IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

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~前回のあらすじ~
どうも!暁人お兄ちゃんの!本当の妹の!星音があらすじを担当するね!
ドンドンパフパフ!……ほら、もっとみんな盛り上げてよ!

……お兄ちゃん、今は血の繋がりはないだろとかのマジレスは必要ないから。
テンションが前回の内容と違ってキャラが良く分からない?……無力感に打ちのめされていたり、人質で監視付きの奴がこんなテンション高くてたまるか。

さて、前回は短話をまとめた話だったね。
その話の中で一番気になるのは、やっぱりお兄ちゃんかな……そこ、ドン引きするな。特に箒さん。そういった意味じゃない。

思考の中に他にもう1人いるような感じだったり、時間を止めれだったり、亡国機業との繋がりを出したり……気にしないというのが無理だよ。


……お兄ちゃん?今、私をストーカーの究極って言った理由を話してもらえるとありがたいんだけど?


23話:ボーイ・ボーイ・ボーイ(?)

2022年6月5日(日)

五反田家

弾の部屋

 

 俺は久々にIS学園の外――中学時代からの友人である五反田弾(ごたんだだん)の部屋にいた。

 

「で?」

「で?て、何がだよ?」

 

 弾は肩まである暗い赤髪とヘアバンドをトレードマークにした俺と同じ高校1年だ。最近ギターに手を出してギターリストっぽい服装を心掛け『楽器弾けるようになりたい同好会』(私設)をもう1人の友人と一緒にやっているらしい。バンドのメンツは揃ったのかという野暮な質問はしてはいけない……

 

「だから、女の園の話だよ。いい思いしてんだろ?」

「いい思い?してねえっつの。何回説明すれば納得するんだ?」

 

 そんな弾とは中学校の入学式当日に知り合ってから何かとウマがあった。中学校時代の3年間は(りん)も俺達2人と同じクラスだったのもありよく3人一緒だった。

 

「嘘をつくな嘘を。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。何そのヘブン?招待券ねえの?」

「ねえよ、バカ」

 

 現在、俺が通っているのは特殊国公立高等学校『IS学園』。IS――正式名称インフィニット・ストラトスは宇宙用に開発されたマルチフォームスーツで、今のところは地上の最高戦力として各国が配備している。そして、このISの最大の特徴が『女性にしか扱えない』――のだが、何故か知らないが俺や暁人は男だけど、その『女性にしか扱えない』ISを操縦できる。

 そんな俺たちはIS学園へと半強制的に入学させられた。1人の用務員を除き、生徒、教員、職員すべて女性という環境で寮生活を送っている。

 

「つうか、アレだ。鈴が転校してきてくれて助かったよ。知り合いがいると、本当に違うよな」

「ああ、鈴か。鈴ねぇ……」

 

 鈴の話題を出したところで、突然の来訪者により俺たちの会話は中断された。

 

「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べに――」

 

 ドアを蹴って入ってきたのは弾の妹である五反田(らん)だった。歳は俺達の1個下の中学3年生で有名私立女子校に通っている。兄と比べるのもおこがましくなるほどの優等生だ。

 

「あ、久しぶり。邪魔してる」

「いっ、一夏……さん!?」

 

 そんな蘭は家族しかいない空間なのでとてもラフな格好をしている。腰まである綺麗な明るい赤髪を後ろでヘアバンドですっきりとまとめており、服装もショートパンツにタンクトップという涼しさと機能性を重視した格好をしていた。

 ……ぶっちゃけ、蘭のショートパンツからパンツがチラッと見える事に気付いたけど、IS学園にいる女子たちでで培った無反応を貫く。特に最近は暑くなったので蘭と同じような露出が高い格好をしている女子が多くなった。ほぼ女子しかいないIS学園なので、そういった女子の格好には自由というか凄く開放的だ。

