IS ~クロノス~   作:チャイナドレス先輩

25 / 25
~前回のあらすじ~
はい、僕の名前はシャルロット・デュノア……ねえ、本当にこっちの名前でいいの?もう名乗っちゃったからこのまま進めるけどさ……
さて、前回は転校生として僕が登場したところで終わったけど、一夏がISとのシンクロ率について考察をしていたね。
その話は暁人の話す異能と関係があるのだろうか……?

……こうして改めてみると、暁人って計画して行動してますって割には行き当たりばったりだったりする行動多いよね?


24話:三人目(サード)

2022年6月6日(月)

IS学園

1年1組の教室

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みんさんよろしくお願いします」

 

 転校生である黄金の髪を首の後ろに束ねた『貴公子』が柔らかい笑顔を浮かべて挨拶をした。その笑顔には何故かキラキラと謎の光が出ているかのような眩しさだった。

 

「お、男……?」

 

 誰かがそう恐る恐るつぶやいた……まるで目の前の光景が信じられない様子だった。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方たちがいると聞いて本国より転入を――」

 

 礼儀正しい立ち振る舞いと中性的に整った顔立ち。綺麗なアメジストの瞳。長い金髪を首の後ろで丁重に束ねた誇張でもなんでもない文字通りの『貴公子』といった雰囲気の男子だった。

 ……この笑顔は女子たちにとってある意味毒になるだろう。

 

「きゃ……」

「はい?」

「きゃあああああ――っ!」

 

 そんな笑顔()に当てられた女子たちの黄色い悲鳴がクラス中に響き渡った。ソニックウェーブが発生しているのではないか?

 

「男子!三人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

「地球に生まれてきて良かったー!!」

「「元気だね、君たち……」」

 

 俺と暁人の呟きは女子たちの黄色い悲鳴の中に消えていった……これはHR後は大変なことになるな。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 我らが織斑千冬先生の一言で先ほどまで騒がしかった女子たちは叫ぶのを止め、クラス中は先ほどまでの喧騒が嘘であるかのようにシーンと静まり返った……このギャップが生まれるのが怖く感じたのは俺だけか?

 

「今日は2組と合同でIS実習を行う。暁人以外の各人はすぐに着替えて第2グランドに集合。それから、織斑」

「はい」

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ」

「織斑先生、俺は転校生の面倒を見なくていいんですか?」

 

 先日の襲撃事件で両腕を骨折をして現在も補強バンテージを付けている暁人が元気よく手を挙げて質問した。

 

「お前はまずは自分の怪我を治してからだ。ま、おそらく怪我が治るよりもデュノアが学園に慣れる方が早いだろう」

「そういうならナノマシン治療を……」

「何度言わせるつもりだ。お前の怪我でナノマシン投与は不要と判断されたから私の一存で変えられる訳がないだろう。話をしていたらギリギリの時間になってしまったな……よし、では解散」

 

 千冬姉(ちふゆねえ)は手を叩き生徒たちに早く次の授業の準備をするように促して強制的に話を終わらせた。暁人はしぶしぶ納得をしたといった感じで俺の近くに来た。あ、デュノアも俺に近づいてきた。

 

「君が織斑君と黒野君?初めまして、僕は――」

「ああ、いいからいいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 

 そう説明をすると同時に俺はデュノアの手を取り教室を出る。

 

「うわあ……!」

 

 デュノアが何か小さな声で言った気がするけど、気にしている時間はないと俺は先を急いだ。

 

「………」

「暁人、何か言いたげだな」

「……男同士でもいきなり手を握るのは、正直キショイぞ」

「え、そうなのか!?ご、ごめん、悪気はなかったんだ!」

 

 そういって、俺は慌ててデュノアから手を離し謝った。そうだよな、急いでいたとはいえ初対面の奴に体を触れられるのはおかしかったよな。デュノアが妙に落ち着きがなかったのはそう言う訳なのか。

 

「べべべ、別にぃ!いい、急ぐ必要があったんだから、ききき、気にしてないよぉ!?」

「あ、そうなのか。それじゃあ」

「うひゃ!?」

「なぜ手を繋ごうとするんだ……?」

 

 そんな話をしつつ俺たちは急ぎ階段を下って一階へ移動した――しかし、その先には……

 

「転校生発見!」

「他の男子たちも一緒!」

「しまった……」

 

