えー、本来はボケカップルの内の片方があらすじを担当する予定だったのでけど、
まともなあらすじにならないから、またあたし、凰鈴音が担当するわ。
『わ~、パチパチ~』じゃないわよ……
ボケカップルふたり、本気でぶっ飛ばすわよ?
はぁ……前回はあたしと暁人が夜に遭遇して、楯無さんの部屋に押しかけたわね。
暁人が急に喧嘩売ってきたから、流石に温厚なあたしでも怒りを覚えたわ。
そして、そのままアリーナに行って……
……そこのボケカップル、痴話喧嘩しないでもらえる?
……はぁ?……逢引?……不倫?
……暁人とあたしが?
ハッ、天地がひっくり返るくらいあり得ないわね。
2022年5月16日(月)
IS学園
第2アリーナ・観客席
今日はクラス
第2アリーナにはたくさんの生徒達が押し寄せていた。
噂の新入生である織斑一夏と凰鈴音が戦うからアリーナの席は満席となっていた。
それどころか、席に座れなかった生徒達が通路にまで立って試合を見ようとしている。
全校生徒の7~8割は来ているのではないだろうか?
「………」
そんな生徒達が沢山いる通路に私がいる。
隣にいる幼馴染の気配を感じながら、眼鏡を通してボーっとアリーナのステージを視界に収める。
姉さんと同じ水色の髪。
姉さんと同じ赤い瞳。
だけど、私は姉さんと違う。
姉さんと比べて背が小さい。
姉さんと比べてスタイルがよくない。
姉さんと比べて人と話すのが得意じゃない。
姉さんと違い、私は出来損ないだ。
私の名前は
1年4組のクラス代表を務めている。
ある事情により専用機を所有していない日本代表候補生。
……そして、一応、クラス
退屈を紛らわすように長い髪をくるくると指でいじりながら、私がこの場所にいるのかを思い返す。
私の試合は第2試合からなので、第1試合が終わってからの出番となる。
そうなると、他の人の試合中は暇になるので、更衣室で待機することも考えた。
備え付けられているモニターで他の人の試合を見ることもできたけど、モニターで見るよりはステージで大きく見れた方が良いだろうと考えて観客席に来た。
そしたら幼馴染であり、従者である本音と偶然鉢合わせしたので、一緒に第1試合を見ることになった。
……それは、別にいいんだけどね?……うん、だけどね……本音?
「はい、どうぞ♪ほーちゃん♪」
「ありがとう、くろろん♪」
男子が満面の笑みで本音にジュースを手渡す。
本音にジュースを渡し終えたら、その男子は私の方を向く。
「更識さんもどうぞ♪」
「ありがとう……あと簪って……呼んでいいから……」
「わかりました、簪さん♪」
……なんで、黒野くんも一緒にいるのかな?
黒野くんが持ってきたジュースを受け取って暫く経った後に私は疑問に思ったことを口にした。
「……黒野くんは……こんな所にいていいの……?」
黒野くんやオルコットさんたちが放課後に織斑一夏と一緒に訓練をしているという話はよく聞く。
……あまりクラスメイトや他の生徒と関わらない私でも知っている。
「……織斑一夏の……近くで応援とかは……?」
「ん?ああ、うん。だって練習中はともかく試合中でしょ?ボクシングのセコンドでもあるまいし、わざわざピットまでついていって俺に何が出来るって話だよ」
「そう言われれば……そうだけど……結構ドライなんだね……?」
「俺たちは出来るだけのことはやったさ。あとは
「……う、うん……」
先ほどまでの緩い雰囲気とは異なる落ち着いた様子で正論を告げる姿に困惑する。
まるで、大人と話しているような気分となり、まだまだ自分は子供だと言われているような気がして、少し委縮してしまう。
「……あ……れ……?」
「どうかした?」
「……今私は……織斑一夏の話をしていたのに……」
ふと、先ほど黒野くんが言った内容に私は違和感を覚えた。
「……戦う本人たちって……どういうこと?……なんで凰さんも含めるような言い方をしたの?……」
「……あー」
私がそう言うと、黒野くんはばつの悪そうに頭をガシガシっと強く搔いた。
「それはね、試合を見ればわかるよ」
すると黒野くんは観念をしたかの様子を見せてそう呟いた。
IS学園
第2アリーナ・ステージ
俺はアリーナの上空で、ここ1ヵ月の記憶を思い返していた。
突然、部屋にやって来た
千冬姉に
箒のお兄ちゃん発言でかなり参っていた
鈴に『貧乳』と失言をしてしまい、更に怒らせてしまったのが約1週間。
……そして、俺と暁人の『ウ=ス異本』が出回っている事を知ったのが2日前で、その『ウ=ス異本』の回収作業に男2人で奔走したのが昨日。
俺はこの1ヵ月の間、箒やセシリア、暁人たちと訓練をしつつ、様々なことを経験して、クラス
「………」
本当はクラス
(そんな鈴はというと……)
俺はチラリと目の前に視線を向ける。
その視線の先では、鈴は自身のISである『
鈴のISは暗すぎず明るすぎない独特な赤いカラーリングをしている。
そしてセシリアのブルー・ティアーズと同じく
……セシリアのISと同じという事は、鈴の機体も第三世代ということ。
つまり、イメージ・インターフェイスを用いた何ならかの特殊兵装を搭載しているよな……詳細は分からないけど……
(何で俺は事前に鈴のISを調べなかったのだろうか……)
『それでは両者、既定の位置まで移動してください』
俺が自分の準備不足に対して後悔をしていると、アナウンスが聞こえたので指示に従って移動する。
そうすると自然と鈴と向かい合って、お互いの顔がよく見える位置になったのだが――俺は鈴の雰囲気に違和感を感じた。
「……なによ?」
(なんだ?久しぶりに対面をしたせいなのか、いつもの鈴とは違うような気がする?)
