ぼざろ世界で転生者がトラウマと向き合うまで   作:ハルカゼ

17 / 22
土曜日はとっても忙しかったです。
昼間は新宿で(ぼざろグッズの)お買い物、夕方からはたくさんの人(顔をみたこともない)と一緒にアニメの鑑賞会を…。


思い出の詰まった1枚を

 

 バイトの面接から数日後。

 

 あれからSTARRYには行っていない。

 喜多さんや後藤さんとギターの練習をするのも、スタジオまでは同行せず、学校にいる間だけにしている。ギターの練習そのものはまだ続けているけれど……そろそろ潮時かもしれない。

 

 

 (ギターもまた、これまでの趣味と同じ……か)

 

 今まで色々な趣味を試してみたけれど、結末はいつも同じ。何カ月もしないうちに飽きて、やめてしまう。モチベーションが続かない。

 星歌さんに言われた通りだ。僕はギターを弾いた先に、何かをする未来を想像できない。星歌さんはダメな大人扱いされることもあるけれど、後藤さんの実力を見抜いていたように、鋭い観察眼を持っているのだろう。僕が用意した建前なんて、簡単に壊されてしまった。

 

 学校で2人と一緒に練習しているのと、ぼざろの曲を再現したいという目標があるから、まだギターは続けていられる…。でもいつまでこの思いは持つのだろう? 腕前は一向に上がらず、かといってたくさん練習する気にもならない。これは、もう…。

 

 

 心に暗い予感が広がるのを感じながら、ベッドから這い出る。掛け布団がまとわりついて鬱陶しかった。

 部屋の片隅にある収納ボックスの中には、僕が今までやってきて……もうやめてしまった趣味の品がたくさんしまわれている。

 僕はその中からカメラを取り出し、明日持っていく鞄に入れた。

 

 

 

 

 

 次の日。

 虹夏さんから呼ばれた僕は、下北沢の駅前にいた。

 

 今日やることは他でもない、結束バンドのアー写撮影だ。本当はその前にバンドミーティングがあったはずだけれど、呼ばれなかった…。まあバンドメンバーじゃないから、参加できなかったのはしょうがない。

 アー写撮影会だって呼ばれるかどうか微妙なところだと思うけれど……これは虹夏さんの気づかいと思った方がいいのかな。面接以来よくロインを送ってくれていたし、今日会った時も僕の顔色を気にしていたし。

 

 虹夏さんの真意はどうあれ、せっかくお呼ばれしたんだ。楽しんでいこう。

 カメラ係に徹すればそう違和感のない立ち位置でいられると思うし、写真を撮るのはわりと好きな方だ。趣味としては撮りたいものがなくなって辞めてしまったけれど、結束バンドのみんなが被写体ならまだ楽しめるかもしれない。

 

 

 さて、アー写撮影会での見どころといえば……

 まずは土下座する後藤さん、各スポットでの撮影、バグり散らかす下北沢のツチノコあたりかな。

 パンツだけは絶対に撮らないようにしよう。そんなことが起きればどんな目で見られるか…。特に喜多さんには、あの噂まで知られているのだし。

 

 もう後藤さん以外は集まったから、第一の見どころまではあと少しかな。

 この後の撮影の準備をしていると、虹夏さんが話しかけてきた。

 

 「あれ? 畔くんカメラ持ってきてくれたの?」

 「はい。せっかくなので」

 「結構良さそうなやつ。良く買えたね」

 

 高そうなものセンサーを搭載しているのか? カメラの値段を察したリョウさんの言葉には、笑ってごまかしておいた。

 このカメラは自分のお小遣いで買ったものではない。撮影の趣味はそこそこ長持ちしていたから、それを見た親が奮発してくれたんだ。それなのに、僕は結局無駄にしてしまって……

 

 (いや、ネガティブになっちゃ駄目だ。今日のイベントは明るい系、明るい雰囲気でいかないと)

 

 ブンブン頭を振って、弱気な心を追い出していく。

 おかしいな。前は場の雰囲気にあわせて行動したり、ポジティブに考えることが自然にできていたのに…。なぜか思考がネガティブな方向に寄っていってしまう。店長さんの言葉で、心が弱っているのかな…?

