ウマ娘の世界に転生出来たのに人間だった。だけど親ガチャ勝利した。   作:庭顔宅

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俺と薬は表裏一体

「…ッっ。いったぁ……」

 

彼は腕と踵の痛みで目が覚めた。開けっぱなしされた扉から月明かりが見える。どうやらまだ深夜のようだ。若干肌寒い。だが扉を閉めると真っ暗だ。窓の1つなく、防風防水のため敷き詰められた木材に隙間はない。電気?はぁ?文明人が。太陽光じゃ電球まで回す電力はない!この場所に風力、地熱、水力は出来ねぇんだよ!!

 

お湯に回すのに精一杯。温かいお湯は最高です……温泉作りたい。うし…本拠点として温泉付き、明かり付きの大っきいやつ作るか。

 

そう思いつつヤバい草を噛む。やめなきゃなーって思いながらムシャムシャ噛む。そして飲み込む。

馬鹿と天才は紙一重のように薬物と医療薬も紙一重なのだ。でもやめられない。痛いんだもん。

 

さて完全に目が覚めてしまった。感覚的にわかる。眠れない。そもそも俺はショートスリーパーだ、長時間寝ることが出来ない。いつの間にかケロッと目が覚める。それにヤバい草も食べた。

 

彼は椅子から立ち上がる。若干筋肉痛で全身が痛いが、いつものこと。動かせないほどではない。どっかで筋肉痛は軽いストレッチをすると早く治ると聞いたことがある。つまりそういうことだ。

 

だが関係なしに腰いてぇ……ベッドになれすぎた。これからは定期的に木の上とか、野外で寝ないと、ハンモック欲しいとか言っている場合ではない。体が鈍ってる。

 

彼は何をしようかと辺りを見渡す。すると見つけてしまった。桶だ。

傷口を洗った水が入った桶。ちょっと臭い。匂いが桶にこべりつく前に洗わないとね。

 

桶を持ち上げッぶね!

 

忘れていた。桶には水が入っていて、片足しか使えないということをだ。片腕で持ち上げることしか考えていなかった。この傷が治ったら片腕腕立て伏せとか片足スクワットも追加で特訓するぞ。

 

再び桶を持ち上げる。

 

今度は問題無かった。おまけと思いつき血で汚れた彼女の靴下と自分用のガーゼの替えにワセリンを包んでを左手で掴む。

 

けんけんと唐傘お化けのように飛び跳ねながら川へ向かう。彼の目は普段の生活から夜の森道になれていて、転びかけることなく目的の場所にたどり着く。

 

荷物を地面に落とし、桶を勢いよく川に投げつける。流されて何処かへ行ってしまう前に捕まえて、手でゴシゴシと洗う。

 

綺麗さっぱり。血のにおいすら残さない。

 

綺麗になったことを再び確認してから川の水を汲み、地面の石の上に置く。靴下を樽の中に入れ、手洗いする。モミモミしてゴシゴシと念入りに手だけを使って洗う。水を汲み直し、水の色がピンクにならなくなるまでやる。

 

手洗いは最強。生地が無駄に傷つくこともなく綺麗になる。完璧である。

……………さて、終わった。

 

綺麗な桶と靴下を持って川を渡り、すぐ側にある大ログハウスへ向かう。

 

実はここは大ログハウスの側の川だったのだ。何もない川よりログハウスが側にある川の方が色々といいからね。ガーゼとワセリンを持ってきた理由?貧乏根性だ。新品を使うより、残り少ない方を使いたいじゃん?密封状態だと保存できる日数が増えるからね。無駄に新しいのを買わなくて済む。

 

大ログハウスと呼ぶのは川の側だけではない。畑があるからだ。畑付きのログハウスは3つしかない。ちなみにその内の2つは休ませ中だ。

 

話は戻って大ログハウス。桶を地面に置いて、その上に靴下を置く。置く位置を調整したので風に吹き飛ばされる心配はない。

 

