ぼざろ世界で転生者がトラウマと向き合うまで   作:ハルカゼ

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始めの方、主人公視点で書いたらくっそつまらなかった
でもぼっちちゃん視点にしてみたらいい感じになった。つまりぼっちちゃんは神


ぼっちが安住の地を得た日

 「ついた! この下だよ~」と言いながら、虹夏ちゃんが階段を下りていく。

 ずっと握られていた手が離されるのを感じ、安心と不安が一挙に押し寄せてきた。

 

 (手を離したのって、階段だし危ないからだよね? でも気持ち悪いって思われていたら…。さっき変な発言をして空気を凍らせちゃったし、ずっと手を握られていたから変な汗が出てるし。

 やっぱり頼む相手間違えたって思ってるのかな。畔くんも一緒だし、あっちの方が良かったって思ってるかも……)

 

 あ、でも数段下りたところで虹夏ちゃんが振り返って、私のことを呼んでくれた。

 階段の下の方は魔境にしか見えないけど……虹夏ちゃんと一緒なら入れると思う。

 

 

 階段を下りると、左の壁にライブの告知やフライヤーが貼ってあった。これが生のライブハウス…!

 虹夏ちゃんに続いてドアをくぐると、そこには居心地の良い空間が広がっていた。

 

 (暗い……圧迫感……私の部屋(押し入れ)と同じ……)

 

 あ、また虹夏ちゃんが手を握ってくれた。よかった、気持ち悪いって思われたわけじゃなかった。

 繋いだ手から伝わる体温が、くすぐったくて、落ち着かなくて……でも心地よい。

 「落ち着く……」と声を漏らすと、虹夏ちゃんから不思議そうな目で見られてしまった。危ない危ない、また変な発言をして、虹夏ちゃんを困らせないようにしないと……

 

 (みんな根暗そう…。バンドって怖そうなイメージあるけど、所詮は影の女、陰キャの集まり……あ、でも虹夏ちゃんは違うか。明るくてかわいいし、優しいし、学校の人気者って感じ……でも大半は私の同類だよね)

 

 虹夏ちゃんが色々説明してくれるのを聞きながらそんなことを考えていると、スタッフさんの1人が挨拶してきた。

 ピアスゴリゴリ、服装もオシャレで、ダウナーな感じだけどイケイケな大人の女性……私の同類だなんてとんでもない。うぅ……

 

