私の名前は更識楯無、IS学園の生徒会長よ。
前回は、暁人くんに押し倒されてあんなことやこんなことをされて、うう、ヨヨヨ。
……ねえ、ちょっと暁人くん?謝るから、その物騒なレールガンを私に向けるの止めようか?
……え?暴徒鎮圧用の弾だから殺傷力がないから大丈夫って?
そもそも、レールガンは人に向けるものではないわよ。
あとね、簪ちゃん?荷電粒子砲2門それぞれを私と暁人くんに向けるのを止めてね?
ちょっとした、ジョークよジョーク。
……さて、暁人くんは私に生徒会長権限でISの訓練ができないかと言ってきたが、色々と裏がありそうな彼の訓練の目的は何なのか?
んふふ、今回のサブタイトルは暗躍、何かありそうね♪
……あ、こら暁人くん押し倒したのは事実ですとか言わなくていいから、そのあと私がしたことも言わなくて、え?……はい、簪ちゃん……大人しくお説教を受けます。
2022年4月4日(月)
IS学園
生徒会室
「……」
夜遅くの静かな生徒会室にカリカリと紙に文字を書き込む音だけが響く。
私は暁人くんをからかって十二分に満足した後に生徒会室に戻った。
生徒会室に入室したら、私の一つ年上の幼馴染でありIS学園3年生で生徒会役員で、『
(あと、何故か暁人くんと虚ちゃんの説教や注意の仕方が同じなのは何でなのかしら?)
虚ちゃんの説教の後に、本音ちゃんにIS学園でしか話せない情報の共有を行った。――そう、暁人くんについて調べたこと全部を本音ちゃんに話した。『対暗部用暗部』に関わる布仏家の人間ではあるが、まだ高校1年生である彼女には暁人くんの過去については衝撃が大きかっただろう。いつもの柔らかい雰囲気ではなく、真剣に話を聞いて驚いて、そして暁人くんの過去を悲しんでいた。彼女も布仏家の人間ではあるので、そんな
(まあ、はっきり言えば暁人くんの過去については気持ちのいいものではない。暁人くんの過去も、そして現状も過酷すぎるのよね。それこそ、この社会を破壊するだなんて思ってもおかしくは無いくらいにはね)
今回の私たちの目的は本音ちゃんに現在まで分かっている情報の共有だったので、話をしてすぐに帰らせた。入学して初日で、生徒会には現在早急に行うべき案件はないし、それに本音ちゃんがいたら仕事にならないしね……今の彼女の動揺した状態では、という意味ではなく通常の状態でも書類仕事が出来ないことが理由だ。まあ、彼女の生徒会に入れた理由に仕事が出来る云々は求めていないのだから、そのことについては特に気にしていない。
(あ、本音ちゃんに暁人くんが学生寮に住むことになったこと伝えていなかった)
まあ、すぐにどうなるという事でもないのだろうと考えている内に、アリーナの特別利用に関する申請書の記入が終わったので体を伸ばす。
「ん~、終わった~」
「お疲れ様です会長、お茶を淹れましたので、どうぞ」
「ああ、ありがとう。いつも悪いわね、こんな夜遅くまで付き合ってもらって」
「ええ、もう慣れました」
虚ちゃんからティーカップを受け取って淹れられている紅茶を飲む。
「うん、いつもながら美味しい。落ち着くわー」
「恐れ入ります。それにしても、いったいこんな遅くまで何をしていらっしゃったのですか?」
「ん?ああ、明日以降の夜の時間のアリーナ特別使用許可に関する申請書よ。暁人くんのIS訓練のためのね♪」
私はそう言って、書き上げた申請書を虚ちゃんにひらひらと見せる。
「訓練の話は会長から言い出したのですか?」
「いいえ、暁人くんの方からよ」
「それはまた……入学して初日からそんなことを言うなんて、その、向上心に溢れているのですね……ギリ」
「そうねー、聞いた話によるともう一人の方の一夏くんにIS訓練に関して発破をかけたのも暁人くんだって言うじゃなーい?他人に言うだけでなく自分でも実践をしているなんて好感持てるわねー……って、今、虚ちゃん歯ぎしりした?」
「いえ、お気になさらず」
私の知っている限りだと虚ちゃんと暁人くんにまだ接点はなかったはずだけど、何かあったのかしら?