そして俺は桶の代わりの桶を取りに行く。持ってきた桶は乾かすために放置して、この大ログハウスに置いてある桶を持っていくのだ。

 

桶を取ろうとログハウスに入るための扉へ移動すると畑が見えた。決して大きくは無いく老後の家庭菜園(ガチ)レベルだ。ちょうど野菜達が熟成しているのが見える。朝食として持っていこうか。あそこにはビスケット以外まともな食料がないからね。

 

扉を開け、ベッドのしたから桶を取り出す。埃1つない。さすが最新の桶だ。一番綺麗に作れてる。

 

その桶を持って畑へ移動する。ウマ娘ということもあるのでまずはにんじんを40本ほど…そしてトマトを8個だけ桶の中に入れる。

 

これで畑の3割が消えた。

ちなみに畑の作物はトマト、じゃがいも、ピーマン、にんじん、ナス、枝豆、サツマイモの7種類。これは理想的なセットだ。トマトはへたが簡単に取れる。そのまま食べれる。最高。じゃがいもは調理が面倒。だがうまい。許す。最高。ピーマンは種がウザい。それ以外は及第点。普通。ナスは普通。微妙。枝豆は最高。塩があう。最高。サツマイモはじゃがいもとは格が違う。そのままでも食べれる。ジャガイモの方がうまい。最高。

 

といった感じで良いのだ。人生の健康の秘訣はいろんな種類の野菜を食べることだ。7種類しかないじゃないかって?充分な量を食べてるから良いんだよ。主食が草やぞ?最近はマシになったけど。肉は魚肉しか食べられないんだぞ!今世で牛肉を食べた記憶無いぞ!まじで。

 

直接買って食べるのは負けだと思っている。ちゃんと一から作るか、狩れ。そしたら完全勝利だから。

 

野菜の入った桶を持って、川を渡る前ににんじんを洗う。土と汚れを落とす。そうしてから川を渡る。

 

最初に荷物を置いた場所へ行き、まずは縄を解いて、固定用の木板と踵のガーゼをとり、新しいのに付け替える。もちろんワセリンたっぷり。ワセリンのおかげで痛みが少ない。傷口にガーゼが引っ付かない。最高。俺のことを狂人だというやつは一度、皮膚を引き剥がし、消毒して、ガーゼを装備すると良い。狂うぞ。

 

さて、ゴミとなったガーゼ類はポケットの中にいれる…いまさらだが俺はスポーツウェアを着ている。てかスポーツウェアしか持っていない。ジャージはダメだ。一週間と保たん。その点スポーツウェアは一ヶ月だろうが半年も保つ。動きやすい、放熱性がすばらしい。いつの間にかほぼ半裸がデフォルトだったがスポーツウェアがいつもの服装になった。

 

ゴミはしっかり焼却。しっかり処理。すなわち環境平和。

最近は文明人になりすぎてゴミが結構出て来ている。だが辞められない文明人。わざわざ街へゴミを捨てに行く手間さえ考えなければ問題無いからいいけど。夜の内にコソッと行くのがおすすめ。巡回警察には気をつけろ。職務質問されたら死ねる。

そういえばゴミのおかげで曜日感覚が身につきました。

 

次は腕。縄を解き………。さて治療は終わった。いまだに腕が動く気配がないが、たった一日で治るわけがない。

 

彼はそう思いつつ、荷物を持つ。そして桶を持って元のログハウスに戻る。

 

ひっそりと、音を極力立てないようにして部屋に入る。出て行く前と変わった点はなかった。エイシンフラッシュは変わらず寝ていて、月明かりも変わらないままだ。

 

時間が過ぎるのは遅い。

 

机の上に桶を置き、再びログハウスの外へ行く。

 

再び言うが体が鈍っている。そしてウズウズというかヅキヅキというか…なんというか動きたい欲求が出て来ている。俺は先住民族か。まぁせっかく動きたいのだ。魚取りに行くか。狩りだ。

 

芝刈り機の如く魚を狩るぞ。

 