 HRが終わり、各学年各クラスから転校生の情報を知った女子たちがやって来たのだ。

 

「いたっ!こっちよ!」

「者ども、出会え出会ええ!」

 

 大河ドラマで悪代官が言うようなセリフを言った生徒にツッコミを入れたくなったけど、そんなことをしていたら授業に遅刻し千冬姉に怒られるだろう。俺はツッコミをぐっと我慢して走り続ける。

 

「織斑君の何物にも染まらない純粋な黒髪や黒野君のミステリアスな紫が混じった黒もいいけど、高貴な雰囲気のある綺麗な長い金髪もいいわね」

「しかも瞳もアメジストで神秘的!」

「見て見て!ふたりで手を繋いでる!」

「日本に生まれてよかった!ありがとうお母さん!」

 

 本当にIS学園の女子たちは特殊だなと改めて感じているところにデュノアはなんでこんなことになっているのか困惑の表情を浮かべていた。

 

「な、なに?なんでみんな騒いでいるの?」

「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」

「……?」

 

 なんでデュノアは首を傾げているんだ?まるでこういった事態になるのが理解できない様子……まあ、普通に男子ってだけで女子に囲まれるなんて状況を想像しろというのは難しい話だったか。

 

「はあ……ISを操縦できる男は、今のところ俺達だけだろ『三人目(サード)』」

「あっ、ああ、うん……そうだね」

 

 暁人は呆れたように詳細を説明した……流石に見るからに呆れてますって態度を出すのはいかがなものかと俺は思うんだけどな。

 

「このままだと授業に遅れる……これを突破していくぞ」

「ええ!?この中を突っ切るの!?」

「それしか方法がないからな」

「思い切りがいいんだね……ちょっと待って、怪我人の黒野くんを無理させたら――」

「暁人?あいつならもうどっかにいったぞ」

「え?」

 

 デュノアが振り返ると先ほどまで一緒にた暁人はいなかった。チラリと外を見て見ると、ちょうど2階から飛び降りたらしい暁人が着地した姿が見えた。どうやら、来た道を戻って二階の窓から飛び降りたらしい……あいつ両腕骨折して治療中なんだよな。デュノアには忽然と消えたように感じただろう。

 

「いつの間に……あ、手を振ってる」

「あいつ、こういった事は本当に要領がいいかなら。ほら、俺達も急がないと遅刻する」

「う、うん」

 

 俺たちは押し寄せる人の波に負けじと強行突破を図る。

 

 

 

 

 

2022年6月6日(月)

IS学園

第2アリーナ 更衣室

 

 

「よ、お疲れさん」

 

 俺とデュノアが人の波をかき分けてやっとのこと目的地である第2アリーナ更衣室に着くと、そこには想像通りというかすでに暁人は更衣室に入って待っていた。

 

「あの群衆に囲まれる前に抜け出したのは流石だけど……あんま無理すんなよ」

「あの程度、無理している内に入らんよ」

 

 はあ、こいつは本当に言っても聞かないな……比較的に恋人であるのほほんさんの言うことはよく聞くんだけどな。それでも、絶対に譲れない一線だけは恋人のいうことでも首を縦に振らないらしい。

 この間はデザートはイチゴのショートケーキかモンブランを食べるかで恋人と揉めている風にイチャイチャしていた。最後はお互いにお互いが頼んだケーキをあーんして食べさせ合っていたもんな。それにしても、IS学園各地でブラックコーヒー不足に陥っているという噂があるが、本当だろうか。

 

「はぁはぁ……君たち、いつもこんな目にあってるの?」

 

 デュノアは肩で息をしながら質問をしてきた。おっと、転校生であるデュノアの事を忘れてた。

 

「まあな」

「休み時間になるとさっきの3倍の人数に追いかけられるから、まだ軽い方だな」

「さ、3倍ッ!?」

 

 さっきの人数以上に追いかけ回されるなんて聞いたデュノアは本当に驚いた様子だった。そうだよな、普通男子ってだけでこうはならないもんな……

 

「そんなことより、助かったよ」

「え?」

「だって同じ境遇の仲間が増えたからな、心強くなるってもんだ。これからよろしくな、俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

「よろしく、俺は黒野暁人。暁人でいい」

 

 そういって俺たちはデュノアに握手をするために手を伸ばす。伸ばされた手を見て少しあっけにとられた様子のデュノアだったけど、歓迎されていることが嬉しかったのか笑顔を浮かべた。

