宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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頑張れ帝国軍


第九十九話 派兵と補給と船団と

「大ニュースです。帝国が正式に大陸派兵を決定、国民に公表しました」

 

「遂にか」

 

「これに伴い浮遊艦イザナギは正式に帝国海軍隷下となります、出向している社員も少数を除き帰還しました」

 

年が明けたというのに、正月気分では居られないようだ。今年で五歳になる息子とゆっくり過ごす時間が欲しい限りだが、無理を言って正月休みを貰った以上は働かなければ。

 

「イザナギの艤装は?」

 

「艦載用の大口径超電磁砲は期待されていた性能を発揮しています、対地攻撃用のS-11弾頭弾は現在積み込み作業中とのこと」

 

「あの船は港に浮かべられない、大陸では充分な補給と修理が受けられるかは少々疑問だがな」

 

「機関出力に余裕があるようで、対レーザー近接防御システムを増設して対光線級能力を底上げして対応する気のようです」

 

「そもそもの損害を減らす、ということか」

 

対レーザー近接防御システム、複雑で長ったらしい名前だが要は無人化された機関砲だ。BETAが居ない世界ではCIWSと呼ばれるそれを、この世界では光線級撃破のために用いている。照射元を即座に探知、撃破するという優れたシステムだ。

 

「上手くいけばオリジナルハイヴ攻略への足がかりになります。大陸の戦況を変えられるのは現状帝国しか居ないことも考えると、これは重要な作戦になりそうですね」

 

「失敗したらそれこそ日本列島にBETAが来るさ、多少余裕があると言っても失える兵力なんて極東には無い」

 

列島は縦に長過ぎるのだ、それ故に幾ら戦力を集めても薄く広くしか守れない。疎開により前線に近い市街地を放棄、防衛時の効率化を図っては居るが規模によっては食い破られかねない。

 

「超電磁砲も上陸阻止には有効だが、起伏の激しい地域では一気に効力が弱まる。入り込まれれば大問題だ、高速道路網の構築で多脚車両の機動性は活かせるようになったのがせめてもの救いだがな」

 

「どれだけの時間と予算を投じて政府が防衛計画を練って来たかはご存知でしょうに、聞かれれば面倒なことになりますよ」

 

「頼みの綱の艦隊も天候には勝てない、状況が悪けりゃ帝都すら危ういさ」

 

原作では一瞬の内に日本列島の下半分を失っている、あの時侵攻を体験した者は全員が驚愕しただろう。

 

「そのためにも大陸に行った部隊には絶対に生還して貰わないと困る、補給物資は用意したがどうなるか」

 

補給路に問題を抱える大陸で戦うために、帝国は独自の輜重部隊を使うようだ。地面効果翼機によるピストン輸送とMMUによる補給基地の早期構築、補給機による迅速かつ正確な部隊への合流を三つの軸に計画を立てていると聞く。

 

「補給基地や砲兵隊の護衛に大量の多脚車輌が必要でしたから、新たに自動工場を整備していて助かりましたね」

 

「国外の生産インフラ整備に相乗りさせて貰っただけだ、今は一両でも多くの車輌と弾薬が必要だからな」

 

開戦初期に押さえた武器弾薬の製造所は未だに傘下のままだ、超電磁砲の弾頭や軌道爆撃用のAL弾なども彼らが手がけてくれている。

 

「国連軍はどうなってる、向こうも色々大変だろうしな」

 

「帝国軍が補給体制を見直すということで、それに帯同する形で補給路の再編を行うそうです。中華戦線においては物資の中抜きが横行しており、前線は地獄だと」

 

「それも今日までだ、目にものを見せてやろう」

 

 

東アジア戦線への派兵を行うため、帝国は物資の輸送と集積を既に始めていた。借り受けた港の一角では輸送船が列を成し、MMUが拡張作業に従事している。

 

「このコンテナは?」

 

「開けてみろ、後は勝手に動くさ」

 

そう言われた作業員がコンテナを開くと、脚部を折り畳んだ多脚車輌が現れた。もう一人がリモコンを向けると車輌のシステムが立ち上がり、勝手に港を出て行った。

 

「…行っちゃいましたけど」

 

「復旧したGPS衛星のお陰で勝手に移動してくれるのさ、集結地点に集まってから仲間と一緒に基地に向かう筈だ」

 

空になったコンテナをトレーラーが片付け、クレーンが輸送船に載せ直して出港させる。自動工場で製造された多脚車輌は片端からこの戦線に送られているらしく、本土でも見たことがない数が集結していた。

 

「無人車輌なら失っても再建は容易だからな、軍の連中は戦死者を出したくないらしい」

 

「それは、良いことなんですよね?」

 

「そのうち戦場から人は居なくなるんじゃないか、俺達も職を失うかもな」

 

MMUによって増設される帝国軍用の港湾施設は設備の殆どが自動化される予定であり、人間の作業員はごく少数で済む。撤退時に避難を要する人員を減らすことで、逃げ遅れることを防ぐ算段だ。

 

「無人のクレーンにコンテナ用トレーラー、歌を歌う機能を付けた奴は相当イカれてるらしいな」

 

何故かメリーさんのヒツジをスピーカーから鳴らしながら走行するコンテナ輸送車輌が闊歩し、有人の車輌は見当たらない。人が操作しているとしても司令室からの遠隔制御であり、完全に稼働した暁には爆撃されようとも人的被害がゼロという不思議な港が出来上がる。

 

「国連軍の船も来てますよね、どれだけの規模の作戦になるんでしょうか」

 

「ニュースになってた秋津島の浮遊艦も横須賀から出るそうだ、機甲師団も明日には到着するとなると…本当に反抗作戦になるわけだ」

 

「間引きによる戦線の維持ではなく、帝国軍は打って出ると」

 

「超電磁砲のスペアパーツがアホみたいに積まれてる、これを使い切ると考えると恐ろしいことになるぞ?」

 

一週間後には彼らも外に出て働く必要は無くなる、司令室から無人車輌を管制する仕事に移るのだ。だからこうして肉眼で荷物を確認することも減るだろう、想像し難い話だ。

 

「いかん、こんなことを話していたらスパイと間違えられるぞ」

 

「そうでしたね、もうこの手の話はやめましょう」

 

「無人機に聞かれているかもしれない、アイツら戦術機のAIみたいに愛想良く話してくれねぇしな」

 

無人車輌はメリーさんのヒツジ以外には、Beepと音質の悪い電子音を鳴らすのみである。

 




実際に無人化されたコンテナターミナル名古屋港には存在したりします、メリーさんのヒツジを流しているのも本当です。
何故その選曲なんだ、気になる。
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