前傾姿勢で移動する。気分はさながら忍者。ログハウスの裏にある木製の槍を3本、流れるように掴みながら移動する。

 

さすがに湖は無理だ。今は泳げない。なのですこし大きめ川に行く。距離はログハウス3つ分。リハビリには丁度良い。さぁゲームを始めよう。小魚は許したる。卵持ちも許す。狙いはプクプクと太った奴だ。

 

今晩は焼き魚だ!!…朝食か?まぁいいや。

 

 

結果。槍3本全て壊れ、収穫無し。さすが木製、耐久性がない…また作らないとなーー…。地味に面倒くさいんだよなぁ。それっぽい理由付けてやらないとやる気が起きない。

もう…100本ぐらい予備が欲しいものだ。いや100本じゃ一年も保たない。万あれば安心だなぁー

 

壊れた槍はたき火用の薪として再利用する。薪の在庫は充分以上にあるんだけどなぁ……はぁ魚……食べたいなぁ。食べたいときに食べられない。これが自然の厳しさ。

おまけにしばらくは魚取れそうにない。さっさと傷よ治れ~~治れ~~

 

意気消沈しながら帰っているうちに月は沈み、ちょうど朝日が出始めていた。今日の朝日も綺麗た。遮るものが森しかない。眩しい。

 

はぁ………朝日が眩しい……

 

髪どころか彼の目からも水が流れていた。

 

・・・

 

帰っている間に服は乾いていた。彼はログハウスに入り、椅子に倒れるように座り込む。

 

なんとなく眠い。だがこれから朝がくるんだよな。俺一人ならいつでも寝れるぜ生態系トップクラス。なのだが今日はエイシンフラッシュがいるから眠れない……眠れない?いや眠ればいいか。約束では一晩だけ泊まり、帰るって約束だ。つまり用があれば起こしてくれる、用が無いなら勝手に帰ってくれるはず……靴下!

 

ガバっと立ち上がり、走る。大ログハウスに残した靴下を求めて走り出し、例の物を掴み取る。そして帰る。ちょこっと顔を出してログハウス内を覗くと変化は無い。よし、ミッションコンプリートです。

 

今度こそ気絶するように椅子に座り込む。

 

はぁ……疲れた。バナナ食べたい。特に深い理由は無いがバナナが食べたい。ブドウでも良い。リンゴも良い。なんか少し甘くて食い応えがあってみずみずしい何かが食べたい…

 

彼に物事考えれるだけの理性は残されていなかった。本能の妄想をしている間に眠ってしまっているのだった。

 

・・・

 

「………腹減った。」

 

空腹を感じ、目が覚めた。扉から日光が見える。ハッと思い、ベッドへ視線を向けると彼女はまだ眠っていた。ちょっとだけ安心しながらトマトをつまむ。ムッシャムッシャと1個、2個、次ににんじんを3個8個と気がつけばトマト6個とにんじん14本を食べていた。

 

やっべ食べ過ぎた。あとはトマトが2つとにんじんが26本しかない……別に食べ過ぎではないな。これだけで3日は生きれる。

 

まるで癖のように傷口を確認する。ガーゼにはあまり血が付いておらず、じっとしていたら痛みも我慢できないほどではないことに気がついた。少しでも腕と脚を動かすとめっちゃ痛い。流れるようにヤバい草を噛む。

そしてヤバい草を棚から自分のポケットの中に入れ、ゴミを棚の側に置いておく。

 

このヤバい草の致死量圏内は一日葉っぱ5枚、の4日である。現在葉っぱ3枚の半日。一日の分解量と4日以内に傷が治れば問題無い。だがそれ以上は地獄だねぇ……まぁ痛かったら一日8枚でも食べる。強靭な肉体を信じて容赦無く食べる。安心してくれ中毒性はない。

 

なぜこんなにヤバい草は沢山あるんだって?知らん。最初に見つけたひい爺ちゃんに言え。そしていつの間にか共同作業で栽培してた爺ちゃんにも言っておいてくれ。俺の代わりにありがとうって。

