はい、どうも山田真耶です。
……これから残業が増えることが決まった山田真耶です、はい。
ただでさえも、男子2人の入学で仕事が増えているのに、織斑先生は……
はあ、織斑君には必要な事ですけど……
私も気晴らしに織斑君の訓練に参加させてくれないかな……
少しでもいいから身体を動かしたい……ん?……ああ!?すみません、あらすじですね!!
んんッ……黒野君に辛い過去があることがわかりましたが、
まだ初日ですが学園での彼には辛い過去があったことを感じさせなく
明るく他の生徒と遊んでいる様子……
そして今回のサブタイトルは
……え?なんですか黒野君?
寮の部屋を私が調整していたのだから
……はい、それでは、そんなこんなで第6話です。
2022年4月4日(月)
IS学園
学生寮 2034号室(黒野暁人の部屋)
カチャカチャ、カチン、キィー。
「おっじゃまっしまーす」
私は用意したマスターキーを使って鍵を開けて部屋に入る。部屋に備え付けられてあるキッチンを通り過ぎ、部屋の状態を確認する。IS学園の生徒用の部屋は学生寮とは思えないほど広い間取りで、部屋に入ってまず目に入るのには大きな2つのベットだ。ベットの大きさはセミダブルで寝返りも余裕でできて、またベットの素材もよくて快適な睡眠を約束してくれている。次に目立つのは2人分の勉強机だが、それぞれの机に2つの大小のモニターが準備されている。広い間取りと落ち着いた雰囲気の内装は高級ホテルを思わせる。そんな、部屋の手前の方のベットの上にポツンと置かれている一つの段ボール箱。
「ふむふむ」
荷解きが済んでいない様子から見て、情報通り部屋の主がまだ部屋に一度も入ったことがないことを確認をしてから脱衣所に入る。脱衣所は洗面所も兼ねており、洗面所なので当然鏡が備え付けられている。ふと、身だしなみが気になったので、丁度目の前にある鏡で自分の姿を確認する。一応、これから異性に合うんだし、変なところがないかチェックしなくちゃね。
水色の髪に髪型はミディアムヘア、鮮やかな赤い瞳に猫を連想させるツリ目に抜群のプロポーション――日本人離れした容姿だが、私は日本で代々続く名家の人間でありその当主である。
自分で言ってはあれだけど、私はすっごく可愛い。この青い髪の色と赤みがかった瞳からミステリアスな雰囲気を出していて、私の可愛い容姿に妖艶さをプラスされている。そして、この抜群のプロポーションも日ごろの努力の賜物であると自負している。自分で言っていて、恥ずかしいが、まあ、男女問わずに魅了できるポテンシャルが私には備わっているのだ。……そんな誰でも魅了できる自分のはずだけど、最愛の妹と距離を置かれているのが長く続いている悩みなのはなんでなんだろう。昔のような関係に戻りたいと思ってはいるのだけど、さらに距離を置かれる――嫌われるのが怖くて自分から動けないことが原因ではあるのだけど……
「あ、いけないいけない。早く準備しなくちゃ間に合わないわね」
プライベートでの悩みについて、一旦考えないようにしてこの部屋に来た目的を遂行しよう。新学期早々ではあるが、私も『色々な』立場上忙しいので時間を無駄に使ってはいられないのだ。
「さてと……暁人くんはどんな顔をするのかな?」
まだ彼とは一度も顔を合わせていないのに下の名前で呼んではいるが年下だし別にいいかなどと考えながら、ターコイズグリーンのビキニと白いエンプロンを手に取り着替えを始める。
「これをこうして……いや、もうちょっと……」
鏡を使って自分の姿を確認しつつ、水着とエプロンの微調整を行う。
「んーこれでいいかな?んふふ、準備完了っと」
水着が見えないようにエプロンで隠して裸エプロンに見えるようにという偽装が完了する。
私の名前は
IS学園の2年生にして、このIS学園の生徒会長。
素行調査を名目に、暁人くんをからかいに来た。
偽裸エプロンとなって、扉の前でスタンバイする。……私も悪ふざけだけでこんなことをしているのではない。確かに私は人をからかったりすることが好きだが、今回は素の反応はどんなものなのか確認したいという思惑のほうが強い。中学生の時に養護施設にて『様々な』虐待を受けていた彼が今どんな気持ちを抱えていて、そしてどんな人間なのかということを自分の目で正確に確かめたいのだ。彼が妹の様に可愛がっている手石星音がIS委員会の手の中にあり、事実上の――いえ、確実に人質とされているということを『更識家としての調査』から確認できている。彼がこの社会に強い憎しみの気持ちが出来ているのも当然だ。そんな憎しみの気持ちをISという力を持ってどのようなことを行おうとするのかということをIS学園の生徒会長として、そして『更識楯無』として確認をしなくてはいけないのだ。
