『甘ぇよ』
妙な空気や小さなトラブルがあったものの、始業式はつつがなく終了した。
秀華高校では始業式の後、午前中いっぱいホームルームの時間が設けられている。教科書の配布、部活や委員会についての説明、クラス内の交流などを行うためである。
そして現在、クラス内交流の一環として自己紹介が行われているのだが…。一保は話をろくに聞かず、考え事にふけっていた。
(さっきの後藤さんちょっとかわいそうだったな…。あの恰好じゃ仕方ないけど)
考え事の内容は後藤ひとり――始業式前に小さなトラブルを起こした女子生徒――についてだった。
トラブルといっても大した内容ではなく、先生から服装を注意されただけのことだが……後藤ひとりは一気に青ざめて「えっ、あっ、はい…すみません…。」と鳴き声をあげてしまっていた。(かろうじて作画崩壊はしていなかった)
せっかく用意した
まあ入学早々、始業式を控える中でタスキやら面白メガネなどを装着していれば目をつけられるのは当然だろう。本人としてはふざけているわけではなく、必死に考えて準備した結果なのだろうが…。
そんな一幕の後、後藤ひとりはどんよりと暗い雰囲気をただよわせはじめ、周囲にいる生徒もそのオーラにより元気をなくしていた。
まだ何事か言いたげだった先生もその様子は予想外だったようで、気まずそうに生徒を体育館に(※始業式は体育館で行われる)誘導していた。
(やっぱり声をかけるべきだったかな…。でもあの空気はきつい。重苦しいっていうか鬱って言葉が実体化したような感じが…)
一保としては今後のことも考え、励ましの言葉なりかけようかと思ったのだが……残念ながら空気の重さに耐えきれなかった。他のクラスメイトも誰一人話しかけなかった(からかいの言葉すらなかった)あたり、ぼっち気質ここに極まれりといったところである。
クラスメイトの中にきたーん! とした陽の者がいれば話は違ったかもしれないが、残念ながらこのクラスにはいなかった。もっともそんな陽キャに話しかけられたら後藤さんが消滅していた気もするが。
<学校の七不思議~始業式の間に消える生徒>なんていうIFの話はさておき、
後藤さんは今どんな様子だろう…? と考え、2つ隣の席を見てみると、なんだか様子がおかしい。
どんよりとした空気こそもう霧散しているが、今度はやたらとポケットの中や鞄の中を確認している。なんか腕が6本に見えるけど目の錯覚だよね……
(何かを探している? 何を探しているのかは分からないけど大丈夫かな。そろそろ後藤さんの番だけど……)
アニメとは違って心の声が聞こえたりはしないので、はたから見ていても何を考えているのか分かりづらい。転生特典で読心能力とかもらえていたらよかったのだが、念じてもそれっぽい力は感じられないし。
逆に念を送る方はどうか…? と試してみるが、そちらもさっぱり手応えがない。
あ、後藤さんの動きが止まった。見つかったって感じじゃないからあきらめたっぽいか…?
ちょうど前の人の自己紹介も終わりそうだし、どんな自己紹介になるか楽しみ――
「あっ、後藤ひとりです。えっと、その…。とっ得意なこととか…うっ。いっ、いじょうです…。」
――みじかっ!? え、それで終わりでいいの?
先生も朝のことがあったからか気まずそうに「あー、うん。次は前の席にいって佐藤」って流してるし、まばらに聞こえる拍手も明らかに義理っぽくてすごく気まずい…。
でも高2の時の自己紹介とかもっと張り切っていたのに、高1ではこれだけっていうのはちょっとおかしいような気もする。
そういえば高2の時(原作)はカンペ見ながら自己紹介してたんだっけ。さっき探していたのはそれかな? カンペがないのに気がついてパニクった結果がさっきの自己紹介なのかもしれない。
せっかく自分の過去を知らないところにって片道2時間かかる高校に進学したのに、初手で黒歴史つくっていたら意味ないじゃん…。
再びどんよりとした空気を放ち始めた生き物から目をそらし、違うことを考えることにする。
自己紹介を聞いてもいいんだけど、知ってる人も多いしあまり興味がわかないな。今後、結束バンドや原作にどう関わっていくかを考えてみようか。
「ぼっち・ざ・ろっく」で主人公の後藤ひとりが所属するバンド――結束バンド――は、下北沢のライブハウスSTARRYを拠点に活動していくことになる。秀華高からはそんなに遠くないので通うのに不自由はないが、学内でクラスメイトAをやっているだけだと接点がほぼないに等しい。
原作シーンは楽屋で行われることも多いし、バンドミーティングなんかも部外者や一介のファンだと参加は難しいだろう。そうなるとバンドメンバー入りするなり、関係者枠なりに入らないといけないのだけど……
