宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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閑話 大抵のことは火力でなんとかできる

「多脚戦車のファミリー化?」

 

「意外と評判が良いんですよ、単純な性能以外にも空調とか振動とか」

 

「そりゃ元は宇宙開拓用だからな、搭乗者の負担軽減は滅茶苦茶考えてあるぞ」

 

戦術機で培った電磁伸縮炭素帯による制動技術は破格の安定性を車両にもたらしており、行進間射撃の精度は最新鋭の無限軌道式に劣らないとの評価を得ている。突撃級と並走出来る速力を持ちながらも操縦士にかかる負担は最小限で、長時間乗り続けても問題ないように工夫が凝らされている。

 

「まあ戦術機と同様の感覚欺瞞機能で神経を騙してるのが大きいんだけどな、ファミリーと言ってもどんなタイプが欲しいんだ?」

 

「アレをどうして自走砲にしないんだと関係各所からお便りが届きました」

 

「既存の車輌と比べて関節が存在するため、砲撃時の衝撃を常に受け続けるという自走砲の特性と多脚車両という形態は適性が低いと判断しました…って言っといてくれ」

 

確かに陣地の転換や撤退、後退時に多脚戦車の機動力が求められるのも分かる。だが向き不向きというのはあるのだ、それに全ての火砲を自走化しているわけではあるまい。

 

「重量と車体サイズの関係で120mm砲の搭載を諦めるくらいには積載量が低いんだぞ、榴弾砲積むのには向いてないぞ」

 

「車体も共有出来ない完全な新規設計になってしまいますか」

 

「ファミリー化とは言わんよな、別物だし」

 

現在多脚戦車は105mm砲を運用する装輪戦車型、35mm機関砲を二門搭載する自走高射砲型、自衛用の20mm機関砲を持ち様々な偵察機材を搭載した偵察車両型の三種が運用されている。偵察車両型はBETAの地下侵攻探知に有効だとして各戦線に投入、機材を載せ替えて指揮車両として使われることもあるそうだ。

 

「まあなんだ、載せられて迫撃砲だな」

 

「射程が足りないのでは、それに滞空時間や弾道を考えると光線級から容易に迎撃されてしまいますよ」

 

「そうなんだよ、だから戦術機と一緒に前線に出るような動きでもしない限り無理…」

 

そう言った瞬間、オスカー中隊が研究中の諸兵科連合戦術を思い出した。超電磁砲の登場により車両キラーだった突撃級の今はというと、横並びになって突撃してくる所を撃たれるがために骸で万里の長城を作るという有様だった。

 

「いやアリなのか、状況が変わった今なら」

 

「えぇ」

 

「戦術機にわざわざ重たい多目的誘導弾を載せなくても、迫撃砲による支援砲撃が受けられるのは良くないか?」

 

精度は低いためピンポイントでの砲撃支援というわけにはいかないが、榴弾砲にはない発射速度は大きな魅力だ。

 

「小型種の浸透阻止にも小回りの効く砲撃手は必要かもしれませんが、そう上手く行きますかね」

 

「光線級の優先順位は一番が飛翔体だ、安い迫撃砲弾が戦術機の身代わりになるなら有り難い話だろ」

 

まあ取り敢えず上の奴らを黙らせるために作ってみようということになり、社長が設計図を出力した。迫撃砲弾の装填機構を如何するかという問題があったが、機械歩兵を流用すればいいとして簡略化に成功した。

 

「人の代わりに人の形した機械乗せりゃいいのよ、元々人間の手で運用されて来たんだからアンドロイドに出来ない訳がねぇ」

 

「滅茶苦茶単純な方法で解決するとは、大丈夫なんですかね?」

 

「専用の機械作る方がランニングコスト嵩むぞ、帝国と欧州は機械歩兵を採用するって決めてるし使い回せる方が得だろ」

 

というわけで、榴弾砲を乗せられるかボケという開発陣の想いを込めた自走迫撃砲型は一瞬で試作車両が出来上がった。

 

 

「なんか量産しろって言ってますよ」

 

「高評価じゃねぇか!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「進化を続ける戦術機に比べて歩兵用の装備は停滞してましたから、登場した時から多脚車両は前線で大歓迎されてたんですよ?」

 

「あー、信頼と実績があると」

 

費用対効果と言っては語弊があるが、今日に至るまで発達を続けてきた既存の兵器を代替し得る対BETA兵器というのは今まで開発されて来なかった。戦術機という存在が大き過ぎたというのもあったに違いないが、補給の複雑化というのも理由の一つなのではないだろうか。

 

「戦術機はジェット燃料とロケット燃料を使う上に武装は使い捨て、消費する弾薬も独自規格な上に一度の出撃で数万発を消費しますからね。これ以上兵器を増やすのは大変なんですよ」

 

「その点コイツらは既存の兵器と戦術機技術の合いの子、まだマシか」

 

「消費する弾薬が既存の兵器と同じことが大きいのかもしれませんね」

 

多脚戦車は走破能力で無限軌道に劣るとされているが、タイヤを固定して歩行することで無限軌道ですら乗り越えられない障害物を突破出来る。装甲を廃しているため車体が軽くほとんどの橋を渡ることができ、俯角や仰角も足を使うことで大きく広げられる。

 

「BETAとの市街戦において多脚戦車は歩兵と随伴しての作戦で大きな戦果をあげています、長らく現れなかった新兵器の登場に歩兵達の士気は鰻登りだとか」

 

「最近は機械歩兵も作ったしな、意図せずに軍からの支持を集めてるわけか」

 

こうして制式化された自走迫撃砲は小型種の掃討を主任務にしつつも、その投射能力から前進する戦術機や機甲部隊の支援を務めるようになる。




秋津島の多脚車両カタログ見ました?
早めにライセンスを購入しておいた方がいいですよ、帝国工場の完成品は数年先まで予約済みらしいので。
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