「……」
もし、こんな不条理な社会を憎んでいるのなら、その気持ちをこの学園にいる時間で――私が生徒会長として、この学園を守ることが出来る間に少しでも和らげてあげたい。……と、まあ、生徒会長である私は色々生徒の為に頑張らないといけないのだ。それはさておき、このIS学園に来るとは思っていなかった男子を揶揄ってみたいという欲望はある。綺麗な顔をした暁人くんが、この最強装備である裸エプロン(+ビキニ)を目の当たりにしてどのような表情になるのかを想像しているだけで楽しくなる。私の調査によると、この裸エプロンという格好は男子の夢のようなものであるとのことだ。この姿にはどんな男子であろうとも目は釘付けとなり、顔を真っ赤にして戸惑い、目のやり場に困り視線をあっちにいったりこっちにいったりとするはず――って、そんなことを考えていたら、扉の前に気配を感じる。この部屋の主がやって来たのだ。部屋の扉が開いて、彼の姿を確認したので、満面の笑みで彼を迎える。
「おかえりなさい。ご飯にします?お風呂にする?それともわ・た・し?」
「……」
決まったッ!渾身の出来だと自分で思う。さあ、驚きなさい、戸惑いなさいと思いながら、黒野くんの反応を見ると――
「――フフッ」
私には、彼が微笑んだように見えた。そう、まるで懐かしいモノを見たような感じで……
「……失礼しました」
「……?」
彼は静かにそう言い、扉を閉めた。少し私が想像していた事とは反応が違っていたけど、多分、反応に困って扉を閉めたのだろう。んふふ、驚いてる、戸惑っている……
「さてと、織斑先生に俺の部屋に裸エプロンの痴女が不法侵入してるって報告しないと」
「暁人くん?ちょっと落ち着いて話をしようか……いえ、話をさせてくださいお願いします」
2022年4月4日(月)
IS学園
生徒会室
「お姉ちゃん~、お嬢様は~?」
「……本音、この学園ではお嬢様のことは会長と呼ぶように」
「はーい」
今、私はお姉ちゃんと一緒に生徒会室に来ている。お姉ちゃんの名前は
「今日はー、大事な話があるから生徒会室に来るように言っていたような~?」
「……」
そう、今日は新しい生徒会役員として加入する私の顔合わせを名目とした、『対暗部用暗部』としての情報共有を行う予定だった。『対暗部用暗部』とは諜報や裏工作などを行う者たちを『暗部』と呼ばれていてそれに対抗するために設立された。目には目を、歯には歯を、『暗部』には『暗部』をという考えで作られている組織が私達『対暗部用暗部』である。そんな私たちは生徒会の長であり、『対暗部用暗部』の長でもある私たちの『お嬢様』であり、幼馴染(の内の一人)が一向に姿を現さない。何かトラブルでもあったのかなとも考えたけど――
(その可能性はないかなー)
仮にIS学園で大きなトラブルがあれば大騒ぎになるので私たちが気付いていないとおかしいよねということ。そして
「お姉ちゃん~?聞いてる~?」
「本音、今日の所は恋バナでもしましょう」
「えー?」
うーん、別に姉妹で恋バナをするのも良いんだけど、お互いに中学校は女子校でIS学園も女子校だから、男子と明確に接点があるの現時点でIS学園1年1組の私しか喋ることないじゃん。まだ1日しか一緒にいなかったから、恋に発展するのかとか話せないとは思うんだけど……まぁー、これを機にお姉ちゃんがどんな人が好きなのか知れるから良いのかな?姉妹でこんな話題で話をすることが今まで無かったのでいい機会だと思いつつ話してもいいかなとか思っているけど、念のため今その話題で話していいのかを確認する。
「今日ー、話すって言っていた話はしなくていいの~?」
「まあ、今日入って来た男子達の話をするっていう意味なら、関係性はないって話でもないから」
「ん~?」
それは
「それにしても本音?さっきは『2人目』の男子――黒野くんと抱き合っていたわよね?」
「あははー、見られてた~?恥ずかしいな~」
「恥ずかしいと言っている割には、周りにクラスメイトがいたじゃないの……少し布仏家としてはどうかと思う所はあるけど、その……お互いに一目ぼれで勢いに任せてっとかで抱き合ったの?」
お姉ちゃんは今までまともに男子に接触したことが無かったし、またロマンチックなことを言っている自覚もあるのかな?お姉ちゃんとしては珍しく顔を赤らめながら私にそんなことを聞いてきた。お姉ちゃんの言いたいこともわかるけどね~、え~と――
「う~ん、大きく違うかなー」
「――と、言うと?」
う~、こういうことを言うのは、はっきり言って恥ずかしいけど……うん!私がそう思っているし、そう感じていることだからはっきり言っちゃおう!
