宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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短めです、伏線張り張りタイム

読者の方々が感想欄で凄く難しい話してる…


第八話 半導体研究とその未来

宇宙で製造された半導体が地上にある本社に送られてきた、それは最近やっとのことで完成したマスドライバーの往復便によって配送されている。

 

「やっぱりまだまだですね、選抜して不良品を弾くと殆ど残らないそうです」

 

「仕方ない、この手の産業は短期で結果が出るもんじゃないさ」

 

未だ未完成なものの研究区画を含めた一部が完成した超大型宇宙港は、マスドライバーという頻繁に行き来する存在によって既に活力を与えられていた。

 

「マスドライバーはあっさり完成しましたね、地上でもMMUが役に立つなんて思いませんでしたよ」

 

「ああ、レイバーとでも名前を付けて本格的に販売したいレベルだ」

 

宇宙で人型重機が活躍するならばと、地上でも戦術機の部品を流用して作ってみたのだ。宇宙と違い生命維持装置に気を使わなくてもいいし、戦術機のように戦うわけでもないので値段高騰の原因である跳躍ユニットと各種装甲をオミット出来た。

パーツの共通化が行えれば量産効果によって更なる隼の価格低下も見込める筈だ、まあ隼クラスの部品を使う超高級重機なんて必要ないので結局のところ別で部品を作った方が安上がりなのだが。

 

「まあそれはさておき、前言ったやるべきことは大体終わったわけだ」

 

「海の開発は専門外なので、そこは委託になりましたけどね」

 

物流の活性化と輸送能力の強化という名目で色々と手を回した。

宇宙開発競争自体は終わったものの、それで甘い蜜を吸った人々は味を忘れてはいないのだ。

 

「元々ロケットやらなんやらは地上の道路で運ぶにしては、いかんせん量も大きさもあり過ぎるからな」

 

「船の方が安くて早い、それを方便に使ったわけですね」

 

「日本は島国だしな、軍備拡張はもちろん万が一の時のためにもキャパシティは大きい方がいい」

 

結局のところ安価で大量に運ぶには船が一番だ、半導体研究やら軌道艦隊への補給物資やらを運ぶのに暇は訪れない。

 

「で、今度は何を企んでいるんです?」

 

「AIを作る、将来的には戦術機を無人にしたい」

 

「…は?」

 

未来において実用化されるデータリンクシステム、それは各戦術機のコンピュータ同士が情報をやり取りしBETAの位置や危険度などを瞬時に割り出してくれるというものだ。

それを早期に完成させるのはいいが、やるなら更に上を目指したい。

 

「隼間で情報をやり取りして他の機体が捉えたBETAの位置を共有する機能については話したよな」

 

「ああ、今実験中の機体間データリンクですか」

 

「戦術機はセンサの塊だ、それが何十機と集まる中ならより高度な判断を行い自ら思考してBETAと戦う戦術機が作れそうじゃあないか?」

 

大量の戦術機が群体として集団を成し、搭載されたセンサで情報を収集し、それを大量の搭載コンピュータで並列処理する。完全無欠、パニックになることもなければミスをすることもない最強の対BETA兵器だ。

 

「はあ、大層な目標ですが現実性はあるんですか?」

 

「…まだない」

 

今あるコンピュータでは明らかに性能が足りない、対BETA戦で人的被害を0にする究極の戦術機が生まれることは今のところないだろう。

 

「まあこれは最終目標、直近の目標は衛士の補佐AIの開発だな」

 

戦術機は思考を読み取り動作するが、動作をより柔軟に行おうとすると機体と人体の感覚の差を埋めるのに苦労する。また操縦の自動化が遅れているため、細かな動作も手動だったり思考操作を用いて行わなければならないのが現状だ。

 

「操縦難易度を下げ、機体と衛士の橋渡しをするようなイメージだ」

 

「確かに帝国からは操縦系に関して改善しろとせっつかれてますからね」

 

「な、慣れればすごく使い勝手いいんだぞ」

 

隼に搭載されたのは思考操作を中心とした操縦系であり、イメージした動作をそのままそっくり機体へと出力してしまう。そのため慣れていないと動かしすぎたり、全く動かなかったりするのだ。

自社のテストパイロット達は同じ思考操作技術を搭載するMMUだとか、月で激戦を繰り広げた彗星のパイロットだったりするのであっさり乗りこなしていた。それを見て大丈夫だろとゴーサインを出した開発部も感覚が麻痺している。

 

「F-4の方が過敏に動きすぎないとは言われてますね、操作感はある程度マイルドに調整されているみたいです」

 

「流石だよな、兵器開発に関しての経験の差を見せつけられたよ」

 

F-4は思考制御が操縦に占める割合を減らしているのかなんなのか分からないが、結果として多少動きは硬いが動き過ぎるということは少なくなっている。兵器としてキチンと使えるラインに納めてきているのは感心するばかりだ。

衛士ごとに情報を蓄積しフィードバックすることで、乗れば乗るほど動かしやすくなるなど確実に完成度では上を行かれている。

 

「こっちも思考操縦の割合を下げられるようOSをアップデートしよう」

 

「橋渡しAIの早期実用化、必要かもしれませんね」

 

「米国仕様に合わせるのも考えたんだが、一番の問題はコックピットユニットが国際規格に準じてないことなんだよな。隼はそういうのが決まる前に試作機が出来てたから…」

 

日本国内でなら問題ないが、国外に輸出する際は米国のコックピットユニットを搭載出来るよう改修する必要がありそうだ。

原作において米国がコックピットに関しての技術をほぼ独占していたと言ってもよく、それを利用して他の戦術機を騙すことすら可能にする技術があったりするので、コックピット周りは自社生産が望ましいと思ったのだが…

必ずしも正解では無かったようだ、どうしたものか。

 

「取り敢えず操縦系は軍と協議して最適化、AIの方は今ある手札で色々やろう」

 

 

 




主人公の理想像は目的が違うだけで何かに似ているようです。

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