IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

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~前回のあらすじ~
やっほー、久しぶり。
今回はみんなのお姉さんである更識楯無さんが前回のあらすじを担当するわね。
……みんなのお姉さんって言ってみたけど、結構恥ずかしいわね。

さて、あらすじあらすじはっと……暁人くんが鈴音ちゃんを鍛えたことで鈴音ちゃんは圧倒的優勢に戦えていた。
しかし、一夏くんは負けずと喰らいつき、異様な認識能力と反応速度で衝撃砲を正面から回避し始めた。
一夏くんの成長を感じ取った鈴音ちゃんは更にボルテージを上げて、戦いが激化する。

IS ~クロノス~ 17話クラス対抗戦(リーグマッチ)

一夏くんと鈴音ちゃんの戦いが佳境に入り、そして物語は加速する。

……そう言えば、暁人くんが鈴音ちゃんにやってもらいたいことって何なのかしら?


17話:クラス対抗戦(リーグマッチ)

2022年5月9日(月)

IS学園

第3アリーナ

 

 

クラス対抗戦リーグマッチの一週間前の出来事

 

 

いつも放課後にやっているISの訓練。

しかし今日は箒とセシリアの二人が参加していない珍しい日となった。

専用機を持っている俺達とは異なり箒はISの貸し出しがされないとISを使った訓練に参加できず見学するしかなくなるので、箒がISの訓練に参加しないことは別に珍しいことではない。

それならば、勉強をするか剣道部に顔を出した方が良いと()()()()()()()()()()()()()暁人の言葉を素直に従い、今は元気に竹刀を振るっているだろう。

 

ただ、セシリアが不参加なのは珍しいことだったので理由を聞いてみたが、オルコット家当主として処理しなくてはいけない書類や代表候補生としての仕事があって今回はどうしても参加が出来ないとのことだった。

 

(……よくよく考えてみれば、1年1組の生徒の中で一番多忙なのはクラス代表の俺じゃなくて、イギリス貴族の当主で代表候補生という立場のセシリアだよな)

 

今まで放課後の訓練に参加出来ていたのはセシリアの優秀さや手際の良さが理由だろうとぼうやりと考えた。

 

いつも訓練に参加する2人がいないということは、つまり……

 

「もっと反応速度を上げろ、一夏ぁ!!」

「ぐぼぉ!?」

 

そう、暁人と2人きりでの訓練となる。

性能は圧倒的に俺の白式の方が上なのに、それを圧倒的な技量差で上回れて手も足も出ない。

クラス代表を決める戦いの時と同じく何度も躱されて、受け流されて、そしてカウンターでダメージを受ける。

 

俺の動きも思考も、すべて見透かしているとでも言いたげに、笑ってしまうほど鮮やかなカウンターが決まる。

 

「笑ってる暇あるなら身体を動かせッ!!反撃しろ、反撃ぃ!!」

「笑うことしかできねーから笑ってんだよッ!!あと一応、反撃してるんだよ!!全部受け流れてるか躱されてるけどさぁ!?」

 

お互いに怒鳴り合いながら剣を振るいあう。

ちなみに、今回の訓練では純粋なIS操縦技量を高める目的があるので、エネルギーの消耗が激しい零落白夜(れいらくびゃくや)は使用していない。

 

(クッソ!相変わらず攻撃が当たらない!)

 

暁人との近接戦闘で一番厄介なのが、攻撃の受け流しだ。

俺の雪片での攻撃の動きに暁人のブレード(葵だったっけ?)の動きが合流し、軌道が逸らされ攻撃が届かないんだ。

 

そして、次に厄介なのは、クラス代表を決めるISバトルの際にも見せた蹴りだ。

お互いに近接ブレードで攻撃し合っている中で、隙を見つけたらすかさず蹴りが飛んでくる。

こっちの攻撃手段はブレード一本なのに、近接戦でも暁人はブレードと両足合わせて3個の攻撃手段を持っているので、基本的に近接戦でも俺が圧倒的に不利だ。

 

因みに、俺も暁人のマネして蹴りを繰り出してみたことがあるが、簡単に回避されて蹴り出した足をブレードで斬りつけられて余計なダメージを受けた。

慣れないことはするなと、剣術と体術を組み合わせた独自の戦法で戦っている暁人と剣術道場の娘である箒の両名からお叱りを受けた。

 

本人曰く、受け流しや蹴り、カウンターなどの技は使っている機体が打鉄という第二世代近接機で、第三世代機()()の基礎スペックが高い機体に対して立ち向かうための工夫だそうだ。

そう説明をされた後に『持たざる者は辛いね』と続けて発言したことを聞いていた全員が『その実力なのに持っていないとか嫌味か?』と白い眼を向けた。

 

(……それにしても、機体スペックが高い相手と戦う技と暁人は言っていたが、基本一対一でのISバトルになるのに過剰なほど防御や回避などを徹底しすぎではないか?)