「ええっとねー、なんかねー、くろろんは私をね~すっごくすっごく凄く愛しているーって感じがしてね~」
「……え?」
私が思うことをそのまま言ったら、何故かお姉ちゃんの表情が凍り付いた。まるで私以外の時間が止まったかのような感覚だ。
「くろろんが何故か私のことを想っている分ね~、私のことを傷つけないということが分かるから、私もすっごくすっごく凄く安心できるんだよね~」
「思ったより糖度が高い話て私はすっごく驚いているし、そんなあなたにすっごく安心ができないのだけど?」
私が話した内容がよっぽど衝撃的だったのか、ずれていない眼鏡の位置を震える手で調整する。よかった、私に時間停止の能力は発現していないようだ。私は、そんなお姉ちゃんの反応にどう返してよいのか分からないので、とりあえず今の恥ずかしいというか、照れるというか、そんな感情を表現する。
「えへへー」
「別に褒めていないわよ。彼の調査結果から考えられない状況だから動揺が強く出たのかしら?軽く『世界の全てが敵』ぐらいには思っていてもおかしくない調査結果だったと思うのだけど……まあ、それはそれとしてーー」
「うん?」
「そんな状況であるなら、ちょっと、
お姉ちゃんは、そう目が笑っていない笑顔で言いながら机の下からお姉ちゃんが愛用している筆箱が取り出される。
「……その手に持った、筆箱でくろろんに何をするつもりなの?」
かわいくて、かっこよくて、大好きなお姉ちゃんだが、ちょっと心配になってきた。
2022年4月4日(月)
IS学園
学生寮 2034号室(黒野暁人の部屋)
「それで?どうしてこんなことをしたんですか?」
「……」
「聞いてますか?」
私は今、過去最大の危機に陥っている――自業自得ではあると自分でも理解している。
「はっきり言って、今のあなたはすっごくすっごく凄く恥ずかしい格好で恥ずかしい状況であると理解してますか?」
「……はい」
私は顔を赤くしながら答える。今の私は、傍から見たら裸エプロンに見える格好で男子の部屋の床で正座をさせられて仁王立ちで腕を組んでいる暁人くんの話を聞いている。……正座をしているが、温情で床に布団を敷いてくれているし、正座には慣れているので、正座自体はそこまで苦ではない。ただただ、恥ずかしい。この位置関係だと裸エプロンという格好も相まって、暁人くんに胸や太ももなどの際どい部分を見ることが出来るのだ。今更ながら、この裸エプロンという格好に恥ずかしさを覚える。因みに、制服や扇子などのエプロンと水着以外に持ち込んだものは私のすぐ隣に置かれている。うん……持ち込んだ私物の中には先ほど着替えた下着も置かれているという徹底ぶりで『対暗部用暗部』の当主としては関心をしている。
「まず男子の部屋に不法侵入しているということ。IS学園は治外法権なので、不法侵入というのは正しくないですが、一般的にそう思われてもおかしくないことをあなたは行ってます」
「……はい」
「次に裸エプロンという格好で、付き合ってもいない異性の部屋にいるということ――『男女七歳にして同衾せず』とは言いませんが、もう少し恥じらいというものを持った方が良いのではないでしょうか?」
「あ、あのー、『男女七歳にして同衾せず』という言葉の伝えたい意味は分かるんだけど、ちょっとそんなことわざはないかなーって」
「あれ?あの野郎、間違った言葉使っていやがったのか。とにかく、そんな淫らな格好をすること自体が恥ずかしいということを自覚して下さい」
「……はい」
「そして、年下にこういった倫理観でお説教を受けているということを理解してください。いくら女尊男卑という世の中だからと言って、こういった男女の仲などのことは不変であるはずですので、あなたがそういった特殊性癖をお持ちでいないのであれば、こういったことは止めた方がいいです」
「……はい」
「後は……まあ、俺から言わせれば、エプロンの中に念の為に水着を着ているという点が中途半端な点が更に恥ずかしい――いや、そもそも裸エプロンでスタンバイするという発想自体が……」
