、声をかけられなかった。

 

 

 

 畔くんが出ていったあと、あたしはふらふらと椅子に座りこんだ。

 考えるのは、さっきお姉ちゃんが言ったことについて。

 

 (あたし……畔くんのこと、何も分かってなかった)

 

 畔くんとぼっちちゃんの関係も、なんでギターを練習しているのかも、結束バンドのことをどう思っているのかも…。 お姉ちゃんの指摘したことだって、気づける余地はいくらでもあったはずなのに、全然考えもしなかった。

 初ライブの日からあたしたち(結束バンド)のことを色々助けてくれて、そのうち仲良くなれた気がしてたけど……そもそも畔くんはどうしてそうしてくれたんだろう? 友達の所属するバンドだから応援している、本当にそれだけなんだろうか?

 

 ……あと気になるのが、ぼっちちゃんとの関係だ。

 まだ短い付き合いだけど、やっぱりあの2人の距離感はおかしい。ぼっちちゃんが内向的ってだけじゃなくて、畔くんからぼっちちゃんへの接し方にも妙な違和感があるような…?

 

 

 畔くんに対して様々な疑問が湧きあがってきて……あたしはそれを、いったん追い出した。

 パンッと頬をたたいて、気持ちを切り替えようとする。気になるところは多いけど、お姉ちゃんがオーディションに呼ぶなら、悪い人ってことはないはず。まだ1ヶ月足らずの関係なんだし、これから向き合っていけばいい。

 

 それよりも、あたしには結束バンドのリーダーとして、やらなきゃいけないことがある。オーディションという目標に向けて、みんなを引っ張っていかないと。

 今もスタジオ部屋で練習をしているぼっちちゃんと喜多ちゃんに、変な顔を見せるわけにはいかないよね。手鏡で顔を確認して……うん、大丈夫。いつものあたしだ。

 

 心配そうに見てくるお姉ちゃんに対してニヤリと笑って、3人が待つスタジオ部屋に向かう。

 オーディションの件、みんなに伝えるのはいつ頃にしようかな? リョウはともかく、ぼっちちゃんと喜多ちゃんにプレッシャーは与えたくない。今日だって喜多ちゃんの息抜きをしようと思ってたんだし、もうちょっと時期をみて…。

 

 

 

 

 

 意気込んで訪れたスタジオ部屋で。

 

 高速で首振りをする2人を撮影して楽しむリョウに、雷を落としちゃったんだけど……あたしは悪くないと思う。

 




指の皮が硬くなる現象について

(個人差はあれど)ある程度の練習量を、継続的に行うことで指の皮は硬くなっていきます。逆に練習をしていないと指に刺激がいかず、皮は元に戻るそうです。
つまり喜多ちゃんの指の皮が硬かったのは、喜多ちゃんが逃げ出す前も、逃げた後もギターの練習をしていたことの証。
だからこそ好意的に見られたわけですね。
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