私の名前は、篠ノ之箒。
休み時間中に教室を出て、一夏と話をすることができた。
久しぶりに一夏と再会できて……と、とても嬉しかった。
……ゴ、ゴホン、その休み時間の時に一夏とある約束をした。
そう、私や『あの人』と似た顔をしている男子に一緒に話をしにいく約束だ。
何で、私たち姉妹と顔が似ているのか?なんでISを動かせたのか?
そんなことを疑問に思いながら、私たちは教室に戻ると……
……もしかしてコイツのことは気にするだけ無駄なのでは?
2022年4月4日(月)
IS学園
1年1組の教室
「それでは、ISの運用についての授業を始めます」
山田先生の、その一言でIS学園入学した初日の2時限目が始まった。山田先生はしばらくの間、ISの運用に関わる基本的と思われる内容を話し続けた。クラスメイト達は山田先生の話を聞きながら時折ノートを取っている。
「―ですので、ISは待機状態の時は量子化をして、身に着けるアクセサリーなどの身近な物になります。この時に考えられる危険性は……これについては、誰かに答えてもらいましょうか」
山田先生はそう言うと、クラス全体を見渡した。どうやら山田先生は生徒達の挙手制ではなく、先生側の指名制で答えて貰うつもりだ。
「えーと、その、それじゃあ、のほと……ウノ1号さんに答えて貰いましょうか」
「は~い」
少し困ったように、山田先生はウノ1号と呼ぶ。ウノ1号と呼ばれた、だぼだぼに制服を改造した女子生徒は起立して答える。
「例えば悪いことを考えている人が~、重要施設などで突然ISを~展開をされると奇襲を受けて大変なことになりま~す」
「はい、その通りです。のほ……ウノ1号さん、座ってください」
「は~い」
「ウノ1号さんが答えた以外にも、民間人が多くいる駅や空港などでISを使用されると、沢山の人が危険な状態になることが予想されます」
山田先生とクラス全体の授業の様子を見ていた千冬姉は、山田先生と授業の進行を交代する形で話し始めた。
「今、ウノ1号や山田先生がISを悪用した例を説明したが、具体的にどれほど危険なものなのかについてだが―」
千冬姉は薄く笑いながら、答えて貰う生徒を指名する。―千冬姉の、あの顔は、人をからかう時の顔だ……。
「ウノ2号、ISの武装についてどんなものがあるのかを答えろ」
「はい」
続いて、ウノ2号と呼ばれた男子生徒が起立して答える。
「ISはパワードスーツですので、基本的に人間が使う武器―例えばアサルトライフルやショットガンを大型化して装備します。このアサルトライフルの銃弾1発で数名を殺傷することが可能です。また戦車や戦闘機で使うような高射砲やミサイルをISで使う様に改良して、従来の兵器以上の展開力で、従来以上の火力を行使することが可能ですので、先ほどほーちゃ……ウノ1号さんが説明したような重要施設の破壊が容易であると想像できます。蛇足になりますが、戦艦や軍事施設に設置を予定していたレールキャノンやレーザー砲もまたISが使えるように研究開発がされており、一部のISには試験的に搭載されています。そんなものが人や建物に向けられた結果など、想像するまでもないでしょう」
ウノ2号は、手元の教科書やノートを見ずにスラスラと答える。その回答を聞いた千冬姉は頷きながら口を開く。
「よし、いいぞ。ウノ2号、座れ。ウノ2号はみんなと比べて準備する期間は短くて心配をしていたのだが、この辺りの予習は大丈夫なようだな。……何か分からないことや困ったことがあれば、すぐに私や山田先生に質問や相談をしろ」
「分かりました。お気遣いありがとうございます、織斑先生」
千冬姉は黒野のことをとても気遣っているように感じた。こんな環境に放り込まれた男子を心配しての言葉であろう―あれ?というか、千冬姉?なんかもう一人の男子生徒にだけ優しくありませんか?ここにも