 

「うん、よろしく。一夏、暁人。僕の事もシャルルでいいよ」

 

 そして俺たちはお互いに握手をした。ちなみに暁人→俺の順番でシャルルと握手をした。

 

「わかった、シャルル……うわ!時間ヤバイな!すぐに着替えちまおうぜ」

 

 俺はシャルルと握手している際に時計を見て焦りを覚えて着替えを急いで始める。まずは上半身から……

 

「うわぁあ!?」

「?」

「……はぁ」

 

 なんで急にシャルルは驚いたような声を出したんだ?そして、なんで暁人はそれを見てまた呆れたような雰囲気を見せてため息を吐いたんだ?

 

「うわっ、うわっ、うわっー!?」

 

 シャルルは何故か両手で顔を隠すようにしているが、指の隙間から俺の身体を凝視していた。

 

「どうした、シャルル?荷物でも忘れたのか?」

「どうしたはこっちのセリフだ一夏。いくら時間に追われているとはいえ自己紹介しているところで急に脱ぎだしたら驚くだろ」

「そ、そりゃそうか、何度もすまん」

 

 シャルルが驚いた原因に俺にあったのか……確かに俺も配慮が欠けていたな……

 

「い、いや!!うん、気にしないで!!」

「お、おう……というか、シャルルも早く着替えたらどうだ?」

「う、うん。き、着替えるよ?でも、その……あっち向いてて……ね?」

「……?いや、まあ、別に人の着替えをジロジロ見る気はないが……」

「見ないでって言っている本人がジロジロ見てたらな……」

 

 言っている本人がそんなに見てたらなぁという視線を俺と暁人はシャルルに向けた。 

 

「み、見てない!別に見てないよっ!?」

「まあ、とにかくシャルルは急いで着替えろよ」

「一夏、オマエモナー」

「う、うん……あれ?暁人は着替えないの?」

「俺は怪我のおかげで見学だけだから着替えなくもてもいいんだ」

「え?……あ、ああ、そ、そうだよね……どうしよう

 

 シャルルは一体何を悩んでいるのだろうか?暁人が着替えないのがそんなに不都合な事なのか?

 

「はぁ……俺は一夏と違って人の着替えを見る趣味はないから――」

「そんな趣味ねーよ」

「……真偽はさておき、俺は先にグランドに行くからごゆっくり」

 

 そういって暁人はさっさと更衣室を出て行った。

 

「おう……って、ゆっくりできないんだよ!シャルルも急いで――」

「なっ、何かな!?」

 

 シャルルの方を見ると先ほどまでぴっちりと制服を着ていたのに、今はISスーツに着替え終わっていた。あ、シャルルのISスーツのデザインも俺と同じように上下分けられているタイプか。ISスーツ上着部分を慌てて下げていた。

 

「……着替えるの超速いな。なんかコツでもあるのか?」

「い、いや、別に!は、はは……」

「そうか……これ着る時にはだかって言うのがなんか着づらいんだよな、引っかかって」

「ひ、引っかかって!?」

 

 なぜだろう、シャルルの顔が林檎みたいに赤くしている。お、シャルルのISスーツをよく見て見ると……

 

「そのスーツ、なんか着やすそうだな。どこのやつ?」

「え、うん、デュノア社製のオリジナルだよ」

「デュノア?お前の苗字もデュノアだよな?」

「……父が社長をしているんだ。一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う」

「へぇー、社長の息子なのか。道理でなあ」

 

 俺は着替えながら納得が出来たことを示すようにうなずいた。

 

「うん?道理でって?」

「いや、なんつうか気品っていうか、いいとこの育ちって感じがするじゃん。納得したわ」

「………いいところ……ね」

 

 あれ?俺はまた人の地雷を踏んだのかな?

 

「そりゃ、大雑把で唐変木なお前と比べたら人類の大体は品があるだろ」

「うわぁ!?」

「お、暁人、先に行ってたんじゃないのか?」

 

 突然現れた暁人に俺たちは驚いた。なんで先に行っていたはずの暁人がここに?

