IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

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~前回のあらすじ~
私の名前は篠ノ之箒、暁人の妹だ(存在しない記憶)。

……可哀想なモノを見るような視線はやめろ、みんな。
もう治っている。ちょっとした冗句だ……こら、暁人は薬の準備をするな、一夏は祈るな……姉さんはガチ泣きするな!!
コホン……さて、クラス対抗戦(リーグマッチ)は無人機ISの乱入により、アリーナ内は混乱を極めた。
有効打を決めきれなかった一夏たちだったが、暁人の制限解除したレールガンの攻撃により状況は一変する。

IS ~クロノス~ 19話クラス対抗戦リーグマッチ⑤

IS学園で起きた一つ目の事件が終わり向かえる。


19話:クラス対抗戦(リーグマッチ)

2022年5月16日(月)

IS学園

第2アリーナ・ステージ

 

暁人によるものと思われる攻撃により、敵ISの右腕が千切れ飛んだ。着弾したのは肘より少し上あたりだろうか?とにかく、敵ISの腕が地面に落ちていくのを横目(ハイパーセンサーのお陰で全包囲見えているのにおかしな話だが)に確認をしつつ、正面にいる敵ISの腕の断面を注視した。

 

(血が出ていない。やはり、相手は機械か)

 

予想の範疇ではあったというのも理由だが、相手が機械であることにそこまで驚きはしなかった。

どちらかというと、暁人が行った攻撃について考えてしまう。

 

(アリーナの防壁を貫通した上で、ISの腕を切断させるなんて……どんな威力の攻撃だったんだ……)

 

そんなことを考えていると、暁人ともう一機の敵ISが遮断シールドを破壊しながらアリーナ内に入ってきた。おそらく、暁人の攻撃で破損した部分に突っ込むように暁人が敵ISに体当たりをして一緒にアリーナ内に入ってきたんだろう。

 

「お?()()()()、右腕をもぎ取れたか」

「………?」

 

何を言っているのかよくわからなかったが、とりあえず(リン)と一緒に暁人に近づく。

 

「暁人、今の攻撃は?」

「おう、初公開の試作レールガン『雷鳴』によるものだ。制限解除してロックオンも解除してフルマニュアル(手動)で撃った」

「……だから、不意打ちとしてあたし達が相手していた敵に当てることが出来たのね」

「……?」

 

暁人の説明に鈴が納得をしたとばかりに反応する。俺は何で鈴がこんな反応をしたのかが理解できなかった。これは後で教えてもらったことだが非ロックオン状態かつ、遮断シールドという強固な壁に遮られている状況であんな強力な攻撃をされるとは、無人機を操っていた相手にとっても予想外どころか、世界中の誰であろうとも想像なんてできる訳がないらしい。

 

まあ、この時の俺はそんなよく分からない話よりも、暁人が何気なしに行った言葉の方が気になったので、つい口にしてしまったのだが……

 

「マニュアル制御?」

「今の一夏(あんた)にはだいぶ早い話だから後で説明するわ」

「ああ、後でじっくりと教えてやるよ、初心者(ニュービー)

 

……鈴と暁人に今話す内容ではないとばかりに軽くあしらわれてしまった。生死が関わる状況で悠長に説明をするのもされるのも困るといった話か。

 

だけど、しかし、俺はそんな2人の様子から勇気をもらった。

 

「……お前たちは凄いな。今、死にそうな状況なのに、生き残ることを前提で考えているんだな」

「「死ぬこと前提で考えるようなネガティブ思考な奴が、今ここにいるの?」」

「……確かに」

 

そんなネガティブ思考の奴は1人もいないな。

 

「2人とも……」

「「ん?」」

 

 

 

 

 

「勝つぞ」

「「ハッ、何を当たり前の事を」」

「この中で1番あんたが弱音だからあまり調子いい事言うもんじゃないわよ」

「お前が音頭取るとか、100年早いんだよ」

 

そんな事を言いつつも、2人の口元は緩んでいた。

おそらく、俺も2人と同じ表情をしているのだろう。

 

(不思議だな。相手の方が機体性能や武器の性能は上という絶体絶命の状況……だけど全然、負ける気がしない)

 

さて、俺たちは戦いの中で話し合っている最中だが、やはり相手は攻撃をしてこない。

……そんなに話している内容が気になるのか?