「さて、先ほどウノ1号と2号が説明したことについて、諸君は理解できたと思う。そう、ISは兵器として使うことが可能であり、とても危険なものである。だから、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられる。もし仮にだ、自身がISを所有していて緊急事態に陥った時の対応については―」
千冬姉は、先ほどと同じくからかうような表情である生徒を指名する。
「ウノ3号に答えて貰おう」
「……ご回答いたしますわ、織斑先生」
ウノ3号―このクラスでは一人しかいない白人の女子は顔を赤くしながら起立した。そう、黒野暁人、制服がだぼだぼの女子生徒、白人の女子生徒の三人はこの授業での名前が、ウノ〇号などと呼ばれることになっている。別に休み時間を過ぎてもウノで遊んでいたという分けではなく、休み時間が終わる少し前に織斑先生と山田先生が戻って来て、ウノを片付けていたのを見られただけだ。十分に授業に間に合う様な時間で片付けていたので、お咎めとかはなかった。IS学園では、特に休み時間中の遊戯などを禁止している訳ではなく、また授業にもしっかり間に合う様にしていたので、逆に罰則がある方がおかしいだろう、と千冬姉は言っていた。―つまり、そう、ただこの3人はからかわれているだけなのだ。
「―でありますので、わたくしたちIS操縦者は日々の鍛錬を疎かにしてはいけないのです」
「流石、イギリスの代表候補生だ。諸君、ウノ3号のIS操縦者としての物事に取り組む、この姿勢はきっと良い模範となるだろう。諸君らもウノ3号に負けないように努力を怠るなよ」
「「「はい、織斑先生!!」」」
「あの、織斑先生……」
「ん?ん?どうしたウノ3号?なにか質問でもあるのか?」
(楽しそうだな、千冬姉……)
「いえ、質問ではないのですが、そろそろ、その、わたくしたちのことをウノ何号と呼ぶのはやめていただきたいのですが……」
「却下だ。この授業だけの間だ、我慢しろ。他に言いたいことがなければ着席しろ、ウノ3号」
「……分かりましたわ」
ウノ3号は諦めたかのように席に座り、
「まあ、いいじゃないか、オルコッ……ウノ3号」
「そこまで言ったら、最後まで名前を言い切ってもらえませんか、織斑先生?」
「IS学園は日本にあり、海外から多くの生徒が入学してくる。慣れない環境に馴染めるのか教師としては心配なのだ。入学しても間もない時間で友達を作れていて、私は安心したよ」
「はあ。……それが、この呼び方に何の関係が?」
「ん?からかっているだけだが?」
「………」
言い切ったよ、
(ヤバい……授業の内容の半分以上っていうか、何を言っているのか全部わからない)
そう、俺は授業にまったくついていけていなかった。参考書を古い電話帳と間違えて捨ててしまった影響が出ていた。俺はそわそわと周りの授業を受けている女子生徒たちの様子を見て焦る。
(まずいまずいまずい!だって、多分、ついていけていないの俺だけだよな!?俺より後に見つかった黒野があんなにスラスラ言えていたんだから、俺も最低でもあのレベルまで出来なくちゃいけなかったってことなのか!?)
「……?織斑君、どうしましたか?」
俺の様子がおかしいことに気付いた山田先生が、聞いてきた。
「あ、えっと」
そ、そうだ、まだ初めの段階。恥を忍んで素直に授業に付いていけないことを―
「あ、もしかしてトイレですか?」
「違います」
……やっぱり、この先生どこかおかしいな。良い先生ではあるんだけど、こう、多少、天然っていうか……。いや、俺のそわそわした様子が、そう捉えやすかっただけか?
