一話→茅森たち31系部隊の入隊一年前での大規模作戦(本編の蒼井が見た地獄)
二話→茅森たち31系入隊の二ヶ月前
今回→デススラッグ討伐直後〜2章day6
くらいのイメージです。
「葉月さん。どうやら、大分身体は良いようね。」
リハビリを終え、自室に戻ってしばらくした頃、手塚司令官が部屋に入ってきて、そう言った。
「まぁ、なんとか。まだ全盛期には程遠いですけどね。」
「それでも、数値的には月城さんと同等よ。つまり、貴方はセラフ部隊員の中でも上澄み相当の運動能力があるの。そこで、そろそろ前線に復帰しないかの打診に来たのだけど。」
手塚は腰に手を当てて、私の返答を待つ。まぁ、リハビリばかりの生活で、暇を持て余していたところだ。先日のデススラッグというキャンサーの討伐作戦の話を聞いて、体が疼いていたのもある。
「良いですよ。ずっと暇で暇で、仕方なかったですから。」
「分かったわ。それじゃあ、機能回復のテストも兼ねて、ヒトヨンマルマルからアリーナでエミュレーションを受けてもらいます。昼食を取ったのち、制服を受け取りに司令官室まで来て頂戴。」
私の了解の声を聞き、手塚は満足そうに部屋から立ち去った。
久しぶりに体を全力で動かせる機会を得た私は、少しだけウキウキとした気分で、昼食を取ることにした。
久しぶりのまともな昼食だ。私は賑わいを見せるカフェテリアの注文口の前で、何を注文するかを迷っていた。メニューがだいぶ増えている。魚系のメニューが若干増えていることに気がついた私は、鯖の味噌煮定食を注文した。出来上がったサバの味噌煮定食を受け取り、お冷を注いで、適当なテーブルへ着こうとする。しかし、空いている席がない。これまでは、誰かにあらかじめ席を取ってもらっていた。そして、代わる代わる注文を取りに行っていたことを思い出した。どうしようかと悩んでいると、横から声をかけられた。
「よぅ、ねぇちゃん。ご一緒しない?」
声の方向を振り返ると、そこにはあどけない顔立ちの少女が座っていた。
座る席のない私は、即答した。
「ありがとう。」
席につきながら、少女に謝意を告げる。少女は特に気にした様子もなく、
「いいっていいって。私の部隊員は、ちょっと今外しちゃっててさ。ご飯一人で食べるのも味気なかったから、むしろちょうどいいよ。」
と笑いながら言った。
「いやはや、まさか席が空いていないとは思わなくってね。君が声をかけてくれなかったら、せっかくのご飯が冷めてしまうところだったよ。ありがとう、えっと・・・」
「茅森月歌。好きに呼んでくれていいよ。」
「あぁ、ありがとう、茅森さん。私は葉月。葉月 楓と言うんだ。」
「いい名前じゃん。よろしくね、葉月。」
いきなり呼び捨てなのに驚きつつ、まぁいちいち気にするほどでもないか、と私は食事に口をつけ始めた。
ご馳走様でした。奇しくも二人の声が被る。
「葉月はこの後用事あるの?」
「14時までに司令官室とアリーナだ。リハビリも兼ねてな。」
「じゃあ、30分は暇なんだ。一緒に一服しない?」
「付き合おう。」
食器を片した私と茅森は、道中でコーヒーを買い、時計塔へと向かった。
かしゅっ!と、プルタブが開く。一口飲むと、渋み、苦味、僅かな甘味が混ざり合った。ふぅ、と一息つきながら茅森の方を見る。茅森は、箱から一本の煙草を取り出していた。
(なんだ、喫煙者か・・・)
なら私も、遠慮なく一服させてもらおう。そう思い、制服の胸ポケットの部分から煙草の箱を取り出す。
「あ、葉月も一本いる?」
そう言う茅森に、
「あいにく、自分で持っているからな。気にしなくていい。」
と告げた。ふわりと漂う甘い香りに、あぁ、ウィンストンの白を吸っているのか・・・と思いつつ、煙草に火をつけた。ゆっくりと息を吸い、口の中で馴染ませてから肺に入れる。ふぅっと吐き出すと、紫煙が真っ直ぐに立ち上った。
朝ぶりの煙草をゆっくりと堪能していると、そばの茅森が咳き込んだ。
噎せたのかと思ってそちらに向くと、茅森はこちらを向いてびっくりしたような顔をしている。
「本物の煙草じゃん・・・」
「煙草に本物も偽物もないだろう」
そう言う私に、茅森は先ほど持っていた煙草の箱を見せてきた。
ココアシガレット、箱にはそう書いてある。
「これ、駄菓子だよ」
「は?」
戸惑う私に、茅森はそう告げた。
「私、未成年だもん!」
「一服するとか、紛らわしい言い方をするな!」
私が突っ込むのも、仕方のないことだと思う。
「だってだって!そっちの方がなんかかっこいいじゃん!」
「馬鹿なのか!馬鹿なんだなお前は!おかしいと思ったよ!あどけない顔立ちの子から一服誘われて違和感はあったけど!コーヒー片手に棒状のもの咥えてたら勘違いするだろ!」
はあ、とため息をついて、茅森から少し距離を取った。幸い、風向きが変わったから、茅森に煙が行くことはないだろう。
「ねぇねぇ、煙草って美味しいの?」
「距離を取った意味を無くすな。アホなのか。」
「教えてよー」
興味津々、と言った顔を向けてくる茅森。
「吸ってみるか?」
「美味しいの?」
「吸ってみれば分かる」
「じゃあ一口・・・」