 俺も健全な男子高校生。本能でついそういったところについつい目が行ってしまい視線を意図して外すしているが、それに気づいた女子との微妙な空気には慣れない……暁人は女子たちの格好についてどう思っているのかはよくわからないのでノーコメント。

 

「い、いやっ、あのっ、き、来てたんですか……?全寮制の学校に通っているってきいてましたけど……?」

「ああ、うん。今日はちょっと外出。家の様子を見に来たついでに寄ってみた」

「そ、そうですか……」

 

 不思議な事に蘭は昔から俺と話をする時は妙にたどたどしいというか敬語になる。

 

「蘭、お前なぁ、ノックくらいしろよ。はしたない女だと思われ――」

 

 ギンッ!蘭の鋭い視線が兄である弾に突き刺さる。

 

「……なんで、言わないのよ……」

「い、いや、言ってなかったか?そうか、そりゃ悪かった。ハハハ……」

「………」

 

 ギロリと再度弾に鋭い視線を送り付け、蘭はそそくさと部屋を出ていく。

 

「あ、あの、よかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」

「あー、うん。いただくよ。ありがとう」

「い、いえ……」

 

 蘭が部屋から出ていき静寂が訪れる。

 

「うーん、蘭は相変わらずよそよそしいな」

「は?」

「もう3年の付き合いになるのに、まだ俺に心を開いてくれないのか」

「はぁ~?」

「今もさっさと部屋から出て行ったし」

「……いやー、なんというか、お前はわざとやっているのかと思う時があるぜ」

「?」

「まあ、わからなければいいんだよ。俺も同い年の弟はいらん」

 

 そう弾は言って部屋から出ていく。なんでいきなり弟という単語が出てきたんだなどど首を傾げたまま弾の後に続いた。

 

 

 

 

 

 弾と蘭の家は『五反田食堂』という飲食店を営んでいる。中学の時から弾の家で遊んだ時には、よくこの食堂で弾たちと一緒にご飯を食べていた。五反田食堂は住居スペースとお店が完全に分かれており、食事をしたり店に入る際には一度外に出る必要があり正直手間だが何度も五反田家で食事をして慣れているで特に何も言わずに五反田食堂に入る。

 食堂内に入ると俺達よりも先に来ていた蘭の姿が見え……ん?

 

「蘭さあ着替えたの?どっかに出かける予定?」

「あっ、いえ……これは、その……ですね」

 

 蘭の姿はさっきまでのラフな服装ではなく、ヘタバンドでまとめていた長い髪をおろしたロングストレートの髪形にしており、ショートパンツとタンクトップは半そでのワンピースと黒いニーソックスに変わっていたことに少し驚いた。

 

「ああ!デート?」

「違います!」

 

 蘭も年頃の女の子だし彼氏がいても不思議ではないだろうと考え思いついた事を口に出したところ、かなり食い気味に否定された。

 

「ご、ごめん」

「あ、いえ……と、とにかく、違いますから!」

「……はぁ」

 

 弾はその様子を見て俺達……というか、俺にだけ呆れた視線を向けつつ席に座った。俺と蘭も弾に倣って席に座ると五反田食堂の大将である五反田(げん)さんが俺達3人の食事をテーブルに運んできてくれた。厳さんは80歳を過ぎているが生涯現役と言わんばかり長袖の調理服を肩までまくり上げ、むき出しになっている年中浅黒い剛腕で中華鍋を振るっている元気な爺さんだ。

 

「「「いただきます」」」

「おう。食え」

 

 厳さんはそう満足そうに頷いて厨房に戻っていく様子をしり目に用意されたご飯を食べ始める。IS学園に入学する数か月前にもこの場所で食べたというのに、なんだか懐かしい気持ちが湧いてくる。

 

(まあ、そんな気持ちが湧くのも、IS学園に入学するように決まってからの色々あったからなんだけどなぁ)

 

 ISを動かせるようになり、IS学園で生活をしてからの生活や事件などが脳裏に蘇る。そんな風に少しボーッとした俺に蘭は心配をした様子で話しかけてきた。

 

