修正入りまァーす!
この話を最新話としたまま、間に新しい話を挿入して打開します。
「ここが中国か、いやはや真っ平にされちゃってまぁ…」
衛星写真とレーダー走査の結果、前線のすぐ背後まで高低差が消え始めている。ハイヴが多く、しかも近いのが原因だろうか。
「帝国軍の師団が集結したと言っても危険な場です、すぐに帰りますよ」
「前線の社員を労ってこそ社長だろ、まあ行っただけで有り難いと言われるのは少し分からんが」
「本当に今の地位に無頓着ですね、もう少し貪欲になって下さいよ」
秋津島開発が有する輸送船団から大型輸送機に至るまで、最近は常に稼働中だ。最新鋭機を載せたマスドライバーは各地の国連軍や西側諸国に向けてコンテナを打ち出し、無人車輌は兵站を支えている。
「日本海に面する大連がBETA侵攻に晒されている現状、この港もいつ襲われるか分かったもんじゃない」
「それが分かってるなら、普通こんな最前線に来ませんよね」
危険性を理解しているのか分からない自分の態度に秘書は呆れている。
「まあなんだ、見たい人達が居てな」
原作と比べて様々な変化が訪れたこの世界だが、帝国は迫るBETAに対抗するために軍拡を続けている。徴兵制度や教育体制の変化など、ここばかりは元の世界と同じと言える。
「新人でも機体はAI搭載の隼改、撃震で送り出さなくて済んだのは本当に良かったよ」
「第一世代機の代替が殆ど終わったのは幸運でしたね、主力部隊には早くも不知火の姿があることを考えると破格の戦力です」
つまりだ、この地に神宮司まりも氏が居る可能性は高い。女性の徴兵はまだ始まって居ないが、彼女は志願して軍に入隊して来てしまうからだ。
「破格、ねぇ…」
原作において主人公の教官として登場する彼女は、場合によっては凄惨な死を遂げる。長い訓練を終えて任官し、部隊長として大陸で実戦を経験するのだが部隊は全滅してしまう。この世界で彼女が初陣を生き抜けない可能性も大いにあるわけだ。
「社員達の顔を見た後は帝国軍の方にも行かれるんでしょう、港に護衛機が到着してますよ」
「燃料を割いてもらって申し訳ないな、少し我儘を言ったのかもしれん」
「相手が一般的な帝国国民なら喜びますよ、国家首相よりも知名度が高いんですから」
「はは、どうだか」
相乗りさせて貰った輸送船がコンテナの荷下ろしを始めたのを見て、多脚車輌に乗り込んだ。周囲は中隊規模の戦術機が固めており、半数が盾を装備している。
「空気が違いますね、なんとも」
「ここが最前線ってわけだ、遂にここまで来てしまった」
この世界で帝国軍が新兵をここに連れて来ているかは分からないが、恐らく彼女は居るだろう。
ー
帝国軍が建設途中の基地に来たのは、秋津島開発の社長だった。部隊の誰もが知っている人物であり、貴重な最新鋭機の中隊に出撃が命じられた理由も分かるというものだ。
「ご飯の味はどう?」
「本国で食べたものと遜色ありません、むしろ美味しいくらいです」
「そりゃ良かった」
短いスピーチがあった際、彼はしきりに兵士達の顔を見ていた。その中で女性が珍しいのか、私を見つけた際には目を見開いたかのように見えた。
「…話を聞いて貰ってすまないね神宮司さん、ちょっと思うところがあったものだから」
話が終わった後、彼の護衛と思わしき人物に伝えられてこの場に来た。設置された自販機に彼が社員証を翳すと硬貨を入れなくとも飲み物が吐き出され、彼と私の手には何の変哲もない缶ジュースが握られている。
「思うところ、といいますと」
彼は黙った、なんと答えるか分かりやすく悩んでいる。ニュースやテレビで取り上げられることに事欠かない目の前の人物は、とても語られているような超人だとは思えない仕草を見せている。
「君は帝国で何か感じたことはあるか、身近に感じたことで構わない」