 

「一夏と鈴音はエネルギー残量は大丈夫なのか?」

「まともに喰らった攻撃はなし。鈴音との試合中は全然『零落白夜(れいらくびゃくや)』を使わなかったから結構余裕あるぞ」

「あたしはバンバン衝撃砲を撃っていたけど、燃費を第一に考えられて作られたISだから私も大分余裕あるわよ。そういう暁人は大丈夫なの?アリーナの障壁シールドを打ち抜いて、相手の絶対防御も貫通する攻撃だったけど。どんだけエネルギーをつぎ込んだのよ?」

「そうだな……暁人、あと何発撃てるんだ?」

「ああ、あと俺、このレールガン撃てるのは、あと1回きりだから」

 

そう言って、暁人は左手に持っていたレールガンを右手に持ち変える。

 

「試作品かつ通常使用外での制限解除したからな、あと一回撃ったらこのレールガンは自壊する」

「ッ!…そ、そうなのか」

(一夏……ちょっと、かっこいいいとか思ってるわね)

 

鈴から『男のそう言ったところは分からないわね』という感じの視線を感じる。……いいだろ別に、男の子なんだから。やはり、こういった男のロマンとかの話は暁人とか弾とかとしか分かり合えないのか。

 

「そして、俺の無事な腕もあと一本……だから、あと一回しか撃てない」

「「ん?」」

 

……暁人が何を言っているのかよく分からなかった。武器の使用回数の話をしているのに、なんで腕の話をしているんだろうか?なんで武器の使用回数に腕が無事な事が関係してくるんだ?

 

「……えっと、何の話なのよ?」

「暁人、一体どういう事なんだ……」

「実はさっきレールガン撃った後から左腕に凄い違和感があって……おそらく骨折してる」

((淡々とそんな事を言われても反応に困る))

「まともに左腕動かせなくて……こう、ピーンと鋭い痛みが」

 

そう言いながら暁人は左腕をゆっくりと動かして、怪我の程度をアピールしてくる。

うーん、装甲に覆われているからよく分からない。

 

「正直に言うと、ISの機能で痛みを誤魔化してはいるはずなのに左腕が痛いんだ。IS解除したら、痛みでまともに動けなくなるな……」

「本当に重症なんだな……暁人って、頭いいのか悪いのか分からなくなる時があるよな」

「何言ってんのよ?基本的に考えが足りないわよ、暁人(コイツ)は……とりあえず、緊急事態だから痛がるのは後にすることにして……」

「ひっでぇ」

 

暁人に一切の気遣いを見せない鈴であったが、言葉の最後のあたりから真剣な表情になり、暁人を見つめる。

 

「絶対に外さずに決めなさいよ」

「フン、誰に言ってんだ」

「……そうね」

「おう、暁人。そう言うからには、信用してるからな」

「言われずともって奴だ。チャンスは必ず作る……だから、2人はその出来たチャンスで全力攻撃をしてくれ」

「「わかった/わかったわ」」

 

片腕しか使えなくなった暁人は俺たちと戦っていた右腕を欠損した敵ISの相手をし、一夏と鈴音は暁人が戦っていたた敵ISの相手をするために分かれる。

 

 

 

 

 

そして、その瞬間を狙っていたかのように敵ISの動き出した。

片腕しかない敵ISが暁人に向けてビームが撃つ。

暁人はビームをギリギリ避けたが、その極太の熱線は照射され続けており、避けた暁人を捉えるために動き出す。

 

暁人は必死に動いているが、機動力が良いとは言えない打鉄では思うようにスピードが出ない。

俺たち2人は暁人の状況を把握しつつ、暁人の言うチャンスを待つ。

 