「一夏さん?……お口に合いませんでしたか?」

「ん?いや、うまいよ、これ」

「そうですか……ほっ、よかった」

「……?」

「一夏。めし食いながら考え事か?行儀悪いぞ」

「ごめんごめん」

 

 そんな会話をしつつ食事を終え、食後のお茶を飲んでいると弾が話を振ってきた。

 

「でよう一夏。鈴と、えーと……誰だっけ?もう一人の幼馴染と再会したって?」

「ああ、箒な」

「ホウキ……?誰ですか?」

「ん?俺の最初の幼馴染」

「ああ、あの……」

 

 なんでだろうな、蘭は鈴の話になるとほんのわずかに表情が硬くなる。

 

「そうそう、その箒と同じ部屋だったんだよ。まあ、今は――」

「お、同じ部屋!?」

 

 そして、なぜか取り乱した蘭が突然叫ぶ。

 

「い、一夏さん?同じ部屋っていうのは、つまり……寝食を共に……同せ――同居してたんですか?」

「ん、そうなるな」

 

 俺の言葉を聞いた蘭は、なぜか身体をワナワナと震えだした後に小さく呟いた。

 

「……………決めました。私、来年IS学園を受験します」

「「えっ!?」」

 

 その宣言に俺たち二人は驚いた。

 

「受験するって……なんで?蘭の学校ってエスカレーター式で大学まで出れて、たしか超ネームバリューのあるところだろ?」

「お前、蘭の通ってる学校の名前忘れてるな?聖マリアンヌ女学園だ……蘭、一応言っておくがIS学園は推薦ないんだぞ?」

「お兄と違って、私は筆記で余裕です」

 

 確かに弾の成績は悪い。しかしながら、志願倍率がとても高いIS学園に余裕と言い切る蘭は凄いな……。

 

「いや、でも……な、なあ、一夏!いくら成績が良くても、IS学園って実技あるよな!?」

「あ、ああ、あるな。IS起動試験っていうのがあって、適性が全くないやつはそれで落されるらしい」

 

 ちなみに、その起動試験はそのまま簡単な稼働状況を見る。適正によってA~Cなどのランク分けがされることとなり、セシリアと暁人はAランクで、俺はBランク、箒はCランクだ。

 

「それが、ですねぇ~……じゃじゃーん!!」

 

 そう言って、蘭はポケットから紙を取り出して俺たちに見せる。

 

「IS簡易適性試験……判定A……だと?」

「Aランクの適正か……すごいな……」

「はい、ですので問題はすでに解決済みです」

 

 ちなみに、IS簡易適性試験とは政府がIS操縦者を募集する一環で実施しているものだ。

 

「そ、それで、ですね」

 

 蘭はこほん、と小さく咳払いをしつつ、俺の手をがしっと握りながら――

 

「IS学園へ入学しましたら、一夏さんには是非、先輩として指導を……」

「ああ、いいぜ。受かったら……な……」

 

 俺は軽い気持ちで約束をしようとしたが、先日のIS学園襲撃事件を思い出した。

 

(蘭がIS学園に入学したら、俺や他の生徒のように危険な目に合うのではないのか?)

 

 そのような考えが頭の中をよぎり、俺は固まってしまった。

 

「……一夏さん?」

「お、おい、どうした一夏?」

「あ、ああ、いや……」

 

 2人は急に黙り込んだ俺を心配した様子で見ていることに気が付いた。

 

(そもそも、あんな事件が起きることの方が珍しいか)

 

 俺はそう考え、改めて蘭と約束をすることを決め、今の雰囲気を誤魔化すように話し始める。

 

「いや、なんでもない……うん、受かったら先輩として教えられることを教えるよ」

「ほ、本当ですか!?約束しましたよ!?絶対、絶対ですからね!」

「おう、蘭が入学して来るの待ってるよ」

 

