「そろそろ出来るぞ、動くといいんだが」
「…凄く小さな旧隼ですね、模型ですか?」
「新型プリンタで出力してるんだ、タダの模型なわけないだろ」
完成した手のひらサイズの戦術機模型を手に取り、これまた新規に設計したらしい端末と無線で繋げる。そして更にゲームや玩具の開発を手掛ける子会社の一つ、秋津島遊戯が完成させたばかりのコントローラーを取り出した。
「えっと、何を?」
「動かすんだよ、見てろ見てろ〜」
ボタンを使って入力すると、端末を経由して指示を受けた模型に電源が入る。本物さながらにセンサが発光し、机の上で直立した。
「このサイズで自立した!?」
「前模型を作った時に考えてたんだ、流石に跳躍ユニットは10秒の噴射が限界だが」
「いやいやいや、充分過ぎますよ」
動く模型はついでに出力された近接長刀を持ち、両手で構えてぶんぶんと振って見せる。動きは機敏かつ自然であり、ゲーム用のコントローラーで動かしているとは思えない程だ。
「脳波読み取り用のヘッドセットと端末で実機と同じように動かしてるのさ、まあかなり簡易化されてるが」
「…それを使えば最低限の装備で戦術機が遠隔操作出来るんじゃあ?」
「おう。遠隔操作用の装備だったが使い所が無いってんでお蔵入りになったからな、流用した」
操作用の端末は軍用品にも使われていないような高級品で、ヘッドセットは網膜に映像を投影する機能があるため実戦用と変りない。玩具とするには些か高価すぎる代物だ、利益が出せそうもない。
「実機さながらに動くんだ、訓練に使えないかと思ってな」
「…確かに衛士訓練生全員に充分な数の戦術機があるかというと疑問が残りますし、より早い段階でこの模型を触れるのは良いかと」
「ひとまず操縦系統を実機に寄せてから訓練用機材として売り込もう」
ちょっと売れた。
ー
「息子よ、まさかユウヤ君の手を借りるとはな」
「父上が大人気ないんですよ、今日こそ勝ちます!」
屋敷の一室には部屋を埋め尽くす巨大なジオラマが運び込まれており、その中には三機の超小型戦術機が立っている。
「そっちの機体は吹雪か、こちらと機体性能は同じだな」
少年二人が使うのは吹雪、水色の塗装が施された国連軍仕様だ。対する社長も吹雪だが、灰色を基調とした帝国軍仕様だった。
「胸を借りさせて貰います、菊池さん」
「ククク…そう簡単に勝たせてはやらんぞユウヤ君」
社長が取ってつけたような笑い方を見せた後、三機は一斉に動き出した。跳躍ユニットが使えるのは10秒だけ、その推力をどう使うかも駆け引きの内だ。
「
「分かった!」
「ええい、教本でも読んだのか?」
左右に展開した二機が跳躍ユニットを使い、速度を乗せて社長の吹雪を狙う。手に持つ突撃砲は実弾を放つわけでは無く赤外線を放っているだけだが、網膜投影されている映像には発砲炎などが重ねられている。
「やられるわけにはいかないな、片方潰すぞ」
「うわっ!」
息子が操る吹雪に向けて社長機が突撃、ユウヤ機が援護しようにも味方に射線が重なるように動いた。IFFが味方を撃たないように引き金をロックしてしまい、援護が出来ない。
「よいしょっとぉ!」
社長機から放たれた蹴りが息子機に命中、機体が吹っ飛んだ。機体同士が離れたことでユウヤ機の引き金は自由になり、突撃砲からは赤外線が照射される。
「FCSの演算だよりじゃ当たらんぞ、先を読め先を」
実際の弾速を考慮して被弾判定を行うため、突撃砲の攻撃は即着弾というわけではない。立体的な回避行動の前に砲弾は当たらないかと思われたが、一発が脚部に直撃した。
「あっヤベ」
「今だぁーッ!」
二機からの集中砲火を受けて社長機は蜂の巣、撃破判定となった。初めての勝利に大興奮の二人だったが、ジオラマに一機の超小型戦術機が飛び込んで来たのを見て血相を変えた。
「今日の宿題はまだ終えていませんよね、お二人とも」
「母上…あー、それには訳が」
「貴方も貴方ですよ菊地さん、分かっていて遊ばせていたでしょう」
「うんごめん、楽しくてさ」
真っ赤の塗装に身を包んだ吹雪は長刀を手にして三機の前に立ちはだかり、来るなら来てみろと言いたげに刀を構え直した。
「私に勝てたら宿題は後でもよろしい、かかってきなさい」
「斯衛がなんぼのもんじゃあー!三対一だぞ!」
赤い吹雪に襲いかかった三機は、ものの見事に長刀一本で撃破された。新たな楽しみが出来たなと社長は笑っていたが、将来的にあらゆる子供達に大人気のホビージャンルとなるとは考えもしなかったのである。
評価と感想待ってるぜ、みんなはダンボール戦機好き?