「今の状況は理解できているから、改めて確認させないで下さい。正論で殴らないで下さい。お願いします」
私は土下座をしながら、暁人くんに懇願する。あ、この土下座という姿勢事態も恥ずかしいのだが格好も相まって余計に恥ずかしい。正座の姿勢だと正面から胸が強調されていて恥ずかしかったけど、土下座の姿勢だと背中がほぼ丸出しになるのか。私は今水着を着ているので、背中全部を見られている訳ではないが、これは恥ずかしい……実際に裸エプロンという格好をしてみて、この格好のヤバさについて勉強になった。もう二度とこんな格好はしないであろう。
「……はあ、とりあえずお説教は終わりとしますので、その破廉恥な格好を止めて普通の格好に着替えて下さい」
「え、あの、こ、ここで着替えるの?」
さ、流石にそれは、死んでしまいそうなくらい恥ずかしい体験であるのだけど。そう、思っていると暁人くんは私に呆れた様な目を向ける。
「ここじゃなくて、
「い、いえ、そもそもここはあなたの部屋なんだし、あなたが出ていくというのもおかしい話だから、この部屋にいないと」
先ほど暁人くんが言った通り、この部屋にいくら生徒会長権限とはいえ不法侵入に当たる行為を行ったのは私だし、本来暁人くんがいるべき部屋なのに追い出すという行為がおかしいと思う。仮に暁人くんに、その、襲われたとしても彼を取り押さえることが出来るほどの武術を修めているという自負はある、けど――
「――だけど、本当に覗かないでね」
「……分かりましたから、早く着替えてくださいヴァージン痴女先輩」
「ッ!?」
私はそう言われて恥ずかしさで顔が熱くなっていることを自覚しながら、私の座っていた場所の隣に置かれていた着替えなどの私物を持ちながら脱衣所兼洗面所に移動する。裸エプロンに着替えた時にも利用した鏡で私の顔を確認すると、林檎の様に真っ赤になっていることが分かる。
(ヴァ、ヴァージン!?なんてあだ名を付けるのよ!!)
念のため、脱衣所兼洗面所ではなく、各部屋に備えつかれているシャワー室にてIS学園の制服に着替えを行う。……一般的な常識を解いたり、正座をさせる際に布団を置いてくれた事から、暁人くんが覗きなどを行わないであろう人間であることは察せられていたが、同じ部屋に異性がいる状態で着替えを……一時的に裸になるという行為は、とっても恥ずかしいものであるということを今日の私は理解した。制服に着替えが終わり改めて、シャワー室の鏡で自分の顔を確認する。先ほどと同じく顔が赤いままだった。
「……よし」
パシィーン
いくら何でも動揺しすぎだと思い、平常心を保つために自分の頬に気合を入れる。
(そう、私は『更識楯無』、IS学園の生徒会長。更識家も、IS学年の生徒達を守らなくてはいけない。一々、こんなことで同様なんてしている訳にはいかないんだから)
自分は『何者』であるのか、再認識をしながら脱衣所兼洗面所を出る。脱衣所兼洗面所を出ると、暁人くんは段ボールの中の荷物を確認していたのか、明るい紫色の紙のような物を持っていた。……覗かれないか心配していた私が馬鹿みたいな状況であることと、私の魅力が暁人くんに影響を与えないことに関して少し思う所はあるが、私は荷物の整理をしていた彼に声をかける。
「……よし、材料はしっかり入っているな。あとは切って貼り付けるだけだ。我ながら、何でこんな面倒くさいマークを作ったんだろう」
「何々~?エッチな本でも入っているの?」
「……はあ、さっきの今でよくそんなことを言えますね?」
暁人くんは呆れを含んだ視線や声色を出しながら、私に向き合う。ベットを挟んでお互いに向かい合う形になって暁人君は口を開く。
「ご存じかとは思いますが、ISを動かせてしまった『2人目』の男子、黒野暁人です」
「そういえば、自己紹介もまだだったわね。IS学園生徒会長の更識楯無よ。以後、よろしくね」
「よろしくお願いします。それで裸エプロン(笑)先輩は、何で俺の部屋にいたんですか?」