 蘭の入学して来るまでの約1年の間で先輩として恥ずかしくないように勉強しなくちゃな……分からないところがあったら、知識面を暁人やセシリア、鈴、箒に助けを求めて何とかなっている状態だ。

 実技は……うん、もう最近だとみんな俺に対して頭で考えるな、体で覚えろ的な感じにシフトしてきている。新しい事を教えてもらう時は、初めに簡単に理論をセシリアと暁人が説明をして、その後に全員で俺を……

 

「お、おい蘭!お前、何勝手に進学先変える事決めてんだよ!なあ、母さん!」

「あら、いいじゃない別に。一夏くん、蘭のことよろしくね」

「あ、はい」

 

 五反田食堂の自称看板娘で弾と蘭の母である五反田(れん)さんにも頼まれてしまった。ちなみに実年齢は秘密で『28歳から歳をとっていない』との話が出るくらい若く見える。

 

「はい、じゃねえ!ああもう、親父は今いねえし!……いいのか、じーちゃん!」

「蘭が自分で決めたんだ。どうこう言う筋合いじゃねえわな」

「いや、だって――危な」

「なんだ弾、お前は文句あるのか?」

「……ないです」

 

 ああ、やっぱり、弾は家庭内の立場が低いなぁ。そんなことを想いながら、久しぶりに『家族の時間』というものを眺めてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺は数か月後に安請け合いをしたことを後悔した。

 

 

 

 

 

2022年6月5日(日)

IS学園

学生寮 1025室(一夏の自室)

 

 

「………」

 

 寮の自室に帰ってきた俺はそのままベッドに寝転がる。もう6時過ぎているんだよなーと、思いながら隣のベッドをなんとなく見る。

 ここ1~2か月を同じ部屋で暮らしていた箒も今は別室。2人部屋のスペースを1人で使うのは広すぎるって気がしてしまいどうにも落ち着かない。

 それにしても、本当にいつになったら暁人と同じ部屋になるんだ……こんな話を以前うっかり食堂で話したら男同士の恋愛に熱狂する女子たちが沸き立ったが別にそういう意味ではない。普通に考えて、男子2人しかいないのに、お互いに2人部屋をそれぞれ割り当てられているのはおかしな状況だ。

 

(まあ、男子の部屋割の話は先生方に何か言うつもりはないけど)

 

 先日の山田先生を見る限り不本意かつ政治的な話が関わってくるんだろうなという事は理解している。なんなら、忙しいだろう先生方の為、この間1年1組のみんなで話し合って差し入れを職員室に持っていったら生徒たちの優しさに触れて涙を流した姿を見ているので、何か言うつもりはない。……本当に先生方はお疲れ様です。

 

(そういえば、学年別個人トーナメントは今月末か……)

 

 学年別個人トーナメントは、生徒全員が学年別に分かれてISバトルを行うトーナメント戦だ。これを6月最終週の月曜日から1週間かけて行う。1学年が大体120名からなるトーナメントでやるものだから1週間も時間かかるよなと納得したのは記憶に新しい。

 ちなみにこのトーナメントは学年ごとに見るべき評価が異なっている。1年生はまだISに触れた経験が短いので先天的才能はどの部分か?2年生はその才能がどれほど成長したのか?3年生は実戦能力の高さなどを見られるらしい。

 まあ、もちろんこのトーナメントでは各生徒の実力しか見ないもので、整備課などのIS搭乗者を希望せずに機体や武装の整備開発を志望する生徒達にはあまり意味がないもの……だと思われるがそうでもないらしい。

 

(暁人はこのトーナメントは『ふるい分け』や『発掘』としても機能していると話していたな……)

 

 当然の話だが、自分のなりたいものと適性は別だということだ。IS学園に入学が出来るほど勉強をして適性も悪くないからIS搭乗者を夢見ている女子たちはいる……というか、そういった女子たちの方が多い。しかし『ISを動かせること』と『ISで戦えること』は別な話になる……らしい。

