宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百六話 無人兵器運用計画

社長達が視察に来ているのは、秋津島開発の中でも極秘の施設だった。自社で抱えるMMU建設隊により建設中であり、入れる社員もごくわずかしか居ない。

 

「試作機が既に複数稼働中ということで、AIの習熟を待つのと合わせて色々と準備を進めて行くぞ」

 

「UTSF計画は秋津島開発だけでなく帝国軍でも注目されています、デモンストレーションを成功させる必要がありますね」

 

「開発資金は回収させて貰うとしようぜ、隼の次の機体はコイツらさ」

 

名称はまだ決まっていないが、量産のための準備は着々と進行中だ。秋津島警備による拠点防衛で試験運用を行なう予定であり、対BETA戦の学習は元オスカー中隊の面々が少しずつ進めてくれている。

 

「世界中で戦闘を経験し続けているSPFSSのデータがありますから、学習元には困りませんね」

 

「そのデータを保管する施設が幾らあっても足りなくなりつつある状況はどうにかしたいけどな」

 

「今は工場の建設で何処も手一杯ですしね…」

 

無人機の試作機が既に飛んでいるという事実は帝国軍に公表したが、生産施設が既に完成しつつあるということは知らせていない。次世代の積層造形技術は戦術機の製造をも可能にする、お手軽な万能製造機という理想形に一気に近付いた訳だ。

 

「移民先の星でなんでも作れるようにと開発を進めていた製品が、ここまで成長するとはな」

 

「良かったんですか、こんな使い方になって」

 

「便利なものは人を殺しも生かしもする、今までと何も変わらんよ」

 

既に工場のラインには大型のプリンタが幾つも搬入され、試験的に製造を進めている。この方法の1番の利点は、設計の変更を行なっても出力範囲に大きさが収まってさえいれば問題なく製造を続けられることだ。

機体のアップデートが幾ら行われようとも、ラインを組み替えたり機材を入れ替えたりといった手間はかからない。

 

「その戦場に合う形に装備を変更し、自らをアップデートし続けることが出来る無人機軍団の出来上がりだ」

 

「自己増殖と学習の権限は凍結してありますけどね、流石に危険過ぎますから」

 

「どう転ぶか分からんからな、上手く回ると良いんだが」

 

3Dプリンタの技術革新は確実に世界を変えるだろう、コストが嵩んでいた自動工場は一気に最高の生産設備に生まれ変わる訳だ。

 

「まあプリンタ用の材料は増産しなければならないでしょうけどね」

 

「米国と東南アジア、欧州が手を出してるアフリカの生産設備に声をかけるさ」

 

戦術機産業を根底から覆す発明だ、これは暫くの間無人機専用ということで口裏を合わす必要があるだろう。

 

「無人機用のSPFSSⅡも中々高コストです、アンドロイドにコンピュータ詰め込んでる訳ですからね」

 

「だが演算能力は跳ね上がってる、生体部品が必要なくなる日も近いな」

 

「ブラックボックスですか、あの中身を知らされた時は驚きましたけどね」

 

「あの子らが人間らしい1番の理由だ、まあ最近上がった報告だと変質する個体も居るらしいが」

 

その変質した個体というのは東ドイツのクーデター時に派遣されてそのままの個体のことであり、なんでも機体の認知機能に過度な発達が認められるらしい。

 

「オイルの成分分析機能と繋がってる部分が肥大化、結果として味覚を得たそうだ」

 

「彼女達は成長する、ということですか」

 

「俺達と同じ脳細胞を持つという点を見れば、旧型のAIユニットと違ってSPFSSには魂がある…のかもしれないな」

 

倫理的にはかなり不味い存在だが、その有用さから誰もが見ないフリをしているというのが現状だ。秋津島開発が公開する戦後のロードマップにはSPFSSのメンテナンス継続と機密処理後の民間への払い下げが確約されており、衛士達が戦う理由の一つになっている。

 

「貴方も染まりましたね、昔だったらこんなことしなかったでしょうに」

 

「だな、歳を取ったのが不味かったかもしれん」

 

「家族も出来て、国や軍との繋がりも大きくなって、色々な騒動に巻き込まれるなんてことになれば考え方が変わるのにも無理はありませんよ」

 

「責めてるのか擁護してるのかハッキリしろよな」

 

秘書は少し笑った後、いつも使っていた端末を社長に手渡した。それを見て何かを察したような顔をした彼は、端末をジャケットの裏側に仕舞い込んだ。

 

「引退するのか」

 

「ええ、宇宙の放射線が少し」

 

「…子供は?」

 

「遺伝子は無事でした、先天的な病気も何も未だ見つからずに元気ですよ」

 

長時間宇宙施設に滞在していた秋津島開発の初期メンバーは、少なくない量の放射線を浴びている。今でこそ技術の進歩により放射線の防護も強化されつつあるが、やはり居た時間が長過ぎた。

 

「社長はピンピンしてるもんですから私もと思いましたが、そうはいかないようです」

 

「そう、か」

 

最近体力が急速に落ちているのは社長の目からも分かる程で、この日が来るのは彼も分かっていたようだ。二人はもう五十代であり若いとは言えないが、老いと同時に宇宙という人類には過酷過ぎる環境の影響が後から襲って来たようだ。

 

「部下から一番貴方に合いそうな人を見つけましてね、きっと私と変わらず接してくれますよ」

 

「引き継ぎもバッチリだな、助かるよ」

 

「あの世に行く前に月の砂をもう一度踏ませて下さいね、どうかご自身の夢を忘れないで下さい」

 

「忘れさせてくれそうも無い、俺は人材に恵まれたな」

 

そうして二人は視察に来ていた製造施設から出て、仕事帰りによく寄った本社近くの飲食店に入った。そして別れを告げて別れた後、社長は過ぎた時間の長さを今一度実感したのだった。

 




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