「そ、そう?……まあ、暁人くんの訓練は申請などの問題や荷解きなどもあるだろうし、明日の夜からの訓練となるわね。いやー、向上心のある暁人くんに対しては悪いけどね」
「……それはそうと会長――いえ、お嬢様?」
「あん、学園でお嬢様はやめてって――」
「いつの間に、黒野君とそんなお話をしたのですか?」
「え?それはもちろん、生徒会室に入る前に暁人くんと直接会って話をしてね」
「……今日の朝、何故か部屋にエプロンと水着が用意されておりましたが――」
「――あっ」
私と虚ちゃんは『対暗部用暗部』としての情報などもお互いに取り扱うので、一緒の部屋にした方が私たちも学園側も都合がよいので私たちは同室となっている。そのため部屋で変わったことをしていれば自然と目に付く。
「お嬢様、念のためにお伺いしますが――」
「……はい」
虚ちゃんはちょっと、怖い顔で私に問い詰める。
「いつ、どこで、どのようにして会いましたか?」
分かりやすく、聞きたいことを区切って話してくる威圧感に私は何も答えられなかった。
「………」
「お嬢様?」
「いえ、その、普通に会って、ね、話をしたのよ」
「ああ、そうでしたか。私はてっきり、男子の前で破廉恥な格好をして驚かせようとするなどという低俗なことをしたのではないのかとばかり」
「ソンナワケナイジャナイ、ヤダナー」
「はあ……今日はもう遅いですし、追及はしないでおきます」
「ふぅー」
「『次』は、ありませんからね?」
「……肝に銘じておきます」
裸エプロンでからかおうとしたらガチ説教されて、その後に暁人くんに偶然とはいえ押し倒されて、そのまま彼の頭を抱きしめて吐息を耳に当てながら囁くという悪戯をしていました。
……なんて言ったら淑女として『更識』の者としての長時間の説教が始まるだろう。
「それでは失礼します。会長も紅茶を飲み終えましたら、今夜の所はお休み下さい」
そう言うと、虚ちゃんは生徒会室を後にした。私は申請書に記入した内容に不備がないかや明日の予定を確認しつつ、従者が入れてくれた紅茶を飲む。
「………」
ティーカップに残っている紅茶を飲みながら私は考える。私は今日の出来事で、ただ一つだけ気になっていることがあるのだ。暁人くんの不思議な所だったり、ある『組織』に関することよりも重要なことだ。それは――
「裸エプロンを見て、驚かない――もとい興奮しない男子っているのかしら?」
そう、私の裸エプロンという姿を見てまるで興味がないような態度を取られたことが気に食わない。
「もしかしたら、『そういう趣味』……いえ、これは暁人くんの場合、冗談では済まされないし、何より私を押し倒した際に顔を赤くしていたから違うわね」
私の仕入れた、裸エプロンは男子の夢という情報が間違っていた可能性があるのか?いいえ、それを決めつけるにはサンプルが足りないわね。
「……機会があれば一夏くんにも試そうかしら?」
……この生徒会長、懲りていないのであった。
2022年4月4日(月)
某所
歓楽街
「くっそ、あのホモ野郎が!!」
人通りのない暗い路地裏に、俺は酒瓶を持って叫んでいた。少し歩いた先には、人が多く明るくて楽しそうな声が聞こえる歓楽街がある。
「んぐっんぐっ、プハァ!!仕事ができて周りからの信頼も厚くて、将来会社のためになると思って副社長の立場にしてやったのに!!あの野郎はよぉ!!」
「………」
そんな明らかに酒の飲み過ぎだと分かる様子の俺を茶髪でロングヘヤーの女性が眺めていたことに気付いた。彼女に手には酒の瓶が2~3本程度入ったビニール袋があった。どうやらお酒を買った帰りにたまたまこの社会の負け犬を見かけたようだ。
「ああ!?見世物じゃねーぞ姉ちゃん!!」
「……ああ、邪魔したね」
俺はそう叫んだら、女性はそのまま立ち去った。この女尊男卑のご時世で、こんなことをすればそのまま豚箱行きでも不思議ではなかったのだが、今の俺にはそんなことも分からなくなってしまうくらいに酔っぱらっているようだ。
「クソッ!このままじゃ、俺の会社は倒産して社員は路頭に迷うことになる……どうすりゃいいんだよ!」
俺は叫びながら中身が残っている酒瓶を目の前のビルの壁に叩きつけるように投げた。そう、酒瓶が壁に当たれば割れる勢いで投げたはずであったが――
「こんなことしては危ないですよ、カグツチの社長さん」
「……は?」
いきなり目の前に黒いパーカーを着た人物が投げたはずの酒瓶を左手に持って現れた。
「お、お前、いったいどこから?」
「もちろん、歩いて、こう、酒瓶をキャッチしました」
「歩いて~?」
俺は自分は、人が近づいてくることに気付かないほどに酔ったのか思った。
「それにしても――」
「ああ?」
「登場には丁度いいタイミングで酒瓶投げてくれるなんて、これは運がいいという他ないね♪アハハ!!」
パーカーを着た人物は、訳の分からないことを言っているが、俺はそれよりも気になっていることがある。そう、
(やっぱり、俺は飲み過ぎたんだな……訳の分からない奴が出てきたし帰るか――って、待て。なんでこいつは俺の事を知っていて話しかけたんだ?)