 

まあ、そんなこんなで俺はいつも通り訓練の間の数時間、暁人にボコボコにされた。

 

 

 

 

 

 

ボコボコにされた俺は疲弊した身体を冷たい地面に投げ出して休んでいた。

 

「ハァ…ハァ……一言言わせてくれ、暁人?」

「いったいどうした?」

「反応速度を上げろとか言われてもなぁ……ハァ…ハァ……人間には速度を調整するレバーやスイッチはついてないんだからな?」

「……ハハッ、一夏は()()()()()面白いことを言うな」

「何が面白いんだよ……」

 

俺は当然のことを言ったつもりだが、暁人は何がおかしいのか突然笑い出した。

ははーん、暁人……お前、もしかして俺のことを人間だとは思っていないな?

 

「今日届いた試作レールガンの試し打ちは後にするか……しかし、本当に一夏は訓練とか模擬戦とかだと全然だな」

「……どうせ俺は訓練で教えたことが半分できればいい教え甲斐のないタイプですよ」

「教えたことがちょっとでも身についていればいいんだよ、ほら」

 

そう言いながら、暁人は用意したスポーツドリンクを俺に手渡して来たので、俺はお礼を伝えつつ受け取る。

……お、このドリンクぬるくて丁度いいな。

俺は健康を考えて運動後のドリンクはいつもぬるめにして飲んでいる。IS学園に来てからこの事は誰にも言っていなかったが、どうやら暁人も運動後のドリンクはぬるめにして飲んでいるのだろう。

暁人もこういう細かい所で健康を考えているんだな、親近感が湧く。

 

「プハァー!キンキンに冷えてやがる!!」

「……」

 

前言撤回。

どうやら、たまたまだったらしい。

どこかで聞いたようなセリフを言いながら美味そうにドリンクを飲んでやがる。

これは、クラスの女子から漫画を借りて読んでいる影響か?

 

「随分、女子のイメージとはかけ離れた漫画を読んでいる生徒がいるんだな?」

「ん?ああ、別にその漫画を女子が持っていたり、借りた訳では……アッ……」

「え?なんで、そこで言葉が止まるんだ?……ああ、女子以外となると先生から借りたのか」

 

俺の知らない内に意外と交友関係を広げてるんだな。

 

「……実はそうなんだよ、一夏。漫画の内容が内容だから、貸してくれた本人から口止めをされていたことを思い出してつい言葉が……な?」

「なるほど、そういう訳だったのか。確かにIS学園の先生がそういった漫画読んでいるイメージがしにくいもんな……それにしても、やっぱり暁人はすごいよな」

「どうした急に?」

「いや、勉強や訓練に長い時間を使っているのに、借りた漫画を読む時間を捻出しているからさ」

 

漫画を借りて、IS訓練した次の日にはもう漫画を返している姿を何度も目撃をしている。

 

「それは時間の使い方が違うんだよ」

「時間を効率よく使ってるってことか……羨ましいな」

「ハハッ、羨まれようなものじゃないよ」

「?」

()()()()()()()()()()()()……さて、落ち着いたところで、訓練の振り返りするぞ」

 

空気を切り替えるようにパンパンと手を鳴らす。

 

「前から言ってるけど、まだISを動かし方に慣れていないよな。色々中途半端」

「ウグッ!……ISを装着した際に変わる手足の幅の距離感と、スラスターとかを使うタイミングについてだよな?」

「そうだ。お前はまだISを装着していない際の感覚で剣を振ったり、本来人間にはついていないスラスターなどの使用タイミングが微妙にずれてる。そして、それが動きの無駄――隙になっている」

「……でも、セシリアや千冬姉はこんな指摘をしていない。言っているのは暁人だけだぞ?」

「織斑先生が訓練を見ていたのはクラス代表を決める一週間の間だ。お前のその癖が強く出たのはその後。あとセシリアは言語化できなくても、違和感を感じてたぞ」

「でも、こうも毎回言われると……」

「今の内に矯正しておけば、動きの無駄がなくなり効率的に動けてエネルギーのロスも少なくなるんだよ。たっく……まだ経験少ないのに下手に200%近いシンクロ率叩き出すからだ……そっちの方の感覚に引っ張られている影響が出てるんだよ……

