○月☆☆日
近頃の悪魔増加に伴い増員が決定してからの第一号、彼は才能がある。将来的に活躍を期待できるだろう。今後は私の元で基礎を教え『悪魔』に対処できる人員へと育て上げたい
現状は霊能に強い人材は少数でほとんどの隊員は精々が透視出来る程度、『悪魔』を使役するところまで進めたのは5割以下、更に実戦に耐えうる力を付けられたのは全体の3割を越さない。
これでも昔に比べて『悪魔使い』の数は増えた、COMPのお陰で。しかし同時に『悪魔』絡みの事件は増加していった。
この終わらないイタチごっこを終わらせる為に、泥沼にハマり抜け出せなくなる前に何か手を打つべきだ。
□◇月□日
彼の訓練を開始した、才能はある、しかし殆どの人間は自身の『霊力』に気付くことはない。霊感があるという人間からはかなり遠い感覚だ。彼も相当苦労している、まずは私の『霊力』を感じられるように指導する。
『霊力』の源は『マグネタイト』、この世ならざる存在すら求める至高の物質、そう物質だ。『マグネタイト』は確認できる次元にある物質なのだ、と言っても通常はすぐさま霧散して無に帰るがある特殊な技法により固形タイプと液体タイプの実体化した『マグネタイト』が現在貯蔵される。
その特殊な技法は秘中の秘とされそれを知る人物も明かされていない。
『マグネタイト』は人と『悪魔』のみ生成可能とし地上での『悪魔』の活動に不可欠な要素、しかし地上では生成より消費するほうが早く『悪魔』は人間から手っ取り早く奪うことを選ぶ。
保有量が多ければ『悪魔使い』の才能がある、と同時に『悪魔』に狙われる可能性も高い。『ヨミ』は才能ある人間を保護し育成することで戦力確保と被害削減に努めている。
✕月●●日
彼は飲み込みが早い、『仲魔』の『酒呑童子』も「かの四天王を思い出す」と語っていた。頼光四天王の事だろう。
武勇に優れた人間に例えられるとは教えている側も嬉しいものだ、ただ自分の才能を過小評価する、又は過大評価することがないようにキッチリと実力を教え込む必要はある。
○✕月◆◆日
今日は『悪魔召喚』を行う、私も緊張をする。優れている、才能がある、力を持っている、それは『悪魔』に通じない。人間が『悪魔』を超える事などない、制御と抑制の術を持っているだけに過ぎない。
だからこそ隊長としては彼が『悪魔』に殺されないよう細心の注意を払わねばならない。
私個人としては『ピクシー』程度でどうこうなる人間はいないと思っているが召喚対象“以外”の『悪魔』が来ないとも限らない。
□月●日
はぁ……報告書はどう書けばいいか……『ピクシー』が『九尾の狐』になりました。では説明がおざなり過ぎて突っぱねられるだろう、事実なのに。
『悪魔召喚プログラム』を用いない伝統的な儀式を執り行った為に何処かで歪みが出たのか、はたまた召喚者を指定して強制的に召喚されたのか……何を狙った行動なのか、注意が必要だ。
しかし『九尾の狐』か……私の『酒呑童子』と合わせて、もう一体、『大嶽丸』を呼べれば日本三大妖怪揃い踏みか。日本を滅ぼせるな。
◆△月●日
彼の持つ時計が実はCOMPだったことが分かった。
彼は由来を知らないと言うがその性能は出回るCOMPやターミナルの性能を上回る、とても人の手で作られたとは思えない。
更に呪術が施され何かしらの目印にもなっているが解除する方法はなかった、九美はこれを目印に彼に近付いたと推理できる。
この時計はもしかすればもしかしなくとも『警戒人物』である『彼女』の作品だろう。
『ストラウィッチ・メディンダ・ニール』
『彼女』は自らをそう名乗る、作った作品にも銘をそう刻む。言葉の意味は不明だがあらゆる言語圏でも同じような言葉が発見されている。正体は悪魔だと言う輩もいるが遭遇したことのある私からすればアレはそんな生易しい生き物ではない、もっと世界に深く食い込んだ存在だ。
そんな『彼女』だが世界を旅するように巡ると報告がある、そしてその先々で作品を残して消えるのだ。
呼び名は『インビジブルコレクション』、厳重に保管してもその作品が所有者を選び消え去る事からそう呼ばれている、まるで『彼女』を表した作品たちだ。
