今回は、俺、織斑一夏が前回のあらすじを話す。
暁人の野郎がこそこそ隠れて
本当にあの野郎は何が目的でそんなことをしていたのか?
まあ、今となっては仕方がなかったって納得して――
――え、なに?
あらすじ以外を話すな?
……いつも余計なことを言っている暁人、お前にだけは言われたくない。
というか、暁人と簪は、このタイミングで会ってたんだな。
ん?ああ、いや、この後の出来事を考え……ミサイルとビットのフルバーストは流石にやめろ、お前ら!!
2022年5月3日(火)
IS学園
第2アリーナ
クラス
夜の第2アリーナの空を駆ける相手に向かって
しかし、見えない衝撃の弾を右へ左へと避けられる。
それでも、何発かは当たっているが打鉄の肩部シールドで逸らされて動きを僅かにしか止められなかった。
「チッ」
ついに
何で見えない攻撃を平然と避けられるのかと疑問に思い以前聞いてみたが、アサルトライフルやマシンガンの弾を避けるのと変わらないと返されたことを思い出す。
(一瞬でも気を抜いたらやられる!!)
暁人とはこれで5回目の模擬戦となる。
これまでの戦いの経験から嫌という程理解している。
『
(あたしの攻撃をミリ単位で見切って躱す)
そして、攻撃をした際に伸ばしたあたしの腕に隠すようにして、近接ブレード『
(そして、躱しながら攻撃をしてくる)
慌ててあたしは暁人から距離を離す。
ギリギリ装甲に掠める程度に避けれた。
相手の死角を利用するなどの通常とは異なる、徹底的に相手の隙をついた攻撃方法。
そして、この距離で暁人と戦っていると
「まったく……あんたはいやらしい奴ね」
「はあ?いきなりどうした?」
そう言いながら、暁人はブレードを両手それぞれに持ち、連続で攻撃をしてくる。
右、左、上、下から攻撃がやってくる。
人がその時、その時に一番嫌だと思うことをしてくる奴のことをいやらしいっていうのは、何にも間違えていないと思う。
『
しかし、近接戦闘は暁人の方が上だ。
何とか食らいつくが。あたしは何発か蹴りを喰らった。
「クッ」
(やっぱり、この距離で暁人とやり合うのはマズイわね)
距離を開こうと無理やり後退をする。
後退した先には、アリーナの壁があり追い詰められた形となった――けどね!!
(暁人の武装は近接ブレードと
「まだまだぁ!!」
距離を空けたことに少しだけ安心感を覚えていたあたしに、暁人は両手に持ったブレードを投擲してくる。
左右から迫って来るブレードを見て反射的に私は上に飛んで――
「甘い」
「カハッ」
そして、いつの間にかあたしの上に移動をしていた暁人に蹴られた。
(
本当に対戦相手にとって嫌な攻撃を的確にしてくる。
機体性能はあたしの方が上。
ISの搭乗時間もあたしの方が上。
(それなのに……勝てない……)
蹴られて体勢を崩したあたしにアサルトライフルで追撃をしてくる。
(基礎的的なIS操縦技術、判断能力、戦術……すべてで勝てない!!)
とても、IS学園に入ってから本格的にISについて学び始めた素人とは思えない……というか、前回戦った時よりも強くなっている。
「ばけものめ……」
「………」
毒づいている内に、シールドエネルギーが0になり、今回の模擬戦もあたしの負けという結果で終わった。
それにしても、暁人は勝ったというのにとても悲しそうな表情だったのが印象に残った。
……いくら強くても、流石に「ばけもの」呼ばわりは言い過ぎたわね。
「これで、俺の5戦5勝だね」
「はぁ……はぁ……」
アリーナの地面で仰向けに倒れ込む。
そして、あたしは空気を求め大きく口を開け何度も呼吸をする。
(いつの間にか、定期的に夜に暁人と模擬戦をするのが当たり前に様になったと感じ始めてきたわね……)
日中や模擬戦をしない日など、あたしは遊んでいた訳じゃない。
暁人を倒すための戦術を何度も考えた。
しかし、それらは悉く対応されて敗北している。
「いやー、
「………」
息を整えながら視線だけを暁人に向ける。
模擬戦の後に、こうやって話をしていて知っているが、暁人は結構お喋りである。
「訓練って話なのに、いつも俺がボコっててさ」
「……喧嘩売ってるなら買うわよ?」
そして、思ったことをそのまま口に出すようで、無意識に相手を煽るなどの失言も多い。
まあ、ISバトルだと、十中八九あたしが負けることになるのだけど。
「まあ、でも、俺は本当に鈴音が転校して来てくれて嬉しいと思ってるよ?だって、近接でまともに相手できる生徒は、今のところ鈴音しかいないからね。」
「………」
負け越しているあたしに対して、暁人から高い評価をされていることに驚いた。
(……むず
少し照れた気持ちを自覚しながら身体を起こし、暁人に話しかける。
「……千冬さんやあの生徒会長とかはどうなのよ?」
「確かに、ふたりは鈴音より強いけど、今は先生方や生徒会はクラス
「そういえばそうだったわね……そういう、あんたは生徒会の手伝いの話はどうなったの?」