「い、いきなり蒸し返してくるわね?」
い、いけない。折角、改めた『更識楯無』という仮面が崩されそうになる。……ふう、暁人くんも中々やるわね。自分のペースに持っていく為にも、あとからかうためにも嘘泣きと涙を拭うためのハンカチを出し、ハンカチを目元に当てる。
「……酷いわね、暁人くん。こんな綺麗なお姉さんに対して、そんな破廉恥なあだ名を付けるなんて、ヨヨヨ」
「あれ?これは俺が悪いんですか?とりあえず、三文芝居は止めてさっさと本題に入って下さい。その噓泣きとハンカチをさっさと仕舞って下さい。さもないと織斑先生にチクりますよ」
「もう、冗談が通じないのだから……」
彼の要望通り、涙とハンカチを仕舞う。ほんの少しのやり取りで暁人くんについて分かったことがある。何故か、全く私の美貌が通じていない事だ。これでも……というよりは、結構自分の顔やプロポーションについては自信があるのだけれど、暁人くんに対してそんなものは効かなかった。思えば、最初に裸エプロンで会った際も驚かなかったり、またその後も際どい服装をしているのに、胸などに対する嫌らしい視線を私に向けなかった。
(私の魅力が通じていないというよりは、まるで
そんなことを想いつつ、なんて話そうか私は迷う。IS学園に入学したばかりの彼に、更識家は暗部の家系で『対暗部用暗部』専門なんて言っても伝わるのかしら。
(暁人くんの過去を考えると一夏くんとは違い、ある『組織』からの勧誘をされて、そのままその組織に参入する可能性が高かったから今年の生徒で一番の要注意人物なのよね。だから、早い段階で接触してある程度、暁人くんがどういう人間なのかという事を把握しておきたかったのだけど……うーん、今日の所はからかいつつ軽く話して、すぐに退散する予定だったのに)
私がなんて言って話すのか悩んでいると、彼は口を開いた。
「はあ、あれでしょう?俺の過去について知っていてこんな行動を取ったのでしょう?」
「……なんでそう思ったのかしら?」
私は動揺を隠しつつ、暁人くんの話を聞く。
「……ISという軍事に関わるものの教育機関ということを考えれば、そういった表に出ない裏の情報に携わる人間がいない方がおかしいと思っています」
「まあ、それはそうね」
試験に合格してIS学園に入学ができた一般参加枠などは除き、ISに関する特別な教育を受けた代表候補生などであれば『表に出ない事柄』に思い至るであろう。
「学園側に『俺の事件』の情報が共有されるのが前提として、俺のことを直接観察する人がいてもおかしくはないって考えていただけですよ。最初は養護教諭とか、カウンセリング専門の先生などを考えていました」
そう言うと暁人くんは、私をからかう様に笑って言う。
「まあ、それが予想の斜め上の行動をする痴女なお姉さんだったとは思わなかったですけど、なんで犯罪紛いのことを入学初日に俺にするのかという事を考え、俺と他の生徒と違う点は何かを考え、その上であなたの行動から何かしらの意味が出てくると考えれば少しは見えてくるものがあります」
先ほどのからかうような笑みとは異なる、柔らかい笑みだ。
「俺がどういった人間かということを直接知りたかったということもあると思いますが……インパクトの強いことをして、少しでも過去を思いださないように気を遣ってくれたんですよね?」
「……んふふ、どうかしらね?」
(これはどう判断すれば良いかな?)
過酷で特殊な過去が有ったとはいえ、そこまでの考えに至る事が特別な教育を受けていない15歳の高校生に出来るのか?
(暁人くん自身に監視が付くであろうという想像ができる範疇ではあると思うけど――)
果たして私の行動の意味まで考えが至るであろうか?その考えに至るのには更識楯無という、私という個人に付いて理解していないとそこまでの答えを出せない筈なのだ。
(何だろう……『対暗部用暗部』としては知っているはずのないことを知っているという意味不明で恐ろしい対象なのだけど、その点が逆に面白さを感じる!)
