IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

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~前回のあらすじ~
今回は織斑一夏が前回のあらすじについて話す。
前回は日常回とのことで短い話を複数纏めていた。
暁人の訓練中の身体の違和感についてや、箒にお兄ちゃんと言った事についてのナゾ、妹に手紙を送る動機など不可解な点が多く見られた。

暁人の考えている事とは?
暁人の目的とは?

IS ~クロノス~ 13話:中国から来た転校生

やっと、13話目でセカンド幼馴染が登場!!


13話:中国から来た転校生

2022年4月20日(水)

IS学園

第1アリーナ・ステージ

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、黒野。試しに飛んでみろ」

 

お兄ちゃん騒動より2日後。

4月も下旬に入り、遅咲きの桜の花びらも散ってしまったであろう今日この頃。

俺は今日もこうして鬼教官(千冬姉)の授業を受けていた。

 

「早くしろ一夏。熟練したIS操縦者は展開までに1秒とかからないぞ」

 

急かされて、俺は意識を集中する。

ISは一度最適化処理(フィッテイング)したら、ずっと操縦者の身体にアクセサリーの形状で待機している。

セシリアは左耳のイヤーカフス。暁人は首のチェーンに通している指輪。俺は右手首にブレスレット。

俺はそのブレスレットに意識を集中させて――

 

(こい、白式)

 

そう心の中で呟くと、右手首から全身に薄い膜が広がっていくのが分かる。

約0.6秒の展開時間。

俺の身体から光の粒子が解放されるように溢れて、そして再集結するようにまとまり、IS本体として形成されて俺の身体に装着される。

ISを纏ったらふわりと身体が軽くなる。各種センサーが意識に接続され、世界の解像度が上がる。

ISを無事に展開できたことを認識したところで、他の2人はすでにそれぞれのISを展開し終わっていることに気付いた。

どうやら、俺が一番遅かったようだ。

 

「よし、飛べ」

 

言われて、セシリアと暁人の行動は早かった。

急上昇し、遥か頭上で制止する。

俺も遅れて後に続くが、その上昇速度はセシリアや暁人と比べると遅いものであった。

 

「何をやっている。スペック上ではその2機と比べて白式の方が性能が上だぞ?」

 

通信回線から鬼教官のお叱りの言葉を受ける。

『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』をするらしいが、なんとなく感覚がつかめない。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

「そういわれてもな。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いているんだ、これ?」

 

白式には翼状の突起が背中に二対あるが、どう考えても飛行機などと同じ理屈で飛んでいない。

大体、翼の向きとは関係なく好きに飛べるのだからますます訳がわからない。

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ?まず反重力力翼と――」

「……また今度にしておくよ」

「セシリア、一度にそんなに詰め込んでも効果が薄いよ」

「暁人……」

「一夏には繊細なことを求めない方がいい。軽く説明しておけば、あとは実戦で()()にする教え甲斐のないタイプだからな、コイツは」

「おい、暁人?」

「感覚派……という事ですか?」

「いや、こういうタイプは訓練で教えたことが半分できればいい方で、土壇場でやっとできるようになる」

「成長が実感し辛い、面倒くさいタイプなのですね……」

「………」

 

二人が俺のことを好き好きに言っているのを聞きながら、俺はいつもの三人と一緒にIS訓練(箒は見学+助言)をおこなった時の内容を思い出す。

箒が完全に感覚派で擬音が多く説明し、セシリアは完全に理論派(?)で数字を用いた細かすぎる説明をし、暁人は両極端って感じだった。

まず初めに箒と暁人に『ぐっ、とする感じだ』や『くん、って感じ』と教えられたが、まったく意味がわからなかった。

箒は昔からそういった説明をしていたなと懐かしんだが、暁人も同じタイプだったんだな……と、その時は思っていた。

そういった説明をされた後に、暁人はセシリアと訓練の話をした際に専門用語や細かい手順などをセシリアと言い合えるぐらいに話が出来ていたんだ。

 

(その時は両極端な奴と思ったけど……今の話から、俺には説明は最低限でいいって思っていたからだったのか?)

