でもぼっちちゃんなら絶対初日でやらかすって信じてる。
……なんか選択肢が全部つぶれたような気がしたけど、もう一度よく考えてみることにしよう。
学校の違う2人や、クラスが違う上に色々と事情を抱えている(ギターの腕前とか)喜多さんはともかく、後藤さんなら仲良くなるのは不可能じゃない。むしろ今まで友達いなかったんだし、ちょっと交流するだけで仲良し認定されそう。
イベントフラグ踏めずに原作崩壊の懸念はあるけれど、結構先の知識まであるんだし、しっかりとサポートしていけばなんとかなると思う。
後藤さんが結束バンドに誘われるまでおよそ1か月。その間に交流を深め、公園で伊地知さんが後藤さんをSTARRYに連れていく時、一緒についていく。
あとは後藤さんのと他のメンバーの間をとりもつ間柄として存在感を示しつつ、バンド関係者みたいなポジションを獲得する。
……うん、いいんじゃないかな。
第一話での公園フラグを折らないようにするためには何が必要だろうか?
まず後藤さんがバンド女子アピールとしてギターを持ってこないといけない。これは文化祭ライブ、あるいはバンドを組みたい欲求がもとになっているから、バンド未結成の状態であれば確実に持ってくると思う。
あとは放課後に後藤さんを公園に行かせつつ、僕がついていくには……
学校ではギターを持ってきたことにふれない、もしくは軽く流すのがいいかな。それでアピール失敗した後藤さんが公園に行くところを尾行し、公園で話しかける。
しばらく話していれば伊地知さんが見つけてくれるだろうし、そうなれば結束バンド結成は約束されたようなもの。
よし完璧……と自画自賛する。忘れないようにノートにメモしておこう。
公園とかでどう話しかけるかについてはまた考えるとして、次に後藤さんとどう仲良くなるかだけど……
ちらり、と視界の端で後藤さんの席を見る。
後藤さんの席は2つ隣だ。広い教室の中では近い方だけれど、もうちょっと近ければと思わざるをえない。隣同士なら仲良くなる口実にもなるし、授業中とかに気軽に話しかけられたんだけど…。
転生モノならこういうのって隣同士になるもんじゃないの? まあ後藤さんはカ行、僕は
話しかけるきっかけはどうしようかな?
後藤さんは自己紹介で趣味とか全然話していなかったから、共通の話題が見えてこない。やっぱり始業式の時に話しかけるべきだった。あの時なら「怒られて大変だったね」とか「服、恰好よかったよ(嘘)」とかなんとか言えたのに…。
(まあ1回や2回話したところでどうにもならないだろうし、後悔しても仕方ないか。継続して話せる話題とかないかな……と、)
――考え事をしていたところに、自己紹介の順番が来てしまった。
まあ適当に済ませておけばいいかな。友達は中学校から上がってきた面々で十分だし、今更何かアピールしたいこともないし……
僕の自己紹介は終わったけれど、クラス全員終わるまではまだ時間がかかりそうだ。
えっと、さっき考えていたのは……後藤さんに話しかけるネタについてだっけ。ちょっと思いつかないから保留にしよう。
次に考えるのはSTARRYでのバイトについて。
やっぱりお友達採用のイメージが強いし、音楽素人がいきなり行って採用されるのは難しそうな感じ――逆に言えば結束バンドのメンバーと友達になった後でなら、わりと簡単に働けるんじゃないだろうか。
つまるところ逆転の発想だ。結束バンドのメンバーと知り合い、仲良くなるためにバイトを始めるのではなく、ある程度仲良くなってからバイトを紹介してもらい、一緒に働く中でさらに仲良くなる(あるいは原作シーンを拝む)作戦である。
(あとはバイトをする、あるいは続ける名目をどうするか……)
金銭的な事情でバイトを探していて、何か紹介してほしい…と頼んでみるのも一つの手だけれど、ちょっと格好悪いし、何かもう一押しほしい気がする。
バンドメンバーならライブ代の名目で働けるんだけど……あ、
ライブ代というワードをきっかけに、一気に色々解決する秘策を思いついた。
継続して働く理由になり、後藤さんに話しかけるネタにもなる。結束バンドの他のメンバーとのコミュニケーションにも役立つと一石三鳥の秘策、それは――
(ギター始めよう! 楽器やっていれば話の種になるし、後藤さんに教わるようにすれば交流もしやすい。「my new gear…」回を見るに楽器趣味ってお金がかかるし、バイトをしたい理由にもなる!)