 そう思っていると、暁人はえー、ゴホンっと喉の調子を整えた後にアナウンスのような声で――

 

「ピンポンパンポン。男子二人に通達します。織斑先生が遅いと大変ご立腹……」

「よし、シャルル、急ぐぞ!!」

「わ、わぁ!?また手を繋いでる!?」

 

 

 

 

 

2022年6月6日(月)

IS学園

第2アリーナ・グランド

 

 

 来るのが遅かった男子たちを軽く叱った後に、俺とシャルルは1組の列に加わった。1年1組の列にはもちろん箒やセシリア、2組には(リン)がいて、怪我の為見学となっている暁人は千冬姉の隣にいた。

 

「本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

「「「はい!!」」」

 

「まずは戦闘を実演してもらおう。(ファン)、オルコット!専用機持ちならすぐに始められるだろう。前に出ろ」

「「はい」」

 

 そういってふたり素直に列から抜けだして千冬姉の前まで移動した。そして当然の疑問を口にする。

 

「それで相手はどちらに?このまま鈴さんと戦っても構いませんが――」

「それはこっちの台詞……返り討ちにしてやるわ」

 

 そう言ってふたりはいつでも戦えるとばかりにISを展開しお互いに武器を構えた――好戦的すぎるだろ、お前ら。まったく誰の影響を受けたんだろうな――そんな風に考えながら暁人に視線を向ける。暁人は俺の視線や視線の意味に気付いていたはずだが、知らんぷりを決め込んでいた。

 

「慌てるなバカども。対戦相手は――」

 

 キーンっと、空気を裂いている音が聞こえた。しかもその音はだんだんと近づいてきているような――

 

「ああああー!ど、どいてくださいー!」

 

 声の方向を見上げると山田先生がIS――ラファール・リヴァイブを装着して何故か俺めがけて墜落をしてきた――本当になんでだ?そんなことを思いながら俺は反射的に白式(びゃくしき)を展開をして(我ながらよく間に合ったな)自分の身を守れた。ちなみに他の生徒たちはすでに俺の周りから退避済みで、被害者は俺だけの様だ。

 そんなことを考えながら飛来してきた山田先生と一緒にごろごろと転がった。……IS展開していなかったら間違いなく死んでいたな。そして、この手に感じる柔らかい感触は一体――

 

「あ、あのう、織斑君……?」

「―――」

「そのですね、困ります……こんな……。ああ、でも……このままいけば織斑先生が義理のお姉さんってことで……」

 

 気が付くと俺は山田先生を押し倒して胸を鷲掴みをしているような体勢になっていた。いや、突っ込んできたのは山田先生で押し倒している体勢というのは言葉的に間違っているのだけども……

 だけど、山田先生?このままいけばっていったい何を考えているんですか?

 

「はあ、何をやっているのやら……」

「あ、やっば」

 

 セシリアの呆れた声が聞こえてきた事で他の生徒達にも俺たちの醜態が見られていることに気が付いた……そしてこういった事があった後は、恐らく――

 

「一夏ッー!!」

 

 鈴が怒りの表情を浮かべ『双天牙月(そうてんがげつ)』を連結した状態でぶん投げてきやがった!!俺は慌てて迎撃のために『雪片(ゆきひら)』を展開し――

 

「はっ!」

 

 俺が迎撃の準備をする前にドンッドンッ!と隣から銃声が2回響いた。放たれた銃弾は『双天牙月』に正確に当たり軌道を逸らした。それを行ったのは俺と同じく地面に倒れた状態の山田先生だった。俺よりも圧倒的に早く武器を展開し構え、そして迎撃した山田先生の腕前を知らないセシリアや鈴を始めとした女子生徒たちは驚いていた。

 そうなんだよ、山田先生は日常生活でもISに乗っていてもドジはして俺の入試試験時の壁にめり込んだり、今のように俺めがけて落下してきたりするけど真面目に相手したら強いんだよ。それを俺は入学して1週間の特訓で理解していた。

 本当に山田先生はバタバタせずにかつドジをしなければ強いんだよ。ドジをしなければ。

 

「山田先生は普段はああだが元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし……」

 

 そう言いながら山田先生はくるんと体を回して起き上がる。千冬姉に褒められたことで頬を赤くしているので照れているのが分かる。ちなみに俺はもうISを展開しておく必要がないだろうと思いISを解除している。

 

「さて、小娘共いつまで()けている。さっさと始めるぞ」

「え?あの2対1で……?」

「流石にそれは……」

「安心しろ、山田先生の実力は元代表候補生とはいえ、お前たちに負けはしない」

「ふーん……ということは、国家代表クラスが相手ね」

「そういうことでしたら、ここは胸を借りるつもりで挑まなくてはいけませんね」

 

 山田先生は国家代表クラス――その言葉に俺は納得をした。セシリアや鈴と比べて山田先生や千冬姉の強さは体感的に上だということは分かっていたけど、代表候補生よりも明確に上の実力というのを明確に言葉で説明されると腑に落ち――ん?