 

「おはようございます。不審者さん。」

 

「おはよう。」

 

エイシンフラッシュが目を覚ましたようだ。あと俺の名称は不審者さんらしい。まぁそれでもいいけど。

 

「食べる?」

 

にんじんを1つ桶から取り出し彼女へ手渡す。

 

「いただきます。」

 

彼女はそれを受け取り一口、食べる。

エイシンフラッシュはベッドを椅子の変わりにして座っていた。腕を伸ばさなくても届くくらいにはこのログハウスは狭い。例えるなら個人運営の山小屋だ。たかがログハウスごときに一時期のしのぎ以外の効果を求めないでくれ。

 

「あ、おいしい。」

 

エイシンフラッシュはそうつぶやきボリボリと食べていく。食べ終わったのを確認して新たににんじんを渡す。

 

「食べる?」

 

「はい。」

 

またにんじんを受け取りボリボリと食べる。若干目が輝いている気がした。まるでハムスターだ。その様子を俺は大層気に入り、1個2個と次々とにんじんを手渡す。そして4個7個14個とあっという間に26個、全部が消えていった。俺はそのことには気がつかずあほみたいに、トマトしかない桶の中に手を伸ばしにんじんを探していた。

 

トマトしか感触が無いことに疑問を抱き桶の中を覗くとその事実に気がついた。

 

残念がりながら視線を桶からエイシンフラッシュへ向けると手をこちらに上す彼女がいた。

 

「にんじんはもうなくなりました。」

 

真実を告げる。すると彼女は悲しそうな顔をした。そして・・・と考えるような様子を見せ、顔がほんのりピンク色になった。

 

「あの……全部たべちゃいましたか?」

 

「あとはトマトだけだね。」

 

「…すみません。」

 

「いや、いいよ。そんなことよりまだお腹すいてる?」

 

「っだ、大丈夫です。」

 

これ以上何か言うのは愚の骨頂というやつだろう。トマトを2つ、ムッシャムッシャ食べてしまう。

ログハウス内にはそのムッシャムッシャという音だけが響いていた。トマトを食べ終わってしまうと静粛としてしまっていた。

 

気まずい感じがしなくも無いがどうせ今日までの関係だ。彼女はトレセンに戻り、俺はまた盗見する。トレセンの方々にはしっかり精神管理?メンタルケア?メンタルチェック?メンタルコントロール?メンタルマネジメント?

まぁそれっぽいなんかをしっかりとして貰って二度とこんなことが起きないようにしてほしいものだ。俺のメンタルが保たない。

 

「踵。どんな感じ?」

 

「踵ですか?えっと……痛くは無いです。」

 

エイシンフラッシュが足を曲げて踵を見る。自信なさげにそう言葉をはいた。

俺を彼女の踵を覗くとガーゼは赤くなっていた。夏ではないから蒸れていないはずだが、清潔なガーゼに変えておいた方が良さそうだ。

 

「一応新しいガーゼに変えておこうか。自分で出来る?」

 

机に置いておいたガーゼ一式を手に持ち、差し向ける。

 

「はい。ありがとうございます。」

 

ガーゼ一式を受け取り今付けているガーゼを取り外す。テープをペリペリと剥がす。

 

「痛くない…?」

 

小声でそう呟いた。狭いログハウスだ。ここに言葉的プライバーは無い。

 

彼女の踵の傷は既に治りきっていて、傷は見当たらない。正直ガーゼは大きすだと思った。だが絆創膏はないから仕方なのだ。絆創膏は守備範囲が狭すぎる。だが便利なところが多いんだよなぁ…ポケットに常備してきゃよくね?