少し答え難い質問だ。最近は部隊員、取り分け新井のような単純な人間と言葉をぶつけ合うばかりで、このような会話を行う機会は久しく訪れなかった。
「身近と言いますと、教育体制が変わりましたね」
「…ああ」
「教育過程も大きく軍事色が強まったのを覚えています、変化というとここからでしょうか」
身の上話というのはあまり良くないかとも思ったが、その手の話題に拒否感を示すタイプではないと思い話すことにした。
「1979年の教育基本法改正か、確かに大きな出来事だった」
「はっきりと覚えておられるのですね」
「そりゃあね、大の大人が何も出来ないんで不甲斐ないばかりだったよ」
BETAと戦うために今までの教育は書き換えられ、優秀な人材を抽出するための体制が敷かれた。優秀な人材というのは衛士のことであり、その衛士が乗る機体を作っていたのが彼ら秋津島開発だ。
関係を考えれば複雑な感情を抱くのは無理はない。国への忠義を示し続けているとも取れる数々の功績を見て現在の体制に少なからず肯定的な人物なのだろうかとも考えては居たが、そうではないらしい。
「教師になろうかとも思ったことはあったのですが、心境の変化がありまして」
昔のことを思い出したのか険しい顔になった彼に、取り敢えず話の続きとして当時のことを語った。
「教師を目指して居たのかい、それではあの法改正はさぞ大きな事件だっただろうね」
するとそれを聞いた彼は大いに嬉しそうな顔をして、何度も頷いた。何がそこまで彼の心に響いたのかは分からないが、兎に角分かりやすい反応を返してくれる。
「でも人もAIも育てることで一人前になる、優秀な教育者というのはいつの時代も必要だよ」
そのAIに人間の教師が負ける時代もすぐ近くに来ていそうだが、作った本人はそう感じては居ないらしい。
「AI技術はBETA侵攻が始まる以前と比べて飛躍的に進化しています、いつかは人間を超えてしまうのではと感じていますが」
「その可能性はあるね。個人的には追い越してしまうよりも、肩を並べて一緒に進んで欲しいと考えてる」
開発の第一人者である彼は一般論とは違う方向性を持っているようだった。
「人も機械も同じように生きるようになるということですか」
「なんというかその、相互理解ってヤツだよ。SPFSSだってそう、会話を通して人のことを知って絆を深めていくようになってる」
「相互理解…ですか」
「新しい技術だからね、昨日の今日で仲間として認めろっていうのは無理だ。でも彼らのことを詳しく知って貰えば、そう一側面ばかりを見て怖がられることも無くなる」
昔大きな影響を受けた人物の言葉を思い出す内容だ。中等学校の英語教師だった彼は少々哲学的な授業を行うことで知られていたが、内容は多くの者が感銘を受ける程だった。
相手を知ることで相互理解は深まり、疑心暗鬼は解消される。その言葉と同じように、目の前の人物は新たな存在の今後が良きものとなるように願っている。
「戦後はAI達も戦争ではなく日常で生きることになる、問題はその時さ」
「AIにも学校が必要になるというわけですか」
「学生は戦車と外骨格が中心になるけどね」
たった数分の会話だったが、時間になったようで彼は護衛に連れられこの場を後にした。結局飲まなかったらしいジュース缶をこちらに渡し、あっという間に居なくなってしまったのだ。
雲の上の存在が急に現れ、そして急に消えた。ほんの一瞬の出来事だったが、この数分で彼の印象は大きく変わった。差し詰め完全無欠の大天才から、分かりやすい表情を見せる陽気な男性と言ったところだろうか?
今回の時空間異常に関して
2年時間をすっ飛ばしてしまうというミスが確認されました、誠に申し訳ございません。補填として以下のアイテムを送らせていただきます。
疾風(中期生産型)×2
超電磁砲×2
G元素×5
補給コンテナ×20
ドロップタンク×20