 

「……国家代表になれる実力があるのに、なんで候補生止まりなんだ?」

「そりゃ、同時期にもっと強い人がいたからだろ」

「え、それって……あっ」

 

 俺は暁人の言葉を受けて唐突に気付いた。日本の国家代表は千冬姉だったら、そりゃ実力があっても候補生止まりにしかならないよな。そんなことを考えていると対戦する3人はすでに準備を終えており、空中に待機していた。あとは千冬姉の合図を待つばかり。

 

「では、はじめ!」

 

 号令と同時にセシリアと鈴が動き出す。まず、セシリアは山田先生と距離を作りビットを展開し攻撃を始めた。しかし、山田先生は4つのビットからなる攻撃を右へ左へと綺麗な軌道で躱し続けた。

 

「なるほど……当然ですが入試試験の時とは別と考えた方がいいですわね」

 

 山田先生の動きを見て、セシリアはビットで攻撃を当てるという目的から牽制や動きの制限させるに目的を変えて攻撃を続ける。そしてコンビ相手である鈴は――

 

「はあぁぁ!!」

 

 レーザーが飛び交う空間に臆することなく衝撃砲を撃ちながら『双天牙月』を手に持ち突撃をしに行った。『直感』で躱せるから飛び込んだのではなくて、被弾をまったく気にしないでとにかく相手にダメージを与えるための立ち回りだった。

 急に決まったコンビなのにしっかりとお互いに役割分担が出来ている事に俺は感心した。

 

「……本当に入学して間もない期間で成長しましたね」

 

 そう呟きながらもふたりからの猛攻を山田先生は涼しい顔で躱し、防ぎ、攻撃をしていく。セシリアと鈴から先に仕掛けたというのに、ふたりは山田先生からの先制攻撃を許した。それも近接戦と遠距離戦でふたりの自信のある分野でだ。

 俺は山田先生とは実際に戦った事があるけど、傍観者として戦いを見ることで初めて気づくこともある。動きが綺麗に感じるのは動き自体に無駄がないからだ。明らかに今戦っているふたりとは年季が違う。

 

(そう……まるで、暁人のように経験に裏打ちされている動きを――いや、違う)

 

 この場合は、IS学園に来てから数か月でIS搭乗経験があるはすのない暁人がなんで経験に裏打ちされた戦い方が出来ていることに疑問を持つべき――

 

「フフフ……」

「アハハ……」

 

 あ、やばっ、ふたりのスイッチが入った。そう思った瞬間に戦いが激化した。鈴はいつの間にか習得した『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』で無理やり距離を詰め、セシリアだけではなく山田先生からの被弾を気にしない戦いにシフトした。元から2対1で攻撃が分散することも織り込んだ上での判断だろう。

 セシリアはビットをいったん回収した後に自分で作った距離を捨ててレーザーライフル『スターライトmkⅢ』を抱えて近づいた。そして山田先生の近くにいる鈴を気にした様子を見せずにレーザーを撃ちまくる。……まあ、ビットで作ったレーザーの雨にわざわざ飛び込んできた鈴に対して対応変えなかったからこれは今更か。鈴なら致命的な攻撃なら『直感』で躱すだろうしな。

 

「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみろ」

「――えっ……あ、はい!」

 

 空中での戦闘を見て困惑していたシャルルは、気を取り直しつつ説明を始めた。

 

「山田先生の使用しているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイブ』です。第二世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは初期第3世代型にも劣らないもので、安定した性能と高い汎用性、豊富な後付装備(イコライザ)が特徴の機体です。現在配備されている量産型ISの中では最後発でありながら世界第3位のシェアを持ち、7か国でライセンス生産、12か国で正式採用されています。特筆すべきは操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばないことと多様性役割切り替え(マルチロ・チェンジ)を両立しています。装備によっては格闘・射撃・防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多い事でも知られいます」

 

