宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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リハビリ


閑話 ESP能力者と国連軍と

「はーいこっちですよー」

 

船からぞろぞろと降りて来たのは第三計画にて生み出されたESP能力者達で、第四計画への移行に伴い接収されたために帝国へとやって来ていた。

 

「ええっと…国連軍基地までご案内しますので、ついて来てください」

 

未だに整備が続けられる国連軍向けの基地は疎開が進み無人となった地域を丸ごと使って建てられており、その面積は広大だ。必要とされる設備の関係上秋津島開発の土木・建築部門がMMUと共に活動しており、食堂なども秋津島食品が提供を行っている。

 

「設備の搬入って聞いて来たのに、なんでソ連からこんな数の女の子が船で運ばれてくるんだ?」

 

「分からん…」

 

国連軍の軍人と共に行動する秋津島の社員に渡された資料には真摯に接することという文字が蛍光ペンで強調されていた、ESP能力者ということだし下手な嘘は使えないということだろうか。

 

「ま、まあいい、長旅で疲れただろうし予定を変更して先に食堂に行くってのはどうだ?」

 

「明らかに徴兵年齢より下の子まで居ますしね…日程に余裕はあるわけですし、先に休息を取れるよう上申してみます」

 

皆同じような容姿を持つこと、年齢に差があること、人員再編が完全に終わっていない中で機密保持のため秋津島開発の職員が対応したこと。様々な要因はあったが、なんだかんだ一般人寄りの彼らは恐る恐るだが接してみることに決めたようだ。

 

「ソ連の第三計画はESP能力者によるBETAへのリーディングだろ、てことは戦術機に乗ってハイヴに突入した直属部隊って…」

 

「下手なことを考えるんじゃねえって、あのF-14モドキがあるってことはそういうことなんだからな」

 

本来なら第三計画で使われる筈だった機体は、ハイヴで撃墜される前に第四計画への移行をもって接収されていた。というかこのESP能力者も機体も、本来ならこの数がこの基地に来る筈では無かったらしい。

 

「キャパは作るから貰えるもんは貰っとけって社長が上に吹き込むから…」

 

採掘ステーションの一件で第三計画の研究者が吹っ飛んだことで投入が遅れていた戦力を纏めて接収することになっていたらしい、使い道についてあまり考えたくもないF-14の改造機も一緒にだ。

 

「第一印象は大事だ、それにこれから食事の提供は俺達の管轄になるんだぞ」

 

「ここで恨まれればどれだけ尾を引くことになるか、想像に難くないのは確かだな」

 

「歓迎会って括りならある程度大規模にやれる、厨房はいつでも火を入れられるから問題ない」

 

「やるぞ野郎ども!雪国のお嬢さん方に目にもの見せてやれェ!」

 

「「「おぉーーーッ!」」」

 

この瞬間から国連軍が業務委託を行った食堂の稼働が始まったが、一度も味に苦情が出なかった。それどころか業務委託の拡大を願う請願書が上層部に届くようになるとは、この時は誰も思わなかったのである。

 

 

まだ所々で工事中だが運用が始まった基地には、既に多くの人員が出入りしている。特に最新鋭の研究設備を大量に配置出来る上に電力と防諜に気を使わなくていい基地の地下にはラボが完成し、00ユニット作成のために香月博士が入り浸っていた。

 

「PXも秋津島の業務委託って…完全にこの基地から情報が漏れないようにしてるんだなぁ…」

 

人が居るということはPX、つまり基地内の売店も繁盛しているということだ。軍人達がやって来ては色々と買い込み、そして居なくなっては次の人がレジに並んでいる。

 

『精算機に紙幣を入れて下さい、お釣りは隣から出ますので』

 

「同僚もAIだし、仕事が早いのは助かるけど」

 

激しさを増す環境破壊により需要が高まり続ける食料品だが、海上プラットホームや日本国内での農地確保により一定の供給量を確保した秋津島食品は売り上げを伸ばしている。宇宙の施設への供給と販売が殆どだったが、最近になって地上での販売にも力を入れ始めた。その結果PXとして店を出している、ということだろうか。

 

「すみません、食料品の配送を頼みたいのですが」

 

「そちらの端末で出来ますよ、分からないことがあればお教え致します」

 

この売店では試験的に自社製品の配送を行えるようになっているらしいが、これが非常に評判が良い。何故かというと、秋津島食品のプラットホーム群は世界中に数多く存在するからだ。

 

「嘘だろ、作ってる畑はもう無い筈なのに」

 

「噂は本当だったのか!」

 

端末を覗き込む兵士二人が驚くのも無理はない、それは失われた国で生産されていた作物だからだ。世界的な食料不足で穀物の生産量が重視される中、秋津島の社長は批判を受けつつも亡国の特産品などを生産する場としてプラットホームを貸与した。

 

「今は亡き国の物も作るとは、まあ流石は社長のご判断かな」

 

『人間は効率だけを見て生きられる生態をしていませんからね』

 

「…反論出来ないな」

 

戦争の影響を受けて途絶えていた一部の酒類も、あの手この手を尽くしてもう一度作ろうとしていると聞く。そうして作られたアルコール類はマスドライバーで宇宙へと打ち出され、それを宇宙で様々な人物が飲んでいくという映像は衛星を介して配信された結果中々の反響を得たそうだ。

 

「飯と娯楽に関しては妥協しないよなぁ、秋津島の開発じゃなくて食品に就職した俺が言うことじゃないが」

 

『社長曰く、不味いご飯を食べて過ごす中で楽しみもないと発狂するからだそうです』

 

「そりゃそうか、戦後は宇宙を開拓するから必須だわ」

 

社長の交渉カードに大量の嗜好品が追加されたが、彼は各国の関係者に配る傍ら何故か東ドイツにもコンテナに詰めて送りつけ始めるので誰かが見張っていた方が良いらしい。

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