△○月□◇日
『はぐれ悪魔』の無力化、そのミッションに成功した。彼は良い隊員になれる。私が保証する。だが『九尾の狐』、今は『九美』と名を貰った彼女に頼り切った戦法にならざるをえない。
彼と彼女では実力差が開き過ぎている為サポートもそれ程意味をなさない、彼らの契約解除も考えるべきか……
身の丈に合わない悪魔は召喚者を喰らい地上に居着き良からぬ事を企む、完璧な契約を結べないなら即座に契約破棄が理想だ。
追記
私の机に狐の毛が落ちていた、やはり彼女は危険だ
△◇月✕日
ギリシャから依頼があり『アルゴナウタイ』名義で『メデューサ』を保護することになった。『メデューサ』はギリシャ魔界に居るはずの姉妹の捜索を求めてきたが生憎と手を貸す余裕はない。
余裕はないが、彼はそれを受けた。私としては成長の機会になると思い許可を出した。
だが時折不安になることがある、遠くに行ってしまった彼は無事に任務を果たせるだろうか……? と。私を鍛えてくれた長官はこの様な気持ちになられたのだろうか。
定時報告が途切れたら『八咫烏』に頼るとしよう。
いやそれでは遅い、我が半身を送り出そう。『ドッペルゲンガー』にはギリシャへ向かってもらうぞ。
●△月★●日
『アルゴナウタイ』の隊長から連絡があった、向こうで彼と出会ったと言う。わざわざそれだけのために連絡をしてきた訳では無い、その隊長の『仲魔』の『ヘラクレス』が彼に興味を示したそうだ。『ヘラクレス』は自分と同じ匂いがすると言っていた。
『ヘラクレス』は神々より試練を受けたと言う逸話がある、だとしたら彼も何かしらの存在に目をつけられている事になる。
むぅ……これは調査が必要だろう、『魔界』へ行き『高天原』へも行くべきか……長官に許可を得ねば。
★△月✕日
ギリシャでの任務、本日完遂との報告。この報告を待ちわびていた……どの隊員も等しく接せねばならない立場にあるのに彼は特別に見えてしまう。やはり私が自らスカウトしたからだろうか……
思えば私もスカウトされた、当時隊長だった長官に見出され直々に手ほどきを受けた、お陰で今の力と立場がある。
私に重なる境遇だから他の隊員よりも特別に見えているのか、何にせよ帰ってきたら労ってやらねば。新人にして国外案件を解決したのだからな。
★★★★★★
「今回の件、ご苦労だった。ギリシャは楽しかったか?」
「あ、はい。でも苦労しましたね。言葉が違いますから」
「『ヨミ』の隊員には専用デバイスを支給しているはずだが、それの翻訳機能は使わなかったのか?」
「…………あっ」
「ふっ、一つ賢くなったな」
「あはは、忘れてました。そうだこれは今回の報告書です、と言ってもそのデバイスのデータ提出だけですけど」
「何事も簡単なのは良いことだ」
「っすね」
★★★★★
△月◆日
彼は一回り大きい男になったようだ、度胸がある、運がある、そして力もある。ギリシャ行きを許したのは正解だったようだ。しかし同時に寂しくもある。
見張らせた『ドッペルゲンガー』からの記録と彼本人のデータを合わせて何をやってきたのかは簡単に分かるが、私個人の記憶にはなっていない。
さて、ギリシャでの事はこれまでにしておく。
今度は『日本魔界』が怪しくなってきた、長官もそれを警戒している。私も出動する機会が増える筈だ、全国にいる民間協力者も頼ることになるだろう。
彼に教えたい事は山ほどあるものの時間がない、『ヘラクレス』の予感を信じるなら試練多き人生になる筈だ。これは私のエゴなのだろうが、彼には試練に負けない、むしろ試練を砕く程の強さを手に入れてほしい。厳しい道になるが彼には身軽に動ける立場を与え全国の『悪魔事件』を解決してもらう。
?? 月?? 日
誰かに彼を任せたくない
やめろ、私は隊長だぞ
違う私は嫉妬深い人間だ
私は公平だ
そして傲慢だ
違う!
彼は私にはない才能がある、愛されている
だから何だ
羨ましい妬ましい、私も欲しい
今更不要だ
私も愛してしまった
何が悪い
愛が分かるふりをしている
そんなことは無いはずだ、私だって人の子なんだぞ……