「小言で何を呟いてるんだ?」

 

途中で暁人の声が小さくなりよく聞こえなくなった。

いや、ちょっとは聞こえてはいるんだが、よく意味がわからなかった。

 

「何でもない。さっさとISの動きに慣れろ。動きの無駄が無くなれば、反応速度で勝てるようになるんだから」

「……どういうことだ?」

「言葉通りの意味だよ。お前は常人よりも反応速度が高い。これはISバトルにおいてとても有利な要素だ」

「そ、そうなのか……」

「まあ、その反応速度を活かせていないから意味ないけど」

「上げて落とすな」

「目や頭では相手のアクションに反応出来ているけど、肉体やIS操作にまで反映できていないんだよ」

「………」

「キツイこといってるけどさ、その分お前には期待してるんだよ」

「……本当、お前は人のやる気を出させるの上手いよなぁ。教え方も的確だし……将来はISを教えるコーチか?」

 

俺に期待してるか……

IS学園に入ってから、他の人は世界最強(ブリュンヒルデ)の弟というフィルター越しに俺を見ている。

正直、世界最強(ブリュンヒルデ)の弟でIS操縦者で専用機持ちという立場は凄いプレッシャーを俺に与えている。

出来過ぎる姉を持って辛いなどと言いながら笑える心の強さを持ちたいが、無いものねだりだよな。

 

だけど、暁人はフィルター越しで見ている『みんな』とは違う。

ありのままの自分を見ているということが言動から実感出来る。

 

「……そうだな、将来はISコーチになるのもいいかもな。それじゃ、コーチとして一言アドバイスしようか」

「おう」

「白式の機体特性的に、思い切って攻撃をすることは結構重要になる……相手の懐に入り込むのに尻込みすることもあるだろう……」

「いや、突っ込むしかない機体だから、尻込みなんてしてたら勝てる勝負も勝てなく――」

「織斑先生を相手にした場合でも?」

「………」

「ブルー・ティアーズの火器一斉掃射は?」

「……………尻込みします」

「よろしい。だから、自分を奮い立たせる気合いを入れるためのかけ声を出そうか?チェストとか」

「……………………」

「どうした?」

「叫ぶのって恥ずかしくないか?」

「あはははー、何を今様

「?」

「すまない、こっちの話だ」

 

 

 

 

 

2022年5月16日(月)

IS学園

第2アリーナ・Aピット

 

 

「鈴音さんのあの動きは……」

「まるで、未来を予知している様な動きだ……」

 

リアルタイムモニターに映し出される鈴音の動きに私とセシリアは驚きを隠せないでいた。

一夏の攻撃をあり得ない精度で躱し、その上で反撃をしてくる。

防御と攻撃の両立があまりにもハイレベルで、本当に私たちと同じ年なのかと愕然とする。

 

「レベルが違う……」

「フン、確かにな。しかし、それは(ファン)だけの話ではない」

「ええ、織斑君も先ほどから衝撃砲の弾が見えているかのような動きで回避を始めました」

 

驚いている2人の生徒の傍らで、千冬さんと山田先生は落ち着いた様子で試合を見ている。

……そう、一夏は変なタイミングで回避行動を取り始めるようになったのだ。

そして、一夏が動いた後は必ず一夏の後方にあるアリーナの地面か観客席のシールドに衝撃砲が当たるようになった。

詳しい理由は分からないが、一夏は見えないはずの衝撃砲を避けはじめているのだ。

 

衝撃砲を避けれるようになったのは良いことだ。

だけど、やっぱり一夏と鈴音の動きを比べると鈴音の方が動きに無駄がないことが理解できた。

ISの訓練を始めて1ヵ月程度しかたっていない事による訓練不足がまるで浮き彫りになっている。

一夏は衝撃砲を何かしらの手段で認識をしているのだと思うが……認識してから反射的に行動をしている様な動きが目立つ。

 

「まるで今の一夏は獣だな」

「人の弟を獣呼ばわりとは……良い度胸だな篠ノ之?」

「……あ」

 

すぐ近くに千冬さんがいることを忘れ、思っている事をそのまま言ってしまった。

少し殺気が籠った千冬さんの声を聞いた私は、すぐに何か言葉にしようと口を開いたのだが――

 

