宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百七話 攻撃機達の今後

「…わーお、凄いのが運び込まれてるな」

 

「帝国軍が保有する海神と、それを運搬及び支援するための81式潜航ユニットです。ええっと、かなりの期間運用されていたもののようですね」

 

「装甲の傷からして年季が入ってるな、配備はされていても実戦に投入する機会のないまま寿命を迎えそうなのは良いことなのかもしれんが」

 

新人の秘書と共に社長が訪れたのはある倉庫であり、そこでは見慣れない機体が社員達の手で分解されていた。戦術機ではなく攻撃機として分類される人型兵器であり、跳躍ユニットや兵装担架といった装備は見受けられない。

 

「にしても分解された後じゃあな、全体図とかあるか?」

 

「今出します、少々お待ちを」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「へぇ、記憶通りか」

 

「えっ?」

 

ずんぐりむっくりとしたプロポーションだが、その装甲や巨大な肩部砲塔は印象的だ。海中から陸上へと侵攻し戦術機が攻撃を行うための橋頭堡を確保するのが目的であるため、色々と工夫された装備と外観を持っているようだ。

 

「それにしても何故こんなものが今になって運び込まれたのでしょうか、配備から10年がたった機体とは聞いていますが」

 

「無人機の運用計画に攻撃機も追加するんだとさ、大陸への上陸作戦をやるんだったら必須の戦力だしな」

 

その役割から被害も大きく、水中形態から陸上形態への変形も行うという特性上運用コストも嵩む。ここらの戦力も今一度整備したいというのが上層部の思惑らしく、ライセンス生産を担当していた国内企業と協力して代替可能な戦力を完成させて欲しいらしい。

 

「まどろっこしいことをしなくても軌道降下で沿岸部に落とせばいいだろ、全部」

 

「それは、その、大丈夫なんでしょうか」

 

「光線属種からの攻撃を受けずに迅速な上陸が可能で、沿岸部からBETAを一掃出来る火力が有ればいいんだろ?」

 

社長は簡単なことのように言い放つが、それは中々にハードルが高い。分厚い装甲と大量の武器弾薬を内蔵する兵器を打ち上げて、それを専用の対熱装甲を有するカーゴで正確に沿岸部へと投入する必要があるのだ。

 

「戦術機と比べて明らかに重量が違い過ぎます、打ち上げるにも落下させるにも従来通りの手法では無理が」

 

「それなら戦術機用の打ち上げ施設を使わなきゃいいだけだ、宇宙港の資材用の大型マスドライバーか…或いはロケットだな」

 

「ロケットって、今はもうほとんど運用されていないのでは?」

 

秋津島開発が世界中に建設を進めたマスドライバーのお陰で、費用対効果に劣るロケットが必要とされるケースは大きく減った。一度に運べる量も数倍から数十倍に及び、今ではHSSTなどの宇宙艦艇すら電磁カタパルトによって加速させられ宇宙へと飛び立っていくのが日常と化している。

 

「そうだな、俺達のせいで枯れつつある技術の一つだ」

 

「それを新規に設計して、更に無人機の運用計画中に完成させるなんてスケジュールが厳しくはありませんか?」

 

「いやもうあるから、多分乗るだろ」

 

「あるんですか!?」

 

秋津島開発は今も昔も宇宙開発企業である、マスドライバーにお株を奪われた技術といっても簡単に見放すわけが無かった。社長は設備の整っていない未開の惑星を開拓するには単独で大気圏を突破可能なロケット技術は必要だと考えており、未だに次世代機の開発を続けていた。

 

「一度失った技術を取り戻すのは滅茶苦茶大変だからな、プリンタのお陰で部品も作れなくなるってことは少ないし維持はなんとか出来る」

 

「だから基礎技術研究の名目でこんなにも細分化された予算配分が…」

 

「金回りが良いからこそ出来る話だな、昨今軍事転用出来るか否かが技術の存在価値と化してるのが悲しい所だ」

 

帝国政府からの資金援助やら緩和策やらが減った秋津島開発だが、金と権限が必要な宇宙関係の事業を停滞せずに発展させ続けているのは業界では彼らだけだ。一時は存在が危ぶまれた衛星ネットワーク網もシステムの再設計や、24時間の監視と対応が可能なAI群の採用で安定性を取り戻している。