 俺は普通にISで戦えるので詳しいことは分からないが、そういった現実をこの機会に見せてIS操縦者以外の道を示したり、整備開発志望だけど戦闘適性があるものを見つけ出したりのに学園側は今回のトーナメントを活用する……らしい。

 

(こういった話も全部暁人から聞いたことだけどな……来年入学してきた蘭に自然といえるようにしないとな)

 

 ああ、それと今回の学年別トーナメントはスカウトのためIS関連の企業や各国の偉い人達が見に来るらしい。特に3年生は来年IS企業か国に就職するのかを決める重要なイベントとなり、その分大掛かりになるらしい。

 

(ま、俺たち搭乗者はなんにしても頑張るしかないな……千冬姉(ちふゆねえ)が恥をかかないくらいには活躍しないとな)

 

 ふと、俺は自分の右手を持ち上げて顔の前まで持ってくる。そして、自分の手首に装着している真っ白いブレスレットを――俺のIS『白式』の待機形態凝視する。

 

(――でも、なんだったんだろうな。アレ……)

 

 俺は先日の無人機襲撃事件の事を振り返る。あの時、自分で人が入っている動きがじゃないと思った気がしたけど、今落ち着いて考えてみると『白式』からあれは無人機だ……という情報が送られてきた気がする。またこれもまだ確証はないけど、俺と『白式』のシンクロ率は不安定だけど他の人より深く繋がれる気がする。深く繋がれると、ISの操縦がしやすくなったり、よりISの機能が使えるようになるんだ。

 多分、前回鈴や無人機と戦った時はシンクロ率が80%――ISを操縦する上でほぼ完全にISと繋がれたと思う。だけど、暁人と戦った時はもっと深く繋がって『白式』の声がもっとしっかりと感じた気もする。

 前者の80%とは恐らく一般的にISを操縦する時に使われる指標を元にした数値だけど、後者はそれを超えた場合に起きる現象の前触れ的なものだったのではないか?ISとは100%以上繋がるとができるけど、何かが起きるのではないか?

 

(もし仮にISと100%や200%を超えてシンクロできた時……操縦者は一体どうなるんだ?

 

 

 

 

 

コンコン

 

「一夏、いる?」

「……おう」

 

 どうやら鈴がやってきたようだ。ノックする音にビクッと身体が反応した後に俺は返事をした……恥ずかしい妄想をしていたという事実を隠すように弾みをつけてベットから起きる。起き上がった勢いでそのまま部屋の出入り口に向かいドアを開けた。

 

「何の用だ、鈴?俺は今から夕飯に行くんだが」

「ふふん。まさにそうじゃないかと思って誘いに来てあげたのよ」

「そりゃどうも。じゃあ、食堂に行こうぜ」

「ええ」

 

 鈴と並んで廊下を歩く。夕飯時なので、他の生徒とも出くわす……相変わらずラフで露出の高い格好が多くIS学園寮は目のやり場に困るな。もう少し男子がいるってことを気にしてほしいという悶々とした気持ちを抱えながら食堂に入る。

 

「お、一夏と鈴音か」

「お?本当だ、やっほー」

「……どうも……」

 

 食堂に入ってすぐに暁人、のほほんさん、簪さんの3人が一緒のテーブルで食事をしている姿が見えた。最近はよくこの3人の組み合わせを見かけるな。俺たちに気付いた暁人とのほほんさんからはいつも通りの雰囲気で挨拶をされたけど、簪さんからは遠慮がちにペコリと頭を下げられた。

 

(まあ、簪さんとは最近知り合ったばかりだし、彼女自身も俺との距離感を測りかねているのは分かっているので特に気にしていない)

 

 そういえば先日、簪さんから謎の謝罪をされた。

 