 シャルルはスラスラと流れるように説明をした。おお、あの機体は凄い機体であることが凄くわかりやすく話を――ん?暁人が俺に向けて口パクで何か言っている。

 なになに、『メ・モ・ハ・ト・タ・カ』………俺は慌ててシャルルが言った内容の要点をメモに書き込んだ。

 

「ああ、いったんそこまででいい。……馬鹿娘共!実技だということを忘れて熱くなりすぎだ!実演中止、降りてこい!!」

 

 千冬姉は実技とは思えないレベルの戦いを繰り広げているふたりを大声で止める。しかしやはりというか、ふたりと山田先生とでは力量に差がありすぎるらしい。ふたりのISの装甲への損傷はそうでもないが、シールドエネルギー的には結構ダメージを受けている様子だった。……そういえばふたりの力量は暁人が言うには代表候補生中位~上位レベルらしい。ちなみに俺はギリ代表候補生中位レベル。

 

「えー……やっと、ノッて来たのに……」

「これからというところでしたのに……」

「元気が有り余っていて大変結構!!それなら、山田先生と交代して私が――」

「「イエス、マム!!」」

 

 そんなやり取りをしつつ戦っていた3人は先ほどまでの戦いとは打って変わって静かに地上に降りてきた。健闘してくれた3人に俺たちは拍手で迎え入れた。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 パンパンと手を叩いて千冬姉はみんなの意識を切り替えさせた。

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、凰……そして黒野だな。では8人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること」

 

 あれ?黒野は怪我のため見学のはずではとみんな頭に疑問が思い浮かんだ。

 

「今回の実技は訓練機でのIS装着をしての戦闘訓練になるので、気を引き締めろ。ただし黒野は怪我人なので、山田先生がIS装着などの補助係を担当するに。黒野は実際に搭乗をした経験などから助言をするなどのサポートに専念しろ」

「はーい」

「よし……では専用機持ち達はさっき言った名前の順番で並べ。出席番号順に一人づつ各専用機持ち達のグループに入れ」

 

 そう千冬姉が号令を出すと男子のグループに(はい)れたこと、入れなかったことに一喜一憂しながら素早く移動を開始する。

 

「やったぁ。織斑君と同じ班、苗字のお陰ね……」

「わー、セッシー。よろしくねー!」

「凰さん、よろしくね。後で織斑君のお話聞かせてよね……」

「デュノア君!分からないことがあったら何でも聞いてね!ちなみに私はフリーだよ!」 

「黒野君、よろしく!布仏さんと黒野君が同じ班にならなくてよかった……!!」

「は?なんでだ?」

 

 のほほんさんと暁人が同じ範囲なったらコーヒーが手放せなくなるからじゃないか?その話については、転校生で事情を知らないシャルルと恋人関係である暁人とのほほんさん以外の全員が同じことを思っていたのか全員が同時に頷いていた。

 ハッ、まさか、千冬姉……この采配はそこまで考えたものだった――

 

「馬鹿な事を考える暇があったらさっさと実習を始めろ、時間が有限なんだからな……ちなみにこの組み合わせになったのは偶然だ」

 

 あ、そうなんだと思いながら俺たちは実習を始めた。

 ……実習は俺のグループの女子たちにお姫様抱っこでISに乗せたりするなどの問題は起きたが、特に事故などはなく無事に終わった。

 

 ああ、それと箒と昼食を一緒に食べる約束をした……うーん、シャルルの面倒もみなくちゃいけないし、シャルル目当てで食堂は混みそうだからシャルルも一緒に屋上で食べた方が良いよな……それならもういっそのこと暁人やセシリア、鈴も誘って一緒に食べるか!!

 俺は自分の思い付きにナイスアイディアと自画自賛しながらシャルルや暁人に声をかけ始めた。

 




~次回予告~
暁人「このボケナス」
一夏「なんだよ」
暁人「箒ちゃんの気持ちを汲んでやれよ」
一夏「うっ……だけどこの時はシャルの面倒も見なくちゃいけなかったからどっちにしろ無理だったぞ?」
暁人「まあな……浮かれてそこら辺の事を考えられなかった箒ちゃんにもせ菌はあるか……」
一夏「あ、思い出した……暁人?セシリアがあの時は逃げられて悲しかったってさ」
暁人「ん?……うん?」
一夏「だから、あの時用意したサンドイッチを……あ、コイツまた逃げやがった!!であえであえ!!」

次回、逃げた暁人
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。