宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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閑話 BETA戦線、現状報告 その2

目的地まではまだ時間がある、本題に入るべく次のページを見た。複数の調査員が得た情報を分析、役職や階級に応じて傾向を分析してある。

 

「衛士からの評価は飛び抜けてますね」

 

『無人機による衛士の救助システムを実装した時があっただろ、アレが大きかった』

 

「衛士がわざわざ外に出なくてもいいってヤツですね」

 

『最近は手の空いた多脚車輌やら補給機やらが駆けつけて、ご丁寧に衛士を後方まで運んでくれるそうだ』

 

死の8分という概念があったのはどれだけ昔のことだろうか、衛士の生存率は飛躍的に上昇している。1980年代に行われた対BETA戦における大変革、重金属雲下でも機能する強固なデータリンクが最初の転換点だろう。

 

『戦術機へのAI搭載でパニックに陥った衛士を仕方なく射殺するなんて事態も無くなった、極度の緊張で高く飛び過ぎて死ぬってことも減ったな』

 

「つまり秋津島が提供して来た戦術機技術は、常に一定以上の支持を獲得して来たと」

 

『欧州の戦術機開発が進まない理由の一端だろうな、秋津島製の機体が神格化されちまってる。最近出て来た疾風だってそうだ、ありゃ兵士の希望だぜ?』

 

要撃級に殴られても動くだとか、AL弾が目の前で迎撃されても通信が途切れなかっただとか、気絶して目を覚ましたらAIが機体を後方に下げてくれていただとか、兎に角九死に一生を得たような話が死ぬほど出てくる。

まあ普通なら死ぬような状況で死んでないから噂になるというのは分かるが、バリエーションが些か豊富過ぎる。

 

『社長に足を向けて寝られないと思ってるのは確かだろうな、最近はSPFSSの配備が始まっただろ?』

 

「新型の操縦補助AIですね、それがどうかしました?」

 

『マトモに会話出来るようになったんで、精神的に依存してるヤツが滅茶苦茶増えた。まあ戦場ではよくあることなんだろうが、ちょっと気をつけた方が良いぞ』

 

「…報告しときます」

 

SPFSSは帝国軍に納入された時ですら大きな話題になっていた、特にその性能に関してだ。一時的に操縦を行なったりするのは勿論、脅威の探知精度が以前とは比較にならないそうだ。

 

『アレを載せてると不意打ちで死ぬことがないらしい、だもんで場慣れしてない新人へ優先的に回してるんだとよ』

 

「教育体制も充実し始めてますね、前線の衛士不足は解消の傾向にあると言うことですか?」

 

『人が死に過ぎて足りなくなるっていう今までの状況からは疾風の配備が決め手になって脱したな、今は増産された新型機に乗れる衛士が足りんらしい』

 

「嬉しい悲鳴ですね、状況は好転しているようで」

 

そしてここまで読んで思ったことがある、コレ帝国じゃなくて秋津島への意見ばっかりだ。

 

「あの、これ欧州から見た帝国と秋津島に関してのレポートですよね」

 

『ああ』

 

「なんで帝国の話がほとんど無いんですか」

 

確かに秋津島開発に比べて対外的に何かしたかと言われると、少し困ることはあるが。

 

『いやその、オスカー居るだろ』

 

「えぇ」

 

『アイツらが化け物みたいに強かったからな、尾鰭がついて帝国軍は全員長刀構えて突撃級を真っ二つにする野郎ばかりだと思われてる。つまりなんというか、インパクトの差があってな』

 

ちなみにスーパーカーボン製の長刀は、理論上突撃級の装甲を切断可能である。あくまで理論上の話だが、AIの補助を受けたオスカーの衛士が実際に成功させたという話が非公式だがあるらしい。

 

オスカーが強いというのを曲がりなりにも分析出来るのは衛士が育っている証左であり、それには前述した生存率の向上もあるのだろう。他に要因を挙げるとすれば、他の世界では死んでいるという因果に晒されていないからだろうか?

 

「…本当だ、帝国じゃなくて帝国軍のページが分厚い」

 

『前線の一兵士が思う他国のことって、やっぱり派遣されて来たヤツの感想になりがちだからな』

 

「自国のことに手一杯でしょうしね、まあ分かりますけど」

 

階級が上がれば他国にも目を向ける必要が出てくるだろうが、全ての兵士にそこまでの視野を持ち続けろとは言えない。

 

「次は歩兵や戦車兵など、既存の兵科ですか」

 

『そこも秋津島の恩恵を大いに受けたな、最近は開発が進んでるだろ?』

 

「国連でも試験中という機械歩兵に多脚戦車、無人化された強化外骨格と話題に事欠きませんね」

 

『華の兵科と言えば衛士、主役は戦術機だ。しかし最近は多脚戦車の配備が進むに連れて戦果が大きくなっている、機動性の向上で被害が減ったのも大きい』

 

既存の兵器で戦うことを強いられて来た彼らにとって、突如やって来た多脚戦車は特に可愛がられたらしい。秋津島はコンテナの次に戦車にも足を生やしたと当時は言われたが、その性能を見てからは着々と人気を高めて行ったようだ。

 

『BETAの残骸が邪魔でも、足を使って乗り越えられるのが一番の利点らしい』

 

「帝国の研究でも同様の報告を受けていますね」

 

『装甲と火力じゃあレオパルト2に敵わんが、速力が段違いだからな』

 

対BETA戦用にある程度の仕様変更が行われた欧州の主力戦車だが、彼らは砲兵隊を守るという任務を勤めているらしい。

 

『脚部の接地用スパイクで小型種は踏み潰せるって話だ』

 

「それは想定された使い方なんですかね」

 

『わからん…』

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