そう俺は考えていると、目の前のパーカーを着た不審者は笑うのをやめてこちらに話しかけて来る。
「あなたの所の元副社長が未成年の男子への性的な暴行……被害者の希少性を鑑みてニュースにはなってませんが、IS業界にはその話は知られていて取引をしてもらえないから会社が倒産しそうで困っているんですよね?」
「……っで、そんなことを知っているお前は俺に何の用だ?」
俺が手を出すと、目の前の人物――少し高い声色だが口調などからして男は手に持った酒瓶を俺に渡してきた。俺はその渡された酒瓶を口に付けて男の話を聞く。
「あなたの会社、助けてあげましょうか?」
男はそう言うと懐からUSBメモリ取り出して見せてくる。
「それは?」
「このUSBの中にこれからの具体的な計画書と現状を打開するための商品の開発……そして、対IS用の武装の設計図が入っています」
「ふーん……」
「ISの搭乗者が処理をする情報を減らすためのアイディアなどもありますが、主にエネルギー系の武装開発に関する物で、これを新しい商品として売り出します」
男が言っていることは酒を飲みながら話半分で聞いている。そんなもので、今の状況が打開できるわけがないからだ。
(仮にその商品がとても優秀だとしても、悪評のある俺の会社の現状だと、悪評よりも大きな何かしらの話題性が必要だろうが、クソ野郎)
「話題性がないから売れるわけがない、とか考えているでしょう?」
「まあな、否定はしない」
俺はそう言って、さらに酒を煽る。そんな俺の様子をみて、男は少し苦笑をした後にこう続けた。
「まあ待って、これはあくまで開発してもらいたい商品などの説明ですよ。これらの技術は近い将来
「は?第5世代だと?」
この男は何を言っているんだ?
「お前、イカれているのか?今は第3世代の試作が始まったばかりなんだぞ?それを第4を通り越して第5世代だと?」
「イカれている……か。確かに、
男は形容しがたい雰囲気を出した。威圧感のような、狂気そのものを気配として発したような感じだった。
「……失礼、それだけこの技術は先進的であることを分かって欲しい」
男がそういう頃には、異様な雰囲気は消えていた。
「そもそも、第4世代の定義はなんだよ」
「『パッケージ換装を必要としない万能機』が定義です」
「はあ?じゃあ、第5世代の定義は?」
「えーと、第5世代以前までの世代の特徴を引き継いでいる事……具体的に言うのであれば、以前までの世代の特徴を洗練させている事が『技術的な』定義と言えるかな?」
「自分から第5世代とか言っている割には結構、曖昧なんだな?」
「まあ、第5世代とは名ばかりの第2世代機とかあり得るから。この世代を語る上で重要なのはISのある重要な部品の供給についてですよ」
「
「そう……一番重要であると言ってもいい」
(一番重要だと?それでいて、その部品の供給……そして第2世代も関わってくるのか?)
ISにはそれぞれ世代が分かれている。技術的な事を分けた際には以下の分類がされる。
まずは『第1世代』はISの『
続いて『第2世代』は『
次に『第3世代』。これは現在実験の域がでていない世代で『操縦者の思考操作による特殊武器の実装』を目指したものを指す。イギリスでは、IS本体から切り離して自走するレーザー砲――通称ビットという兵装が研究中で、それの実験機が今年のIS学園の1年生として入学したという話を聞いたことがある。
あと俺が知るのは、噂に聞いた倉持技研のまだ開発中の『打鉄弐式』はミサイルのマルチロックオンシステムを搭載するとか聞いたが……
そして、この男が第4世代の説明の時に言ったパッケージとはISの換装装備のことであり、武器の付け替えだけではなく、追加装甲や増設スラスターなどを一気に付け替えることが出来るのである。これにより防御型で使いやすいと定評のある日本製の打鉄を防御を捨てて高機動型にしたり、さらに装甲を増やして防御特化型にすることが出来る。
(
「
「お、IS武装に関わる人らしい着眼点ですね。だけど違います」
男は目の前で手で『×』を作る。
「あー、俺の第2世代とか話したことがミスリードになりましたかね?もっと重要な部品ですよ。それがないと
「……はぁ!?おい、それってまさか!?いや、あり得ない!!」
俺は男が言う部品に思い至るが、あり得ないと俺の知識が叫ぶ。
(おいおい、それが供給可能ってことは!?)