 

いや誰が使うねん。自然治癒能力をサボるといざという時大変そうだから…いや強靭な肉体ならそれぐらい……

 

そんなことを考えている間にエイシンフラッシュはガーゼを替えたようだ。

 

「すみません、これワセリンってなんですか?」

 

ほう…この私にワセリンを聞くか?ならばよろしい

 

「軟膏剤だね。まぁ乾燥を防いで早く、そして綺麗に傷を治す効果があるね。」

 

「へぇーそうなんですか。」

 

彼女は物珍しそうにワセリンの容器を見回す。

 

そしてワセリンは、石油から得た炭化水素類の脱色して精製したものだ。白色が一番メジャー、だが黄色が一番純度が高く高価だ。白色は二番目。医療用としても使われるなかなか良いものを我らは全てのログハウスに常備しているのです。

乾燥を防ぐと言ったが皮膚表面にパラフィンという膜を張り、角質層の水分蒸発を防ぐことで、必然的に皮膚の乾燥を防ぐ効果があるのだ。加えて、外的刺激から皮膚を保護する働きもある。なので軟膏剤から化粧クリームのような化粧品まで使われることがある。潤滑剤や皮膚の保湿保護剤まであるぞ。

湿潤療法のために、使われることもあるらしい。乾燥をきっかけとする皮膚病や、上からかぶせもの(ガーゼ)をする前提で切り傷そのものからの出血を一時的に止めるためにも多用されている。〈ここが一番天才〉

原材料が石油なので可燃の可能性がある。充分に気をつけて。衣服などにワセリンが付いたら容赦無く洗濯しよう。掃除にもなる。一石二鳥だ!

豆知識としてボクシングの試合で防護と傷保護の目的で塗布されることがあるらしい。

 

微かな良心と理性が詳細説明を我慢させた。まぁ心に出た時点で我慢と言えるかわからないが。

もし何を言っているのかわからないという人がいれば、はたらく細胞全話見なさい。漫画も見なさい。少なくとも勉強にはなる。あれは義務教育として中等部の教材として漫画を読ませるべき。

 

「それではさようならだ。」

 

「ん…?」

 

彼女が首をかしげる。

どやら一晩寝たら記憶がとんだようだ。それとも朝に弱いのか…普通にかわいい。

 

「一晩だけ泊める約束だ。みんなが心配しているぞ。早く帰ったほうがいい。」

 

「ぁーー……」

 

そこで思い足したように口を半開きに開け小さな声を上げた。そして・・・と考え込んでいた。すると突如としてベッドから立ち上がり、姿勢を正す。そして

 

「ありがとうございました。」

 

きっちり90度腰を曲げて感謝の意を唱えた。

 

「どういたしまして。」

 

こちらもつい腰を90度曲げた。椅子に座ったままだったが何故か頭を下げていた。理由は知らない。気がつけば頭が下がっていたのだ。

 

ログハウス内に気まずい空気が流れる。お互いに頭を下げ、上げ時を見失い、どちらも動くに動けない状況になってしまった。

 

エイシンフラッシュは困惑しえっと…えっと…と視線を迷わす。定めるべきものを失った視線は突如として一カ所に留まる。それは彼の左足だった。

 

「その足、大丈夫なんですか?」

 

「ん?ああ、大丈夫だよ。数ヶ月したら治ると思うし。」

 

「数ヶ月!?」

 

エイシンフラッシュが突如大声を上げる。突如として耳元で響いた大声にビクッとして彼は下げた頭を元に戻し、度の超えた驚き方のように後退ろうする。そして椅子に座っていた彼は足を上げ、背もたれに体重をかけた。

 

「そ、そんなに驚く事じゃないだろ?骨折だって2,3ヶ月かかるし、」

 

確かアキレス腱は全治6ヶ月とかだったはずだ。つまり半年。

 

「そんなに酷い怪我なんですか?」

 

恐る恐るといった感じに聞いてきた。それを聞いて今度は彼が・・・と考え込んだ。

 

結論として別に隠す事ではないと、歩くことすら辛いし、木の板で固定までしているんだ……俺は間違って無くない?ここまで重装備…木の板は重装備に入るのか?ガーゼまで普通だし…固定している時点で…捻挫って固定するのか?わからない…つまり判断不可。俺の主観でいくしかないな。

 