「フッ、冗談だ」

「冗談でそんな雰囲気を出さないで下さいよ……」

「お前の失言とでお相子としておけ。それにどちらかというと、獣じみた動きをしているのは凰の方だ」

「……と、いいますと?」

「どうやっているのか知りませんが、織斑くんは衝撃砲の前兆を察知して動いているのは、一応は反応の部類なんですよ」

「つまり、織斑は五感を使っているんだ。しかし、凰のアレは五感ではなく第六感的な感覚――いわゆるカンと呼ばれるものだ」

「……カンですか?」

「そうだ。危なくなるからこう動くというのを五感ではなく、自分の感覚だけで判断し実行している……まるで狼などの野生動物かのようだな」

 

 

セシリアが千冬さんに質問をする。

 

「それが、鈴音さんの強さの理由ですか?」

「いや、それでだけではないですね。凰さんの強さは彼女自身の才能によるところが大きいですよ」

「凰は中国に渡ってから本格的にISの勉強を始め、そして約1年程度で代表候補生になり専用機持ちになっている」

「異常と言っていいくらいには、早いですわね……」

「つまり、鈴音は兄さん(暁人)と同じような天才に分類されるのですか?」

天才(そう)だと言われるような奴だと思うし、専用機持ちになるまでのスピードは異例ではある。しかしその分、ISに触れた時間や訓練量などが圧倒的に不足している。才覚はあっても経験不足だからな。IS学園に来た当初の実力は代表候補生の中で下位レベルだっただろうよ」

「……『だった』、ですか」

 

千冬さんは鈴音の強さのレベルを過去形で話した。

 

「だが、試合が始まった時の実力はおそらく代表候補生で真ん中あたりの強さだった。そして今は、代表候補生上位レベル程度に思える」

「……試合中に強さが変わるんですか?」

「ああ、凰は一種のゾーンの様な状態に入ったんだ」

「一種のゾーン……ですか?」

 

セシリアはゾーンという状態について初めて聞くようだった。

 

「一般的にゾーンとは集中力が極限まで高まり、感覚が研ぎ澄まされ活動に没頭できる特殊な意識状態のことを言うらしい」

「凰さんは感覚というか『カン』が鋭くなっていますから、一般的なゾーンとは異なる気がしますね」

「凰は元から感覚(センス)が高いから『カン』――つまり第六感的なものが強まったのだろうな……だから、この場合、ゾーンに入っていると言えるのは織斑の方だな」

 

 

 

 

 

IS学園

第2アリーナ・観客席

 

「………」

 

暁人くんは静かに2人の試合を観察していた。

私の様な観戦ではなく、2人の様子から何かを理解しようと集中して観察している様子だった。

 

「うん……良い感じ」

「……くろろーん?」

「ん?なにかな、ほーちゃん?」

「試合の感想でさ。料理の味見をしたみたいなこと言うのやめなーい?」

「いやーね?実際にあそこまで2人を手塩にかけて育てたの俺だしー?」

(……すっごく……緩い会話……)

 

隣から聞こえてくる会話に悩まされながら試合に集中する。

凰鈴音については中国の代表候補生で専用機持ちだから弱いとは考えていなかった。

だけど、ここまでの強さとは思わなかった。

同じ代表候補生という立場だけど、貸出される学園の機体だと負ける可能性が高い。

 

(……そして……まさか織斑一夏が……あそこまで動けるなんて……)

「さて、そろそろ真面目に語ろうかな?鈴音は戦闘中にテンションが上がって動きがよくなるタイプ。そのテンションが上がった状態で感覚が冴えた結果、動きのキレがよくなり、さらに『直感』でのオカルト回避をしてくる」

「対して一夏は勝負に集中した事でやっと実力を発揮できるようになり、よりダイレクトにISからの情報の取得や機体操作で戦うようになる……しかし、ISで動く上での経験が少ないからうまく立ち回れてないのが実情だね」

「お互いに主力兵装は避けられるし通常攻撃では決定打に欠け戦況は膠着とはなってるけど、経験の差から依然と鈴音有利だね」

 

そう黒野くんは試合の現状を締めくくった。

黒野くんの話を聞いた私は試合から目を離し、黒野くんに視線を向ける。

 

(……本当に黒野くんは……IS学園に入学して一ヵ月の生徒なの……?)

