「ですから、逮捕権を持った戦術機が必要なんですよ」
「いやいや、だからって空飛ぶ燃料タンクを市街地で運用するのは流石に問題があります」
「ならMMUでも大丈夫ですから、兎に角戦術機と協働可能な戦力が要るんです」
秋津島警備の社員が政府側の人間と話し合っているが、どうにも上手くいっていないようだ。恐らく近年頻発するテロ組織との戦闘に関するものだろう。
「非致死性の武装だって足りない始末です、全部射殺しろって言うならしますけどもそちらは捕縛を命じるでしょうに」
「…まあ、そうですね」
「東アでだけのことだと思われるのは心外ですね、いつテロ組織の魔の手が帝国に迫るかも分からないと言うのに」
「そのために必要な組織の再編と運用体制の確立、そう簡単な話ではありません。流入した難民による治安の悪化で人員が足りていない中、帝国軍から衛士も引き抜いて戦術機部隊を編成するというのは現実的とは思えません」
話は平行線だ、進展は見えない。警察組織に無理をさせている現状余裕がないというのは事実だが、将来予期される脅威に備えないという選択が愚かであることもまた事実だ。
「秋津島警備から人員を出しましょう、機体に関しても秋津島開発に持ちかけます」
「幾らあなた方でもそこまで国家権力に首を突っ込むのは問題があるかと思いますが、魅力的な提案であることは確かですね…折衷案と行きませんか?」
「出せる人員があるなら最初っから出せや!」
「無理して出すっつってんだろうが!」
こうして、秋津島警備の全面協力のもと警察組織にて人型兵器の運用部署が作られることになる。対テロ組織を念頭に作られるという経緯もあり、中々複雑な事情を抱えつつの設立に奔走した人々は多かった。
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「で、市街戦用の火器が欲しいと?」
「社長に直接言うのは横紙破りもいいとこです、ですが部下が暴走する前に手を打ちたかったのも事実で」
秋津島警備に来ていた社長に話しかけたのは、すっかりまとめ役と化した隊長だった。
「試作品は幾らでもある、倉庫行こう倉庫」
「助かります」
移動用の多脚車輌を呼び、乗って移動すること十数分。目の前にはかなり大きな倉庫が建っていた、手入れはされているものの年季が入っている。
「試作品で終わった戦術機用の兵装が纏めて置いてある、見て回ろう」
「こんな物が…」
「狙撃用の80mm砲とか懐かしいんじゃないか、オスカー隊が欧州に渡ってすぐに使って貰った筈だけどさ」
「暴走した機体の鎮圧に使った代物ですね、覚えていますとも」
秋津島開発は3Dプリンタでの製造環境が整っており、大抵の場合は試作品を作っている。その結果大量の試作品が生み出されることになり、このようにして保管されている訳だ。
「市街戦用の火器ってことは火力があり過ぎると困るんだよな、少し奥まで行こう」
「…何度か触ったことのある試作兵装が多いですね」
「この辺りは殆ど欧州に送ったことのある武器ばっかりだ、結局突撃砲を代替する兵器は生まれなかったけども」
兵器開発、特に火器に関して歴史の浅い秋津島開発が試行錯誤して作り上げた兵器群はものの見事にお蔵入りを連発した。しかし最終的に超電磁砲という傑作を完成させて失敗を帳消しにした上で莫大な利益を産んだため、失敗していても経験にはなっていたのだろうか。
「で、お目当ての兵器になってくれそうな子は…」
「コレですか?」
「えーと試製小型36mm砲だから、多分合ってる筈」
そう言って被さっていたカバーを外すと、戦術機の大きさに合わせたであろう巨大な拳銃が現れた。自動拳銃を模しており、周りを見れば同型と思われる火器が幾つも保管されている。
「取り付いた戦車級を排除しつつ戦術機の装甲を貫通しないっていう特殊な火器を作ろうとして失敗したんだ、威力の調整が上手くいかなくてね」
「36mm弾ということは、突撃砲と同じ弾薬ですか」
「砲身が短いから威力は大きく下がってるけどね、こと近距離においては気にしなくていいレベルの貫通力は出せちゃうんだけどさ」
劣化ウラン弾頭は別の素材で代替、火薬の総量も減らして根本的な威力も下げた減装弾も存在したが、別種の弾薬を使うとなると運用コストが跳ね上がってしまった。その結果まあ色々あってお蔵入りというわけだ、これではこの世に引き留めるどころかあの世に送ってしまうという笑えない実験結果もある。
「どうだい、使えそうかな」
「…取り回しは良さそうですね、市街地戦でも引っかかりそうにない。ですが精度と弾数が気になります、是非試験に引っ張り出したいですね」
「よぉし決まりだ、搬出だな。それと開発班に話を通しておくから、試験結果と要望は書類に纏めて提出してくれ」
「助かります、急なことですみません」
「施設防衛のための対テロ戦闘を任されて色々と大変なのは聞いてるよ、若い衛士達が国の対応の遅さに不満を溜めてるのもね。だからまあコイツを引っ提げて帰ってあげてくれよ」
輸送用の多脚車輌が何本もある足を使って器用に試作品の間を通り抜け、荷台に拳銃を載せていく。車輌に設定された行き先は秋津島警備の有する試験区画となっており、着く頃には射撃訓練後の休憩時間であるはずだ。
「お気遣い感謝します、どうにか彼らの手綱は握ってみせます」
「どうか気負わずにね、辞めるなんて言われちゃ腹を割って話せる相手が居なくなるよ」
「そうなったらMMUの操縦士に転職します、宇宙港で働きますよ」
「昔の夢を叶える気だな、逃さんぞ」
不知火一型丙っぽい塗装のACを共有しておきます、アーマードコア6にてお使いください。
A8J676NV4DVQ
突撃砲四門同時斉射が可能な近距離特化構成だよ、機動力を活かしてショットガンと戦おう。