(まだ……まだ、まだだ)

(私たちの今するべきことは、四肢が健在なこのISを抑えること)

 

そして、ついにビームが暁人を捉えた。暁人は何とか肩部の物理シールドでビームに耐えているが、シールドが融解するのも時間の問題だろう。

 

「黒野くん!!」

「暁人さん!!」

「兄さん!!」

「………」

 

ピット内や管制室から心配の声が漏れた。

 

「「………」」

 

しかし、戦場に立つ2人は心配の声を上げるどころか、一切の心配をしていなかった。

暁人はチャンスを作るといった言葉をただ信じて、目の前の敵に集中する。

 

「んぎぎ……」

 

暁人は2人のためにビームに耐える。

ビームの熱に苦しみながらも、少しづつ、少しづつ動く。

ある場所を目指して。

 

そして、敵ISからのビーム攻撃が止んだ。

敵ISが後少し腕を横にずらせばその先にはAピットがあった。

 

「この位置まで移動したら撃てないだろ?極太ビームの射線上に千冬さんが出てくるかも知れないからな」

 

攻撃規模が大きいのも考えものだなと呟きながら、ビームが途切れたタイミングで暁人は瞬時加速(イグニッション・ブースト)で敵ISに一気に近づいた。

 

「無人機の弱点……直接操作する以外だと、命令(プログラム)通りの動きしかできない。同時に無人機2体だとフレンドリーファイアーしない様に設定するのも考えものだな」

 

コツン、とレールガンの銃口を敵ISの胸に――ISコアの上に置く。

暁人は、目の前の敵ISともう一機の敵ISとの位置を確認する。

 

「それじゃ、()()()

 

そう言って、右手に握っていたレールガンを撃った。

レールガンの銃口から射出された弾は敵ISの胸部装甲を、ISコアを貫通する。そして、突き抜けていった弾は、そのまま一夏達が相手していた2体目の敵ISに当たる。

 

「――ッ!?」

 

敵ISは予想外の攻撃により、動きが一瞬止まり、その隙を見逃す2人はいなかった。

 

「「今だぁ!!」」

 

鈴が放った衝撃砲は相手を吹き飛ばし、強制的にアリーナの障壁シールドに叩きつける。

叩きつけられた衝撃で相手は完全に動きを止まり、そして無防備になった敵に向かって一夏は突貫する。

千冬姉から教わった瞬時加速(イグニッション・ブースト)で相手の懐に飛び込んで……

 

「……チェストォー!!」

キィイイイイイイィン!!

 

出力を最大にした零落白夜の全力攻撃が腹部に当たる。敵ISの装甲は世界最強の攻撃力を持つ青白い刃に数秒も耐えられず、あえなく両断された。

敵ISの片方はISコアを完全に破壊されて、もう片方は両断されて機能停止をした。

 

IS学園を襲撃したIS二機による事件はこうして終幕を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、痛えぇー!!」

 

戦いが終わったと思った次の瞬間に暁人の叫び声がアリーナ内に響く。声の主である暁人は地面に仰向けで横たわっており、両腕は投げ出した状態で叫んでいる。

どうやら、ビームに耐え続けたり最後の攻撃を行う際にシールドエネルギーを使い切り、暁人の打鉄は具現維持限界(リミット・ダウン)を迎え強制的にISが解除されてしまったようだ。

 

自分で撃ったレールガンの自傷ダメージで骨折をした腕の痛みを訴えているが、あまりにも激痛が走っているのか両腕は微動だにしない。

腕が動かせない代わりなのか、首や両足でブンブンと動かして痛みを表現しているのだろうか?