 

 

 ――自分のことで精一杯だった僕は、虹夏さんの心配そうな眼差しにも気づかないでいた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 「階段、フェンス、植物の前……あとは公園に、良さげな壁。定番どころはこんなところだね」

 「良さそうな場所があったら、どんどん撮っていきましょうね!」

 

 ぼっちちゃんも合流し(誠意の証として土下座されるハプニングはあったけど)、無事にアー写撮影の旅が始まった。

 明るい喜多ちゃんと一緒にみんなを先導しながら、あたしはちょっと別のことも考えていた。それは、

 

 

 (やっぱり畔くんって、あたしが思っていたようなタイプじゃないな)

 

 畔くんについて。この前お姉ちゃんの話を聞いてから色々考えて、今日も様子を見ていたんだけど……畔くんの性格は、あたしの思っていたのとはちょっと違う気がする。

 社交的で周りの人を引っ張っていくタイプなのかと思っていたけど、よく思い返せば一歩引いた場所にいることが多かったし、内向的な性格をしている。カツアゲ疑惑から強引にこられた時の印象に引きずられていて、性格を正しく掴めてなかったのかな…?

 

 今日の歩き方なんか、結構分かりやすい。喜多ちゃんはあたしの隣にいるのに対して、畔くんがいるのはぼっちちゃんと同じ、最後尾。

 今までは頑張って明るく振舞っていただけで、本当はぼっちちゃんと似た性格なのかも。さっきも暗いオーラを放ち始めたと思ったら、突然首を振り始めるし…。

 

 

 奇行が多くて、あまり言葉にはしてくれないけど、態度から分かりやすいぼっちちゃん。

 一見普通で、コミュニケーションもとれるけど、何を考えているのか分からない畔くん。

 

 対照的な2人なのに、なぜか似ているように思ってしまう。

 畔くんの内心は、どうすれば分かるようになるのかな? 以前食事に誘っておしゃべりした時なんかも、思えば自分のことはあまり話してくれなかったし…。あたしの方は色々話したけど、畔くんの休日の様子とか、ギターの話以外何も聞けなかった……

 いやあれはリョウのせいか? 突然めんどくさいスイッチ入りおって…。

 

 

 ちょっとため息をつきそうになってしまい、慌ててそれを押し殺した。

 危ない危ない。悩んでいるのが表にでないようにしないと…。喜多ちゃんに心配させちゃいそうだし、写真にでちゃったら台無しだもんね。

 よし、切り替えていこう――――撮影スポットを見つけた喜多ちゃんに駆け寄って、あたしはみんなを呼び集めた。

 

 

 

 

 

 それから、リョウが途中で古着を見始めたり――良さげな壁を見つけたぼっちちゃんが、ふらふらと離れていきそうなのを呼び止めたり――イソスタの話になったらぼっちちゃんが壊れたり――なぜか畔くんがジャンプの指導を始めたり――とまあ、色々あったけれど。

 アー写撮影もいよいよ大詰め。構想も固まって、最後の1枚を撮ろうとしていた。

 

 「それじゃ行きますよ。3、2、1…!」

 

 パシャリ、と音が響くのに合わせて、みんなで手を繋いでジャンプする。

 撮れた写真を見せてもらうと……うん、いい写真だ! ぼっちちゃんの顔は暗めだけど、それも含めてみんなの個性が出てるし、明るい青春の雰囲気が伝わってくる。

 

 みんなもこの写真で良さそうなので、この写真をアー写にするということで決定した。畔くんもリフレッシュできたみたいだし、いい1日になったな~。

 今日撮った写真のデータをあたしのスマホに送ってもらって……あ、もう1つやりたいことが。

 

