IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

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~前回のあらすじ~
おう!今回はオレ、ダリルがあらすじ担当だ。
生徒会長の地雷を意図的に踏み抜いた愛すべき馬鹿、暁人。
どんな意図で学園最強に喧嘩を売る真似をしたのか常人には理解ができない……オレでも怖くてでないことはある。

怖い物知らずとは暁人のためにある言葉なんだろうな……

IS ~クロノス~ 21話 告白(後編)


21話:告白(後編)

2022年5月21日(土)

IS学園

整備室

 

 くろろんとかんちゃん3人でのおしゃべりのために飲み物を準備して整備室に戻ってきた。だけど、くろろんしかいないはずの整備室から話し声が聞こえてきたので、私たちは思わず足を止めた。

 

(……会話の内容はよく聞こえなかったけど、穏やかな雰囲気ではない?)

 

 整備室内の様子を見るために恐る恐る覗き込むと、くろろんと楯無お嬢様が話をしいた。私達2人は、尋常じゃないお嬢様の雰囲気から整備室に入れなかった。

 2人の話の中で、お嬢様に何者なのかと問い詰められたくろろんはチラリと私たちの方に視線を向けた。

 

(んー?今のは私たちというより、かんちゃんの方をみたのかなー?)

 

 なんで、かんちゃんの方を見ているのかの考えていたら――

 

 

 

 

 

「出来の悪い妹を持った気分はどうですか?」

 

 その一言で、空気が固まった。私も、かんちゃんも、お嬢さまも。

 あの優しいくろろんの口からそんな言葉が出てくることが、私には信じられい……ショックだった。そして、動きが止まったお嬢様にくろろんは流れるように言葉を続ける。

 

「バカな子ほど可愛いって言いますもんね」

 

 くろろんはかんちゃんの悪口を続けて言った後に、お嬢様にパシンという音が静かな整備室の中に響いた。お嬢様がくろろんの頬を叩いた音だった。

 

「それ以上、簪ちゃんを侮辱するような事を言ったら殺すわよ」

「……もしかして図星でしたか?」

「私の言葉が聞こえなかったのかしら?」

「……そんなに妹が可愛いなら、なんでもっと話し合いをしなかったんですか?やっぱり、妹の立場が下のままの方が都合がよかったんですかね?」

 

 くろろんは嗤いながら、嘲るように言葉を口にする。いつもの優しく柔らかい雰囲気から、相手からの否定を許さない断罪のような……そう、まるで重くて鋭い……断頭台の刃のような言葉が怖かった。

 

(この感じは……クラス対抗戦でくろろんがセッシーと戦っていた時と同じ雰囲気だ)

 

 

 

 

 

 

「それともあれですか?『そのまま無能なままでいて欲しい』……とか、思っちゃってたりしましたか?」

「ッ!?」

 

 今までの発言も対外だけど、その言葉は流石にかんちゃんに対してもお嬢様に対しても失礼すぎる。私は怒りの言葉をだそうとして……止めた。

 

「な……何で誰にも……話していないのに……」

 

 なぜなら、かんちゃんの様子がおかしかったからだ。不自然に肩が震えて、息が詰まっている様子に心配になる。

 

「そうなんじゃ無いかなって……私が勝手に思ってるだけのことを……なんで……?」

「……え?それは、いったい、どういう……?」

 

 かんちゃんは私の言葉が聞こえていない様子で、取り乱し始める。

 

「それは……私が……勝手に思っていることなのに……!!そんなことを……お姉ちゃんは言わない……言われたことなんて……ないのに……!なのに……私が……勝手に……そう思って……私が……勝手に……傷ついてただけなのに……!!」

 

 もしかして、くろろんはかんちゃんが他の誰にも話していない話をお嬢様にしているの……?くろろんはどうやってかんちゃんが思っていることを知ったんだろう……

 

「そんなこと――そんなこと思う訳ないでしょう!!」

 

 突然、お嬢様は叫ぶ。誰よりも大切な人のために。

 

「簪ちゃんは、私の『大切な妹』なんだから!!」

 