 

まるで先生や指導者が語ったのではと思う程の内容だった。

私が黒野くんの話した内容と経歴があっていないというギャップに混乱をしている内に、本音は黒野くんとの会話を続ける。

 

「りんりんがテンション上がって強くなったのは分かるけどー」

(……また勝手に……人にあだ名を付けてる)

「なんでおりむーもりんりんに比例するような形で強くなってるのー?」

「それはねー、鈴音が一夏のことを引っ張った結果になってるからだよー?今の一夏はね、実力的には代表候補生中位レベルまで引き上げられているねー」

「わぁー!おりむーすごーい!」

「あの2人をあそこまで鍛えたの俺なんだけどね?まあ、鈴音のおかげで生徒同士の試合としては見ごたえのあるものになったね」

「……一応片方は代表候補生で……他の生徒よりは実力があるんだけど――」

「おっと……そろそろだね」

「「え?」」

 

黒野くんが急に呟いたのを聞いて、私は慌ててアリーナに視線を戻す。

視線を戻したら凰さんと織斑一夏が十数秒程度の時間、激しい攻防を繰り返し、そして止まった。

 

「「………」」

 

2人はお互いに睨み合い動かなくなる。

勝負が決まる一撃をお互いに考え込んでいる様子だ。

黒野くんのいう通り、そろそろ決着が付くであろう

 

「……?」

 

黒野くんは何を()()、『そろそろ』と言ったんだろう?

 

 

 

 

 

第2アリーナ・ステージ

 

「「ふぅー……」」

 

何十回も剣を打ち合わせ、お互いの攻撃を躱し続けた2人は埒が明かないと同時に判断し、お互いに動きを止める。

 

(衝撃砲は砲身も砲弾も見えないのによく躱すわね?)

(衝撃砲は()()()()()()()()()()()()()ギリで反応できるな)

(衝撃砲を中~遠距離攻撃より、近距離の方がよく回避している……まさか……)

(近くの方が見えやすいから何とか回避できている……離れると上下左右のどっかしらに動いて運での回避になる)

(大気の歪みが見えているの?……理屈はどうでもいいわね。今の一夏は近距離での衝撃砲を避けれるとだけ分かればいいわ)

(どうやら、反応速度は俺の方が上だ……なのに、攻撃があたらない。まるで未来が見えているかのように動かれる)

(マジで危ない攻撃は、『直感』で回避できるようになったわね……暁人さまさまね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……次で決める」」

 

最初に動きを見せたのは一夏だった。

一夏は雪片弐型を上段に構えた。

 

(あれは……)

 

鈴音に剣道や剣術の経験はない。

しかし、直感的にその構えは超攻撃的なものであることを理解した。

 

(零落白夜という、超攻撃力に超攻撃的な構えを合わせてきた訳ね)

 

あの構えからの攻撃と近接型ISである白式のパワーアシストならば、例え防御したとしてもパワー型の甲龍でも押し負けする可能性が高い。

 

(なら、あたしは!!)

 

観客席にいる生徒のほとんどは鈴音のことを信じられないというような表情で見ている。

信じられないという表情をしている生徒の中に、簪もいた。

 

「……アレも黒野くんが……教えたの……?」

 

暁人は呆れたように声で答える。

 

「流石にあんなバカげたことコーチとして教える訳ないでしょ?」

 

アリーナの中央に『双天牙月(そうてんがげつ)』を両腕それぞれに持ち、腕を左右に大きく広げて構えた状態のまま、鈴音は目を閉じていた。

 

「たぶん、ヤバいと感じ取った瞬間に目を開けて、知覚した情報から回避しカウンターを決めるつもりだね」

「……でも……ISには……全方位視覚接続で……」

「その視覚接続の情報も意識的に絶ってるね」

「………」

「あえて自分を追い込むことで更にボルテージを上げようとしているんでしょ。まあ、こういう時はバカになって、バカをやるのも一つの手か」

「つ~ま~り~?」

「うん、本音さん。この勝負は、よりバカな奴が勝ちます」

「わー!」

 

鈴音の構えを見て一瞬驚いた一夏も、暁人と同じく彼女の意図を理解した。

 

(背水の陣って……訳だな、鈴?)

(来なさい、一夏。どんな攻撃でも絶対に躱してカウンターを叩き込んであげる)

(なら、俺は鈴が反応しきれない速度で一撃必殺の攻撃をしてやる)

 

 

 

 

試合を観戦していた生徒たちは、次の行動で勝負が決まると理解し、固唾を飲んで見守っていた。

 

「――って、うん?……くろろん?」

 

会場中が鎮まり帰っている中で、本音が声を上げる。

 

「どうしたの、ほーちゃん?」

「さっき、本音さんって言ったよね?」

「……うん」

「なんでいつもと呼び方違うの?」

「………」

「一体、何を考えて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なによ、この感じ……上?……まさかッ!?)