 

~~~~~

 

 

 後藤さんが「い、イキってすみません……」なんて言いながら、伊地知さんの背中に隠れてしまった。

 伊地知さんが「急にどうしたの!? だいじょうぶ?」と驚きながら、後藤さんを落ち着かせようとしている。

 僕は原作知識があるから状況がわかるけど、そうでないと意味不明だよね。

 

 (でもなんか、後藤さんと伊地知さんの距離が原作より近い気がする…。庇護欲がわいてるのかな?)

 

 仲良くなれているのは結構だけど、頼むからこっちのことも忘れないでくれ…。

 いや忘れられていた方がいいのか? そのままフラ~っと背後霊のようについていけば楽屋に潜入……いや無理だな。だって2人だけならともかく――

 

 「やっときた」

 

 ――もう1人いるわけだし。

 

 

 山田リョウ。結束バンドのベース担当。

 性格はマイペースなクズ、唯我独尊の極み。後輩に金をたかり、金がなければその辺の草を食み、嘘や仮病はお手のもの。

 音楽に関しては真摯で実力もあるが、友達にはなりたくないタイプだ。顔がいいので、学校では人気があるようだけれど……

 

 伊地知さんが、後藤さんや僕のことを(忘れられてなかった)紹介するのを聞きながら、そんなことを考えていたが……なんか山田さんに見られている気がする。

 いや、無表情だし分かりにくいけどなんか観察されているような……気のせいだよね? ここで見るべきは後藤さんの方だろうし。

 

 後藤さんはすっかり伊地知さんの背中に居ついたようで、体半分くらいを出しながら「ご、後藤ひとりです。よろしくお願いします……」と名乗っている。

 初手謝罪するんじゃなかったっけ? そんなにそこ安心するのか…。

 山田さんは伊地知さんに変人呼ばわりされて、嬉しそうな反応をしていた。

 

 「店長が時間まで練習しとけって。あと虹夏が勝手にライブハウス抜け出したこと、怒りながら買い出しに行った」

 「ひぃ、嘘!? 帰ってくる前にスタジオに行こう!」

 

 あ、ついにこの時がきたか。

 よし、このまま着いていって――

 

 「あ、畔くんはその辺でゆっくりしてて。そのうち他のお客さんもくるから」

 

 ――いけないか。やっぱり。

 

 

 

 流れとしては予想していた。

 

 そもそも原作では、自分の友達をスタジオに入れたりはしていないのだ。(描かれていないだけかもしれないが)

 後藤さんの友達――下手をすると友達ではない――も入れることはないだろう。もし後藤さんが僕にべったりとかなら、入れてくれるかもしれないが……後藤さんはどう見ても、伊地知さんの方に懐いている。

 

 (公園でのファーストコミュニケーション失敗が痛すぎる。後藤さんの好感度も思ったより稼げていなかったし、伊地知さんが手を繋いだままだから、交流をアピールすることもできなかった……)

 

 本来想定していた流れとしては、後藤さん+僕のペアを作った状態で、伊地知さんに着いていくつもりだった。会話や後藤さんの奇行のフォローをすることで”後藤さんのお世話係”として印象付ける狙いである。

 しかし、実際には伊地知さん+後藤さんでペアができてしまい、僕はおまけのような立ち位置になってしまった。これでは狙い通りになるはずがない。

 

 (状況は悪いけど……手札がないわけでもない。伊地知さんの疑念も、後藤さんの奇行を見て少し薄れているはず)

 

 ここは正面から頼み込む!

 今日何度目か、意を決して――僕は口を開いた。

 

 

 

 「あの、すみません」

 「うん? どうしたの?」

 「いえその、僕もスタジオに入れてもらえないでしょうか?」

 「ええっ!?」

 

 伊地知さんが大声を上げたため、周りの視線が集中する。

 「あ、すみません」と伊地知さんが頭を下げたあと、申し訳なさそうな表情でこちらを見てきた。

 

 「あのね……これから音合わせや、本番でやる曲のリハとかするから、なるべく3人だけで練習したいの。ごめんね、外で待っててくれないかな?」

 「すみません…。でも僕、文化祭の実行委員をやってて、演奏前の準備や機材とかにも興味があるんです! 後藤さんのギターも近くで聞いてみたいですし、お願いできませんか?」

 「う~ん、でもなぁ……」

 「1曲分、1曲だけでもいいので!」

 

 頭を下げて頼み込むが、伊地知さんとしては断りたいのだろう。煮え切らない態度だ。

 やっぱり厳しかっただろうか――と諦めかけたところで、思わぬ援護射撃が入った。

 

 

 「別にいいんじゃない?」

 「え、リョウ!?」

 「彼、ギター持ってるみたいだし、1曲くらいなら聞かせてあげてもいいと思うけど」

 

 ……山田先輩!

 クズだなんて思ってすみませんでした。どうかそのまま説得してください!

 

 「うっ…。ひとりちゃんはどう?」

 「あっはい、別にいいです……」

 「……はぁ~。分かったよ。1曲だけね」

 

 最後にイエスマン後藤の後押しもあり、伊地知さんはついに陥落した。

 や、やったぜ…!

 

 

~~~~~

 

 

 (よく分からんやつだな……)

 

 あたし、伊地知虹夏は謎の人物(畔くん)を見ながら、そう考えていた。

 

 (はじめはとんだクズ男かと思ったけど、話してみた感じだとまともに見える……でもリョウも外面はまともだしなー。それを考えるといまいち……時々、強引なところを感じるし)

 

 ひとりちゃんとの関係にしたって、友達と言ってる割に、そんなに仲良く見えない。

 異性だからってのもあるだろうけど、それにしたって距離感遠くないかな?

 

 (まあひとりちゃんもエキセントリックな性格みたいだし、何かの拍子にあのカツアゲ現場? が生まれたのかもしれないけど……)

 

 ――やっぱりどうにも信用できないかな。

 おのれリョウめ……とジト目を向けてみるが、本人はいたって通常運転、どこ吹く風だ。

 

 

 ……まあ考えるのはこのくらいにしておこう。

 いよいよひとりちゃんとの初演奏なんだし、こんな気持ちでやるのはもったいない。

 

 (3年間もやってるんだよね。リョウもうまいし、もしかしたら私が一番下手だったり…? いやそれならそれで、上手な人と演奏できるチャンスってことだし、ポジティブにいこう!)

 

 

 ――このあと、まさかのド下手っぷりに驚愕することになるとは予想もせず、

 あたしは演奏を始めるのだった。

 




次こそ……次こそ1話終了までいけるはず

山田に見られているのは気のせいじゃないです(自分に視線が向いてないのでぼっちちゃんの感じるプレッシャーが弱まっている)
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