 

そういえば、千冬姉も初めは簡単に説明をするけど、後は身体を動かせって感じでの訓練だったと思い出した。

 

「専用機持ちの三人は、急降下と完全停止をやってみろ。目標は地表から5センチだ」

 

そんなこんな考えていると、千冬姉から指示が来たので俺は千冬姉がいる地上をみた。

地上200メートルにいるのに、千冬姉がインカムを使っている姿やまつ毛などもはっきり見えた。

本来、肉眼で見えない距離の物が見えるようになるのはISのハイパーセンサーによる視力補正によるものだった。

 

「了解です。では一夏さん」

「お先」

 

そう言って二人はすぐに地上に向かう。

二人の姿はぐんぐんと小さくなり、俺はその姿に感心する。

 

「流石だなぁ……それにしても暁人は何であそこまでISを動かすの慣れているんだ?……やはり、天才って奴なのかな?」

 

そんな疑問を口にしていると、どうやら二人は無事に完全停止をクリアしたらしい。

続いて俺――そう思ったところで気付く。

どうすればいいのだろうかと。

 

(ISの操縦はイメージが大切なんだよな?……じゃあ、どういうイメージをするべきなのか)

 

そう思い、俺がまず考えたのは、暁人との戦いで感じたあの感覚についてだ。

クラス代表を決める戦いから時間が経ったが、あの時に感じた全能感は今でも少しは覚えている。

 

(もう一度、あの感覚を取り戻せば――暁人、お前に近づけるか?)

 

俺はあの時の感覚を必死に思い出す。

そう、あの時の――

 

 

 

 

 

暁人の背面に回り込んだあの感覚を

 

あの時の記憶を手繰り寄せた瞬間、俺の身体は地上に向かい急加速をし――

 

俺は地面に着いた。

いや、この言い方には語弊がる。

俺は地面に墜落して大穴を開けた。

 

千冬姉からこっぴどく叱られた。

 

 

 

 

 

2022年4月20日(水)

IS学園

正面ゲート前

 

夕方。

IS学園の正面ゲート前に、小柄な身体に不釣り合いなボストンバックを持った少女が立っていた。

 

「ふうん、ここがそうなんだ」

 

艶やかな黒くて長い髪を黄色い髪留めで左右それぞれ高い位置で結んだツインテール。

制服は大きく改造されており、左右の肩が露出するようになっている。

ミニスカートで大胆にも太ももを晒していることから、他の生徒と比べると肌の面積が圧倒的に大きい服装だ。

しかし、靴も通常のものではなくサウンドイエローのコンバットブーツを履いているためか、セクシーというよりは彼女の活発さを印象付けていた。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ?」

 

上着のポケットから一切れのくしゃくしゃな紙を取り出す。

どうやら彼女は活発だけではなく大雑把な性格でもあるようだ。

 

「本校1階総合事務受付……って、だからどこにあんのよ」

 

文句を言っても、今この場には自分以外誰もいないのだから返事が返ってこない。

少女は多少のイライラと一緒に紙を上着のポケットにねじ込む。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

ぶつくさと文句を言いながらも、その足はとにかく動いている。

思考よりも行動。

そういう少女なのだ。

よく言えば『実践主義』、悪く言えば『後先を考えない』である。

 

(――ったっく、出迎えがないとは聞いていたけど、ちょっと不親切すぎるんじゃない?うちの政府の連中にしたって、異国に15歳の少女を放り込むとか、なんか思うところないわけ?)

 

そう、彼女の母国は日本ではない――中国だ。

とはいえ、この少女にとっては日本は第二の故郷であり、思い出の地でもある。

つい去年まで日本にいたが、諸事情があり中国に帰っていて、そして再び日本の地に足を踏み入れたのだ。

 

(誰かいないかな。生徒とか、先生とか、案内できそうな人)

 

学園内の敷地が分からないなりに歩きながら、きょろきょろと人影を探す。

まだ夕日であたりを照らしていることから、遅い時間帯ではないのだが、彼女の運が悪いのか他の人が見つからないでいた。

 

(あーもー、面倒くさいなー。空飛んで探そうかな……)