 

 「ねえ、畔くんもあたしたちと一緒に写真撮ろうよ!」

 「……え? いいんですか?」

 「うん! 喜多ちゃん、自撮り棒持ってない?」

 

 せっかく1日カメラマンしてもらったのに、畔くんが入った写真は1枚も撮ってないからね。

 喜多ちゃんに自撮り棒を持ってないか聞いてみると、やっぱり持っていた。イソスタの投稿頻度からして、喜多ちゃんなら絶対持ち歩いてるだろうなと思ったよ。

 自撮り棒を借りて、写真を撮ろうとすると――

 

 

 「あれ、リョウは?」

 「いつの間にかいなくなってますね……」

 「えー……」

 

 リョウがいなくなっていた。あいつ、本当に自由だな。

 今からロインで呼び戻したら……面倒ぐさがってこないだろうな。既読無視か、通知に気づかなかったと嘘をつかれるのが関の山か。

 呆れてため息をついても、状況は変わらない。せっかく5人一緒の写真を撮ろうと思ったのに…。

 

 「どうせなら5人一緒の時に撮りたいし、また今度にしよっか」

 「うーん…。そうですね、またにしましょう」

 「……分かりました。じゃあ今日はもう終わりですかね?」

 

 また5人揃う機会もあるだろうし、今度でいいか――なんて考えて。

 あたしたち4人は、それぞれ別々に帰路についた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 リョウさんに新曲の歌詞を見てもらってから、数日後のお昼休み。

 

 私と畔くんは、学校の小部屋でギターを弾いていた。

 この部屋は教室から離れていて、周りは理科室とかだから、授業中以外はあまり人が寄りつかない。お昼休みとか、スタジオ部屋が使えない日なんかは、ここで練習をすることにしていた。(先生に話を通すのは喜多さんがやってくれた)

 

 今日のお昼は喜多さんが来られないらしく、私と畔くんの2人だけ。

 喜多さんがいるとにぎやかな練習になるけれど、畔くんしかいない時は、黙々とギターを鳴らすだけの時間が続く。たまに少し話をすることもあるけど、基本的には家にいるのと変わらない。

 

 (クラスで仲良くしてくれる子からは、狭い部屋で一緒なんて大丈夫? なんて言われるけど)

 

 最近は畔くんと一緒にいて苦痛に感じることもないから、2人だけでいてもあまり問題はない。前はすごく苦手なタイプだったけれど、虹夏ちゃんたちとバンドを組んで、私の世界が広がっていくにつれて……苦手意識はなくなっていった。

 そう答えたら、なぜか男の人の危険性みたいな話をされたんだけど…。私みたいな芋娘がそういう対象として見られるはずもないし、気にしすぎじゃないかな。

 

 それに畔くんが私に向けてる感情は、恋愛とか、浮ついた感じのものじゃない。私が虹夏ちゃんたちに感じているような、ちょっと温かい気持ちになれるものでもない。

 畔くんの弾くギターの音や、たまに見れるようになった目の奥から伝わってくる感情は……私のよく知っているものだ。なんでそんな感情を私に向けてくるのかは、ぜんぜん分からないけれど…。

 

 

 ――少し前から気づいていて、気になっていた疑問。

 普段の私なら、それを口にしたりはしなかっただろう。そんなことを訊くなんておかしいし、思い過ごしかなんかだと考えて、終わりにしていたはずだった。

 でも最近夜もあまり寝てなかったからか……頭のねじが緩んでいたのかもしれない。

 

 絶対に口に出すはずがない、出すべきではないことを。

 私はつい、訊いてしまった。

 

 

 「あの……畔くんは、どうして私に――――」

 




12話でエンディングが流れましたね。
でも1話や2話でもエンディングが流れたわけですし、あれは別に最終回ということではないはず…。
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