その結果、宇宙産業を独占した上にそれに連なるサービスを展開することで通信と娯楽産業を一気に我が物にしたため、かなりの業績を上げているらしい。

 

「技術保全も考えないと将来的に困りそうだが、まあそのロケットを見に行くか」

 

「え、ええ、行きましょうか」

 

「ヘイタクシー!ロケット発射場まで頼む!」

 

「タクシーなんて試験区画に走ってるわけな…」

 

解体作業の騒音が響く倉庫の入り口で手を振る社長に半信半疑で着いていく秘書だったが、遠くから多脚車両の走行音が近付いてきた。

 

『社長、乗られますか?』

 

「頼むわ」

 

二人は移動用の車両として転用された多脚車両に乗り込み、少し離れた区画へと向かう。車内で運転するAIと話したり、昼食を摂ったりしている内に目的地へと到着した。

 

「新型ロケットは推力が三割増しになっててな、四角いノズルの冷却に問題があったが最近なんとか出来た」

 

「なんかこう、サラッと凄いことしてませんか」

 

「今時ロケットに他から金集まんねぇからな、その分好きにやってる」

 

ロケットに関する設備が集結したこの基地はマスドライバーが主力になる以前に使用されていた場所であり、何度か改修された上で今でも使用されている。巨大な可動式倉庫の中には巨大なロケットが収まっており、作業員とアンドロイドが共に作業を行なっていた。

 

「ここの奴らは設立当時の理念に賛同してくれた社員達でな、その手のベテランと見込みのある新人で構成されてる。主戦場は戦後さ、暫くは退屈かもしれないけどな」

 

「凄い…ですね。なんというか、熱量が違う」

 

「お前らーッ!コイツに載せるデカブツが見つかったぞぉーー!」

 

そう社長が言うと、彼らは腕を突き上げて歓喜の声を上げた。ここまでの大型ロケットの使い道というのはこの時代では中々見つからなかったが、遂に使う時が来た。

 

「新型の攻撃機を柔軟に運用するために必要な装備になる、差し詰め海神の潜航ユニットと同じ立ち位置だな」

 

「えっと、打ち上げ施設が必要なのでは」

 

「移動式の発射台と噴射炎を受け止めるデフレクターは用意してある、そしてコイツは着陸も離陸も単独で可能だから何も問題ない」

 

「は、はい!?」

 

よく見るとロケットの下部には大きな脚とも言える装備が固定されており、着陸する際には大きく展開される。姿勢制御用のロケットモーターもかなりの数が配置されており、従来のロケットとはかなり外見の差異がある。

 

「何処であろうと攻撃機を入れた対熱装甲製のコンテナを載せて打ち上げられ、回収と再利用が可能な次世代ロケットさ」

 

このロケットは飛行中に分離してバラバラになる従来型とは違う、HSSTと同様に着陸能力を有するのだ。大量に運用する際に問題になる莫大なコストも、一度で壊していたロケットが何度も使えるようになることで削減出来る。

 

「まあ正確には一段目が回収出来るって話だが、まあいいか」

 

「な、なるほど」

 

「利点を語る前提としてマスドライバーは構造上打ち上げる軌道を大きく変えられないからな、宇宙港に搬入した後宇宙艦隊に運んで貰う必要がある」

 

つまり従来通りのやり方では宇宙艦隊にこれまで以上の負担がかかることになる。だが自力で軌道を変えられるロケットによる打ち上げであれば、艦隊の手を借りる必要は無い。

 

「これで無人攻撃機は24時間いつでも稼働し、地球上の何処にでも投入することが出来るようになる。BETAの急な侵攻や増援の突入、全てにおいて人類は切れる手札を一つ増やすことが出来るって寸法さ」

 

「それは…凄いですね」

 

「ロケット技術の保全も出来るし軌道降下部隊も一つ増える、一石二鳥さ」

 

新人の秘書はまた世界が一つ変わる技術が目の前で実用化される様を見て、薄ら寒いものを感じた。これが教育係だった前秘書が言っていた彼の常識はずれな側面というヤツであり、この異常な会社の原動力だ。

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