確保した着陸ユニットを覆っていた研究ステーションだが、一部の区画が穴だらけになった上吹っ飛ぶという被害を受けていた。それはオルタネイティヴ3計画に基づき、ある実験が行われたことに起因する。
「あ号と話をしようとしたのか、それでこのザマとは…」
「新種のことを勝手にそう呼ぶのやめましょうよ社長」
BETA捕獲用の低代謝酵素を利用して弱体化させていた未確認BETAだったが、実験中に突如大暴れを始めたのでS11により爆破処分となった。原作ラスボスは伊達ではない、戦闘用の彗星まで引っ張り出される事態になったようだった。
「この区画は計画の権限で接収されてましたから、運良く社員の被害は最小限で済みましたけどね」
バラバラ死体となったサンプルは現在全力で回収されている、大量の肉片をかき集めるのは良いが第三計画の犠牲者も混ざっているので後々問題になりそうだ。
「だが計画の人間は用意してきたESP能力者を含めて100人は確実に死んでるぜ、閉所でのS11同時起爆とは思い切ったよな」
その衝撃によりステーションの軌道がズレたり、施設全体が丸ごと歪むという大惨事を引き起こした。まあ爆破したBETA、重頭脳級の能力を考えると最善だったと言えるのだが。
「オルタネイティヴ3は元々停滞していましたが、今回の失敗で更に立場が弱くなりそうです」
「レコーダーの内容によっては評価が逆転するかもな、まあ来年には事態が動くとは思うが」
「来年ですか?」
「とある大天才が居るんでね、残念ながら所属の違いがあるんで行えた支援は少ないけど」
秋津島開発の研究室にしか無い実験機材を使わせたり、極秘レベルの資料を見せておいて支援が少なかったと言う社長の感覚がまあおかしいのだが、その天才にはいつからか目をつけていたようだ。
「因果がどうとかって言ってた人でしたっけ、社長がよく話についていけるなと思いましたが」
「俺はまあざっくりとは知ってたからな、それに今後の捜査には彼女の手も借りたいから恩は売りたかったんだ」
秋津島開発への攻撃に使われたのは00ユニットだと考えているため、犯人を追い詰めるためにも専門家の手を借りたいのだ。
「で、G元素に被害は?」
「問題ありません、結晶が割れても安定したままだとかで」
「大人しいもんだな、俺達もこれくらい自由に扱えるようになりたいもんだが」
今回の視察は本来ならG元素の採掘開始に合わせたものになるはずだったが、こんなことが起きたために復旧現場の視察になってしまった。とは言っても作業を邪魔するわけにはいかないため、別室にて待機中というわけだ。
「あの未確認BETAに関しての調査がある程度進んでたのが不幸中の幸いか、アイツらも専門家だしな」
「既存のBETAとは違う完全な別種で、ESP能力者との交信の結果知能を有することが分かったそうですが…」
「その対話の後はこのザマだ、レコーダーが回収出来て本当に良かったよ」
第三計画の調査にて判明していたのは、既存のBETAに知能と言えるものはなく機械に近いということだ。つまりあの個体は今まで確認されたBETAの中で唯一知能を持ち、司令塔としての役割を担う上位種なのではないかと仮説を立てることが出来る。
「欧州にて制圧したハイヴの新種とは似て非なる存在ですね、青い発光というのは共通していますから何か関係はありそうですが」
「更なる研究のためにはハイヴ最奥に居る"仮称反応炉"君を無傷で捕まえる必要があるわけだ、今度はハイヴ内の全BETA排除が作戦目標になるぞ」
「被害が尋常ではなくなりますよ、前回ですら連隊規模の戦術機を失ったんです」
「一国の弾薬備蓄量を上回る弾薬と同時にな、俺達は根本的に戦い方を変える必要がある」
原作でも言われていたML機関搭載兵器によるハイヴ攻略だが、被害を大きく減らせるという利点がある。なにせ地上に居るBETAをまとめて荷電粒子砲で吹っ飛ばせば良いのだ、そして数を減らした後で突入して最奥の反応炉を破壊すれば攻略完了だ。
「荷電粒子砲で敵を一気に倒すというのは分かりますけど、ハイヴ内にまでは船のサイズでは追従できませんね」
「XGシリーズを完成させられていれば突入も可能だったが、技術力が足りなかったな」
試作艦のような船型は飛ばして使うには非合理的と言わざるを得ないが、各種兵装を同時に運用する大型兵器を完成させるに当たって参考に出来るのがこれくらいだった。XGシリーズのような空中要塞はある意味理想形の一つと言えるが、残念ながらアレに載せられるほどの演算処理能力と小型化の両立が難しい。
「もしこの個体が仮説通り司令塔である場合、最も居る可能性が高いのはもしや…」
「オリジナルハイヴだ、人類勝利の道筋がやっと見え始めたな」
俗に言う終盤突入ってヤツです。