最新話を読もうとしても毎回第××話が表示されるのは煩わしいと思いますし、時系列が多少前後しますがお許しを。詫び石配っときます。
帝国軍の戦術機というと隼シリーズが有名だ。既に撃震を代替し、多くの部隊では第二世代機である隼改が装備されている。
「隼改も旧隼に次いで長生きだよな、試作機が完成したのは1986年だったか?」
「もう五年前の機体になりますね、それ故に初期型と最新型では中々の差があるようです」
「特に内装は別物だな、跳躍ユニットも載せ替えてるんだっけ?」
大陸に送られるのは殆ど新しい型の機体だ、後は近代化改修を施されたために性能面では遜色ない初期型が混ざっている。大量に輸出された隼改は既に旧隼以上の輸出機数を誇り、人類の主力機を塗り替えんばかりの勢いだ。
「第三世代機は高過ぎて、第二世代機はこれ以上の性能向上ではパフォーマンスよりもコストが上回る。ソフト面での改良がいいとこだな」
「我々が疾風と隼改を作って以降新型機を全く発表していないのは、出したとしても売れる気配があまりしないからですしね」
戦術機の製造ラインをこれ以上増やすのは悪手であり、運用機を増やせば負担も増える。砲撃機である疾風の後継は開発が続けられているが、やはり超電磁砲が未熟である現状では機体の性能向上は必ずしも戦果の拡大には繋がらない。
「多脚戦車が売れてるのは助かるが、色々と要望が届く機体のアップデートを渋るのは前線に悪い」
「疾風は機体よりも武装の改修が優先されてますし、ML機関の研究開発に人手を取られているのが痛いですね」
そう、秋津島の戦術機開発は長らく停滞しているのである。
SPFSSなどAI技術の実用化に伴うソフト面の大改修、オプション装備の無人機など大きな技術革新を産んではいるが、機体自体は何年も前から使い回しているのが現状だ。
「戦術機の抜本的な改修か、設計も古くなって来ただろうし見直す時期かもな」
「そうは言いましても、隼改の製造は我々ではなく国内三社が担当していますから簡単には行きませんよ」
「上に話を通したとしても費用対効果やら予算不足、製造ライン変更の手間を考えると…却下されるのは確実か」
「もう秋津島だけで作っているわけではないんです、少しやるせない気持ちはありますが諦めましょう」
秘書の言葉に彼はそうだなと思いつつ、徐にPCのマウスに手を伸ばした。今は無理でもいつかは改修が必要になる筈だ、その時のために改修案を幾つか出力しておこう。
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あれから数ヶ月後、社長と秘書は軍から回されて来た資料に目を通していた。
「…F-15E?」
「米国のDRTSF計画で採用されると噂の機体だ、対抗馬はF-16XL」
「それがどうして我々の耳に入るんです、米国の戦術機事情は確かに重要な状況ですけども」
米国が採用したF-22だが、G弾の実用化により存在が危ぶまれ量産が進まない…筈だった。この世界においてはG弾の危険性が世に知らしめられ、暴走事件においても衛星軌道壊滅一歩手前にまで迫った存在であることから、今のところ表立って使おうとする動きは無い。
「米国は戦術機が足らんらしい、派兵を行う身としては死活問題だな」
「…例のステルス機は滅茶苦茶な高コストだとは聞いていましたが、そこまでだとは」
「だから既存の機体を最新鋭機の技術を流用して改修、総合的な戦力向上に務めるらしい」
来るべきハイヴ攻略戦において功績を挙げ、他国に渡るG元素の量を減らそうという思惑もあるに違いない。G弾の運用計画が白紙になった今、ハイヴ攻略には依然として大量の戦術機が必要なのだ。
「それで私達に何をしろと言って来ているんです?」
「隼改の大規模改修だとよ。F-15は元々隼改よりも性能が上だったから、数の上の主力機で性能差が離れるのは良くないと感じているらしい」
大陸派兵で多くの戦術機が失われることが想定されているため、減った分を補填する機体は新しくしておこうという計画だろうか。衛士の生存率が上昇したのは確かだが、機体の損傷が激しいというのもまた事実だ。
「大陸での戦闘はハイヴの数を考えれば長期戦になるのは明らかだ、今のうちに機体更新を進めるってのは有効な手だな」
「確かに機体の損耗率は馬鹿になりませんからね…」
要撃級に殴られても動くと評判の隼シリーズだが、そんなことをされれば駆動系もフレームも無事では済まない。恐らく当たりどころが良くない限り、使えるパーツを剥ぎ取ってスクラップ行きになるだろう。
「差し詰め隼後期生産型、或いは隼改二って所か?」
「旧隼とは最早別物なのに、名前だけは継承するんですね」
「ネームバリューだよ、名前変えたら売れなくなりそうで怖い」
予め出力した改修案は隼改担当の部門に送っていたため、設計は滞りなく進んだ。大陸での反抗作戦で必要とされる長躯侵攻能力を隼改は跳躍ユニットに装備する増槽で確保しているため、増槽を必要としない形に変えようということになった。
「脚部の燃料タンクを拡張、設計は不知火を参考にさせて貰った」
「空気抵抗を意識した形状に変更したんですか?」
「若干な、そのまま太くするよりはマシって程度だが」
空力を利用するためには機体の全身をそれ専用の形へと作り変えなくてはならないが、多少空気抵抗を減らす程度なら問題ない。
「跳躍ユニットは量産と改良が今一番進んでる疾風のを流用する、まさかあのエンジンがここまでの傑作機になるとは思わなかったぞ」
「不知火の物と比べれば少し見劣りするとは言われますが、コストを含めて考えると最も優秀と言い切れるレベルですから」
「他には主機である燃料電池も新型に入れ替えて、センサ類も色々と弄る必要があったから装甲の形状も少し変わってる」
隼改の電子部品は吹雪にも使われるほど優秀だが、技術が進んだことで更なる高みを目指せるようになった。特にSPFSSという全センサの情報をリアルタイムで解析する化け物AIが搭載されたことで、アビオニクスの重要性は日に日に増していた。
「生存性向上のためには敵の早期発見が最も有効だ、不意打ちを喰らったら死ぬからな」
吹雪の開発で得られた知見を活かして機体の内部設計を変更、機動力の強化を図る。元々光ファイバーによるOBLを採用していたことで第三世代機に迫る性能をスペック上では発揮可能、順当に開発が進めば2.5世代機相当の機体に生まれ変わる筈だ。
「F-22はF-15に、吹雪は隼改に力を与えるか。なんとも数奇な運命だな」
こうして隼改二はいつも通りの素早さを見せた秋津島開発が3Dプリンタにデータをぶち込み、あっという間に試作機が形を成して行くのだった。