男はそれが正解とでも言う様に手を叩く。
「あっはっはっ!!流石社長、カンが良いですね~」
「それが造られるようになったらな!!あれが量産されるようなら、今以上の酷い世の中になるんだぞ!?」
「
男は不機嫌な雰囲気を隠しもしないで、その天才のことを話しているようだ。
「そ、れ、に~酷い世の中になりませんよ?」
「ああ?」
俺はその時のその男の目を見なければよかったと、長い間後悔することになった。
「それを造ってすぐにクソどもが世界ぶっ壊して、社会が、世の中が成り立たなくなるんですから」
男は能面のような感情を読み取ることが出来ないはずの表情なのに、瞳には暗いくて熱くてドロドロした憎しみの黒い感情が渦巻いていることが分かってしまう程、この言葉には言い表せない何かが籠っていた。
「そんな様にしないためにも、あなたの会社の協力が必要なんですよ~」
男は先ほどの黒い感情を消して俺に笑いながら言ってきた。
「よくお前の話は分からないが、結構大きなことをするんだろう?ISの武装開発をしている規模の俺の小さい会社の協力でいいのか?」
「あー、今はあんまり、大きく動くと面倒くさい『
「……俺の会社に目を付けた理由に関しては、まあ、不満はあるが納得しよう」
確かに、『
「お前が何かを抱えていることは分かったが、信用に足りる証拠がないし、お前の話で成功するのかもわからない」
「……それは、確かに社長の言う通りです」
男は何か諦めるようにそう言った。そう、俺は俺だけの為ではなく、俺の会社のために行動しなくてはいけないんだ。こんな酔っぱらった時の話で決めていい内容じゃない。
「……しかし、今のあなたにはこれから会社を守るための突破口がないが、いいんですか?」
「………」
しかし、俺も今のままではダメなことは理解している。俺一人ではどうにもならないから、酒を浴びるように飲んでいたのだ。
「倒産して社員が路頭を迷い、家族は一家離散し、酒に溺れて何もできないまま死ぬことになりますよ?」
男に最悪の未来予想を言われた俺は頬をヒクヒクと意思とは関係なく動く。
「まるで未来が見えているかのようなことを言うな……」
「別に未来を見ている訳ではありません」
男は鼻で笑うような調子で言う。俺は男の言葉を聞きながら酒を再度煽る。
(そうだよな、未来を見ているだなんて、そんなこと――)
「ただ、俺が時間遡行していて、未来の情報であなたの末路を知っているだけですよ」
「は?」
俺は男が言った内容が理解できず、頭が真っ白になる。そんな俺の状態を知らずに男は話を続ける。
「このお話はいったん、USBの中身を見てから決めていいですよ。俺と手を組むことを決めたのなら記載している対IS用武装の開発に着手してください。まあ、出来れば着手して貰うと俺がこの後、楽になるんですよ」
俺は半分以上話が聞けていなかったが、最後の男が楽になるという言葉だけ聞こえたので、それをオウム返しの様に聞く。
「楽になる?」
「ええ、
そう言うと、男は笑いながら俺にUSBメモリを投げ渡して来た。俺はそのUSBメモリを危なげにキャッチする。
「
「ちょ、ちょっと、待っ……」
パーカーを着た人物は姿を現した時と同じようにいきなり姿を消していた。
「チッ、なんだったんだあいつは」
俺は渡されたUSBメモリを手の中にあることを確認し、今の出来事が酔っぱらった際の幻覚や夢である可能性がないことにがっかりした。
「あれ?このマークは……」
酔っぱらっていて焦点が定まらないが、USBメモリにはうさぎの身体に時計が書かれているような明るい紫色のロゴマーク?これは―
「不思議の国のアリスの『時計うさぎ』を表しているのか?」
2022年4月4日(月)
某所
歓楽街から離れた高級マンションの一室
「ただいま~っと」
「あら?おかえりなさいオータム。お酒を買いに行ったにしては随分と遅かったじゃない?」
リビングに入るとソファーで寛ぎながらIS関連の雑誌を読んでいた恋人であるスコールに声を掛けられる。彼女は風呂に入り終わって暫く経つのか、風呂上り直後に着るバスローブではなくガウンを着ていた。
「ああ、気に入っているラム酒が近場になくてよ。ちょっと遠くなったけど、歓楽街の酒屋まで買いに行ったんだ。いつも飲んでいるダークラムや今日は珍しく日本のラム酒も買ってきたんだぜ。一緒に飲むか?」
私は買ってきた酒をスコールに見せる。
「――うわっ、また度数の高いお酒を……これをロックで飲むのなんてあなた位よ?」
「良いんだろ、路地裏にいた誰かさんの様に迷惑を掛けないようにして飲むからよ」
私はそう言って、リビングの中央に置いてあるセンターテーブルに買ってきた酒を取り合えず置いて、その後にキッチンに移動して氷やつまみを並べて晩酌の用意をする。ガチャガチャと用意をしていると、ふと気になって、スコールに話しかける。
「スコール、あのガキは?」
「はあ、あなたたちもう少し仲良くしなさい……って、言ってもあなたたち聞かないわよね」
「私たちのチームに入った時から、気に食わないから仕方ないだろう?」
私は少しあのガキに対する苛立ちを出しながらスコールに答えた。
(あとあのガキの生殺与奪を握っているスコールが言うのもどうかと思うけどな……)
「今日は珍しく自分の部屋から出ていて、今はベランダにいるわ」
「ああ?あいつ、星を眺めるような可愛い趣味持っていたのか?」
そう言いつつ、昨日から事前に作っておいた球体状の氷と普通のキューブ状の氷をステンレス製のワインクーラーに
「……いつも思うけど、そのワインクーラーの使い方絶対間違えているわよね?ワインクーラーなんだから、本来氷とワインボトルを入れるものよ?」
「丸い氷を一々キッチンまで取りに行くのが手間だからな」
「それなら金属製の小さなバケツでもいいんじゃない?」
「バケツだと見た目が格好悪いだろ」