 

()()に一番早く反応を示したのは、ボルテージが最高潮に達していた鈴音だった。

現在の鈴音は試合開始から結構な時間が経ち疲労があるが、試合開始直後よりも高いパフォーマンスを実現できる状態に仕上がっていた。

特に彼女の危険を察知する『直感』は、例え意識の死角からの攻撃や()()()()()()()()()()()にも反応できる状態にあった。

 

その彼女の『直感』は、正面にいる一夏ではなく、上空から感じる『何か』に危険信号を発していた。

 

 

 

 

 

(……?鈴の意識が俺以外に向いた?)

 

そして、鈴音のみに集中をしていた一夏であったが、それゆえに気付いた。

鈴音が対戦相手以外に意識を向けたこと感じ取った一夏は、鈴音の性格を知っているかこそ強い違和感を覚えた。

そのため、白式からの警告で知らされた上空からの高エネルギー反応に最速で反応できた。

 

 

 

 

 

(来たか)

 

しかし、鈴音の変化に気付き、一夏よりも早く行動に移れたのは、事前に()()が来ることが分かっていた暁人であった。

暁人は上空から攻撃をされる前に、すぐ隣にいた本音と簪を突き飛ばし自分から離れさせた。

 

 

3人が動いた直後、大きな()()()衝撃がアリーナ全体を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所

秘密のラボ

 

 

複数のモニターしか光源がない薄暗い部屋に1人の女性がいた。

 

「よし、IS学園に侵入成功~そしてすぐにアリーナ内の権限をジャック!!」

 

彼女の名前は『篠ノ之束(しのののたばね)』。

成人しているスタイルが良い女性が童話『不思議の国のアリス』に登場するアリスの服装に白うさぎの様なうさ耳のカチューシャを付けているという奇抜な格好をしている。

こんなおかしな格好をしているが、こんな彼女こそ自他共にに認める世界一の天才(天災)だ。

彼女は言っている内容とは裏腹に、手元は異常なスピードで端末を操作している。

 

「うん、ジャック完了!……さてさて?いっくんは、いまどれぐらい動けるのかなー?」

 

1体目のゴーレムのカメラが、いっくんを捉えた。

ISに触れて一ヵ月を過ぎたあたり。

なんでISを動かせるのか不明だけど、()()()()()()()()()()()()()()()

ちーちゃんはまだいっくんに『あの話』をしていないだろうし、本人も自分は普通の人間だと思ってるおばかな所もあるけど、そこは可愛いと思ってる。

 

「ちーちゃんの弟なんだからさぁ……期待してるんだよ、いっくん?……だけどさぁ、お前は要らないんだよ」

 

2体目のゴーレムのカメラが、あり得ない2人目の男性操縦者の姿を捉える。

私と似た顔で辛い経験をしたことは事件の概要を軽く読んで分かってはいる。

いっくんレベルの可愛い馬鹿は面白いと思うけど、本当にああいった馬鹿げたことをする奴には嫌悪感しか湧かないよ。

その内、殺すと決めてたから、そこまでこいつの謎に興味が出なかったのでちゃんと調べては無いけど、いっくんと同様になぜISを動かせるのかまでは分からなかった。

 

「正直、気持ち悪いんだよね」

 

顔は全く同じ。

同じ性別だったら、私と同じ身体になりそうと思えるほどの似ている。

赤の他人が、実の妹である箒ちゃん以上に、人類にただ一人しかいない天災(わたし)と似ている。

 

「まったく、本当に気持ち悪いよ……だから、消えろよ――黒野暁人(イレギュラー)

 

2体目のゴーレムに命令を送る。

 

『抹殺プロトコル:実行』

 

天災の無邪気な悪意が注がれた人形たちが、創造主(篠ノ之束)の命令遂行の為、行動を再開する。

 




~次回予告~
簪「……人のことを……センサー扱いは……ちょっと……」
暁人「失敬な。俺は鈴音のことを物扱いはしてないぞ?」
簪「なら……何だと思ってるの……?」
暁人「金糸雀」
簪「………一回……本気で怒られて……」
暁人「本気で怒られるの何回目だろうな……」
簪「自業自得だよ?……」

次回、第18話:クラス対抗戦リーグマッチ④
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