 

少女はそのようなことを一瞬考えたが、極厚な学園内重要利用規約と知人である千冬さんの子を思い出して止めた。

まだ転入手続きが終わっていないのに学園内でISを起動させたら……

 

(うぅ……絶対に千冬さんから説教されるわね)

 

そうじゃないにしても最悪の場合、外交問題にも発展する。

それだけは本当に止めてくれと、何回も懇願していた政府高官の情けない姿を思い出して、少女の気分がちょっと晴れた。

なんたって、自分の倍以上も都市のある大人が何度も頭を下げてるのだ。

少女は昔から『年をとっているだけで偉そうにしている大人』が嫌いであった。

そして、そんな彼女にとってISが登場してからの世界は非常に心地が良かった。

男の腕力は児戯――女のISこそが正義。

それもまた気分がいい。

少女はかつて、『男っていうだけで偉そうにしている子供』が大嫌いな子供だった。

 

(――でも、アイツは違ったなぁ)

 

とある男子のことを思いだす。

その男子のことは、少女にとって日本に帰って来る最大の理由になっている思い出だ。

 

(――元気かな、アイツ)

 

まあ、元気なんだけど。

元気のない姿は……一度しか見たことがないが、基本的に元気だ。

そういうやつだから。

 

「だから……でだな……」

「そう……こうで……」

 

ふと、声が聞こえる。

視線をやると、()()()()がIS訓練施設から出てくるようだった。

この国でもIS関係の施設は似たような形をしているから、すぐにそうだとわかった。

1人はIS学園の白い制服を着た黒い髪のポニーテイルで、もう片方は淡い紫色のジャージで紫が混じった黒い髪でショートヘアだった。

よく見れば、()()()()の雰囲気や顔がよく似ていることに気付く。

(双子かな?IS学園に姉妹して入学って珍しいわね?――ちょうどいいや。彼女たちに案内してもらう)

 

声をかけようとして、少女は小走りに二人の元へと向かう。

 

「だ・か・ら!そのイメージがわからないんだよ!!」

 

不意を突かれて、少女の身体はびくんと震えてその足が止まる。

男の声――それも、知っている声に凄く似ている。

いや、おそらく私の知っているアイツだ。

予期していなかった再開に、少女の鼓動が早鐘を打つ。

 

(――あたしってわかるかな。わかるようね?1年ちょっと会わなかっただけだし)

 

そう自分に言い聞かせつつ、けれども自分だとわからなかったらどうしようと不安になる。

 

(――大丈夫、大丈夫よ!それにわからなかったら、それだけ私が美人になったからだし!!)

 

スーパーポジティブシンキングスイッチを入れて、少女は再び歩みを再開する。

 

「いち――」

「一夏、いつになったらイメージが掴めるんだ?」

「そうだぞ一夏。折角、箒ちゃんも一緒になって教えているんだぞ?」

 

私は()()()()()()()()()が一夏に話しかけている姿を見て、再び足が止めた。

 

「あのな、お前ら説明が独特過ぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』や『ぴゅーって感じ』って」

「……くいって感じだ」

「……ぴゅーって感じ」

「なんか、そういう所は本当に兄妹っぽいよな」

「何を言う?私たちは兄妹だそ?」

「おい、一夏?」

「……ごめん」

 

会話の内容がよく聞こえなかったが、どうやら三人の中は良好の様だった。

そんな仲の良い男女三人は歩いてどこかに行ってしまった。

 

(――なに、あれ?あの女子たちは何で親しそうなの?っていうかなんで名前で呼んでんの?)

 

さっきまでの胸の高鳴りは嘘のように消え、今の私の胸の中はふつふつと怒りで溢れかえりそうだった。

 

(女の子を二人も侍らせて楽しそうだったわね一夏?しかも双子?ふーん、へーん、もしかして、そういう趣味だったってわけ?)