ワインクーラーをセンターテーブルに置いたところで私はベランダを見る。リビングに入った時は気付かなかったが、確かにエムはそこにいた。彼女はまだ4月だというのに見ていて寒く思えるような黒いウェットスーツの様なものを着てベランダの床に体育すわりでいる。リビングからだとエムの背中と黒くて長い髪しか見えない。
「………」
「――ハッ」
エムの夜空を眺めながら黄昏ている様子を見て鼻で笑う。
(どうせまた、大好きなお姉ちゃんのことを想っているんだろうな)
まあ、
「コクコク、ふう」
「お酒飲むのなら、先に着替えたら?」
スコールは私のジーパンと黒いTシャツを見ながらそう言ってきた。
「部屋着に着替えたら、その服が酒臭くなっちまうだろ?」
「それで、飲み終わったらシャワー?普通に考えたら、自殺行為よ?」
「泥酔するレベルで飲まないから大丈夫大丈夫」
そう言いつつ私は早速2杯目をグラスに注ぐ。
「……ハァ」
スコールは諦めたかのようにため息を吐いて読んでいた雑誌の視線を戻した。
「「………」」
ペラッペラッと紙をめくる音と、テレビから聞こえるBGMや出演者の声、時々私がグラスをテーブルに置く音が暫くの間続いた。
「お、そーだ。スコール、次の
私は良い感じに酔いが回ったことを感じながら愛しのスコールに仕事の予定を聞く。スコールは私を少しの間ジトっと少し睨んだ後に口を開いた。
「……幹部会からはまだ何も連絡はないわ」
「ふーん……って、いうことはもう少し日本でゆっくりできるな」
「そうねー、日本はどこも物騒じゃなくて静かだし、羽を休めるには丁度いいわ」
「あれ?この場合は、羽を伸ばすじゃなかったか?まあ、私はドンパチするのも好きだけどな」
手を銃の形にしてスコールを指してバンバンと撃つ真似をしたが、スコールは片手をひらひらと振って私を軽くあしらった。そんな恋人の反応を楽しんでいたら、ラム酒を1本飲み終わったので2本目を開けた。2本目の酒を味わっている時に先ほどスコールに言われたことを思いだした。
(そう言えば、エムと仲良くするようにとかと言われてたな)
まあ、言われた直後ぐらいはエムと仲良くなるような努力もしてもいいだろうと酔いでボーとした頭でそう思った。確か日本には善は急げということわざがあったなどと下らない事を考えながら私はエムがいるベランダにでる。私はベランダにも置いてあるテーブルに酒の入ったグラスとボトルを置いてイスに座りって、エムを極力視界に収めないようして話しかける。
「おい、エム。いつまでそうしてるんだよ?」
「………」
「ケッ、無視かよ」
酔っぱらった際の勢いでも、コイツと話すもんじゃないなと再認識をさせられた。イライラしながらグラスを煽る。
「いつまでも、そうやってボーとしてよ。何かやりたいこととか無いのかお前は?」
「………」
「あ、それじゃあ、そのお酒が飲みたいです」
「ああ?酒だ?やっと答えたのかと思ったら、ガキのくせに生意気言いやが……って、あぁ?」
グラスに入っている酒が無くなったので、グラスに酒を注ごうとボトルを掴もうとしたが、ベランダに持ってきたボトルがいつの間にか消えていた。
「あれ?確かに、ボトル持ってきたのにな……」
「……おい、オータム」
「あ?なんだよエム」
「今、酒が飲みたいと言ったのは私ではないぞ?」
「はぁ?それじゃあ誰が?」
コトンッと、リビングから音が聞こえた。私達は2人でバッと音が鳴ったを見ると――
「とっとっと」
「「………」」
「あ、ちょっと零れちゃった」
「ああ、そう、気を付けてね……って、え?」
テーブルには黒いパーカーを着てフードを被った不審者が私の用意した氷で私の酒を注いでいやがった。スコールは雑誌に視線が向いていたので、不審者の登場に私達2人よりも遅れて気付いたようだ。しかし、不審者の登場という余りにも想像の範疇を超える状況で、私達3人は何もできずにその不審者の様子を見る事しかできなった。
「ズズ……うっわ!!アルコールきっつ!!何この酒!?初めて口にしたけど、よくこんなもの飲めますね?」
……私の酒を勝手に飲んでいおいてこんなもの扱いをしたことについてや、そのグラスはどこから持ってきたのかなど言いたいことは山ほどあるが私が口を開く前にスコールが不審者に声を掛ける。
「あ、でもなんか甘い香りが口の中に広がって――」
「……ねぇ、あなた」
「ん?あっ、お邪魔してます」
「「「………」」」
不審者は、何と律儀にもそのように言ってきた。
(ああ、そういえば、挨拶がまだだったな。確かに挨拶は大事だ。こういった場合、日本では『アイサツは大事、コジキにもそう書いてある』って言うんだっけな?あっはっはっ――)
次の瞬間、私は手に持っていたグラスを目の前の不審者の頭を目掛けて勢いよく投げた。エムは懐からナイフを出して不審者目掛けて突撃する。
「おっ、ナイスボール。良いね~、世界狙えるよ~」
不審者は左手で私が投げたグラスを掴み、WCB目指してみない~?などと言いながらグラスを素早くテーブルの上で置いた。
「ハアッ!!」
「ほっほっ、ほっー!?」
私の攻撃に続いたエムが順手で握ったナイフで斬りかかったが不審者は
(外に出歩いた際に、ラフな格好で出かけたので銃の隠し場所がなくて仕方なく銃は携帯しなかったことが仇となったな)
日本という非銃社会にいるので仕方がなかった所はあるが、少し平和ボケしていた事は否めない。
(私は現在、買い物から帰ってきてそのままで待機状態のISしか持っていない状況。私の銃は私室にあって、取りに行くことは現状は推奨できない。ISの使用は現状は考えないものとする)
(今、手近にある銃は――)
チラリとソファーのすぐ横にあるサイドテーブルを確認する。スコールが置いた雑誌の隣に無造作に拳銃が置いてある。スコールの銃だが、私はそれを手に取っていつでも相手に向けれるようにしておく。