 その心の籠った一言は、整備室の外にいてもよく聞こえ、お嬢様の言葉を聞いたかんちゃんは取り乱すのをやめた。

 

「はぁ……その一言を出すのに、いったいどれだけの時間かけるんですか……」

 

 くろろんはやれやれといっているような感じで、疲れたような顔を見せた。

 

「まあ、傍から見て俺は怪しいし……だけど、今日突然現れたのは簪さんが俺に告白するかもとか思って焦ったからですよね?」

「そ、そそ、そんなこと無いわよ!!」

「姉として気が気じゃなかったのは理解しますけど……あなた、まだ先日の事件後に簪さんとちゃんとお話をしていないでしょう?」

「ど、どうして、そんなことが分かるのよ!?」

「はぁー……関係がギクシャクしてて、話しかけ辛かったのは理解しますが……流石に、ちょっと……」

(えーと、その、もう襲撃事件から5日経過してますよ?)

 

 当日は確かに生徒会長や『更識』として忙しかったというのはわかるけど……その日数は流石にどうかしていると思う。

 

「それは、その……色々と立て込んでまして……」

「やっぱり簪さんのこと、そこまで心配していなかった――」

「すごく心配しているに決まっているでしょう!?大切な妹なのよ!?」

「……それじゃ、ちゃんと心配していたことを後ろにいる本人に直接伝えましょうか?」

「…………え?」

 

 私とかんちゃんはビクっと体を反応させた。かんちゃんは私に涙目でふるふると首を横に振ったけど、私は二人の為を想って整備室の中に入るようにジェスチャーをした。

 

「――ッ!うー……………はぁ……」

 

 十数秒ほどかんちゃんはお嬢様に――姉に姿を現すのを躊躇した後、諦めたかのように整備室の中に入っていった。

 

「お、お姉ちゃん……」

「か、簪ちゃん……?」

「「………」」

 

 お互いに何を話したらいいのか分からずに黙り込んでしまう2人。そこに、先ほどまでの怖い雰囲気ではなく、2人のことを(おもんぱか)ったくろろんが話しかけてくる。

 

「楯無さん、国家代表にまでなるのに頑張れたのはどうしてですか?」

「………」

「それは一体、誰のためですか?」

「………」

「一度、あなた達姉妹は腹を割って話し合いをしましょう?」お互いのすれ違いで大切な相手との大切な『時間』を無意に過ぎるよりは、『今』ちゃんと話はいましょう?」

「わかったわ……簪ちゃん、久しぶりに……2人でお話をしない……?」

「……ッ!……うん!!」

 

 そう言って、姉妹2人は整備室を後にした。……2人は泣いていたけど、悪い結果にならないだろうという事だけは分かった。

 2人が整備室から出て行った後に、私はくろろんの隣に立つ。

 

「約束破った」

「………」

「女の子を泣かせちゃダメって約束破った」

 

 くろろんのことをジトーっと、睨む。

 

「……厳密には約束はしてないよ」

「むー」

 

 確かにあの時、謝っただけで約束はしていなかった。*1

 

「また前のようにビンタする?」

「うーん、お嬢様にすでに叩かれているから今回はなーし……それにしてもー、なんであんなことしたのー?」

「………」

「セッシーの時もそうだったけどさー……くろろんは人の内心に深く踏み込んで、傷つけて……そして成長を促そうとしてるよねー?」

「………」

「……いつもはおしゃべりさんなのにー、今日はーだんまりだねー?」

 

 そういうと、くろろんはプイッと顔をそむけた。……まあ、ちょっと子供っぽくてかわいいんだけど……今までくろろんを見てきて、ふと思った事を口に出す。

 

「くろろん、一体何を怖がってるの?」

 

 私がそう言うとくろろんは一瞬驚いた顔をする……そして、声を絞り出すように話を始めた。

 

「いつか、みんなや君と会えなくなってしまうかもしれない……って考えるとね。ほら?結構この世界って危ないし、この前のこともある……これから、みんなが命の危険(それ)に巻き込まれないか」