『織斑一夏……今まで、あなたの所為だと思って恨んでいた事があった……だけど、それは筋違いだったことに気付いた……ごめんなさい……』

『……はい?』

『『……一夏?』』

『まったく身に覚えがないからそんな目を向けないでくれ……暁人、説明プリーズ』

 

 まあ、いつもながら一悶着があったが割愛。()()()()()()()()()()()()()()()()、俺や暁人がISを動かしたことが要因で簪さんの専用機が作られなくなったという話だった。俺は自分の所為で人に迷惑をかけてしまったという罪悪感が出て来たが、責任は完全にIS担当している会社にあるとの事だった。

 ……その説明をしているときの簪さんの雰囲気は怖かった。俺ではなく倉持技研に向けられた怒りだったけど怖かった。

 

「おりむーとりんりんも今からご飯?」

「その呼び方はやめなさいよ」

「えー?」

 

 おっと、先日の話を思い出していたら鈴音とのほほんさんが話を始めた。ああ、しかし、この寮の中だといつもダボっとしたパジャマでほぼ顔しか露出していないのほほんさんの格好には安心感を覚える。

 

「……一夏?」

「ん?なんだ、暁人?」

 

 そんなことを考えながらのほほんさんの事を眺めていると、のほほんさんと付き合い始めた暁人から声を掛けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、もしかしてほーちゃんをいかがわしい目で見たか貴様?」

「向けてねーよ馬鹿彼氏」

 

 暁人はのほほんさんと交際し始めてからある意味想像通りというか斜め上の方向というか……まあ、面倒くさい彼氏となった。

 

「暁人のああいう感じは彼女としてどうなのよ?」

「えーと、うーんと……恥ずかしいけど私を思ってくれているのが分かって嬉しいよー?」

「……そう……いつまでも……お幸せに……」

 

 惚気話は犬も食わないと言わんばかりに鈴と簪さんは両手を挙げて肩をすくめた。俺もまたかという感想を抱きながら暁人を無視して食券機の列に並んだ。

 

「話は終わっていないぞ、唐変木!!」

「はーい、くろろんは落ち着いてねー」

「ムグッ、あむ……もぐもぐもぐ、ごっくん……うまーい!」

 

 さらに俺に食ってかかかろうとした暁人は恋人から無理やりオムライスを口に詰め込まれて強制的に黙らせられた。本当に、いつまでもお幸せに。

 

 

 

 

 

「ねえ、あの噂聞いた?」

「何?この間のISのこと?」

「あれは実験中だった機体が暴走したって話でしょ」

「じゃなくて、今月のトーナメントで勝つ織斑君と付き合えるって噂」

 

 近くのデーブルにいる女子たちがとても盛り上がっていたけど、話の内容はよくわからなかった。

 

 

 

 

 

2022年6月6日(月)

IS学園

1年1組の教室

 

 

「やっぱり、ハヅキ社製のがいいなぁ」

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいの!」

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノはいいかど、高いじゃん」

 

 月曜日の朝、今日もクラス中の女子が談笑をしていた。みんなどうやらISスーツについての話をしており、あれやこれやと意見を交換している。

 

「そういえば、織斑君と黒野君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

「あー。特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。えーと、元はイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる……暁人も特注品だろ?」

「そうだな、俺のも特注品だ。どこのスーツが元になったのかは忘れたけど、倉持技研が最終的に調整したらしい」

 

 ちなみにISスーツというのは、IS展開時に着る特殊なフィットスーツのことだ。このスーツなしでもISを動かすことは可能だが、反応速度がどうしても鈍ってしまうらしい。えーと、なんだったけな……俺は暁人に話をパスしようと思い目線を向けた直後に――

 

「ISスーツは肌表面の電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

 そう、すらすらと説明をしながら山田先生は教室に入ってきた。

 

「山ちゃん詳しい!」

「一応、先生ですから……って、や、山ちゃん?」

「山ぴー見直した!」

「今日が皆さんのスーツの申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えっへん……って、や、山ぴー?」

 