「おっとっとっ、あはは、まだバランスが悪いなあ……」
「あら?もしかしてあなたは?」
不審者は何かぶつぶつ言っているが、スコールはフードを被って正体が分からない不審者に何か思い当たる相手がいるらしい。私がそのことを聞く前に、不審者は口を開いた。
「随分なご挨拶だねー。
「チッ、コイツ」
「………」
「ふーん?」
不審者――いや、侵入者の男は私達の
「何であなたは私達のことを知っているのかしら?」
「別に特別に調べたとかじゃないですよー、知っているから知ってからだけですよー、あはは!」
そう言って笑い続ける。体を大きく動かして笑っているが、その割には私たちの動きには注意をしてみており何があってもすぐに動けるようにしている。
(胡散臭い奴)
男は気が済んだのか、笑いを収めて再度こちらに話しかけてくる。
「はー、笑った笑ったー……でも、これじゃあ俺がどこまで知っているか分からないですよね」
「あら?そう言うと、あなたの知っている事、全部話してくれるのかしら?」
「ええ、もちろん、これから長い付き合いになるんですから」
そう言うと、男は両手の人差し指を伸ばして、くるくる渦を描くように指を動かしながら話を続ける。
「皆さんは、
男は私に指を差す。
「茶髪でジーンズのあなたはオータムさん」
「――フンッ」
続いて、スコールに指を差す。
「金髪でガウンを着ているあなたはスコールさん」
「――フフッ」
最後にエムに指を差す。
「そして、
「――チッ」
舌打ちをされた本人は気にしていないかのように朗らかに笑う。
(気味の悪い奴だな)
「あー、舌打ちをするとか酷いなー……あっ、そうだ、ねえ?エムちゃんエムちゃん」
「……何だ、馴れ馴れしい」
「えっとね、君の呼び方だけどね、やっぱりエムちゃんじゃなくて――」
男は先ほどの気味の悪い朗らかの笑みから、底の知れない雰囲気を出しながら狂気を感じさる笑顔を出してこう言った――
「マドカちゃんって、呼んであげようか?」
「「「――ッ!?」」」
私はそれを聞いた瞬間に銃を不審者に向ける。勿論、安全装置も外してある。男は銃口を向けられたら、慌てて手を上げる。
「わっわっわっ、銃なんて物騒だねー、怖いねー」
「……思ってもないことを言うな」
「いやー、それでも銃口を向けられるのは実際に怖いですよー」
「バカにしやがって」
「……さっきお前が言っていたことについて気になっていることがあるんだが?」
「ん?なになに?マドカちゃん?」
……エムもエムでこんな状況で、いったい何を聞くっていうんだ?
「私の名前を知っていることは置いておいて、さっき言っていたWCBってなんだ?」
(ああ、それは私も気にっていた)
男はそのように聞かれることが予想外であったのか、フードを被っていてよく見えないが少し驚いた様な雰囲気を出した。
「……あー、ほら野球の世界大会のことだよ。ああ、確か君達は世界中で活動しているから日本独自の名称だと分からないか。ベースボールの大きな大会の略称だよWCBは」
「いや、おかしい」
「え?何が?」
「ベースボールの世界大会の略称はWBCだ。ワールドベースボールクラシックの各単語の頭文字を取るからWBCなんだ」
「………」
「お前はBとCが逆だぞ?」
そう言われた男は壁の方にゆっくりと顔を向けてプルプルと震えだした。
「スコール、こいつ結構バカだぞ」
「ええ、そうね。バカね」
「いや、その、ね、結構俺にも特殊な事情があって、ちょっと世の中には疎いんですよ」
壁を向きながら男は言っているが、多分、顔やら耳やらが真っ赤になっているに違いない。
(……さっきみたいな人をバカにした態度ではなく、こっちが素だろうな)
まあ、とりあえずは――
「オータム、エム、お願い」
「おう。エム、取り合えず殺すつもりでやるぞ。こいつは知りすぎている」
「言われなくても」
「ちょっ、殺意高い」
侵入者の男を撃とうと思って引き金に力を込めたが、相手はそれよりも早く動いた。ナイフを持っているエムの方に体を低くして近づく。エムも一応、私の命令を聞いて相手を殺すつもりで近づく。
(こいつがエムに近づいた理由は、仲間意識で撃たせないようにしての行動……ではない。エムが
ISスーツは下手な防弾チョッキよりも防弾性のが良いからななどと考えつつ、これからどうするかを考える。
(殺傷力は低いが鈍器になる酒瓶はセンターテーブルの上に置いてあるので、それを持ってエムと一緒にこいつをボコるっているのも視野に入れて――)
「あっ」
「はぁ?」
「えぇ?」
「あぁ?」
センターテーブルの上の酒瓶に一瞬視線を移していたら、何故か男が低い姿勢の状態からバランスを崩した。
「またかよー!?」
「あ、ちょ――ぐはぁ!?」
そして、そのバランスを崩した勢いのままラグビーでやるようなタックルで男の右肩がエムの腹に当たった。エムは相手の
(ああ、エムと相手の身長差だと、このままエムが押し倒されるな……というかエムと不審者の体が完全に床から離れているな)
まあ、エムを押し倒している隙に、後頭部でも酒瓶で殴ろうかなと考えていたら――
「舐めるなっ!!」
エムはいつの間にか、順手で握っていたナイフを逆手に握っていた。右手の持ったナイフを、そのまま振り下ろすつもりだ。
(そりゃ、ナイフ持っている相手にタックルしたら当然だよな。あー、あの位置だと心臓か頭を一刺しにできる)
「なんのぉおっ!?」
ナイフを持った相手にタックルを仕掛けたらどうなるのか相手も想像できたのか、タックルをした後の動きが異様に早かった。男はどうやったのか、空中で体を横に半回転させつつ左腕でエムのナイフを持った右手を払って、ナイフが自分の心臓や頭だけでなく、自分の体に当てられないように対処した。まるでカラテの回し受けの様な防御だった。
(いや、何で空中でそんな動きができるんだ?)
