宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第九十三話 宇宙港解体騒ぎ

落着ユニットの捕獲という一大作戦が実行された訳だが、それと同時に発生した謎のサイバー攻撃によって宇宙は大混乱に陥った。放送衛星も乗っ取られ、数時間カルト宗教の勧誘動画が流れる有様だったことは記憶に新しいだろう。

 

「今回の事態に関しましては、関係各所と連携して調査と再発防止策の策定に努めていく所存であります」

 

「何故ここまでの被害拡大を許したのですか?」

 

「秋津島のセキュリティはどう言った体制だったんですかね!」

 

会見の会場はメディア業界から秋津島を引き摺り下ろそうとする者達によりごった返していたが、質問に答える社員達は辟易しつつも感情を顔には出していない。

 

「宗教団体に乗っ取られる程度のパソコンだったと言うことですね?」

 

そんな訳ないだろという言葉を飲み込み、宗教団体を隠れ蓑にした大規模な組織によるものである可能性が高いとだけ言う。

 

「結局乗っ取られたのには変わりませんよね、ありがとうございました」

 

システム担当者の頭に青筋が浮かぶが、それを両隣の社員が抑える。苦心して作り上げた放送システムは優秀で、あのイレギュラーさえなければ先進的かつ安定した素晴らしいものだったのだから、彼らの心中も察することが出来るというものだろう。

 

手塩にかけて育てた娘を目の前で吊し上げられて罵られているとも言える状況だ、そりゃキレる。

 

「お前ここで暴れりゃシステムも永久凍結だぞ!抑えろっての!」

 

「アイツら何も知らない癖に言いたい放題言いやがって、俺は揚げ足取る野郎は許せねぇんだよ!」

 

「AI載せた外骨格連れてこい、コイツ連行してくれ!」

 

 

「まあうん、放送システムに限らず宇宙のコンピュータ周りは暫く動かせないだろうな」

 

暴れそうな社員が裏から出てきた外骨格に連れていかれる様を見て冷や汗をかいていたのは社長と秘書だ。宇宙港で倒れるまで働いて、火事にも巻き込まれて文字通り死にかけていたため、病院にて同室のベッドから会見のテレビ中継を見ていた。

 

「試作艦も宇宙での試験は行えず仕舞い、滅茶苦茶ですよ」

 

「調査が進むにつれて分かるのは相手が悪かったってことばかり、本当に世代を超えた存在が敵に回ってるのは心底恐ろしいね」

 

衛星ネットワークは外部からの操作を受け難い形に変えるか、根本的な作り直しが必要になるだろう。汚染された衛星も調査が必要だろうし、今後暫くの放送は地上の施設に頼ることになる。

 

「端末の購入者に対しての謝罪と対応も長期戦になるぞ、上手いこと手を打たないと泥沼だ」

 

「国も動いてくれるみたいですが、まあ尾を引くでしょうね」

 

社員や関係者からのお見舞いで食べ切れないほどの果物が贈られた二人だったが、海外から来たものは大抵が自社製プラットホームの生産品だったことに引き攣った笑いを浮かべていた。過去ならば名産品として扱われていた品々は土地を失い、海の上で細々と作られている所まで落ちぶれているのだ。

 

「酒送って来た馬鹿は何処のどいつだ、入院中に飲めるかよ!」

 

「いやこれ相当な上物ですよ、恐らく贈答品がこれしか…」

 

環境の悪化に伴い、このような贈り物事情も変わりつつあるのだろう。重金属汚染は思いの外広がっているらしい、急激な気候変動も影響していることもあるだろうが。

 

「前言撤回、悪かった」

 

一口大に切られたリンゴを口に放り込み、テレビのチャンネルを切り替える。衛星ネットワークを利用していた他企業のサービスにも影響は広がっているらしく、報道番組はその他の話題ばかりだ。

 

「秋津島放送の方はどうしてる?」

 

「ことの顛末を現地の動画と解説付きで投稿したそうです」

 

「…えっ、あの大惨事の中を?」

 

その動画には緊迫した雰囲気が伝わるような映像が多く使用されていた。宇宙服のヘルメットにカメラがあることにより、まるでその場に居るかのような体験を視聴者にさせることが出来た。

 

「流石に編集でカットとぼかしは入れてますよ」

 

「いやそうじゃないが」

 

端末で動画の再生回数を確認すると既に100万回を超えており、そこまで多くないはずの利用者のことを考えると破格の数字だ。コメント欄は閉鎖されていたが、関連動画の方では議論が巻き起こっている。

加えてBETAの姿が明らかになってしまったこともあり、今回の事件に向けられる視線は少しづつ変わりつつあった。

 

「利用者に隠す訳にはいかないと言っていましたが」

 

良くも悪くも注目は集まっている、ならば目に見える実績を掲げて失態を相対的に薄れさせるしか無い。

 

「試作艦の命名式と試験飛行をやろう、システム周りの入れ替えと調査が終わるのを待つ必要があるがな」

 

「国の許可が必要ですが、いつまでも民間に隠し通せる訳ではありませんし交渉は出来ますね」

 

「着陸ユニットを確保した以上G元素はたんまりある、やるぞ」

 

この後に行われた民間人を交えての次世代艦の公表は驚きを持って迎えられ、その衝撃でもって悪評を拭い去った。結局のところ、今まで積み上げていた信頼があったからというのも大きいのだろう。

 

しかし強大な新兵器の登場というのは往々にして他国にも大きな影響を与えるもので、列強各国は着陸ユニットから分配されるG元素の到着を今か今かと待っているのだった。




投稿した解説動画が3万回ほど再生されました、やったぜ。
今ならもう戦術機って検索すれば、戦術機一挙紹介っていう自分の動画が一番前に来ますよ。

これは嬉しい。
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