 

 言っていることに一理あるけど、私は疑問に思ったことを口に出す。

 

「……専用機を持っているおりむーとか弱い部類じゃないと思うけどなぁー」

「確かに、一夏達は弱くはないよ……だけど、強くもない。せめて国家代表クラスに強くなれば安心なんだけどね」

「……目標が高いねぇー」

 

 まるでエッフェル塔?スカイツリー?エベレスト並みに高い目標に驚く。

 

「そうかな?あいつらなら、できるでしょ?」

「まあー……それは置いておいて、仮に守るほどにか弱いみんなをどう守るのー?」

「……守ることの究極って、守りたい対象の時間を止めることだと思うんだ」

「んー?」

 

 くろろんは、重い雰囲気の中で夢や空想のような話をする。いつも私の前で見せている明るさやノリの良さがなく、ただ淡々と別世界の法則を話しているようだった。

 

「だって、時間が止まったものは、壊れないから」

「……今日のくろろんは、いつにもましておかしなことを言うよねー?」

 

 私はくろろんの言葉がおかしくって、笑ってしまった。

 

「そこは、『時間が止まれば壊れることはないだろう』とかの推測でさ、『時間が止まれば壊れない』って断言はできないと思うんだけどなー?」

「……そうかもね。ごめん、まるで時間を――」

「でもさ、仮に時間が止まったら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうやってくろろんを抱きしめられないよ?」

 

 私はくろろんの頭を抱きしめた。優しく、怖がっている彼を安心させるように。

 

(あー、心臓の音聞こえちゃってるかなー?)

 

 自分でもドキドキと心臓の音が鳴っているのが分かる。

 

(これでも私、恥ずかしがってるんだよー?)

 

 好きな男の子の頭を抱きしめる、人生初めてだし。

 

「布仏本音さん」

 

 私の腕の中でくろろんがはっきりと言葉にする。雰囲気で察した。これから、くろろんは大切な話をするんだ。

 

(……なんとなくわかってたけど、くろろんは私のことは心の中では本名で呼んでいるだろうなー)

 

 意外と真面目さんなのかなと考え、いつもの軽いノリとのギャップが可愛く感じる。

 

(そして、本名で呼ぶ時は他の事を考えてあだ名で言い忘れた時か、真面目な話をする時かなーって)

 

 そう、思いながらくろろんの言葉を待つ。

 

「あなたが好きです、愛しています」

「……うん、分かってるよ」

 

 初めて会った時から、君は私を愛していた。初めてなのに、君はみんなを守ろうとしていた。だけど、その中でも私を一番に考えていたのが……想っていたのが分かる。

 

「もう、あなたを傷付けさせはしない」

「……うん」

「あなたの事はこれから先ずっと、ずっと守ります」

 

 絞り出すように彼は言う。人生初の告白で様々な感情が渦巻いている。嬉しい、恥ずかしい、嬉しい、幸せ、嬉しい、幸せ、幸せ。

 

「絶対にあなたの事を守ります。俺と……付き合ってください」

 

 まるでお姫様が騎士に忠誠を誓うような……物語の登場人物になったかのような告白だった。

 

「うん、わかった。私もくろろんのことを守るよ。これから私たちは恋人だね!!」

 

 くろろんは、私の事を想ってくれた。だから、私もそれ以上に彼の事を想うことに決めた。

 

「こう言う時って、さっきの先輩達のように~キスでもした方がいいのかなー?」

「とりあえず、俺の腕が治ってから、そういうことするかを考えよっか?」

「うん、それもそうだね」

「……でも、今、ここでキスするっていうのも」

「――えっ?」

 

 私は、つい反射的に離れようとするけど、いつのまにかにくろろんは腕を私に体に回していて離れなれない。

 

「あはは……い、意外と積極的だねー……じょ、冗談だよねー?」

「俺はいつもで本気だよ」

 

 そう言って、くろろんの顔が近づいてくる。

 

(別に、いやじゃないんだけどさ……こう、もう少し順序を踏んでさ……ほら、私はさ女子中学校出身で、これでも名家の娘で……だけど、こういう積極的なのは不思議と悪くないかなー)