「爆速で自分の仕事を終わらせて一夏たちの訓練に参加してるよ……楯無さんや虚さんは下っ端の俺には対応できない書類仕事などの処理で放課後も残ってけど」
あ、真面目に仕事してるのね。
以前の見かけたのほほんさん(?)とのやり取りを見るに、彼女と一緒だと仕事にならないんじゃないかと思っていたのよね。
「だから、俺にできる書類仕事全部と雑務全部を担当してる」
「は?……それは、入りたての新人役員がやる仕事なの?」
「ごめんね、仕事が超できる大型新人でさ☆」
「ムカつく言い方で返さないでよね……それでも、生徒会長は忙しいってことは」
「仕事の量がそれだけ膨大だってこと……ちょくちょくどこかにサボりに行ったりしている所為もあるけど、よく他生徒から襲撃を受けたりしてるからね」
(今度、生徒会長に会ったら優しくしよう)
なんて話をしていたらいつの間にかに息が整っていた。
あたしの息が整ったことを把握した暁人は何度かパンパンと手を叩く。
「さて、息も整ったところで、感想戦といきますか」
「……ええ、そうね。反省会としましょう」
これは、いつも通りの流れだ。
何も不思議な話ではない、あたしたちは模擬戦……訓練をしているのだ。
そこで、どういう動きが良かったのか、あるいは悪かったのか振り返る。
(暁人の場合は、訓練というより調整とか、リハビリのような感じがするのよね――)
「今まで戦ってて感じてたけど、今言うね?……まず、鈴音は戦い方がぎこちないね」
「――は?」
しかし、戦い方自体について言及をされたのはこれが初めてだ。
頭からあたしのことを否定されたみたいで、つい語気が強くなることを自覚しながら暁人に問いかける。
「どういうことよ?」
「変に頭を使う戦い方が、あってないんだよ。鈴音はもうちょっと、『直感』に頼った戦い方をした方が強くなるよ」
暁人は自分の頭をコンコンと軽く叩きながら答える。
「はあ、直感に頼れですって?……もうちょっと論理的なアドバイスをしてくれない?」
「……確かに俺の説明が良くなかったことについては謝罪するけど、感覚派の極致の様な奴が言うセリフかそれ?」
……そう言われれば、そうね。
しかし、それでも直感に頼れとは一体どういう事だろうか?
「この攻撃は危ないとか、次に相手はこういう攻撃をしてくるとか感じたことはない?」
「そりゃ、何度かあるけど……それは、経験による予測でできるようになってるんじゃないの?」
「確かに、その場合でも相手の攻撃を予測することは可能だけど、『直感』でも十分可能だよ」
「……あんたに攻撃が当たらないのも、その『直感』のおかげなの?」
「俺の場合は、さっき鈴音が言っていた経験による予測の方が強いよ」
(……?言い方が妙だったわね?)
まるで、予測以外の方法も使っている様な言い方が気になる。
「あとは、ボルテージを上げることだね」
「ボルテージを上げる?」
「そ、あるいはテンションを上げるともいうね」
「???」
確かにあたしは感覚派の自覚はあるが、暁人が何を言っているのか、まったくもって理解できない。
「ま、コレは戦いを楽しんでいれば自ずと上がるよ……重要なのは、自分の今の状態を正確に認識することだね」
再度、暁人は手を叩く。
「さ、休憩終わり!この後は今言ったことを重点的にトレーニングして、最後にストレッチね」
「……はーい」
まるで先生や、コーチの様な事を言う暁人の姿を見ながら立ち上がる。
しばらくの間地面に座っていたので、少しだけ身体が硬くなっている事を感じ、あたしは軽く身体を伸ばす。
「んー!……いつも遅くまでISのトレーニングを付けてもらって悪いわね」
「ん?……ああ、別に気にしなくていいよ」
「クラス
2022年5月16日(月)
IS学園
第2アリーナ・ステージ
なーんて、暁人と話していたことを急に思い出した。
暁人のおかげで、数週間という短い期間であったが、あたしの実力はメキメキと上がった。
中国にいた頃のIS教官や先生よりも暁人のアドバイスは恐ろしいほど的確だった。
(それにしても、あたしにやってもらいたいことって、一体なんなのよ?)
「隙、ありぃ!!」
暁人の言っていた言葉の意味を考えていると、いつの間にか目の前に一夏がいた。
しかも、
「っと」
しかしあたしは、一夏が攻撃をしてくる前に『直感』に身を任せて相手に近づく。
『
「はあ!?」
一夏は余りにも突拍子もないよけ方をされたので、口を大きく開いて驚いている。
スラスターを使わない距離を取らずに通常だと思いもつかない方法で避けたこと……それと、
(『一夏』の
つまり、物理ブレード部分や柄などの手元部分には
それでも、いざ実際に
「驚いている場合なの!?」
がら空きになっている一夏の頭を蹴る。
逆立ちの様な状態で攻撃されるとは思っていなかったのか、あたしの蹴りをもろに受ける。
(そうよね……普通、こんな状態から攻撃されるなんて思わないわよね?)