本当に相手は生身の人間か疑わしくなってきた。
「まだだぁ!!」
しかし、エムも負けてはいない。いや、これは相手側のミスか。エムの右手を払う勢いが強すぎてエムの右手から男の左手が離れている。これではエムのナイフを攻撃を邪魔するものがないから、エムに攻撃のチャンスを許す。エムはがら空きになっている首元目掛けてナイフを両手で突き立てる。そして確実に相手を殺すためか、エムは相手が着地した後に自身の体重でナイフを押し込むために空中で相手の上になるように体を動かしていた。
(エム、お前もかよ……)
「うぉおお!?」
首元にナイフが迫っている事を確認した男は両手で、エムの右手を掴みナイフが首に当たるギリギリの所でなんとか止まったな。
(そう、空中ではな――)
彼らはタックルからの一連のやり取りを空中でやっていた。もうこれ以上、空中で何かすることはできない。この2人の勝負は、エムが全体重をナイフに乗せて相手の首元に突き立てられるのか否かだ。
「死ねぇ!!」
「ちぃいい!?」
ドスンッ、ドンッと二人は床に(やっと)落下する。
「……凄い勝負していたわね、あの2人」
「まあ、エムの方は
「それもそうね……それにしても、二人とも動かないわね?」
「ん?侵入者の方が動かなくる可能性があるが、エムが動かないってどういう事だ?」
「「……」」
何で2人とも動かないのかという、訳の分からない状況にスコールと目を合わせてしまう。数秒ほど見つめあっていたが、埒が明かないと2人同時にため息を吐いた。
(ただ見てても何も分からねーし、私が近づいて確認するとするか……)
私は何も言わずに銃を構えつて、(無駄な)激戦を繰り広げた2人に近づく。銃を侵入者に撃とうにも致命傷になる頭や胸がエムの体で覆われているので撃っても意味がないが、侵入者が生きていていきなり動き出したなどの場合には、その頭に鉛弾をぶち込んでやるつもりだ。
(何でこいつら、身動き一つもしないんだ、よ……)
私とスコールがいた位置だと、よく見えなかったのだが近づいて回り込んでみると2人の状況がやっとわかった。2人の状況を完璧に把握したといったもいいだろう。まず、2人の命は無事だった。侵入者の男の姿勢は首を狙うナイフを防御する形のままだったので余り説明の必要がない。問題はエムの方だった。エムの右手はナイフを逆手に握ったままで、狙い通り首には刺さらずに代わりに床を突き刺している。そしてエムの左手は偶然にも男に当たらず男の顔の横に置かれている。今の2人の姿を見れば、エムがナイフを持ってまま男を押し倒しているようだった。
(多分、落下の衝撃からエムはバランスを取るために咄嗟に両手で握っていたナイフの左手を離して床に手を置いたんだな)
あと2人は何故か見つめっていた。
(あー、エムのあの姿は、何回かスコールにやったことや、やられたことがある奴だコレ)
そう、俗に言う床ドンの状況になっていたのだ。
「ゆ、床ドン……される方になると結構ドキドキ、ポッ」
「……もし私が普通に生きていたならこんな少女漫画の様なことも合ったのだろうかいやそんことはあり得ないあの時に見捨てられ今まで独りで生きてきたんだ余計な事を考えるなそれにしてもこいつ綺麗な顔してるしまつ毛長いなあれしかしこれは漫画とは立場逆ではないかだけどー」
男はフードが外れていて綺麗な素顔が露になってたが、男はそんなことを気にする素振りを見せずに何故か赤く染まった頬を両手で抑えて戯言を言っている。エムには動きが無いがずっと小声でブツブツと何かを言っている。エムの頭はどうやら妄想の世界に旅立ってしまったようだ、
(なんか、こう、馬鹿らしくて、色々とやる気が無くなって来た……)
意外とエムって少女漫画とか読むんだななど考えながら、持っている拳銃を構える。狙いは男の眉間だ。
(2人から1mも離れていない。確実に侵入者の頭だけ狙える距離だ)
「あ、ヤバ。ねえ、ちょっとマドカちゃん?体を退けてもらえると嬉しんだけどなー?」
「……私も一応女の身だウェディングドレスを着ての結婚式とかにも憧れるが今のこの身長には不満があるがその頃には姉さんくらいには成長しているだろうなにせ同じ遺伝子なんだから」
「おい、いつまで妄想に浸ってんだ!?お願いだから体退かせ!!」
「しかしもし姉さんが結婚するのならに相手は誰になるだろうか……」
「よし、その話は後で聞いてやるからどけやがれ下さい!!あとあの人は意外と筋肉ムキムキマッチョマンが好みだよ!」
「もし結婚式で姉さんの相手を殺したら――って、はぁ!?何だその情報は、詳しく教えろ!?」
「ああ!!教えてやるから、さっさと体退かせって言ってんだよシスコン!?」
「………はぁ」
何でこの2人は殺し合いの最中に敵同士でコントをしているんだろうなどと思いながらため息を吐きながら引き金に力を込めた。引き金を引いた次の瞬間に男は死ぬだろう。男はエムと乳繰り合いながら銃口を引き攣った表情で見つめていた。
「――ッ!!《
バァンッ!