「で、あれば、何か授業でわからない所がありましたか?わからないところがあったら聞いてくださいね。なにせ私は先生ですから」
エッヘンとでも言いたそうに、胸を張る山田先生。おお、今の俺には、山田先生に後光が差して見えるようだ……ここは素直に言った方がいいだろう。
「先生!」
「はい、織斑君」
「ほとんど全部わかりません」
「えぇ……?」
本日、何度目か聞いた山田先生のガチの困惑の声が聞こえた。あれ?おかしい、先ほどまでは確かに見えていた山田先生の後光が消えている……
「ぜ、全部、ですか……?」
山田先生が困った顔で引きつりながら、なんとか言葉にできたような感じで言った。
「え、えっと……織斑君以外で、今の段階で分からないって人はどれぐらいいますか?」
「「「………」」」
挙手を促す山田先生。そして、誰も手を上げないクラスメイト達。……やっぱり、この段階で分からないのは、俺だけってことですねー。
「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」
授業を見守っていた、千冬姉が聞いてくる。俺は素直に答えた。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
「………」
パアンッ!
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」
俺はまた千冬姉に殴られた。……あれ?やっぱり、
「あとでまた再発行してやるから1週間以内に覚えろ。いいな?」
「い、いや、1週間であの分厚さはちょっと……」
「やれと言っている」
「……はい、やります」
千冬姉はギロリとこちらを睨みながら命令してきたので、俺は『
「実際、黒野には1週間前に渡していて、そして授業についてきている」
「―ッ!?」
「なら、お前もできなくてはいけないな?」
「……はい」
あの分厚さを僅か1週間でだとッ!?しかも、先ほど見た通り、特に授業に付いていけていないなどの様子は見られなかった。自己紹介の時には色々あったが、やっぱり黒野は凄い奴なんだなと思いながら、俺は黒野の席の方を見る。黒野は……こちらを見ながら笑顔でピースしていた。
……正直言って、あの顔を殴りたい。
2時限目の休み時間、俺は自分の席で先ほどウノ3号と呼ばれていた白人の女子生徒から声をかけられた。
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
突然、声をかけられた俺は
(明らかに貴族とかそんな感じの子っぽいけど……そうだよな、俺と同じ年なんだから、普通に『女の子』だよな)
そんな風に思いながら、俺は話しかけてきた白人の女子生徒を見た。
「聞いてます?お返事―何を見てますの?」
「あ、ああ、すまない。何でもないよ」
彼女は俺のそんな視線に気づき俺に聞いてきたが、俺は誤魔化すように言った。
「……?まあ、良いですわ。まず初めに自己紹介を――わたくしの名前はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですわ」
「ああ、オルコットさんね。俺のことは知っていると思うけど、織斑一夏だ。よろしく」
「よろしくですわ、織斑さん」
できれば、千冬姉もいるから下の名前で呼んで欲しいのだが……いきなり、異性にそんなことを求めるのも可笑しいか。出会って数分で、あだ名で呼び合うクラスメイトが男女2名ほどいたが気にしない。
「あ、質問いいか?」
ふと、俺は先ほどからわからなかったことがあったので、オルコットに聞いてみようと思う。
「どうしましたか?答えられる範囲のものであればお答えしますわ」
「代表候補生って、何?」
「………」
オルコットは俺の一言により、驚いた顔のまま固まった。……俺は世間では一般的な事を聞いてしまった様だ。
「……貴方、本当に
「いや~、あんまり千冬姉に
「そういうことでしたの……代表候補生というのは、国家代表IS操縦者の、その候補生のことですわ」
「そうだったのか、ありがとう。……よく考えてみたら、単語から想像できたな」
「そうでしてよ。これは助言になりますが、もっとお勉強をした方がよろしいですわ」
「……ごもっとも」
マジで勉強しなきゃ、ヤバいからな……1週間後の自分の命が。1週間経っても、基礎も分からないとかの状態だと俺は千冬姉に文字通り殺されそう。