「いや、なんでこうも落ち着いているだって思ってさ」
自分は二度も鈴を泣かせたり怒らせたりしているので、俺は試合が始まる前に何か言われたりするのかと身構えていた。
「ん?……ええ、それはね――」
鈴が淡々と話していたところに、ビーッと試合の開始を知らせるブザーの音が響いた。
「今、この瞬間の為に怒るのを我慢していたのよッ!!」
「ッ!?」
そして鈴は怒声と共に怒りを解き放ち俺に急速接近して来た。
俺は鈴から放たれた怒りの圧力に身が竦み動きを止めてしまった。
(やっぱり、怒ってた!?)
そう思いつつ鈴がいつの間にか手に握られていた青龍刀2本の柄同士を繋げたかの様な
……単純に考えて青龍刀二本分の質量と日本刀一本分の質量がかち合ったら後者が負けるのは当然だ。
重い金属音を響かせながら、『雪片弐型』は腕ごと弾かれ、俺は体勢を崩してしまった。
そして、目の前の代表候補生は、そんな隙を見逃してくれる相手ではなく、追撃がやって来た。
「初撃はなんとか防いだわね……けど!!」
「ガハッ」
鈴はそう言いつつ、がら空きになった俺の左わき腹に思いっきり蹴りを入れた。
俺が悶絶している最中、鈴は追撃として両剣を縦、横、斜め、時には身体を回転させながら攻撃をして来た。
「う、うおおぉ!!」
俺は縦横無尽に襲ってくる両剣の攻撃をブレードを右に左に動かして弾くようにして防ぎなんとか鈴の動きに食らいつく。
そして、ISの全重量を乗せた攻撃を俺はブレードを両手で構えて防ぎなんとか鍔迫り合いの形となり、お互いに動きを止める。
「へぇ!
「そんなこと、誰から聞いたんだよ!!」
「さあね……そんじゃ、ここからは……この機体の真骨頂を喰らいなさい!!」
鈴がそう言い終わると甲龍の肩部装甲がガパッとスライドして開いたのが見えた。
明らかに、何かを放つタイプの武装だ。
つまり、この距離は――
「遅いわよッ!!」
ヤバいと感じて鈴から離れようとしたが、直後何かに殴られたかの衝撃を受けて鈴から距離を離された。
(俺は何をされたんだ!?見えない拳に殴られたかのような感じだったぞ!?)
「考え事をしている暇はあるのかしら、一夏ッ!!」
鈴はそう叫ぶと俺はまた見えない何かの攻撃を受けて吹き飛ばされた。
(これは……実弾でも、ビームでもない何かで攻撃をする武器か!?)
俺は見えない攻撃に何度も晒される中、『甲龍』の武装特性について思考を巡らせる。
IS学園
第2アリーナ・観客席
「……あの攻撃は……なに……?」
私がそう疑問を呟くと隣にいた黒野くんが答える。
「『衝撃砲』だね。空間自体に圧力をかけて砲身を形成し、余剰で生じる衝撃を砲弾化して放つ第三世代兵装さ」
「わー!くろろんは物知りだね~」
「そんなことはないよ、ほーちゃん!!」
「……そう……教えてくれてありがとう……」
……イチャイチャし始めたふたりから視線を逸らして私はアリーナで行われている試合に集中する。
なんで
「まっ、今のところは大気中での使用が前提の兵装だね。真空中や水中などなどの特定の環境下での砲身の形成が課題である欠陥兵器だね」
「……何か……『衝撃砲』に……恨みでもあるの?……」
「……別に恨みは無いけど、ISとしてどうなのって話」
「「……?」」
なんで、黒野くんはISに触れた期間が短いのに、すでにこだわりの様なものがあるんだろう?