(音楽とか学校以外でやったことがないし、そもそも女性4人のバンドに男性1人参加ってハードル高すぎる。)
というわけでバンドメンバー入り路線はなし。あとは関係者枠だけど、具体的にどうすればなれるのか――
①STARRYでバイトして結束バンドのメンバーやスタッフさんと仲良くなる
②結束バンドの誰かと親しい関係になり、その縁からバンド内に潜り込む
③ファン0号もとい古参ファンとなり、準レギュラー的なポジションを獲得する。
――だいたいこんなところかな。1つずつ考えてみよう。
①STARRYでバイトして結束バンドのメンバーやスタッフさんと仲良くなる
方向性としては悪くない感じもするけど、いかんせん音楽系のスキル皆無なのがきついなぁ…。専門的な話とか全然ついていけなさそうだし、なんでこいつライブハウスでバイトしてるの? って感じになりかねない。
そもそもSTARRYってバイト募集しているのかな。なんか身内の紹介でしかしていないイメージがあるんだけど…。望み薄だけど一応保留。
②結束バンドの誰かと親しい関係になり、その縁からバンド内に潜り込む
普通の友達じゃ楽屋とかまで入れてもらえないよね。
いや、音楽趣味仲間とかなら入れるかも? どうして記憶が戻る前の自分は音楽やってなかったのかな。こうなるってわかっていれば楽器練習とか原作キャラに会いにいったりとかしてたのに…。
過去に戻れたり……もしないか。原作知識以外に転生者っぽい能力が全然ないんだけど神様どうなっているんですか? ってそういえば神様に会った記憶とかないや。
転生チートについてはさておき、普通の友達以上の関係……親友か恋人?
恋人なんてそうそうなれやしないし、喜多さんや虹夏ちゃん――先輩だし伊地知さんの方がいいか――相手ならともかく、山田先輩や後藤さんとはあまり付き合いたいと思わない。
ビジュアルがよくても性格面が……ね。
親友を目指すにしても、学校が違う2人は接点をもつのも難しい。
後藤さんは会話が続く気がしないのもあるし、下手に交流してイベントフラグが折れるとやばい。例えば1話で公園に行かなくなるとか、ギターを学校に持ってくることがなくなるとか…。
喜多さんは学校も同じだし、友達が多いコミュ強だから仲良くなれそうに見えるけど、彼女は彼女で難敵に思える。
中学校が一緒だったから交流関係とかも知っているのだけれど、女子はともかく男子とあまり親しげにしている様子はなかったんだよね。あまり話をしないってわけじゃないんだけど、一定ラインより内側に踏み込ませない感じというか、距離を測るのがうまいというか…。
つんけんしているわけじゃないのに、恋愛する気はないのが伝わってくる感じ。バンドメンバー紹介してくれるほど親しくなるのは難しそう。
結論としては全員ムリってことで終了ですかね。女の子に生まれて喜多さんの親友になりたかった……
③ファン0号もとい古参ファンのポジションを獲得する。
古参ファンになることは難しくなさそう。後藤さんや喜多さんからチケット買ってライブにいき、そのままファンになればいい。うまくいけばファン1号さん2号さんみたいな感じの準レギュラーになれるかも。
ただ結束バンドのまともなライブってアニメ8話までお預け(※オーディションは部外者入れない)だし、序盤のシーンに関われないのはちょっと残念。
さらにいえばファンになったとしても、楽屋に入れてもらえるような気安い関係になれるかは別の話。それができるコミュ力があるなら誰かと親しい関係になれるような気が……
あれ? 選択肢全部ダメじゃない?
おまけパート(RTA小説風)
さあ始まりましたぼざろRTAロッキンジャポン優勝チャート。今回はキャラメイク回です。
このゲームではキャラ生成時、カスタムとランダムの2モードから選べます。ランダムは魔境ですが、上振れすればカスタムよりいいキャラができるので狙ってイキます。
記念すべき1人目は――お、秀華高の1年生。理想は下高2年か先輩ポジですがこれも悪くないです。まずは経歴チェック。前回の動画で言ったように、このゲームはぼっちちゃん高校入学時にスタートし、それまでの経歴はランダム生成されます。時には既に原作キャラと付き合っていたり、前科持ちとかSTARRY出禁やらロックな経歴がつくことがあります。(2敗)
さて今回は…? うーん全然ぱっとしませんね。モブくんかな。ちょっと期待薄ですがステータスも見てみましょう。音楽7とかあればどこいってもエースに…3とか恥ずかしくないの? 容赦なくリセです。ばいばい、モブ。(声:山田)
さて次は……おっと5歳児ですね。5歳児プレイも面白いのですが今回はリセです。3人目――