なんで思いつかなかったのか。「ぼっち・ざ・ろっく」は音楽系作品なんだし、音楽をすることが攻略の糸口になるのは当然じゃないか。
お小遣いは十分たまっているから、あまり高いギターを選ばなければ予算上も問題なし。店員さんに聞けばベースを間違って買ったりはしないだろうし、早めに買いに行こう。
ギターの腕前は……バンドするわけじゃないから上手くならなくてもいいんだけど、できれば喜多さんみたいに指の皮が硬くなるまで練習したいかな。なんとなく弾けると恰好よさそうだし、面白かったら続けてみよう。
一つ問題なのは、後藤さんがギターを弾けることを僕は"知らない"ということだ。
もちろん原作知識で知っているけど、原作知識は秘密にしておきたいからうっかり話さないように気をつけていかないと…。
なるべく早めに聞き出せるといいな。直球で聞くのはまずいから、音楽趣味をそれとなくアピールして後藤さんに興味をもってもら……あ、
そこまで考えたところで、僕は自分の失敗に気が付いた。
そう、音楽趣味アピールをするのに絶好の機会がついさっきあったことに。
(自己紹介の時間終わっちゃったじゃん! さっき言っておけばよかった……)
頭を抱えたくなるが、周りから変な目で見られそうなので自重しておく。
自己紹介は適当でいいや……なんて軽く流したけどとんだ失敗だった。
まあ席は近くだし、友達と雑談していれば耳に入るかな、と自分を慰める。次の機会は逃さないように頑張ろう。
周りの様子に注意を向けると、そろそろ自己紹介も終わりが近いようだ。他に考えておきたいことがないか、ノートを見ながら考える。
……完璧な計画だと思っていたけど、後藤さんと仲良くなれるかがちょっと不安かな。
始業式・自己紹介と2度もチャンスを逃しているし、ギター以外に話しかけるネタも思いついていない。このままだと1か月で仲良くなれるかは微妙かも。
あまり干渉しすぎて第一話フラグが折れないようにはしたいけれど、STARRYについていくことすらできないってのも困る。
そんなに仲良くなくてもSTARRYについていける口実はないかな……と灰色の脳細胞を働かせて考えた結果、僕はある委員会に立候補することを決めた。
その委員会とは――
ホームルームの時間も終わり、生徒たちがそれぞれ帰路についていた。
速攻で帰宅する者、近くの席の人とおしゃべりする者、周りの様子をうかがいつつ荷物をまとめる者、以前からの友達同士で集まる者…。
色々な生徒がいる中、こんな会話をしているグループがあった。
「いっちー、何かあったん?」
「え? 何かって?」
「いや委員会のこと。中学の時は保健委員だったじゃん」
「そうそう、いっちーが文化祭実行委員に立候補した時びっくりしたよ。居眠りしそうだったのに目、覚めちゃった」
「あー、高校生になったし何か新しいことを始めてみようかと思ってさ。文化祭の時期以外は忙しくなさそうだし……」
——そんな会話を聞きながら、とある桃色の髪をした少女は、誰とも話さず、目を合わせることもなく教室を出ていった。
これから始まる高校生活に、全く希望を持てないままに。
書き溜めはここまでなので、次の更新からは間があきます。
一応プロットもどきはあるのでぼちぼち書いていこうかな…。アニメ5話部分までは続ける予定。