IS学園
第2アリーナ・ステージ
「ふーん……よく躱すじゃない」
「ハァ、ハァ……ISを教えてくれるコーチたちが優秀なんでね……」
俺はそう軽口を叩くが、近接攻撃を防いだり見えない攻撃を躱すなど防御をするので手一杯だった。
しかし、何度も見えない攻撃を体験したおかげで、何となくではあるが、どういう攻撃なのかを理解することができた。
(たぶん、衝撃だ……具体的な原理は分からないけど、衝撃その物を弾として攻撃をしてきているんだ)
衝撃その物が武器だから、見えない。
直接攻撃を受けた感じや、流れ弾が地面や観客席のシールドに当たったところを見るに速射モードとチャージモードがある。
前者は連続で撃ててそんなに威力はない。
後者はチャージまで時間がかかり連続で撃てないが高威力。
(まだ見ていないけど、もしかして広範囲を攻撃するモードとかあるのか?)
そして、真後ろにも撃てていたことから射角は無制限と考えた方が良い。
……つまり、鈴のこの見えない攻撃には死角がなく、また状況に合わせた攻撃が可能な汎用性に優れている。
(だけど、少しづつ鈴の動きにも慣れてきた……勝負はこれから――)
「それじゃ……
「――は?」
鈴はそう言うと、両剣を振りかぶって俺に勢いよく迫って来た。
それを見た俺は後ろに少し移動し、ギリギリ装甲を掠める程度に躱すことができた。
そして、体勢が崩れるであろう鈴に『
(なんで鈴は、こんな隙の大きい動きを……)
(いや、待て――この動き、見覚えがあるぞ?)
そう思っているところに、鈴は両剣を
俺はその攻撃を最初と同じくギリギリ防ぐことしかできなかった。
(そ、その動きは――セシリアと戦った時の暁人と同じッ!?)
「なに――呆けているのよ!!」
そう鈴は叫ぶと、手に持っている両剣を二つの青龍刀に分け突撃してくる。
上、下、右、左と青龍刀が何度も、何度も迫って来る。
明らかに先ほどよりも鈴の動きの勢いが増した。
(これは……鈴自身が強くなっているッ!?)
「まだまだ行くわよ、一夏ッ!!」
IS学園
第2アリーナ・Aピット
「凰さんのあの動きは……」
ピットからリアルタイムモニターを見ていたセシリアが呟く。
それに、千冬さんが答える。
「ああ、確実に黒野の動きだろうな」
兄さんはこの数週間で何をしていたんだろうと思いながら、一夏の試合の観戦を続ける。
鈴音は中距離では低威力の衝撃砲を速射して牽制をし、近距離では怒涛の連続攻撃で圧倒し、仮に一夏が優位になったとしたら広範囲の衝撃砲で体勢を崩されて仕切り直しを強要する。
「戦い方が嫌らしいですこと……」
「ああ、近接戦闘主体での戦い方をする相手の動きを確実に殺す様な戦い方だ」
「そして、試合を始めた時よりも攻撃が苛烈になっている……」
『アハハハハ!!踊りなさい、一夏ッ!!』
「なんといいますか……動きにキレが増したような感じがしますわね」
画面の中の鈴音は満面の笑みで青龍刀で斬りかかったり蹴ったりしている。
……キレが増したというより、ノリノリで戦っているような印象だ。
だって、今もイイ笑顔で一夏に対し攻撃をしている姿が画面に映っている。
対照的に、一夏は相手が兄さんと同じ動きをしたことや戦闘中の相手の変化に困惑してまともに動けていない様子だった。
「織斑先生ならどう対処しますか?」
「ふむ……」
山田先生が千冬さんに尋ねる。
千冬さんは、顎に手を当てて少し考えて答えた。
「衝撃砲の弾を切りながら突撃する」
「はい?」
「衝撃砲の弾を切るから、ダメージを受けなくて近づくんだ」
「……その、衝撃砲の弾は通常視認が出来ませんのですけど?」
「なに、カンで何とかなる」
「「「………」」」
私達三人は千冬さんの発言に、この人は同じ人類なのだろうかと少し引いた。
IS学園
第2アリーナ・ステージ
(
俺は激しくなった近接攻撃や
「も、らっ、た!!」
鈴はそう叫びながら両手にそれぞれ持っていた青龍刀を投げてきた。
左右から迫って来る青龍刀を見た俺は咄嗟に上空に逃げようと跳んだ。
「ッ、グゥ!?」
上空に逃げた瞬間に、見えない攻撃が直撃して吹き飛ばされた。
(クッソ!!)