重装備なんだ。ただの擦り傷には見えないはずだ。つまり彼女が天然だと言うことにしておこう。そう考えるだけで心がほのぼのするぅ……

 

いつまでたっても声を出さない彼を不振に思ったのだろうか。エイシンフラッシュは続けて言葉を続ける。

 

「ここで暮らしていけるんですか?」

 

彼女は足と腕を交互に見る。

 

「うん。」

 

彼は頷く。

 

「その野菜ってどこから取ってきたんですか?」

 

彼女は先ほどまで野菜が入っていた桶を見る。

 

「畑。」

 

彼は遠くにある大ログハウスを見た。

 

「…家庭菜園ですか?」

 

彼が見つめてあろう先を見る。だがログハウスの丸太があるだけで何も見えなかった。

 

「うん。」

 

彼は頷いた。

 

「こんな環境で生きていけるんですか?」

 

「生きていけるからここに居るんだよ?」

 

さも当然だという風に言った。

 

俺は例え骨折だろうが、爺ちゃん試験で餓死しかけようが、スイミングの訓練で溺れた時も、腹痛で死にかけたときもずっとここに住んでいる。強靭効果で風邪とかインフルエンザとかにはかからなかった。

 

もはや故郷だ。第二ではなく第一の故郷だ。

 

エイシンフラッシュはずっと考え込んでいた。うーんと顎に手を添えて地面を目に穴が開くほど覗いていた。そしてフンッと覚悟を決めたように表を上げる。その顔は、歴戦の戦士を思わせた。

 

「本当にありがとうございました。」

 

「お…おう?……どういたしまして…?」

 

「それではまた。」

 

彼女はそう言うと素早く靴を履いて走り出す。

 

いったいどうなっているだと、急な展開について行けず呆然としていた。彼女が扉をくぐって外へ行ったときに、靴下がまだログハウス内にあることに気がついた。そして思い出す。先ほど〈それでは”また”〉と言ったのを。

 

「ちょっと待って!何かぁっ……」

 

やらかそうと…していない……

 

まるで周りのことが見えていないように、またもや無視された。

彼は疑問でならなかった。彼女がまた、何か…そう何か、例えばお姫様抱っこでレース会場から逃げ出したり、例えば街中で止まってお姫様抱っこされている俺を周囲の写真内に収めるとか、何か問題が起きるのでは無いかと疑問が止まらなかった。

 

 

・・・

 

彼は動かなかず椅子に座ったままだった。お腹が減れば非常食のビスケットを食べれば良い。喉が渇いたらペットボトル水がある。変に動く気力がなかったのだ。外から小鳥の気持ちよく鳴いている。できれば小川の流れも聞きたい所だったが、思うだけに止めた。

高望みはせず謙虚に生きる方が色々とお得なのだ。

 

久しぶりの自然のミュージックに身を任せている時だった。最近は狩る、喰う、レース見る、寝るでこうほのぼのとする時間が足りなかったのだ。

 

心地良い。できればそよ風を直に感じながら、木陰と日光と雲が織りなす最高の気温で、芝生に身を任せ昼寝をしたいのだが、思うだけに止める。

 

ログハウスも案外快適だし、気温が一定で雨も大丈夫で…安心する木材のにおいで…濡れる心配がなくて……なくて……

 

彼が悲壮感にさいなまれていた時だった。小鳥のさえずりが聞こえないことに気がついた。そして同時にドスドスとまるでマンモスが行進しているような地響きが聞こた。

 

足音は一人。どんどんと近づいてきている。

 

彼は顔が真っ白になっている気がした。あれから3,4時間もたっていないはずだぞ。いや3,4時間もたったからか?

 

疑問の答えは与えられず、その原因は突如として視界に現れる。

 

ログハウスの扉の縁に手を掛け、ハァーハァーと呼吸を繰り返すウマ娘がいた。つい先ほど見た民族衣装のようは服装で黒い髪の少女がそこにいた。

 

彼は何か話す事も無く、口を大っきくあけ呆然としていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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