転生TS娘ちゃんは転移系ハーレム親友勇者の気を引きたい 作:布団から出られない
「あー彼女欲しい」
オレの名前は
ちょっと平均より身長が小さいことがコンプレックスな普通の男子高校生だ。
「琴、お前いつもそれ言ってるな」
こいつの名前は友田 慎二。
オレの親友だ。
今現在オレたち2人は学校が終わり、一緒に下校していた。
オレたち二人は幼馴染で、家も近い。
そのため、小学校の頃から現在に至るまで、ほぼ毎日二人で登下校をしている。
一時期ホモだなんだとクラスメイトに揶揄われたことがあって、お互いに距離を置いていた時期はあったが、クラスメイトも本当にそう思っていたわけではなかったし、ハグだとかそんなことをしていたわけでもない。
慎二だって気にしてなかったし、今思えばオレが気にしすぎていたのかもしれないな。
「なんだよ、お前は欲しくないのか? 彼女。バニーコスとかさせたくないのか?」
「あーそれはできれば欲しいけど。いや、バニーコスは別にいいが」
「欲しいけど?」
「今はお前と一緒に遊ぶ方が楽しいからな」
「なっ!」
そうだった。
こいつはそういうやつだった。無意識にこっちが恥ずかしくなるようなことを平気で言ってくるのだ。
まあ普通に嬉しいことには変わりないのだけれども。
オレ達は二人で道を歩き続ける。
周りに他の学生の姿はあまり見られない。少なくとも同じ学年の生徒の数は1つとしてない。
当然といえば当然だ。オレと慎二は帰宅部で、本来なら皆が部活動に勤しんでいる時間帯なのだから。
今周りに見える生徒はおそらく受験で部活動を引退した三年生だろう。
中には受験のストレスからなのか、イライラしているのを隠しもしない三年生もいる。
「あそこの三年生、めっちゃイライラしてんな………」
「受験で大変なんだろうな。俺達も来年にはああなってるかもしれないぞ」
何気ない会話。
目の前にいる三年生が特別気になったわけではない、本当に気まぐれで、たまたま目に入ったからなんとなく呟いただけだった。
だからその話はすぐに流れ、彼女が欲しいだのなんだの話へと戻ったのだが、異変が起こったのはしばらく経ってからだった。
「あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“あ“あ”あ”あ“」
突然の絶叫。
発しているのは先程話題に上がった例の三年生だ。
突然の発狂に、オレと慎二は驚愕する。
周りの受験生達も、何事かと視線を向け始める。
例の三年生はひとしきり発狂し終えた後、手に何かを持って振り返り、一直線に慎二の元へ向かってくる。
慎二は状況が理解できず、その場に呆然としている。
「慎二!」
咄嗟に動けない慎二を突き飛ばし、例の三年生と対峙する。
彼がその手に持っていたのは、包丁だった。
「琴!」
気づいた時にはもう遅い。
オレは既にその三年生の手によって、思い切り腹を裂かれていた。
刺すだけではない。包丁を刺した後、内臓をかき混ぜて腹を引き裂いたのだ。
明確な殺意。
絶対に殺すという意志を感じた。
例の三年生が慎二の元へ向かっていく。
オレは朦朧とする意識の中で、慎二の腹が切り裂かれていく光景を見た。
それが人生で最後に見た景色となるとは、5分ほど前までは思わなかった。
オレと親友の人生は、何の前触れもなく、1人の男の発狂によって突然幕を閉じたのであった。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
「オギャァア!!!!! オンギャァァァァァアアアア!!!!!」
次に目が覚めた時、
目の前には見知らぬ天井と見知らぬ女性の姿。
耳に聞こえてくるのは赤ん坊の声。
しかし、病院というわけでもない。
声も出ない、否、厳密にいうと出してはいる。
(ああ‥‥オレ……………)
これらの情報を処理するのに、10分ほど時間がかかったが、やがてオレは今自分がどのような状況にあるのかを理解した。
(転生………したんだな………)
オレの転生にはトラックも神も絡んでこなかったらしい。まあ正直、交通事故で転生だなんてトラックの運転手さんも責任問われて可哀想だし、そういう人がいないって意味では良かったのかもしれない。
例の受験生は殺そうと思って殺してるわけだしまた別ね。
目の前の見知らぬ女性はおそらく母親だろう。
優しそうな人だな……でも何で修道服着てるんだろ?