俺が上空に逃げると動きを読んでいた鈴はチャージした衝撃砲を移動先に
残存エネルギーが300を切った。
(鈴はこんな小手先のことをまず考えない、暁人が教えたのか?)
(なんで急に強さが変わったんだ。テンションが上がった……というか、本人のボルテージが上がったような感じだ)
(青龍刀2本、見えない射撃攻撃、キック……手数が違い過ぎる)
(残りのエネルギーは297――まずい、このままじゃ負ける)
なんで?どうして?どうする?などの、俺の頭の中は混乱を極めていた。
そんな様子を見て取れたのか、鈴は俺に突撃してくる。
(
ぶっつけ本番だったけど、うまくいったと内心ではガッツポーズをしていた。
本来であれば、射撃をした後にもう少し早く接近をして追撃をするのだけど――
(龍砲の操作から、機体の操作に意識を切り替えるのに手間取って突撃するまで少し遅れたわね)
いや、そもそも、IS学園に入学してから一ヵ月も経っていないのに
(だけど、追い詰めたわ……このまま、押し切る――)
ゾクッ
「ッ!?」
自身の直感が発した危険信号に従い急ブレーキをかける。
(何でよ!?)
今、圧倒的に有利だったのはあたしだった。
それなのに、なぜ自分は危険だと感じたのか理解できずに、ほんの一瞬だけ困惑した。
「……ふーん」
しかし、あたし疑問は視線の先にいる一夏の姿を見て解消された。
そう、一夏が近接ブレードを振り切った姿で止まっていた。
(なるほどね……もう少しだけ、あたしが近づいていれば――)
ほんとさっきまで、混乱の極致みたいな顔だったのに、今は真っすぐにこっちを射抜くような視線を向けている。
(惚れなおしそうないい表情をしているじゃない……あんたの機体については、暁人から聞いているわよ?)
白式は高機動近接特化型のISであること。
武装は雪片弐型という近接ブレードしか持っていないこと。
白式の第三世代兵装は
そして、白式の零落白夜は
(今のは空振りだったけど、零落白夜の有効射程内であれば発動をさせていたでしょうね)
つまり、あのまま飛び込んでいたらやられていたのはあたしだったって訳か。
これで、やっと試合らしくなると思いながら声をかける。
「なに?いまさらやる気になったの?」
「………」
「……?ねぇ、あたしのこと無視するの?いい度胸してるわね」
「暁人が隠れて鈴と訓練をしていたこととかは、あとで暁人に聞けばいいだけだもんな……」
(ああ、これ聞こえてないな)
考えを整理するように呟いている一夏の姿を見て、しばらく様子を見ることに決めた。
(あたしはいい女だから、一夏の準備が整うまで待ってあげるわ)
「今は、鈴が試合中に急に強くなったことと、その機体の特性だけを考えれば良かったんだ」
おそらく、混乱の中で考えに考えた結果、吹っ切れたんだ。
開き直ったと言ってもいい。
「今は、ただ勝つことだけに集中する――勝負はここからだ、鈴!!」
一夏は近接ブレードの剣先をあたしに向け、そして近づいてくる。
吹っ切れたおかげで、一夏のボルテージが上がったことを、あたしは肌で感じた。
(まあ、それは……こっちも同じなんだけどね!!)
自然と頬が上がる。
私も、
「それは、こっちのセリフよ、一夏!!」
そう叫びながら、一夏を迎え撃つ。
「「俺/あたしが、勝つ!!」」
あたしと一夏の本当の戦いが始まった。
~次回予告~
暁人「……鈴音と付き合うつもりはないけどさ」
一夏「おう」
暁人「なんか、鼻で笑われたのはムカつく。というか、鼻で笑う程か?」
一夏「そりゃ、鼻で笑うだろ」
暁人「……なんで?」
一夏「自分の胸に手を当てて考えてみろよ?」
暁人「それをお前に言われるとか、今世紀最大の屈辱なんだけど?」
次回、第16話:クラス