「そんな色々知っているお姉さんに折いって頼みが有りまして――」
「うん?なーに?」
そんな風に私は考えていると、暁人くんが口を開いた。何か頼みごとをするようだ。
「その……生徒会長権限で俺のIS操縦の訓練が行える様にしていただけませんか?」
「ふーん?」
その『お願い』の訓練などを行って、暁人くんに力を付けてもらうという事はある程度考えていたことだ。ISという
「ええ、もちろん良いわよ。色々と初心者の暁人くんには勉強から実技まで手取り足取り教えてあげてもいいのよ?」
「男性経験も無いのに、よくそんなこと言えますね?襲われても知りませんよ?」
「お姉さんを心配してくれるの?大体の相手なら撃退できるからそんな心配は要らないわよ……そういう暁人くんも女性経験がないでしょう?」
「一応、男性との『そういった経験』なら豊富なんですけどね、あはは!」
「………」
「あれ?ここ笑うところですよ?」
「ごめんなさい、流石にそのブラックな自虐ネタを笑うことはできないわね……」
空元気のような雰囲気ではなく、本当にネタとして言っているようだ。暁人くんの事件が明るみに出たのは今から約2週間前で少なくとも1月以内には『虐待』を受けていたはず。それなのにもう精神を持ち直している?
(不可解な点はあるけど、まあ、なんにせよ精神的に安定しているようであるのなら、考えていた中にあった内の一つである『一緒の部屋に住む』という事をしなくていいか)
部屋に置いてる時計を確認すると、この部屋に来て結構な時間が経っているのでそろそろお暇させていただこう。
「まだ色々話したいこともあるけど、暁人くんも荷物の整理もあるだろうから、帰らせてもらうわね」
「ええ、それでは……さっきの訓練の件はお願いしますね」
「もちろんよ、勉強でも分からないことがあったり、困ったことがあったら何でも相談してね」
「分かりました、生徒会長」
「ふふ、それじゃあ」
そう私たちは話して、私は部屋の出入口に移動する。暁人くんは律儀にも見送りをしてくれる様で、ベットとベットの間から移動しようとすると―
ゴツッ――
「―あ」
「―え?」
何故か暁人くんは、ベットの角に足をぶつけてバランスを崩して転びそうになり――
「あ、わわわ!?」
「ちょっと!?」
転ぶのを堪えようとするが、何故か私の方目掛けて体当たりをしてくる形となり2人して仲良く転ぶことになった。
「イテテ……ってあれ?」
「うう、楯無さん、大丈夫で、す、か……」
気が付いたら、私は暁人くんに床に押し倒され、彼の右手が私の胸を掴んでいる。
「「………」」
そのことに気付いた私たちは動きは時間が止まったかのように止まった。暁人くんは驚いたような顔でかつ、顔を赤くしている。
「……んふふ」
私はその表情を見て、ちょっとだけ先ほどの意趣返しをしようと考えた。暁人くんの頭を抱きしめるようにして、耳元で囁く。
「暁人くんって、結構大胆なのね」
「ご無礼を致しました
暁人くんもこの状況に対して驚いているのか、私に対してお嬢様などと言ってくる。
(耳まで赤くなって可愛い♪)
それにしても
(暁人くんの反応や言葉が面白いから、もう少しの間このままでいよう)
この状況は私も恥ずかしいが、年下の男の子の恥ずかしがっている可愛い所を十分に楽しんでから部屋を出よう。
(こんな可愛い反応をしてくれるのなら、一緒の部屋になった方が良かったかな?)
弟とかいたら、こんな風に可愛がっていたのかな?などと思いつつ暁人くんをからかい続けた。
~次回予告~
楯無「んふふ♪この頃の暁人くんはからかい甲斐があったわねー」
暁人「……それにしても、サブタイトルが
楯無「話を逸らそうとしてはダメよ♪こんな絵にかいたようなラッキースケベは今後もからかいのネタにするから……因みに同居人の件は、これは暁人くんの精神状態によっては私が――」
暁人「おっと、ネタバレ止めてくださいお嬢……楯無さん」
楯無「あれれ?この時点では私たちは初対面なのに、何で暁人くんは私のことお嬢様とか呼んだりしたのかな~?」
暁人「イイ笑顔で詰め寄らないで下さい、おじょ……楯無さん」
楯無「そんな良い笑顔だなんて♪あなたも好きな相手がいるのに、他の女の人にそんなこと言っちゃダメよ♪」
暁人「かんちゃんや虚さんに、自滅覚悟でこの件での楯無さんの行動全部言いますよ?」
楯無「……からかい過ぎてごめんなさい」
次回、第7話:暗躍