 入学してから大体2か月が経ち、山田先生には8つくらいの愛称がついていた……俺は慕われている証拠だと思うようにしている。

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

「えー、いいじゃんいいじゃん」

「まーやんが真面目っ子だなぁ」

「ま、まーやんって……」

「あれ?マヤマヤの方が良かった?マヤマヤ」

「そ、それもちょっと……」

 

 ちなみにこんな愛称がたくさん作られている要因の一つには、相性やあだ名をよくつけるのほほんさんの存在が大きい……暁人は目上の人には変な愛称はつけたりしないよな?と初めにセシリアを「せしりん」という呼んだという噂を思い出していると、我らが1組担任である織斑千冬先生が教室に入ってきたところで空気が一変した。

 

「諸君、おはよう」

「お、おはようございます!」

 

 さっきまでは普通の学校の緩い空気から、千冬姉の登場で軍隊の中にいるようなピンと張りつめたものになる。俺を含めた生徒たちはキビキビと席に着き織斑先生からの連絡事項を待つ。

 

「今日からは本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので、各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは……まあ、下着で構わんだろう」

 

 そんな訳ないだろうというツッコミは暁人以外が心の中で突っ込んだだろう。暁人?他の男子()に恋人の下着姿を見せるつもりかと解釈し命知らずにも千冬姉に睨んでいることが見なくても分かるくらいの怒りが後ろの席(暁人)から発せられていた。

 それを邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)なる千冬姉は笑いながら受け流――あ痛っ、変な事考えていることがバレて軽く頭を叩かれた。

 ちなみに、学園指定のISスーツはタンクトップとスパッツをくっつけたようなデザインでほぼスク水のようなものだ。つまり、大変露出が高い。なんで、IS学園にはいくつも試練があるんだ……あと、俺のISスーツも何故かへそ出しだし……

 

「では山田先生、ホームルームを」

「は、はいっ!」

 

 連絡事項を言い終えた千冬姉が山田先生にバトンタッチする。山田先生は気合十分といった感じで元気よく返事をした……最近寮にいる女子たちの格好に気を遣うことが多いけど、千冬姉のスーツ姿や山田先生の私服姿に大変安心感を覚え始めた自分がいる……

 

「ええとですね、今日は……なんと転校生を紹介します!」

「え……」

「「「ええええっ!?」」」

 

 突然の転校生紹介にクラス中がざわついた。噂好きな乙女たちの情報網を抜け出して転校生の紹介というビックイベントが急に出て来たんだから当たりまえか……そういった事から、何か政府や学園側で転校当日まで情報を隠していたのではないかと考えてしまう自分の思考に少しだけ嫌になった。

 そんなことを考えていると、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

 クラスに入ってきた転校生を見て、ざわめきがぴたりと止まる。その理由は鈍い鈍いと言われる俺にも流石に分かる。転校生は男子――『三人目』の男性操縦者だったんだから。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みんさんよろしくお願いします」

 

 黄金の髪を首の後ろに束ねた『貴公子』が眩しい笑顔を浮かべて挨拶をした。 

 




~次回予告~
暁人「やっと、ボクっ娘金髪男装美少女が出て来たな」
シャル「初登場から男装ネタバレするのはどうなの?」
暁人「まあ、プロローグですでに登場してるし……」
シャル「まあね……そういえばこの間、星音ちゃんが暁人と一緒にいる時間が少ないってこの間の愚痴ってたよ?」
暁人「今その話するか?……どうしても忙しくてな」
シャル「それにストーカーの究極って何?とも言ってたなぁ……あんなお兄ちゃん想いのいい娘をそんな風に言うのは酷いんじゃない、暁人?」
暁人「……あいつは俺だけを対象にした未来予知と、自分と俺を閉じ込めて一緒にいられる結界を作れる異能に目覚める可能性があるって話をしたら信じる?」
シャル「………え?」

次回、24話:三人目(サード)
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