 

 そんなことを想っていたら、もう目の前にくろろのんの顔があって……そして、私からも無意識に顔を動かして……そして、私達は少しづつ唇があとちょっとで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「へぶっ!!」」」

 

 ……あと、もうちょっとのところで、何か変な声が聞こえてきた。

 

「……え?」

「やっぱり、お邪魔虫がいたか……」

 

 くろろんがそう言って、整備室内にあるIS用ハンガーを睨みつける……すると、いそいそとおりむー達が物陰から出てきた。

 出てきたみんなは、ばつが悪い顔をしていた。

 

(あっちゃー、今までの会話きかれてたかー……うー、今更ながら恥ずかしくなってきたかなー)

 

 怖がっているくろろんの頭を抱きしめて、そのまま告白をされて、そして恋人になる……なんて……くろろんからの告白されたところを見られてたという事に今更ながら頬が赤くなるのを感じた。

 

(……ちょっと、もったいなかったかなー?)

 

 人生初のチューは少しお預けになることを残念に思いながら、おりむー達を恋人と一緒に怒りにいった。

 

 

 

 

 

〜衆人環視での伝言〜

IS学園 食堂内

 

「ぜんざいでいちゃつけるとか……噂以上にすごい奴だな……」

「レベルが高すぎるっス」

「あ、ダリル先輩とフォルテ先輩ですね?初めまして」

「初めましてー。本日はどのような御用でしょうかー?」

「おう、初めまして……いや、『二人目(セカンド)』が大けがしたと来たからな」

「そうっス。箝口令が敷かれたとは言っても、耳に入ってくるから気になったって先輩が……」

「あ、オレだけか?おまえも気になってたじゃねーかよ?」

「まあ、気になったから顔を見に来たと」

「その通りだ。特に深い理由はねーよ……まあ、お互いに『色々と同じ立場』だ。親愛の証に握手でもどうだ?」

「……先輩、流石に相手の状況を考えてっス」

「おっと、すまない。アメリカではこれが普通だったんだ。気が利かなかったな」

「いいえ、見た目ほど酷くはないのでお気になさらず。ほーちゃん、ちょっと離れてくれると嬉しいなー」

「良いけどー……くろろん、怪我してるんだからー、無理しないでねー?」

「はーい……それじゃ――『今後ともよろしく』」

「……おう、よろしく」

「「………?」」

「さて、挨拶も済んだしさっさと帰るか。っと、その前に――」

「「わっ!?」」

「ちょ、なんっすか……って、ムー!ムー!」

「ぷっは……見たか?オレ達の方が熱々だ」

「ダリル先輩は一体何を張り合ってるんですか……」

「わー、わー……すごーい……絶対舌も入れてた……」

「お前も驚いた顔をするんだな。もっと超然とした奴だと思ってぜ……ほら、フォルテ行くぞ」

「わ、待つっス」

 

 

 

IS学園 食堂前

 

「……あれが話にあった、『二人目(セカンド)』の能力か……本当にワンオフなのか、あれは?」

「どうしたっスか?さっきも様子がおかしかったっスけど?」

「なんでもねーよ。しかし、なるほど……体験してみると、マジでビビるな」

「……?」

「これも、事前に伝えられてなかったら気味が悪くてさっさと捨ててるところだ」

「なんっスかそれ?USBメモリ?先輩ってそういうの持ち歩く人でしたっけ?」

「いや、オレのじゃない。これは叔母さんへの伝言ってところだな」

「……先輩、叔母さんがいたんっスね」

 

*1
10話のおまけ参照




~次回予告~
フォルテ「パクリ後輩」
暁人「だれがパクリっスか?」
フォルテ「ほら、私の口調パクったっス」
暁人「パクってねーっスよ」
フォルテ「パクリじゃねーんっスなら、それはなんなんっスか?」
暁人「うつっちゃったっス」
フォルテ「うつっちゃったっスかー……」

次回、22話:IS学園の日常②
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