相手の攻撃の勢いを利用しつつ、身体を上下反転させる――正直、これを相手の攻撃中に実行するにはセンスと操縦技術が必要だ。
暁人は平然とこんな感じの攻撃をしてくるけど……この動きも、暁人から教えてもらった。
暁人にどうやってそんな動きをするのかを聞けばわかりやすく教えてくれるも、本当にありがたかった。
しかし、実演の際に、わざわざあたしに見えるようにVサインと、満面の笑顔を向けてくるのは余計だと思う。
(……あいつのにやけ面を思い出したらムカついてきたわね)
蹴られて体勢を崩した一夏に暁人に対するいら立ちをぶつける様に、チャージした
ドォォオン
チャージした衝撃砲の攻撃が地面にあたり、アリーナ全体に砂煙を巻き上げる。
そして、砂煙の中から、白い機体が勢いよく飛び出してくる。
(身体を捻って躱したの!?……まったく、IS初心者のくせに生意気なのよ!!)
因みに、鈴音は暁人のことを初心者とは考えていない。
なんなら、「初心者詐欺が酷いわ、どこに届ければ受理して貰えるの?」と心の中で思っている。
「リイィィンッ!!」
「一夏ァ!!」
接近して来た一夏を迎え撃つように『
今の一夏は先ほどよりも太刀筋が鋭く、そして強くなったのを感じる。
一夏のことを初心者と考えていても、絶対に油断などはしない。
牽制のために、チャージをしていない
(ウソでしょ!?)
「チィ!!」
必要最小限の動きで避けられたことに驚いたあたしは一夏の接近を許してしまった。
身体全体を使ったり、
本当なら真正面から戦うのがあたしの性分だけど、今は考える時間が欲しかった。
(今の一夏の動きは、一体なんなのよ?)
見えないはずの弾を避けられた。
何故、避けられたのかという疑問に没頭する。
(暁人のような経験による予測やあたしの『直感』のような相手が攻撃行動に移る前に避けるような動きじゃなかった)
そもそも、暁人のよけ方は基本的にはアサルトライフルなどの弾をばら撒くような他の射撃兵装と同じ。
だから、実際に衝撃砲の弾や砲身を視認して避けている訳ではない。
あたしの『直感』による回避もそう。
飛んでくる小さな銃弾であったり、光速で迫るレーザーが来るであろう場所を事前に察知して動いている。
危ない場所から離れることで、結果的にそれが回避となっているのだ。
実際に、銃弾やレーザーを視認できている訳ではない。
(しかし……そう……一夏のあの動きは、撃った後に避けられた)
偶然?……いや、それにしてはタイミングがかみ合い過ぎる。
衝撃砲の弾を視認できていないとおかしい回避をされた。
しかも衝撃砲の弾が見えたということは、射撃武器の特性上撃ち終わった後に避けている。
つまり、一夏には衝撃砲の弾は視認できており、そして異常な反応速度で避たられたんだわ
(あたしのは『直感』――一夏の
明らかに先ほどまでの一夏ではない。
身に纏っている雰囲気もガラリと変わった。
この試合で急成長した?それとも何か別の要因?
暁人は一夏がこうなることを予想していた?
何の根拠もない考えだったが、不思議とあたしはそれは正しいと
「あは♪」
なによ、IS学園の男子たちおかしな奴しかいないじゃないの。
「楽しいわよ……一夏っ!!」
鈴音のボルテージがまた上がる。
……そういえば、中学時代の男友達であり『楽器弾けるようになりたい同好会』(私設)で楽器の練習をするんだなどと戯言を吐いていたバカ2人(五反田弾と御手洗数馬)も十二分におかしかったなと思い出す。
何度考えても、ズブの素人2人で練習するより素直に部活動とか音楽スクールに入ればいいのにという答えになる。
男子達はこういったおかしな奴しかいないの?
~次回予告~
暁人「俺、そんなに余計なことをいってたかな?……言ってたな」
楯無「一応、自覚があるようね……あの時の事を思い出してムカついたから、もう一回叩かせてもらえるとお姉さん嬉しいな♪」
暁人「え、嫌ですよ。誰が好きで痛い思いをしなくちゃいけないんですか?」
楯無「それ、盛大なブーメランだっていう自覚はあるのかしら?」
暁人「別に好きでやった訳じゃないですって」
楯無「……そうだったの?」
暁人「……楯無さん、今度ゆっくり話し合いましょうか?俺のことをどう思っているか気になりました」
楯無「正直、もう手遅れだと思うわね……」
次回、第17話:クラス対抗戦リーグマッチ③