茅森は新しいアイスを食べる子供のような顔でぱくりと煙草を咥え、ゆっくりと吸って・・・
「うぇっ!!」
えづいた。まぁそうなるか。
「まっずーい!」
「だろうなぁ。」
「なんでこんなの吸ってるの!?口の中が気持ち悪ーい!」
やいやい騒ぐ茅森を無視して、私はもう一度煙草を咥えた。ぷかぷかと燻る紫煙を目で追って、ゆるゆると口に入れた煙を吐き出した。
「別に美味しいと思って吸ってないからなぁ。」
「わけわかんないよー!」
「ま、理由があるんだよ。っと、そろそろ時間になるな。それじゃ、私はここで失礼するよ。」
「うぅ、口の中が苦い・・・」
嘆く茅森を置いて、私はアリーナへと向かった。
「来たわね、葉月さん。」
「どうも、ゆっくり食事もできたし、いつでも出来ますよ。」
「準備運動でもしながら待っていて。もうすぐしたら30Gが到着するわ。」
「了解。でも、なんで30Gが来るのを待つんだ?」
「あなたの戦闘能力なら、直ぐにでも前線に戻ることになるでしょうからね。現在の最高戦力からみて、貴方の実力を見ておいてもらおうかと思うの。全盛期の貴方を知る月城さんも在籍しているもの。彼女からなら、忌憚ない意見が聞けるでしょう?」
「なるほどねぇ・・・っと。」
準備運動を終えた私は、その場に胡座で座る。少しした頃、6人の人影が入り口からこちらへと近づいてきた。
「30G部隊、ただいま到着した。」
「時間通りね。貴方たちには、彼女の戦闘を見て学ぶところがあるでしょうから、ここに来てもらったわ。一応顔見知り程度ではあると思うけど、紹介しておくわね。こちら、葉月楓。27系部隊の最後の生き残りよ。戦闘センス並びに技術は類い稀よ。月城さんは何度か任務を共にしているから、実力は知っているかしらね。」
「あぁ。我の知る最強のセラフ使いだ。」
「月城ちゃんがそういうなんて・・・相当なやり手だね。」
「とてもそうは見えないですわね。」
「私も菅原さんに同意ですね。」
「まぁそう言うな、菅原、小笠原。月城が断言するんだ。一見の価値はあるだろう。」
「そうですよ。一度見れば、その人の強さを測れるでしょうし。司令官にそうも言われる人材なのは確かなのですから。」
ぼやっとながら聞いていると、なんだか散々な言われような気がしてきた。まぁ、リハビリがてらなんだ、気楽にやろう。
「では、七瀬。開始して。」
「了解しました。それでは葉月さん。セラフィムコードを唱えてください。」
「あぁ。『倶に天を戴かず』!」
降りてきたセラフに腕をはめ、左手に防御用のガントレットをはめる。
それと同時に、アビスノッカー2体が表示される。
えー、リハビリの難易度じゃなくね?最初は雑魚からじゃないの?おかしいでしょ。そんなことを思いながらアビスノッカーから距離をとる。
「よっと。」
トリガーを押し込み、光線が滑るように射出される。アビスノッカーの硬い外殻を灼き、脆い内部組織が露出する。繰り出される飛びかかりをバックステップで躱し、後方へと砲撃。砲撃の推進力で懐まで飛び込み、小さな綻びの部分に剣先を突き刺した。
「それ!」
深く突き刺した砲身から、溜めた光線を射出する。前面についた小さな傷から露出した柔らかい内部組織を貫き、背中の大部分を消滅させるような形で一体目のアビスノッカーは消滅する。その間、僅か20秒。
「2体目・・・の前に!」
2体目のアビスノッカーの方向に向けて、再び光線を射出。砲撃の推進力で距離を取った私は、腰のポーチからカートリッジを抜き出し、砲身付近のモジュールを換装する。先端から灼けた砲身が小さく格納され、代わりに大きな刀身が剥き出しとなる。大きな銃のような形であったはずのセラフは、あっという間に大刀へと姿を変えた。
「よっし、いける!」
柄の部分を両手で握りなおし、トランスポートで最接近。すれ違い様に側腹部、背部に二連撃を見舞う。
背部にできた薄い罅に、勢いよくセラフを投げつけた。ガキン!という金属質な音が響き、罅を広げるように背中に刃が突き立てられる。
「これで!」
トランスポートで刺さったセラフの位置まで跳躍し、柄を掴む。
「おしまい!」
そのままさらに奥へと刃を押し込み、突き立てた刃を振り下ろして両断した。
霧散していくアビスノッカーを尻目に、私はセラフをしまう。エミュレートで赤く染まっていた周囲が、落ち着いた水色へと変わっていった。
「これでどう?戦線復帰の許可は出そう?」
月城以外の30G部隊員の顔には、驚愕の表情が滲んでいた。
「ええ。詳細はまた後日、辞令が出るわ。しかるべき手続きの後、部隊へと復帰してもらいます。今日は以上よ。」
戦線復帰のお墨付きをもらった私は、了解とだけ返して、アリーナの出口へと向かった。
みゃーさんの銃型→弓矢式の変形するセラフを見て、なんとなくありそうだなぁって思った変形型セラフ。変形ってより、パージ、装着みたいなイメージです。
初期の砲撃型→モンハンのガンランス、もしくはBLEACHの雀蜂雷公鞭
変形後の大刀型→覇剣エムカムトルムもしくは最終章の天鎖斬月
みたいな見た目イメージですね。好きな形でご想像ください。