「はあ、先ほども申し上げましたが、答えられる範囲のものであればお答えしますので、何か質問があればその都度聞きに来てください」
「おお、そう言ってもらえるとは思わなかった、ありがとう」
「……どういった意味かは、聞きませんわ」
「おい、一夏」
オルコットと話をしていたら、箒から声をかけられた。少し、怒っているようだ……俺は何かしてしまったのだろうか。
「あら?」
「どうしたんで箒?」
「一夏、この休み時間に黒野に話しに行くって約束はどうしたんだ?」
「あ、す、すまん。……忘れてた」
「あら?レディーとの約束を忘れてしまいましたの?」
「はあ……まあ、今は勉学を優先した方が一夏のためだろうから、気にしなくていいぞ」
「それは……そうですわね」
「そう言ってもらえるとありがたい……」
オルコットから情けない奴と思われつつも、凄まじく同情が籠ったような複雑な視線が俺に向けられた。
「それに、肝心の黒野はどこか行ってしまったしな」
「え?そうだったのか?」
「ああ、授業終わってすぐに、ほら、制服の裾が異様に長い女子……確か
「全然気づかなかった……」
そして、あのだぼだぼの制服を着た女子生徒の名前を初めて知った。布仏さんというのか。
「あの二人何故か知らないけど、この短時間ですっごく仲が良くなっているよな……いったい、どこにいったんだ?」
「それなら、多分廊下ですわ」
「ん?他の教室とか図書室とかじゃなくて廊下?」
「ええ、先ほど一緒に廊下に出ないかと誘われましたわ。わたくしは織斑さんとお話がしたかったので、お断りしたのですが……」
「なんで廊下に誘うんだ?」
「……オルコットさんはあの2人が何をしに行ったのかわかるか?」
「はい、わかりますわ。確か―」
「だるまさんが転んだ?という遊びをするのに教室の外に出られましたわ」
「高校生にもなってなにやってるんだあいつら?」
ちょっと、入学初日から自由すぎないか?
「あの二人は仲よしか!……仲良しだったな」
「その、だるまさんが転んだとは、なんですの?」
「……多分、イギリスにも同じようなゲームがあるぞ?鬼とそれ以外を決めて、鬼が振り向いている間は動いてはいけないという子供の遊びだ」
「ああ、
質問に答えた箒の名前がわからず困っているオルコット。そんな姿を見た箒は―
「……私の名前は、篠ノ之箒だ。箒でいい」
「あら?……分かりましたわ、箒さん。私の名前はセシリア・オルコット」
オルコットさんは『篠ノ之』という姓に、引っ掛かりを覚えたようだが、箒の言いたくないといった雰囲気を察して、何も言わなかった。
「話は戻しますが、確かに子供の遊びですわね……まあ、子供のころの心を忘れないことはよいことではなくて?」
「「………」」
「……?どうかされましたか?」
「「いや?」」
入学式初日にウノをやっていた奴が言うと説得力が違うな、と思った。そんな風にしているとチャイムの音が鳴って、2時限目の休み時間が終わった。
「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」
1、2時限目とは違って、山田先生ではなく千冬姉が教壇に立っている。よっぽど大事なことなのか、山田先生までノートを手に持っていた。
「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表選手を決めないといけないな」
ふと、思い出したように千冬姉が言う。うん?クラス対抗戦の代表者?
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点ではたいした差はないが、競争心は生む。一度決まると1年間変更はないからそのつもりで」
ざわざわと教室が色めき立つが、俺はいまいち言われた意味がわからなかった。クラス長―クラスの代表を決めるとだけ思っておけばいいか。たぶん面倒な仕事が多いんだろうな。まあ、先ほど無知を晒した俺には関係がないだろうと思っていると―
「はいっ。織斑君を推薦します!」
「は?」
「私もそれが良いと思いますー」
「え?ちょっと待ってくれ!?」
あれ?なぜか俺が、クラス代表に推薦されている……本当になんでだ?
「では候補者は織斑一夏……他にはいないか?自薦他薦問わないぞ」
い、いいのか、みんな!俺みたいな奴がクラス代表で!?