 

それからすぐに総合事務受付は見つかり、転入の手続きを済ませた。

 

「ええっと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、凰鈴音(ファン・リンイン)さん」

 

愛想のいい事務員の言葉もどこか遠くから聞こえるように感じる。

少女――鈴音は、見るからに不機嫌ですといわんばかりに唇を尖らせながら聞いた。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

「ああ、噂の男子た――いえ、男子ね?彼は1組よ。凰さんは2組だから、お隣ね。そうそう、あの子1組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんだけはあるわね」

 

女性の噂好きは万国共通。

それを体現したかのような事務員の姿を一瞬冷ややかな目で見たが、少し彼女の言葉がおかしかったことに気付いた。

 

(何か言いよ淀んだ感じがしたわね?なんでかしら?)

 

そう思いつつも、私は自分の聞きたいことを聞く。

 

「2組のクラス代表って、もう決まってますか?」

「決まってるわよ」

「名前は?」

「え?ええと……聞いてどうするの?」

 

鈴音の様子が少しおかしいことに気付いたのか、事務員は戸惑ったように聞き返す。

 

「お願いをしようとかと、思って。代表、私に譲ってもらおうかと思って――」

 

彼女のにっこりとした笑顔には、底知れない怒りを感じられた。

 

 

 

 

 

2022年4月21日(木)

IS学園

1年1組の教室

 

SHR前のいつもの朝。

俺は自分の席でペラペラとIS武装のカタログを捲る。

そして、俺は目的の『商品』を見つけて、つい頬が緩んでしまった。

 

(よし、あの社長しっかりと作ってくれたようだな。これで当面の火力の確保ができたし、IS学園を襲撃する――)

「何を読んでいらっしゃいますの?」

 

俺が()()()()()()()()進んでいる事にほくそ笑んでいると、セシリアから声がかかった。

 

「IS武装のカタログだよ。ほら、俺のISってブレードとアサルトライフルしかないから追加して火力の強化をしたいなーって思って」

 

セシリアは俺の話を聞いて頷きつつ話を続ける。

 

「そうでしたの……いえ、本を読んで急に笑うものですから……」

「ああ、ゴメン。気持ち悪かったかな?」

「ええ、気味が悪かったですわ」

「……そ、そう」

 

俺は多少傷つきながら、セシリアのことを考える。

()()()()()()()()、俺が積極的に関わったことで、セシリアは随分と変わった。

遠慮なく俺や一夏と話すようになった。

 

(その分、一夏に恋心を抱かなくなったのは予想外だったな――特に問題はないけど)

 

 

 

 

 

まあ、一番の予想外は箒ちゃんだけど

どうして、ああなっちゃったんだろう……

 

今は箒ちゃんのことよりも、セシリアのことだ。

お嬢様としてどうかと思う言動が目立つようになったことに多少罪悪感のようなものがだな……

 

「ところで、どのような武器を追加する予定ですの?」

「ん?ああ、『カグツチ』のレールガンだよ」

「『カグツチ』?確か、メジャーなメーカーではありませんでしたわね?」

「研究が主流だし最近目立った結果を残せてないからね」

「……それなのにも関わらず、そのメーカーの武器を選ぶのですの?」

「だって、レールガンだぜ?名前だけでもかっこいいだろ」

「はぁ……そう言ったところはわたくしにはわかりませんわ」

 

セシリアはやれやれと言いたげに両手を上げながら肩をすくめた。

俺はなんとか誤魔化せたと思い安堵する。

 

「ん?」

「あら?」

 

セシリアと話をしていると、突然クラス全体がざわめき出したので、なんだろうと思い教室を見渡したら教室の入り口に人影を見つけた。

本音さんと同じ位の身長とツインテールを見て俺はその人影が誰なのかすぐにわかった。

 

「鈴音か……もうそんな()()()

「暁人さん?なにか言いましたか?」

「いや、あれが噂の転校生かって……」

「ああ、あの方が例の……」

 

 

 

 

 

「こ、この女の敵!!」

「はぁ!?」

「「………」」

 

件の人物が突然大声で叫んだ。

俺達はその内容に呆気を取られてしまい少しの間無言になる。

 

(えーと、状況を整理すると、鈴音が教室に乗り込んだところ、一夏に対して女の敵って言ったのか?……どうしてだ?)

