日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。ここではトゥインクル・シリーズを始めとした数多くのレースに挑むために、日本全国や世界から選ばれたウマ娘達が日夜研鑽を重ねている。その学園の生徒会長が、皇帝という二つ名を持つシンボリルドルフである。
ルドルフ「今日の仕事ももうすぐ終わりだな、エアグルーヴ。」
グルーヴ「珍しくナリタブライアンが真面目にやっていますからね。後、邪魔する者がいないのも大きいかと。」
ブライアン「テイオーはトレーニング、シリウスシンボリは後輩の指導、姉貴はレースのシミュレーションだからな。」
暫くして仕事が全て終わる。
ルドルフ「さてと、仕事も済んだし、少し散歩してくるよ。」
グルーヴ「お伴しますか。」
ルドルフ「いや、大丈夫だ。」
グルーヴ「そうですか。」
◇
その頃、トレセン学園のとある練習場では、シリウスシンボリが後輩達の面倒を見ていた。
シリウス「よし、良いタイミングだ。もう一本。」
シリウスの取り巻きA「シ、シリウス様、今日も疲れましたー。」
シリウスの取り巻きB「同じくー。」
シリウス「そうか、なら、今日はもう上がっていろ。」
「「はい。」」
シリウスの取り巻きC「シリウス様は?」
シリウス「私は少し用があるのでここを離れる。私が作成したメニューをこなせたら、後は自主練するなり、あがるなりして良いぞ。」
「「「はい。」」」
シリウスは、歩きながら独りごちる。内容は取り巻き達の練習態度である。
シリウス「全く、幾らそれぞれに事情があるとはいえ、あの程度で音を上げていたら、何時まで経っても上には行けないってのに。だからってルドルフの奴に頼むのも癪だしな。」
シリウスは、同じシンボリ家のルドルフと目指す先は同じだが、やり方は正反対だ。ルドルフは生徒会長として率先して規範を示し、権力でもってウマ娘の幸福を実現しようとする。対してシリウスは、自分が積極的に関わることで全体の底上げを図る。だが、思うように行かないのが現状である。
タッタッタッ
ダートコースで誰かが一人で練習をしている。ピンク色の髪をしたウマ娘だ。
シリウス「ん?あいつは確か、ハルウララだったな。タイムは遅いが、根性は人一倍あるな。」
タイムは、シリウスの取り巻き達よりも遅く、100回やって1回勝つかどうかだろう。だが、転んでもへこたれないその姿勢に、シリウスは見入るものがあった。
シリウス「どれだけ負けてもめげずに練習に励む姿、他の者達も見習って欲しいものだな。」
ルドルフ「君もそう思うかい、シリウス。」
シリウス「と、皇帝サマじゃねえか。何の用だ?」
ルドルフ「何、仕事も終わったし、気分転換で外を見て回ろうと思ってね。」
シリウス「ハッ、そういうところ、きざったらしくて好きじゃねえな。」
ルドルフ「そういう君こそ、後輩達の面倒はどうしたんだい。」
シリウス「ハルウララの様子を見ていると、今日はやる気が失せた。あいつと比較すると、どうも物足りない。」
ルドルフ「彼女のひたむきさは、学園一だからね。あれも立派な才能のうちだよ。」
◇
翌日、取り巻きの一人が学園を去ることになる。
シリウス「そうか、お前もここを去るのか。」
シリウスの取り巻きD「はい、トップスピードの高さを見込まれましたが、それを維持するスタミナがなくて…。」
シリウス「そうか、転校しても、めげずに頑張るんだぞ。」
シリウスの取り巻きD「はい…。」
俯きながら去るのを見て、取り巻きの一人が話しかける。
シリウスの取り巻きA「今月に入って3人目ですね。」
シリウス「ああ。この前の奴は競り合いになったときの勝負弱さ、更にその前は展開毎の適応力の無さ。誰も彼も、一皮が剥けずにここを去ることになった。」
シリウスの取り巻きA「勝負の世界ですからね。私やシリウス様だって、もし怪我をして再起不能になったら、同じ事が言えますし。ただ…、」
シリウス「ただ、何だ?」
シリウスの取り巻きA「自分が何も残せずにこの学園を去るというのは嫌だな、そう思いました。」
シリウス「確かに、この学園に入った時点で、選ばれし者だからな。自分がいたという証拠を残したくなるのは当然か。」
勿論書類上は在籍した記録は残るが、誰かの記憶に残りたいと思うのは当然の話である。
◇
その日の練習終了後、シリウスは図書館に来ていた。
シリウス「ゼンノロブロイ、少し良いか?」
ロブロイ「は、はい。」
シリウス「トレセン学園で、過去に開催されていたレースやライブを纏めた資料はあるか?」
ロブロイ「ちょっと待ってください。ええと、この列ですね。」
シリウス「ありがとう。さてと、使えそうなのはこれとこれだな。」
ロブロイ「?シリウスさん、何かするのですか?」
シリウス「ああ、ちょっとな。」
シリウスは借りた資料を自室へと持って行き、読みふける。
シリウス「なんだ、答えはあるじゃないか。」
年に1度トレセン学園に所属するウマ娘全員で踊るグランドライブ、これがかつて開催されていたのである。もっともトゥインクル・シリーズが盛り上がるにつれて、生徒達が片手間にやるには無理があり、またレース直後に行われる、勝者を称えるウイニングライブが人気を博したこともあって、置き換えられる形で廃れたのであるが…。
シリウス「私の手で、これを復活させれば良いだけの話だ。ルドルフの奴、こんな事にも気付かないとはな。精々玉座に座っていろ。気付くのは私にお株を奪われて朽ち果てた後だ。」
ナカヤマ「どうしたシリウス、随分にやついているな。」
シリウス「何、ルドルフのお株を奪うような事を見つけただけだ。一か八かの勝負事ではないから安心しろ。寧ろその対極だ。」
ナカヤマ「そうか、なら私には関係ないな。」