「はい、私は黒野君を推薦します!」
「私も、黒野君が良いと思います!」
「わー、くろろん人気だね~」
「ありがとー、ほーちゃん♪」
黒野も指名された。くっ、この女子たち、さては俺たちが男ってだけで推薦しているな?ISの基礎から躓いている俺を推薦するのは控えめに言って止めておいた方がいいのではないか?あと、そこの2名、知能指数が下がるような緩い会話するのやめてくれお願い。
「私はオルコットさんを推薦します!」
「えー?ここは、せっかくの男子じゃないの?」
「いくら珍しくても、ISに触れたばかりの人たちよ?それなら、現在イギリス代表のオルコットさん一択よ。先ほど先生も言ったでしょ?『クラスの実力推移を測る』って。なら、現在クラスで一番実力がある人がなるべきなのよ」
おお、すっごいまともなことを言う人がいる。
「それなら、今の時点でたいした差がないとも言っていたはずよ!」
「オルコットさんのことを何も知らないの?第三世代ISのテストパイロットも務めているのよ?実力に差がないというのは論点にするなら機体の性能差を考えて、やっぱりオルコットさんにするべき!」
合理的に話していると思ったら、なんか違うな……クラスの中に少なくとも1名オルコットのファンがいないか?しかし、先ほどの女子たちの話を聞いて、クラスのみんなは珍しい男子たちにするか、実力や機体性能を考えてオルコットに推薦するか決めかねているようだ。
「はぁー!面白くない。もう少し、こう、世間の話題性とかを考えたらどう?」
「そういうあんたはいつも流行とかに流されやすいんだから」
「何よ、このISオタク!!」
「言ったわね!?このミーハー!!」
「おい、諸君……というよりも、そこの2名、熱くなるのはわかるが落ち着け。一応、授業中だぞ」
「「はい、織斑先生!!黙ります!!」」
「………はあ」
千冬姉は疲れたようにため息を吐いた。
「しかし、織斑先生。これ、どう決めましょうか?」
「うーむ、そうだな……今推薦されているもの以外にはいないか?いないなら、今推薦されている、織斑、黒野、オルコットの3人で投票してもらい、投票数が一番多いものをクラス代表者とすることにする。異論があるものはいるか?」
千冬姉は、投票で決めるようにしたようだ。う~ん、先ほどのIS関係に詳しい女子の話を聞いて、クラスの女子たちは多分、オルコットに入れるようになるんじゃないかと俺は思う。
「……いないようだな。では織斑がいいと思うものは―」
「織斑先生、提案があります」
先ほどまで布仏さんと話していた黒野が千冬姉の話を遮った。
「なんだ、黒野。言ってみろ」
「立候補者、全員で戦いましょう」
再度教室がざわざわと色めき立つ。お、おい?黒野……いや、黒野さん?
「ほう?」
「『実力にたいした差がない』や『機体の性能』を引き合いに出されてましたが、いま語られたのは全て仮定の話です。実際に戦ってみないとわかりませんし、納得されない方もいるでしょう」
「そのために、お前は戦うことを提案するというのか?私は別にそれでも構わないが……本当にいいのか黒野?」
「はい……みんなの前で言った、『最強』になるという言葉に偽りはありません。戦える機会があるのなら、俺は戦います。それに、俺も実際に戦ってみたいですし」
黒野は制服の中に手を入れて鎖の付いた指輪を取り出し、クラスのみんなに見せて言う。
「専用機!?」
「まあ、国からISを貸し出されて、一応専用機って言ったら専用機だけど、俺の機体は普通の『打鉄』だよ」
「あら?カスタムなどはしておりませんの?」
「ほら、俺って1週間前にISの参考書を渡されるぐらい最近にISが操縦できることが分かったからさ、カスタムとかする時間は無かったんだよ」
「………なるほど?」
オルコットは腑に落ちないであろう表情ではあるが、それ以上何か言うことはなかった。……それじゃあ、俺にISが用意されていないのは何でなんだ?
「先生、織斑くんの方が早くにISが動かせることが分かったのに、黒野くんの方に専用機が支給されるのって、何か理由があるんですか?」
「……現在、織斑のISについては国や学園などで現在協議中だ」
「織斑先生!?まだ決まっていないのに、そんなことを言っちゃっていいんですか!?」
「早くて明日の午前中には結果が出るし、大方専用機が渡されるだろうから別に良いだろうさ、山田先生。……そして、私もどっかの馬鹿が自分がISを所有していることを言わなければ言わなかったさ」
えっと、俺にもISが用意されるのか?そんなにポンポン人に渡していいものなのか、ISって?