 

「う、腕があぁー!!だ、誰か、早急に治療用ナノマシンをぉ!!」

「「………」」

 

この戦いにおいて最大の功労者(MVP)であるのは、暁人で間違いない。しかし、なんともまぁ……締まらない姿を晒しているものだと戦友の2人は思った。

 

「いや、見てないで少しは心配しろよ、お前ら!?」

「「思ったより元気そうでよかったなって」」

「鬼か貴様ら!?人の心とか……言ってる場合じゃない、マジで痛い痛い痛いぃー!!」

 

アム研に話を付けろとかよく分からないことを叫んでいるが、まあ、なんだ?……とりあえず、その怪我なら大人しくしてろよ。

 

 

 

 

 

IS学園

地下区画

 

学園の地下50メートル。

そこにはレベル4権限がない者が入れない、隠された空間があった。

 

機能停止したIS2機をすぐさまそこに運び込まれて解析を始めた。千冬はその2機の姿をモニター眺めながら、真耶からの報告を待ってた。

 

「あの無人機ISの解析結果がでました」

「ああ。どうだった?」

 

戦闘の状況から人が操縦していないことは明白だった。

世界中で開発が進むISのまだ完成していない技術。遠隔操作か独立稼働か、あるいはその両方の技術が侵入してきたISには使われていた。その事実は、すぐさま学園関係者全員に箝口令が敷かれた。

 

「はい。あの無人機はどのような方法で動いていたのか不明ですが、映像の記録からおそらくは織斑くんの戦闘力を確認する命令と……黒野くんを抹殺する命令を受けていたと思われます」

「……」

「しかし、フレンドリーファイヤーの禁止や他に攻撃をしてはいけない場所などを指定されていたと思われ、黒野くんはそこに気付いて戦闘を優位に進めていました」

「そうだな……」

 

そして、おそらく、その攻撃をしてはいけない対象には織斑千冬()も入っていただろうな。

 

「回収した2機の状況ですが、黒野くんのレールガンを受けた方のISは機能中枢とコアを完全破壊。織斑くんがトドメを刺したISはコアは健在ですが、膨大なエネルギーにより機能中枢が完全に焼き切れてます。破損状況と合わせますと修復は不可能かと」

「コアはどうだった?」

「……それが、未登録のコアでした」

「そうか、やはりな」

「……何か心当たりはあるんですか?」

 

私の確信したかのような発言に真耶は怪訝そうな顔をする。

 

「いや、ない。今はな……そういえば、1番の功労者の様子はどうだ?」

「はい……幸い骨折で済みましたので、学園内の施設ですでに治療済みです」

「やっと落ち着いたか、あのバカは」

「戦闘終了直後は痛みの中で動き回ってましたが、鎮静剤を無理矢理投与したので、今は落ち着いています……しかし、よかったんですか?」

「ん?」

「黒野くんに、ナノマシンによる回復促進治療を受けさせないでよかったんですか?」

「ああ、そのことか。今回わかった事だが、あいつは結果のためなら自分を犠牲にする奴だ。早く治ったら同様の無茶をまたしそうだからな」

「はあ……」

「幸い、黒野は愚弟とは異なり成績優秀な生徒だからな。ISの実習以外に影響を与えることは少ないだろう。骨がくっつくまでの1ヶ月の間は辛抱してもらおう」

「……まあ、いくら制限を解除したとはいえ武器の自壊どころかIS装着しているのにも関わらず自傷するなんて私たちでもちょっと経験がありませんからね」

 

本人にとってはいい薬だろうと内心思いながら、私たちは特別地下区画を後にした。

 

 

 




~次回予告~
セシリア「………」
暁人「……何か不満かな、セシリア嬢?」
セシリア「あなたのおかげで私の出番がなくなりましたわ」
暁人「しょうがないじゃん。この時のお前はビットで連携とかまだ出来なかったし……」
セシリア「何かしらの補填を求めますわ。具体的にはIS学園特製の巨大パフェを」
暁人「お前、もう生徒でもないし関係者でもないだろ……それに太るぞ?」
セシリア「……女性に対してその物言いはどうかと思いますが、忘れましたの?私は絶対に太りませんわ」
暁人「そう言えば、そうだったな……」

次回、20話:告白
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