男が叫んだのと同時に私は男を撃った。
(はあ、最後に何を叫んでいるだ。もうお前は――え?)
男は何かを叫んだと思ったら、目の前から男とエムが消えていて銃弾が床に当たった。
「は?」
「え?」
スコールの困惑した声が聞こえた。目の前から2人が消えたように見えた――いや、実際に2人は消えたんだ。
(そうだ、あの男は
私は2人がいたであろう場所を見ながらスコールに叫ぶ。
「スコール!これは夢か幻か私の飲み過ぎか!?私にはあの2人が消えたように見えたぞ!?」
「いいえ、これた信じがたいことに現実よ……私の目にはあの2人は消えたように見えた」
「なら、2人はどこに行った!?人が消えるなんてありえない――」
「……ここだ」
「「ッ!?」」
スコールの後ろと思われる位置からエムの今まで聞いたことがない様な弱々しい声が後ろから聞こえたのでバッと私達は振り返った。
「あっぶねー、危うく死ぬとことだったZE」
振り返ると男はかいていない額の汗を拭う様な仕草をしながら余裕がある様子でそう言葉にする。
「い、今、お前―」
「おおっとそれのネタバレはまだだめだーめ♪」
男はエムの言葉をふざけた調子で遮る。そして、エムはまるで信じられないものを見たかのような表情だ。
(目の前から消えたように見えた私達以上に動揺しているだと?あのエムが?)
エムは一体何をされた――いや、何を体験した?
「いきなり攻撃するなんて酷いなぁ、
男は笑顔で、そう言った。何かしらの手段で無事だったとは言え、いくら何でも銃で撃って来た相手にそんな風に接してくるこの男が不気味だ。私はつい叫んでしまった。
「誰が胡散臭いお前と話なんてするんだ!」
「ちょっと、オータム」
「それもそうだな……まずは俺を信用して貰おうか――」
「はぁ?」
男は右手を一本立てながら話を続ける。
「
男は予言するという本当に胡散臭いことを口にしながら指を立てる数を2つに増やす。
「IS学園にISが
「「「………」」」
私達はその時、この何もかもが訳の分からない男の言葉を聞くことしかできなかった。
「俺に協力をしてもらえるのなら……そうだな、お礼と言っては何ですが――」
男はスコールの方を向いて、スコールの
「スコール・ミューゼル……あなたの抱えている爆弾を取り除いあげますよ」
男は妖しく笑いながら、スコールにそう言った。
~IS学園入学式初日 夕食時の出来事~
「あ、くろろん……ううん、わー!くろろんだ~!」
「……」
「やっほー」
「……」
「どうして学園にいるの~?」
「……」
「くろろ~ん、寮に住むことになったの~?」
「つーん」
「……えっと、一緒にお菓子食べな~い」
「つーん」
「あ……もしかして~、さっきの教室でのこと~怒ってる~?」
「さらにつーん」
「あは、あははは~……ごめんなさい」
「許さない」
「く、くろろん許してよ~……あ、このケーキね~、美味しいからね?一緒に食べよう、ね?ほら、あ~ん」
「あ~ん♪」
(面倒な恋人の機嫌を取っているみたいですわ)
~次回予告~
マドカ「ドジをやらかして逆床ドンか……お前、実は主人公かヒロインだったりするのか?」
WCB「言うなよ。あと始めからこの話の主人公は俺だ――って、何この名前?」
マドカ「いや、この話で不審者とか男としか言っていないんだからあとがきで名前出すわけにはいかないだろう?」
WCB「それは、そうだけど――まあ、不満だが分かった」
マドカ「しかし、この話は遅々として進まんな。プロローグ含めないで7話で6万5千文字以上書いているのに、ISの戦闘シーンが一切ないとか無いな」
WCB「お前、今日はメタいな?」
次回、第8話:クラス代表決定戦①