ああ、ここ孤児院か。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
と、そんなわけで、異世界の孤児院に転生したオレは、現在前世で死んだ年齢、16歳となっていた。前世と違うところで言えば、女になっていたことだろうか。
そう、女になっていたのだ。
正直最初はかなり困惑したし、しばらく年が経って6歳くらいになった時には部屋の中でおままごとをしているよりも、男の子達と外で遊び回る方が好きだったくらいだったから、あまり自分が女であるという認識を自分の中で固めることはなかった。
だから今でも性自認は男よりではあると思う。
そしてオレが転生した世界は所謂剣と魔法のファンタジー世界ってやつらしく、魔族とかも存在してるらしい。
勿論魔王と勇者もいる。
まあ勇者に関しては人類側が召喚する形になるのだが。
ちなみに、勇者は今年召喚されたばかりだ。
「俺は絶対に勇者パーティの一員になってやるぞー!」
あちらで勇者御一行の仲間入りを果たしたいと叫んでいる男の子がいるが、実はこの孤児院に近いうち勇者が来て、1人仲間として連れて行くらしい。
というよりも、昔から国とこの孤児院との間でそうするように決まっていたんだとか。
だからこの孤児院では小さい頃から魔法や剣技の訓練が行われていた。
普通それを行うのは男子だけなのだが、剣と魔法のファンタジー世界に憧れていたオレは、女の身でありながら訓練に参加した。
当然、男子諸君からはブーイングを食らった。
「なあミコト。女のお前が勇者パーティに入れるとでも思ってんのか? 無理に決まってんだろ! 勇者パーティに入るのは、この俺様だって決まってるんだからな!」
「ダースさんは孤児院の男子の中で一番強いからな!」
「勇者パーティに入るのはダースさんに決まってるぜ!」
今まさにこう言われているように、今でもあまり快くは思われていない。
ちなみにオレの今世の名前はミコトと名付けられた。
まあそんなことはどうでもいい。
「ふーん。でもお前オレより弱いじゃん」
そう。このダースとかいうやつ、オレより弱いのだ。
というより、オレが強すぎた。
理由はやはり訓練の量の差だ。
他の子供達は勇者パーティに淡い憧れを持っていた程度だった事に対し、オレは勇者パーティになる、そのことに人生をかけようとまで思っていたからだ。
いわば将来の目標に設定していたわけだ。
それに、悲しいことに今世のオレには友達がいなかった。
だからこそ、本来他の孤児院の皆が遊んでいる間、ずっと訓練に熱中することができたのだ。
まあ、だからこそ余計に目障りなのかもしれないが。
「調子に乗るなよ……!」
ダースが殴ってくるが、オレはかわしてダースの事を軽く捻る。
「いってぇ……」
「「ダースさん!!」」
「安心しろよ。オレは勇者パーティに入るつもりはないからさ。オレより弱いダースくん」
「クソっ! 覚えてろ! お前ら! 行くぞ!」
「「はい!!」」
小物悪党みたく、ダースとその取り巻きは去っていく。
先程勇者パーティには入らないと言ったが、それは嘘でも何でもなく、オレは勇者パーティに入るつもりはない。
勇者パーティに入る為に人生をかけたとか言ってるのに何言ってるんだ! と思うかもしれないが、これには事情があるのだ。
昔は入るつもりだった。だが、勇者に関する記事を読んでいるうちに勇者パーティ入りする気が失せたのだ。
何故かって?
勇者パーティ、勇者以外に男がいないのだ。
所謂ハーレム系勇者というやつだ。
流石にハーレム要員入りは避けたい。
仮に勇者パーティに加われば、その時点で勇者に貞操を奪われる危機が生じてしまう。
仮に勇者が無自覚にハーレムを築くタイプの鈍感系主人公だったとしても、周りから勇者のハーレム要員として見られるのは本当に嫌なのだ。
男女均等なパーティなら、それぞれが英雄として純粋に讃えられるだろう。
しかし、男は勇者1人、他は全て女性となればそうはいかない。
どうしても注目を浴びるのはただ1人の男である勇者だ。
多少は女性陣も英雄として讃えられるだろうが、やはり勇者の周りにいるハーレム要員と見られがちになる予感がしてならない。
だからこそ、オレは勇者パーティを諦めたのだ。
しかし、この時のオレの考えは後に変わることとなる。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
「勇者様が来たぞー!」
「俺を仲間にしてくれー!」
「サインください!」
孤児院に勇者がやってきた。
おそらく、この中から1人勇者パーティに加入させるのだろう。
しかし、孤児院の中に勇者パーティの戦力になりうる奴がいるのだろうか、と俺は思う。
強いて言うならダース辺りだろうが、それは他の孤児院の奴らと比較した時の話だ。
勇者パーティの戦力として考えるにはそれこそ不十分だろう。
まあ、オレには関係ない。
別に誰が勇者パーティに加入しようが、オレはもう勇者パーティの加入を…………
諦めた、つもりだったんだけどな。
気が変わった。
本当に、たった今、勇者の顔を見た瞬間に、だ。
もし仮に、ここにきたのが本当にハーレム築いてニヤニヤしてるだけの勇者だったりしたら、本当に加入するつもりはなかったが、その心配はないだろう。
何故って?