 

俺はいつもと違う状況で、頭が混乱していた。

 

「……何かあっちで面白そうな事になりそうだから近くで話を聞きに行かないか?」

「……そうですわね」

 

俺達はそう言い、女の敵(推定)である一夏と転校生の近くに移動した。

因みに、現場はかなり修羅場と化していた。

 

「一夏……?これは一体どういうことだ?」

「い、いったん待ってくれ箒!!……おい、(リン)!!突然、何を言い出すんだ!?」

「昨日、私はこの目ではっきりと見たんだからね!!」

「み、見たって……いったい何を?」

「双子と楽しそうに一緒にいる姿をよ!!」

「……うん?双子?」

「そうよ!!ふ、双子を侍らせて両手に花の状態だったわ……いい身分になったわね一夏!!」

「り、鈴?俺の知り合いに双子はいないぞ?」

「そことそこにいるじゃない!!」

「「え?」」

 

鈴音は箒ちゃんと俺を順々に指さす。

俺と箒ちゃんは事態が理解できずにお互いの顔を数秒間見つめ合った。

そして、お互いに同時にポンと手を叩いた。

 

「……そういえば、昨日は一夏と兄さんの訓練終わりに一緒に帰ったな」

「……そして昨日の俺の訓練は体力作りがメインだったから制服じゃなくてジャージで運動をしてたな。帰りもそのまま帰ったけ」

 

俺たち二人は昨日のことを振り返りながら話す。

そうしていると、俺たちの話を聞いた鈴音の方はある程度落ち着いたのか……あるいは自分が勘違いしていることに気が付いたのか、先ほどまで一夏を問い詰めていた勢いがなくなっていた。

 

「今、アイツに向かって兄さんって……」

「ああ、鈴……お前が言っている短髪の方の名前は黒野暁人。名前からわかる通り、一応男だ」

「一応ってなんだ一応って?……まあ、確かに女顔だけど」

「え?そいつ男なの!?」

「ああ、初めまして転校生。紹介のあった通り、俺の名前は黒野暁人。苗字じゃなくて名前で呼んでくれ」

「私の名前は篠ノ之箒だ。できれば、私も名前で呼んでほしい」

「わ、わかったわ。私の名前は凰鈴音よ……それにしても、同い年の兄妹なのに苗字が違うだなんて……そう、複雑な家庭環境なのね」

「「「………」」」

 

……言えない。

俺と箒ちゃんは血が繋がっていないことと、ここ数日で何故か箒ちゃんが俺のことを実の兄だと思い込んでいる事なんて……

 

「複雑な?……いや、私たちはだな――」

「ちょっと、箒ちゃんは黙ってようか」

「ちょ、兄さん!?――モガモガ」

 

俺は混乱の元である口を塞いで、鈴音に話を聞かれないようにする。

 

「ん?どうしたのよ?」

「別に何にも?」

 

正直、本当のことを話しても面倒なので今は黙っておくか。

 

 

 

 

 

それに、後で真実を知った時の反応も面白そうだし

ほら、鈴音って面白い反応をしてくれそうじゃない?

あと、この後に転校して来る2人にも暫くの間は黙っておくか……

一夏には、折を見て話すなどと嘘をついておいて、セシリアにはそっちの方が面白そうだからって話しておいて根回しをして、転校生たちが気付かないようにしておこう。

 

(まあ、おふざけもほどほどにして――)

 

俺はそう思いながら箒ちゃんの方を見る。

 

「……?どうした兄さん?」

「何でもないよ、箒ちゃん」

(早めに治療してあげないとな……)

 

これマジで、7月どうすんだよ……




~次回予告~
鈴音「色々言っちゃっているけど大丈夫なの?」
暁人「まあ、そろそろ本格的に動かないといけないし」
鈴音「ああ、そう」
暁人「それにしても、鈴音やラウラは深く突っ込んでこないから楽だよ」
鈴音「いや、アンタに私が色々言ったところで無駄だから言わないだけよ?」
暁人「……そう」
鈴音「なんだかんだ言って、色々感謝はしているわよ」

次回、第14話:約束と『貸し』
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