試験場にて双眼鏡を覗くのは、オスカー中隊の衛士二人組だ。欧州にてハイヴから生還した英雄であり、前線を離れて後進の教育や兵器の試験などに励んでいる。
「オスカーに歩兵部隊が随伴してくれるのは欧州以来だな、母艦級を思い出すぜ」
「思い出したくもない、あれから補給機を自爆させる戦法が流行ったのは許してないからな」
「お前はそこんとこ厳しいよなぁ」
そう言う彼らの前で整列するのは秋津島開発の無人機達であり、戦車から歩兵までがAIで運用されている。戦術機との連携が行えるかどうかというのが現在の議題であり、そのために様々な機体が集められたと言うわけだ。
「戦車の105mm砲は遠距離から重レーザー級や要塞級を撃破出来る、戦術機じゃあ運用出来ない火砲を低リスクで運用出来れば助かるだろ?」
戦術機が手に持つ突撃砲にも120mm砲は装備されているが、ロケット推進式ということもあり精度や威力では戦車砲に及ばないのだ。
「いやでも戦車砲じゃあ突撃級は倒せな…」
そう言おうと思った隊員だが、ふと今まで乗っていた砲撃機のことを思い出した。その名は疾風、超電磁砲を運用する規格外の突撃級キラーだ。
「疾風が前線に居れば厄介な突撃級はもう撃破されてる、それを前提に車両も前に出すのか」
「その通り、邪魔者が居なくなれば105mmは大物に指向させられるってわけさ」
戦車の装弾数は戦術機に比べると少なく、マガジン交換による再装填なども行えない。多脚戦車は弾薬庫の交換により迅速な補給が行えるが、結局後方に下がる必要があるのは変わらないのだ。
そのため折角の大口径弾を36mm弾で倒せる戦車級や要撃級に使わせず、戦術機の攻撃が効き難い相手に使うことでリスクの高い接近戦を減らそうというのが軍の魂胆だ。
「超電磁砲は量産が進んでいるが常に充分な数が用意出来るわけじゃない、アイツの整備性がお世辞にも良くないのは欧州で思い知った」
「回路にかかる負荷が尋常じゃないからな、放熱不良を起こしたらパーツが歪むわ砲身は溶けるわで散々だぜ」
「過負荷状態での砲撃も場合によっては行う必要があるしな、超電磁砲の負担を既存の火砲で減らせるなら万々歳か」
欧州にて防衛戦に投入されてからと言うもの、圧倒的な突撃級撃破能力を示し続ける超電磁砲は国防の要と化していた。採用された当初こそは運用コストの高さに難を示していた欧州連合だったが、疾風はその火力で前線の被害を半分にして能力を示した。
「砲身も何も数回の出撃で駄目になる使い捨てだ、まあ戦術機と衛士をダース単位で失うより安上がりだがな」
防衛戦やら間引き作戦やらで受ける被害は馬鹿にならない、何せ矢面に立つ戦術機の損耗率は通常の作戦と遜色ないからだ。これが人類が大規模な攻勢に出るのが難しい理由であり、その現状を打破した超電磁砲に負担がかかるのは当たり前と言える。
「今じゃあ何処も超電磁砲の獲得に必死だからな、帝国は欧州以外に売るつもりはないらしいが」
「アレが世界に拡散されてたまるか、疾風に撃たれて死にたくないぞ俺は」
前線国がどうやって超電磁砲の恩恵に預かるかと言うと、国連を通じて疾風が派遣されて来るのを願うという方法くらいだ。その結果欧州と帝国の影響力は増しているようだが、その力を外交における当然の権利のように振り翳すのは如何なものかと彼らは感じていた。
「独占は仕方ないとはいえなぁ…」
「思う所はあるが、これ以上マシな策はないぞ」
オスカー中隊の撃震に追従して各種試験を熟す無人機を見て、コイツらは普及した後どうなるかと思いを馳せた。BETAから受けた被害は馬鹿にならず、人口は類を見ない速度で減り続けている。それに際して社長殿が無人兵器を開発し投入したことは素晴らしいと賞賛されるべきだが、人命として勘定されない大量の兵器が世に放たれたことは後世にどういった影響を与えるのか定かではない。
「もし運良くBETAとの戦いが終わったとする、だが残された兵器と減った国土は必ず火種になる」
「そういった懸念があるから社長は土地の汚染除去やら海上での食糧生産だったりにも手を広げているんだろうが、それで丸く収まるなら戦争なんて起きないって話だ」
秋津島開発が宇宙開発という夢を持ち続けているのは、戦後への意思表示でもあるのだろう。戦争の後に待つのは国家間による資源争奪戦と文明の停滞期ではなく、宇宙という新たな領域の開拓時代であると示しているのではないか?
「…身の振り方、今から考えておくべきかもな」
「今や俺達は後方勤務だからな、考え事の最中にレーザーで焼け死ぬ心配は無いわけだ」
教導やら試験やらで内地でも忙しい日々を送る彼らだが、見て来た物が多いばかりに様々な懸念を抱いているようだ。
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