その勇者が、オレのよく知っている親友、友田 慎二だったからだ。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
「よっ! 親友!」
オレは久しぶりの親友との再会に、心を躍らせる。
昔みたいなバカ騒ぎがもう一度できると考えると、楽しくて仕方がない。
そんな気持ちで親友である慎二に声をかけたのだが……
「は? 親友?」
オレはすっかり自分が前世とは違う姿で生きているということを忘れていた。
いや、心のどこかでは分かっていたんだと思う。
けど、オレの中で、こいつなら、親友のこいつなら、姿が変わっても分かってくれるんじゃないかなんて、根拠のない願望があったんだろう。
だから、声をかけた時、オレの存在に気づいてくれなかったことに、とてもショックを受けた。
オレの心の中に、何か少し穴が空いたような気がした。
「い、いや……えーと………」
「あの、勇者様に何か御用でしょうか?」
どうすればいいかわからなくなってしまったオレに、勇者パーティのメンバーである女性の1人から声をかけられる。
黒髪ロングの清楚そうな女性だ。
胸はおっきい。
隣に目を向けると、髪をツインテールにした金髪の生意気そうな子供の女の子がいた。
こちらも胸の方は大きくていらっしゃる。
さらに隣には、紅の髪をもち、少し吊り目気味でウサミミの……………
………は?
「バニーじゃねぇか!?」
あのむっつり野郎! バニーコスに興味ないとか言っときながら、ちゃっかり仲間にバニーコスさせてんじゃねぇか!?
おまけに胸もでかいし………………。
そういえば、この前家に遊びに行った時、ベッドの下にバニー姿の女性が載ったエロ本隠してたことがあったな……。しかも巨乳の!
「やっぱりバニーに興味あるんじゃねぇか嘘つくんじゃねぇぞコノヤロー!」
「はい? ばにー?」
「何言ってるんだこいつ」
「………?」
女性陣は三者三様、変人でも見るかのような目でオレを見る。
というか変人だと思って見てるんだろう。
対して、慎二の反応はというと……
「………琴? お前………もしかして琴か?」
「だったら何だ!? オレは失望したぞ!! まさか……まさかこんなハーレムを形成しやがっていたとはなぁ! もう絶交だ! 二度とオレの前に姿を見せるんじゃねぇ!」
「待て待て待て!! 誤解だ! 落ち着け!」
「うるせぇ!!!! オレは知ってるんだからな!! お前がクラスのマドンナの兎馬さんが好きだったってことをなぁ!?」
「なんでお前がそのこと知ってるんだ!? 俺は言った覚えないぞ!? ていうか今はそんなこと関係ないだろ!!」
「………なんだか、楽しそうですね…」
「なんであんなに仲良いの…? 私の方が………」
「昔の知り合いとか?」
とまあ、こんな流れで、オレは勇者パーティに加入することとなった。
昔みたいにバカ騒ぎしたおかげか、いつのまにかオレの心の中に空いた穴が塞がったかのような気がした。
実はダース君、琴ちゃんくんに惚れてたりします。
喧嘩ふっかけてるのも好きな子にちょっかいかけたくなる小学生みたいな感じのノリです。最初にそういう絡み方をしてしまったので、そういう風にしか話せなくなっちゃったって感じですね。でも殴るのはよくないね、うん。
ちなみに受験生くんは元々やばい人だったので受験だからどうこうとかはあんまり関係ないです。ただの通り魔だとうーんってなったので受験生が餌食になっただけです。受験生そのものに罪はありません。
受験生への熱い風評被害…………申し訳ない。