「ふむ、まあ、多少クラス代表を決める時間はある。……良いだろう、クラス代表は立候補者全員の総当たり戦での結果によって決める。異論があるものはいないな?」
「「「はい、ありません!!」」」
おいおいおい、ちょっと待ってくれ千冬姉。肝心な立候補者の意見はどうなんだ?民主主義なら、俺たちも含めての意見を聞いてくれ。
「立候補者3名も異論はないな?」
そんな、俺の意思が伝わったのか千冬姉は、俺たちに聞いてくる。
「もちろん、立案者の俺は異論ありません」
「ありませんわ……フッ、先達として他の2名を導いて差し上げますわ」
他2人は異論がないようだ。えっ、もしかして異論があるのは俺だけか?……いやいや、少数でもちゃんと意見を言わないとな。
「千冬姉……俺は」
「織斑先生と呼べ」
「……織斑先生、俺は―」
「織斑先生、織斑一夏もやる気十分だそうです」
「黒野!?」
「そうか、それはよかった……クラス代表は1週間後の月曜日、放課後の第3アリーナで行う!!立候補者3名はそれぞれ用意しておくように。授業を進めるぞ」
「千冬姉!?俺の意見を聞かないなら最初っから聞かないでくれないかな!?」
「織斑、もう授業は始まっているから、あまり騒がないように」
「……はい、わかりました、織斑先生」
あっれ?俺の人権ってこのIS学園に―この教室にあるかな?ここまで俺に意見を言わせてもらえない空間で、ちょっと涙が出てきた……
「現在のISの武器で珍しい部類になるが、レーザーやビームのようなものは強力であるが対策方法が明確だ。そもそもこれらの武器は、光や粒子といったものを――」
私は授業を進めながら、先ほどのクラス代表選出方法の時の黒野の話を思い返す。
(黒野のあの提案は、私たち教師としてもISというものを生徒たちに見せることが出来る良い機会になるので、アリなのだが……何だ?なんで、一夏たちを……いや、一夏を戦わせようとするんだ?)
つい先ほどまで、仲の良い女子生徒と話していたのに、投票制の話をした途端にこちらの話に参加してきた。……そう、まるで予定と違うので慌てて修正しようとした感じだ。―チラリ、と黒野の方を見る。
「………」
カリカリとしっかりノートを取って、授業に付いてきている(うちの弟とは大違いだ……)。その授業を受けている態度などから、先ほど感じた違和感はなく、真面目に授業を受けている男子高校生っといった印象しか持たない。……持たないが、そもそも最初の宣誓から違和感を持つべきだったのだ。
(黒野、お前は……いったい、何を考えているんだ?何が目的なのだ?)
私は、答えが出ない疑問を持ちながら授業を進めた。
小ネタ
一夏:お、俺の人権……はあ、勉強しよう(諦め)
箒:一夏は大変なことになったな……強く生きろ
千冬:黒野は何を考えているんだ?(疑念1)
ウノ1号:くろろん、頑張って~(純粋)
ウノ2号:立候補者、全員で戦いましょう(焦り)
ウノ3号:フッ、先達として導いて差し上げますわ(名誉挽回の機会!!)
山田先生:も、も、もしかしてトイレかも!男子トイレもこの教室からも遠いし、何より男子にとって厳しい環境ですから気を使わないと(心配)
~次回予告~
セシリア「話が遅々として進んでいないのですが?」
暁人「それは
セシリア「お黙りなさい、ウノ2号」
暁人「いやー、それにしても、俺も大分怪しい感じになってきましたねー」
セシリア「はいはい、そうですわね……今回は真面目でしたわね?」
暁人「はあ?俺はいつも真面目なつもりなんだが?」
次回、第4話: