朽木家の次期当主   作:赤いUFO

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千年血戦篇【三】

 氷輪丸から放たれた冷気を朝緋は全力の瞬歩で回避する。

 

(始解でこの速度と凍結範囲、反応が僅かでも遅れてたらやられていた!)

 

 氷を飛ばされたなら斬り捨てれば良いが、冷気そのものが襲いかかってくると対応がどうしても限られてくる。

 

「破道の────」

 

 鬼道で対抗しようとするが、日番谷が瞬歩で右から迫ると、振り下ろされた刃を受け止める。

 

「相手の出方を見る為に距離を取って鬼道で様子見に徹するのは、お前の悪い癖だと教えた筈だがな」

 

 十番隊に所属していた頃に慎重過ぎる朝緋の癖を指摘されていた。

 その癖は今現在でも直っていない。

 刃を受け流し、日番谷に斬りかかるが、冷気を纏った斬り返しに弾かれる。

 

「クッ!」

 

 左側が凍り付く朝緋。

 動きが鈍くなったところを詰められ、斬術の応酬が始まった。

 

(近接戦闘系の斬魄刀である私の方が有利な筈なのに……!)

 

 雷を刃に纏わせる雷鳥丸。

 斬れ味だけなら隊長格を含めてもかなり良い線行くと自負している。

 その刃が全て受け流されていた。

 

(卍解を使う? 却下! もしも私の卍解に反応して日番谷隊長まで卍解を発動させたら完全に私の手に負えなくなる!)

 

 ただでさえ朝緋は卍解を修得したばかりで練度が低いのだ。

 考え無しに卍解を使っても日番谷と戦える訳がない。

 なら、まだ使い慣れた始解で戦った方がマシだ。

 

(操られてたとはいえ、なんで父様やルキア姉様と戦えると思ったかな、あの時の私は!)

 

 こちらの斬撃に慣れたからか、日番谷が雷鳥丸の刃を側面から折る。

 刀身の長さが半分以下になると、そのまま蹴り飛ばされた。

 

「つっ!?」

 

 距離を取った事で氷輪丸から生み出された冷気の竜が襲いかかってくる。

 

「くそ!」

 

 瞬歩で逃げるがそれでも追ってくる。

 空中に霊子を固めて足場を作り、鬼道で撃退を図る。

 

「破道の────!!」

 

 しかし、そこで日番谷が背後から迫ってきた。

 

「だから……鬼道に頼り過ぎなんだよ、お前は」

 

 破れかぶれに長さが半分になった刀を振るうが、それもあっさりと上半身を後ろに傾けるだけで躱された。

 

(間に合え!)

 

 剣を振るった直後に瞬歩の応用である閃花で日番谷の背後に回ると彼を羽交い絞めにする。

 氷の竜が二人を避けて地上に凍らせた。

 

「なんのつもりだ。その程度で────」

 

 何の鬼道を詠唱しているのか察して日番谷の表情が変わる。

 

「結合せよ。反発せよ。地は満ち、己の無力を知れ! 破道の九十、黒棺っ!」

 

 自分ごと重力が渦く箱へと日番谷を閉じ込めようとした。

 いくら隊長格でも九十番台の鬼道を喰らえばただでは済まない。

 鬼道が発動し、黒棺が完成する一瞬。

 

「卍解────」

 

 日番谷から発せられた霊圧によって黒棺が打ち消された。

 卍解発動の霊圧に吹き飛ばされ、朝緋の右半身が氷漬けにされる。

 地面を何度も転がった後に凍っていない左で立とうとする。

 その時に、腹部に痛みが走った。

 

「あ────」

 

 氷輪丸の刀身が朝緋の腹を刺している。

 

「終わりだ」

 

 刺された刀身から冷気が広がり、内蔵や血液が凍らされているのが判る。

 それに構わず、朝緋は日番谷の腕を掴んだ。

 掴んだ手から手首までが凍らされる。

 

「あぁ、良かった……私の刀が日番谷隊長に向いてて……」

 

 朝緋の折られた斬魄刀は日番谷まで届いていない。

 しかし、この状況なら関係ない。

 一撃で日番谷を仕留められる。

 

「やっぱりゾンビにされて頭が鈍ってますね。いつもの日番谷隊長なら、こんな隙は晒さなかった……! 卍解──―」

 

 朝緋も卍解を発動させる。

 驚く暇も与えはしない。

 生み出された巨大な雷光の刃が日番谷の肉体を上下に切断した。

 

「なん、だと……!」

 

「雷鳴千鳥丸……」

 

 卍解を解くと、日番谷の上半身が地面に落ちる。

 それは奇しくもユーハバッハに斬られた山本前総隊長と同じ形となった。

 

「あ、ぐ……っ!?」

 

 凍っていた右半身の氷が砕けると倒れる。

 

(不味い……! 早く治療しないと……!)

 

 まだ敵は残っているのだ。

 キャンディスのゾンビは朝緋がなんとかしないと、という思いで鬼道で治療を始める。

 

「へ〜すごーい。隊長さんを倒しちゃったぁ」

 

 そこで最悪な事に、ジゼルが朝緋に近付いてきた。

 しゃがんだジゼルは髪を掴んで朝日と目線を合わせさせる。

 

「でも、ゾンビにした隊長さんはあの子一人じゃないんだなぁ」

 

 言うと、ジゼルの後ろには三人の隊長格が並んでいた。

 

「六車隊長!」

 

「松本に鳳橋隊長もかよ……!」

 

 霊圧は感じないと思っていたが、いつの間にかジゼルにゾンビ化されていたらしい。

 

「哀しまなくていいんだよ? 血が足りるか判らないけど、君も仲間に入れてあげるからね!」

 

 自分の手首を噛んで血を垂らそうとしてくる。

 これからどうなるのか察して朝緋は血の気が引いた。

 

「やめ────っ!?」

 

 すると、強烈な光がその場を支配した。

 

「ふむ。敵をゾンビ化する能力か。実に興味深い能力だヨ」

 

「眩しくて良く見えないんですけどー」

 

 やってきたのは十二番隊の隊長である涅マユリだった。

 

「気にすることはない。偉大な相手というのは輝いて見えるものだヨ」

 

 そんなやり取りの後にマユリは瞬歩で朝緋に近付き、何かを薬を打って副隊長の涅ネムに抱えさせる。

 

「な、にを……」

 

「タダの麻酔だヨ。日番谷隊長を倒すとは凄まじい成長だネ。流石は朽木隊長の息子というところか」

 

 そこでマユリが朝緋を見てニッと笑う。

 

「褒美に、君はこの私自ら改造(なお)してあげよう」

 

 そこで朝緋の意識は一旦落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

「あらぁ、目を覚ましたのね」

 

 目が覚めて朝緋が見たのはかつて空座町で戦った破面、シャマルロッテ・クールホーンだった。

 あまりにも意外な人物に、朝緋は反射的にシャルロッテの鼻っ面に白打を叩き込んだ。

 

「ちょっ!? なにすんのよ! 今は味方でしょうがっ!」

 

「なんで貴方が……いや、それより……」

 

 何から考えれば良いのか分からず、朝緋は自分の手で顔を覆う。

 それから勝手にシャルロッテが話し始める。

 あの戦いの後に回収された破面の遺体は涅マユリによってゾンビに改造されており、この戦いで投入された事をマユリへの罵詈雑言を混じえて説明される。

 戦闘は、瀞霊廷に残っていた滅却師達が霊王宮から落ちてきた光によって全滅した事など。

 

「他の死神達はあっちの方に集まってるわよ」

 

「そうですか」

 

 簡単に身支度を整えて斬魄刀を腰に差し、シャルロッテが指差した方に向かう。

 

「あ。どうせ涅隊長のことだし、この会話も盗聴されてるでしょうから、さっきの罵詈雑言のことは覚悟しておいた方がいいですよ?」

 

「えっ!?」

 

 なにか騒いでいるシャルロッテを無視して部屋を出ていく朝緋。

 霊圧を頼りに歩くと浮竹十四郎と鉢合わせる。

 

「浮竹隊長……!」

 

「目を覚ましたのか! 良かった。さっきまで朽木が心配していたんだぞ」

 

 どっちの? とは訊かない。

 返答が分かり切っているから。

 

「六車隊長と鳳橋隊長。それに十番隊の二(・)人(・)は現在治療中だ」

 

 浮竹の言葉に朝緋がハッとなる。

 

「……日番谷隊長の治療は、可能なのですか?」

 

「発見が早かったからな。ただ、この戦いに参加するのは難しいだろう」

 

「そうですか」

 

 心の底から安堵する。

 日番谷を殺した事が気掛かりだったのだ。

 浮竹の案内で残った死神が集まっている場所に着いた。

 

「朝緋! 無事だったか!!」

 

「はい。休ませていただいたので、霊圧も大分回復しました」

 

 意識を失う前に涅マユリが恐ろしい事を口にしていたような気がするが、今は考えないようにする。

 浮竹は虎徹副隊長と一緒に負傷した死神の治療に当たっていたらしい。

 それから浦原喜助や、現世に残った仮面の軍勢が姿を現し、これからの行動の説明をされる。

 簡潔に言えば、この場に居る全員の霊圧を使って霊王宮への道を作り、ユーハバッハや先に向かった黒崎一護達を追うとの事。

 霊王が死亡した事で崩壊しようとしていた世界を浮竹が自身に取り付かせていた霊王の右腕を使って押し留めてくれた。

 その後、霊王宮から溢れるように正体不明の化物が落ちてきたり、京楽総隊長が藍染惣右介を連れて現れたり、瀞霊廷に置き去りにされた滅却師達が協力を申し出たりと状況は刻々と変わっていった。

 霊王宮へ辿り着くと、そこは瀞霊廷と入れ替わった滅却師達の根城そっくりに作り変えられていた。

 

「滅却師の人達が居ません」

 

 こちらへの協力を申し出た滅却師達が全員がこの場に居なかった。

 

「あちらさんはあちらさんで行動するってことでしょ。どうやら遠い位置だけど、先にこっちに来てた一護君達が無事だったのは朗報だ。ボクらは護挺十三隊。護挺の為に進もうじゃないか」

 

「はい!」

 

 途中で涅マユリや更木剣八を含む、十一番隊の面々が居ない事に気付いたが、構わず進む。

 同行していた四楓院夕四郎が姉である夜一の霊圧を感じてそちらに行ってしまった。浦原喜助もいつの間にか消えている。

 移動中に敵滅却師から狙撃に遭い、次々と死神が撃ち落とされていった。

 それを阻止する為に京楽総隊長が殿を務める。

 敵の本拠地と思しき城へと急ぐ死神達のところにも剣と盾を持った巨漢の男がやってきた。

 隊長副隊長。その上に仮面の軍勢まで居る状況を一人で勝てる訳もなく、その滅却師は地面に尻をついた。

 倒された彼が奇跡について説いていると、白哉が千本桜の刃で斬り刻む

 

「ひどい……ここまでしなくても……」

 

 無惨な姿に変えられた敵滅却師を見て、雛森桃が口元を押さえる。

 それを否定したのが隊長の平子真子だった。

 

「アホ。コイツはなんや切り札を隠し持ってた。ここでやらな厄介なことになってたで」

 

 なにはともあれ、敵の排除には成功したのだ。

 敵の城へと再び移動しようとすると、敵に変化が起こる。

 

「これは……!」

 

 突如敵滅却師の肉体が巨大化したのだ。

 巨人となった敵滅却師が吼える。

 

「我は、ジェラルド・ヴァルキリーッ!!」

 

 その巨体を活かして次々と死神達を払うように攻撃してくるジェラルド。

 だが。

 

「好都合です!」

 

 ジェラルドに向かう朝緋が少し離れた位置にいる白哉に頼む。

 

「父様! 私が斬ります! 足場を!」

 

 霊王宮に着いてから霊圧による足場が作れなくなっていた。

 それを白哉の千本桜の刃で代わりにする。

 まとまった千本桜の刃を足場に何度か跳んでジェラルドの頭上を取った。

 

「馬鹿め! 握り潰してくれるわ!」

 

「卍解────雷鳴千鳥丸っ!!」

 

 巨体な雷光の刃を生み出した朝緋が自分を掴もうとする巨大な手を斬り捨てると、そのままジェラルドの頭から真っ二つにしながら落下する。

 トンッと着地した朝緋が卍解を解除して鞘に納めた。

 流石に真っ二つにすれば生きてはいられないだろう。

 それを見ていた平子がほーっと感心した声を出す。

 

「副隊長に妹のルキアちゃん。息子さんまで卍解を修得しとったか。朽木隊長の周りは優秀な子ぉばかりやなぁ。で? 桃。お前はいつ卍解するんや?」

 

「平子隊長っ!」

 

 当てつけのようにからかってくる平子に雛森が拗ねる。

 軽く笑った後に、ジェラルドの異変に気付いた。

 

「朝緋! 避けいっ!!」

 

 真っ二つにされた筈のジェラルドの腕が動き、斬られた手が再生して朝緋に襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

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